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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第八ノ巻
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第八十六話 眠気が飛んだ代わりに

第八十六話 眠気が飛んだ代わりに


 行燈の灯りを消してねぇや。確か行燈はベッドに傍に置いたよな? ごそごそごそっ左手を掛布団から出して俺はベッドの近くに置いたはずの行燈を、~~~っうぅ手が届かねぇ―――。

「ふッ・・・!!」

 あともうちょっと・・・、もう少し―――で指の先が届く・・・。あっ固いのに触れた。行燈だ。

 よいしょっ俺はベッドの左側に身体ごと移り、その行燈を掴んで引き寄せ―――、あれ、ここ? えっと行燈の台座? ボタンはどこだ?

 あぁ、でも思うように行燈の底部についてあるスイッチが・・・押せない―――!!

「だーっ」

 ばっ、っと俺は布団を跳ね上げ上体を起こし、あぁもうっ!! ばっ、っと俺は行燈を手元に引き寄せ、そのボタンをぽちっとな。すぅっと明かりが消え、部屋が暗くなる。

「ふぅ」

 よし、消した。ぱたんっと俺はもう一度倒れこむようにベッドに横になった。

「・・・、・・・、―――」

 すぅすぅ・・・、あれ?眠気さんどこ行った?


 ね、眠気のやつ来ねぇのか?知らねぇぞ?ちゃんと寝ないと。朝、アイナが俺を迎えにくるって言ってたぞ?

「―――、―――、―――」

 そのように俺はまるで自問自答するように、心の中で呟いてみたものの―――、眠気が飛んで目が()えてしまった俺はふたたび目を開けた。見えるのは、薄暗い部屋だよ。行燈を消してしばらく、この目はすっかりとこの暗闇に慣れてきた。はーん、すっかり眠気も覚めちまったぜ・・・。

「・・・」

 仕方がないな。俺は体勢を変えると右手を伸ばし、枕元に置いた自分の電話をこの手に取った。・・・この大きさ、重さ、四角い手慣れた感触―――見まがうことなき俺の電話だ。電話の画面を触ることで画面を点ける。

 今の時間は23時32分。なにか適当に電話でも見ようかな。

「・・・、―――、・・・―――」

 アイナからイニーフィネ仕様になっているとは聞いたけど・・・『写真』のアイコンを開いてアルバムの中を見ても、とくに中の写真の拡張子も変わっていないし―――、

「っ」

 あ、満開の桜の写真―――・・・。この写真は学校の校門の前の桜が満開になったときに撮ったやつだ。確か、撮ったのは去年の春だったかな?

 天音がまず、『きれいな桜だね、敦司』って敦司に話しかけて、そこから美咲が満開の桜の写真を一枚撮ったんだ。すると、なぜか桜の撮影会になってしまって、さ。はは・・・。

 真が言うには、『これは花の咲き方から観るにソメイヨシノじゃないよ。・・・そうだな、葉と一緒に花が咲いているからきっとヤマザクラだよ』だってさ。

 ついついっと俺は『写真』から戻り、次は『音楽』を指でちょんっと。

「・・・」

 ・・・俺は元々、音楽はあまり聞かないんだけど、予め元から電話にインストールされている音楽も前と・・・俺がこっちに来る前となにも変わっていない。受信メールも着信履歴もそのままだ。

「これ―――」

 今、着信履歴の画面に表示されてる敦司の電話番号に電話を折り返してかけたらどうなるんだろう? 敦司に繋がるのかな・・・?

 俺は敦司の電話番号に指をかけたまましばし考え、やっぱやめておこう。変なことになったら嫌だ。やったとしても今はかけない。もう少しこのイニーフィネという世界に慣れてからにしようかな。

「―――ん?」

 そういえば、あのときアイナは。

『アターシャ。あとで私のメイン端末にもその動画と写真を送っておいてくれませんか?』

『かしこまりました、アイナ様』

 あのアイナが言っていた『私の端末』が、『アイナの電話』なのなら。


 それに先んじてアターシャはあの生ける屍が徘徊する前に―――

『ケンタさまはもうすでに私のことを不快に思われているかもしれませんが、実は先ほどアイナ様と戦う貴方さまの様子を、日之国よりアイナ様専用仕様で取り寄せたこの通信端末で録画させていただいております』


 なんかアターシャも端末を持っていたよな?あの生ける屍がうろつき出す前にあの街で言っていた。それとクロノスと相対したときにもアターシャはその給仕服の中から端末を取り出していたはずだ。

 だから、ひょっとして―――

「―――」

 今の着信履歴の画面から戻って、つぎに電話帳。ひょっとしてアイナの端末の電話番号が俺の端末の中にすでに登録されていたりして・・・?

 俺の交友関係はあんまり広いほうじゃない。電話に登録されているのは、幼馴染六人と両親、めんどくさい親戚のおじさんやおばさん達と剣術関係者・・・それと数人のクラスメイトぐらいだよ。

 左手で板状の電話を持ち、右手の親指で画面の下部に表示されている登録者のアイコンをちょんっと。すると名前の一覧が表示されて、―――おっ?アイナだ。

「やっぱり―――」

 ―――あった、『あ』のところに。しかも検索の一番上に『アイナ=イニーフィナ』の名前だ。アイナが俺の端末に自分の登録情報を入れたのかな? たぶん、そうだ。アターシャやほかの従者の人が勝手に俺の端末に情報を入れるなんて考えられないよな、アイナはお姫さまだし。

 あれ?なにこの番号?

「・・・ん?」

 アイナの電話番号―――・・・、日本の携帯電話の番号みたいに『0から始まる三桁それから四桁、四桁』のような『0X0-XXXX-XXXX』の十一桁の番号じゃない・・・。メールは―――ん?メールアドレスが『アイナ』の項目にないぞ?もう一回タップするのかな?

