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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第八ノ巻
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第八十一話 皇国の文字

 おっ久しぶりの電話の待ち受け画面だ。ちょっとなつかしいぜ。待ち受け画面を見れば今はちょうど十八時を過ぎた23分か。つづいてついつーいっと俺は指先で、日常の仕草で呼び出し画面を右に、真ん中、左と開いて―――。

「―――え?」

 なにこれ? 呼び出し画面のアプリのアイコン―――、角が丸い四角いアイコン画像はそのままなんだけど、アイコンと一緒に表示されている文字は、俺が今まで生きてきて、一度も見たこともないような文字なんですけど・・・?


第八十一話 皇国の文字


「―――・・・」

 な、なにこれ?なんの文字? なんか・・・この文字の『形』ってなんていえばいいんだろう? アルファベット・・・『ABC・・・』といったラテン文字でもないし、『АБВ・・・』と続き、『R』がひっくり返ったような『Я』とかの文字もあるキリル文字でもない。かといって文字が連なって表記されたように見える中東の文字でもない。世界史で習ったような古代の象形文字でも楔形文字でもないぞ?この俺の電話に表示されている文字・・・。でも、文字の一つ一つは、アルファベットの『ABC』のように一文字一文字しっかりと表記されている・・・。

「・・・・・・」

 じぃ・・・―――。なんだろう・・・この文字は、このアプリのアイコンの下に表示されている文字は『十』にも見える。こっちのアプリはアイコンの画像からして『設定』だよな?ぎざぎざした円形は『設定』のだし。でも、、、アイコンの画像はそのままでも、この『設定』のアイコンの下に表記されている数個の文字の一番初めの文字は上が左にはみ出した『P』にも見えるんだよな・・・。『設定』って英語訳の綴りにしても『P』から始まらない・・・。

 ダメだ、まったく読めない文字だ―――。俺はあきらめて顔を上げた。手元の電話の液晶画面を見ていた視線をアイナのほうに向けてな。

「あ、あのさ・・・アイナ―――これなんだけど・・・」

 真正面の席に座るアイナに、俺はそっと電話を円卓の上に置く。

「ケンタ?」

 『俺の電話の画面を見てくれよアイナ』、という具合に電話を反転させてその液晶画面をアイナに見せた。

「これってさ―――」

「―――」

 しげしげ、とアイナは俺の電話の液晶画面を覗き込む。

「これなんて書いてあるんだ?アイナ」

 ついついっと俺は画面が反応しない程度の距離を開けて『ぎざぎざ円』のアプリのアイコンの読めない文字を人差し指で示した。

「ん?『設定』、、、ですが・・・?」

 きょとんっ、っとアイナ『なんで?』とか『これがどうかしたのですか?』みたいなきょとんとしたその顔で、その表情で。その表情はまるで、自分の中では常識になっていることを、他の人に疑問を持たれ、訊かれたような仕草に似ていたんだ。

「この文字、全然読めないんだけど、俺」

 そのアイナの今の表情―――

「あ・・・っ、―――」

 ―――あ、そっかっ、ぽんっとまるで合点がいったかのようにアイナは。そして、アイナもまた自分のドレス服の中から電話を取り出して、円卓の上に置いた。アイナの電話の背カバーの色は淡い青色だ。そしてカバーの覆いがない上部からちらりと見えるアイナの電話の本体の色は空色の金属光沢だ。ちなみ俺の電話のボディは灰色がかった銀色だ。

「えっと私の電話の画面を見てもらってもいいですか、ケンタ」

 アイナも自分の電話を円卓の上に置き、その液晶画面を俺に見せながら、設定のアイコンを、自分の電話の設定アイコンと俺の電話の設定アイコンを交互に指差し―――、あ、アイナの電話の画面の文字って、俺が読めなかった文字と同じ文字だ・・・。

「お、おう」

 あ、それとアイコン画像だけなら、それを見てそれが『設定』のアイコンだってことは判るよ、俺。

「これか?」

 俺が指で自分の電話の設定を開くと―――さらにいくつかのアイコンが上下左右に並ぶ―――? あれ?俺の電話の『設定』ってこんなにたくさんのアイコンなんて出てきたか?