 そう思った俺は、『アイナ』を指でちょんとタップし―――でもなんだろこれ?

「『通話』と・・・『通信魔法』・・・?の選択?」

 なんだこれ? 俺の電話の液晶画面に現れたのは、上部に『アイナ=イニーフィナ』の名前。うん、これは解るよ。その下に、『アイナ=イニーフィナ』の表示文字よりは少し小さいフォントで『通話』と『通信魔法』の表示だ。液晶画面に、上は『通話の電話番号』で下に『通信魔法』の順番だ。

「―――」

 その、したい、かけたいほう。『通話』と『通信魔法』のどちらかを選んで行なうってことか? ・・・その、電話をかけて、、、みるか?アイナに。実証も含めて・・・。

「―――・・・」

 いや、やっぱり今アイナに電話をかけるのはやめておこう。起こしちゃ悪い。アイナはもう寝ているだろうしな。

 じゃ、こっちの通信魔法は? ちょんと指でそっちを選択すれば、あっメールを送る時と同じ画面になったぞ。メールを送るときに表示されるアドレスは、『通信魔法』を選択したときには表示されていない。

 『件名』にはなにも書かずに、

「おやすみ、アイナっと」

 俺は『本文』だけにそう書きこんで―――ちょんっと指で送信っと。よし、送信完了っと。なるほどなるほど、『通信魔法』ってやつのやり方というのは、『メール』とだいたい同じ要領か。

「・・・」

 でも、なんで『通信魔法』って『魔法』?って言うんだろう? 検索して俺のその疑問を調べてみるのもいいかもしれない・・・、よし。

 戻る。戻る。電話帳のトップ画面に戻り―――、戻りかけたところで俺は。

「―――」

 ほんといろんな疑問や興味が湧いてくるよな。『あ』行の『アイナ=イニーフィナ』の下には、元から俺の電話に登録していた幼馴染の『赤羽 己理』『稲村 敦司』あいつらの連絡先が。

 アイナ以外は、このイニーフィネに来る前と同じまま。『か』行に移動し、そこを見れば、同じく幼馴染の『神田 美咲』と『小剱』から始まる両親と親戚一同の名前がずらり。『さ』行には幼馴染の『斎藤 真』。次、『た』行。敦司好き好きオーラ全開の天音にはほとんど、俺から連絡することはなかったけど、一応『辻堂 天音』の名前。その上に―――、

「『ツキヤマ=アターシャ』・・・?」

 あれ?アターシャまで登録されているの・・・?

「―――」

 こっそりアターシャの電話番号を見ちゃおう。いや、ううんこっそりなんてないんだけどな。普通に開くだけだよ、俺の電話に入っていたアターシャの登録情報を。アターシャの電話番号も日本の電話と同じ十一桁の番号じゃなくて、アイナと同じような電話番号だ。そして、やっぱり『通話』と『通信魔法』の表示だ。

 これが、この五世界イニーフィネの標準なんだな・・・。ちょんちょん、戻るっと。

「・・・」

 間違ってアターシャに電話をかけてしまわないように、また電話帳検索の画面に戻る。『な』行には幼馴染連中の名前はなく、『は』行『ま』行には、何人かの親戚と剣術の関係者の名前が、そのこっちの世界イニーフィネにやってくる前のままだ。

「・・・」

 『や』行にはなにもなかったはずだ。でも、一応その次を指でついっ―――っ!?

「はぁっ・・・!?」

 思わず素っ頓狂(すっとんきょう)な声が出てしまったぜ。だってさ、『や』行には誰もいなくて、何もなくて、そこには一つも登録していなかったはずだよ? なのに、なんでっ!? こいつの名前が!?

「―――『結城 魁斗』・・・っ」

 いったいいつの間に、誰が俺の電話の中に魁斗の電話番号を登録したんだ!? 俺はこの自分の電話に『魁斗』を登録した覚えもないし、あのキャンプファイアのときには俺はまだ十歳で電話を持っていなかったはずだ。

「たぶん・・・ううん―――いやきっと」

 あの廃砦で俺が眠ったあと、魁斗が俺の電話の中に自身の電話番号を勝手に登録したに違いないって、あいつあのとき自分の電話を持っていたし。

 橙赤色のゆらゆらと薪を舐めるようにゆらめく焚火の炎を囲いながら、魁斗は地図のアプリかなにかのマップ画面を俺に見せてきたから俺は鮮明にそれを覚えているよ。

 俺が寝落ちしたあと、魁斗が俺の電話に勝手に『自身』を登録入れた―――、これが俺の考えられる限りの中で最も可能性が高いことだと思う。

「・・・」

 あいつ―――、魁斗のやろう。もうお前はこの五世界イニーフィネにはいないんだ。

「―――っ」

 おらおらっ消えちまえっ・・・!! 『結城 魁斗』『消去/削除』っと―――、指でちょん。

「・・・・・・」

 消えた。これで、よしっと。ふぅ・・・。


 戻る、戻る。俺は電話のトップ画面に戻り、画面を切り替えながら、しげしげと。イニーフィネ仕様になって、他になにかアプリのアイコンとか、表示画面とか・・・前と変わったところとかあるかな・・・。

 電池残量のアイコンや電波状況のアイコンも前と同じ―――

「あ・・・」

 電池の残量が三十パーセントを切ってる・・・!! ・・・充電器―――・・・ないや。充電器は実家の自分の部屋の机の上に置きっぱなしだ。予備の充電器と予備の電池も学校の制服の内ポケットに入れっぱなしだ・・・。おわた。

 っ。これ以上残量が減るのはやばいっ。電話を見るのはやめてもう寝よ・・・っ。

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