 俺の電話の『設定』ってこんな仕様だったっけ? なんかちょっと前と、こっちの世界にくる前と比べて、変わった気がする・・・、俺の電話の中身が。アイナ、俺はそれが気になり、視線を上げた。

 すると俺と入れ違いで、ちらりっとアイナの視線が俺の電話の画面を。

「えっと、はい。では、私も」

 アイナはふたたび自身の手元に視線を戻し、俺もちらっとアイナに、―――俺に、自身の電話の操作をしながら見せてくれるアイナの電話の液晶画面を見た。

「―――」

 あ、同じだ。あれぇ?アイナのその画面と俺の、『設定』を開いた俺の電話の液晶画面が一緒だよ? ひょっとして俺の電話・・・イニーフィネ仕様になっているとか? いつの間に―――ってたぶんアイナが俺の電話を直してくれたときだろう。『使えるかどうか、いろいろと自身で確かめてみてください』とも、アイナは言っていた。ということは、アイナが俺の電話を修理してくれたときにこっちのイニーフィネ仕様になったのかも・・・ううん、なったと思う・・・。

「それから、この上から一段目の・・・、一番右端のアイコンをですね―――」

 しげしげ、、、アイナが操作するアイナの電話画面と、俺の電話を見比べるように見つめて。

「ふんふん・・・」

 そっか。―――あぁ、あったあった。この右端の、デフォルメされた『人と人が話し合うアイコン画像』ね。アイナが指差すアイナ自身の電話の画面を見様見真似で、俺も同じ『その』アイコンを自分の電話画面上を指で指し示す。

「これ?アイナ」

 アイナと俺が互いの端末を持って、同時に指差すそのアイコンは、デフォルメ画像で二人の人型が向かい合っていて身振り手振りで会話の吹き出しまで描かれているものだ。一目見てこれが翻訳もしくは翻字、文字転写のアイコンであることが解る。

「えぇ、それです。それを―――」

 アイナは自身の端末のアイコンを指でちょんちょんと優しく叩いてタップし、すると、アイナの端末の液晶画面が切り替わり、たくさんの文字の四角いアイコン一覧が表示される。

「―――」

 俺の読める―――例えば授業で習う英語のラテン文字やら、よく解らない文字やら―――あ、あれは見たことがある。ルーン文字だ。

 よし、俺も自分の端末で。俺は自分の画面に視線を戻し、さっきのアイナの操作と同じように、人差し指でそのアイコンをタップし、文字一覧を開く。

 あ、これこれ―――かな文字だ。四角いアイコンで『日之国の文字』って表示されてるよ。

「えっと―――、ひょっとしてこれかな?」

 そして、人差し指をアイコン上でそのままに、ふたたびアイナの端末へ視線を戻す。すると、まるで、えぇ、と、肯くようにアイナの表情が柔らかくなる。

「はい。―――こうです、私の電話を見ていてくださいね、ケンタ」

「うん」

 俺がふたたび視線を向けるのを待っていたかのように、アイナは無言で、指を画面上にもっていきそこを指で軽く叩く。すると同意の画面が出て、―――俺の読めない字だけどたぶん『はい』のほうをアイナはもう一回指でタップした。

 アイナは自身の端末『⇦』の戻る戻るで二回戻り、アイナの電話がまた一番初めの呼び出し画面になった。

「ほら、ケンタ」

 その画面を俺に見えやすいように、少し傾けてくれた。そのおかげで画面の光沢感がなくなり俺にとっても見えやすくなったんだ。

 なんかアイナ・・・そのとても俺、アイナに尽くされて―――すごいうれしい。俺、アイナを好きになってほんとによかったよ。

「―――っ」

 あせあせっ―――と、まぁ、それは、それは。―――あっ、アイナの画面のアイコンとその文字が読めるようになってる!! つまりこのアイナの端末の画面の表記がえっとなんてよぶか分からない文字から―――俺が読めるかな文字に。

 つまり俺もアイナが自身の端末で翻字の仕方を教えてくれたように、俺も自分の端末で同じようにすればいいんだな。よし、と俺は自分の端末で『日之国の文字』を選択。すると―――ひえっ!!ど、どうなってたんだっ!?

「!!」

 俺の電話の画面は一度暗くフェードアウトっ!? トランジションするように一瞬画面がぶれて・・・。

「っ」

 ほっ、よかった。ちゃんと点いた。―――やっべぇ電話が落ちたのかって一瞬思ってしまった。するとその俺が知らない読めない文字は―――(『十』のような文字や『S』がひっくり返った文字とか)―――普通の、俺が読み書きでき、日本で読み書きするような漢字かな文字になったんだよ。

 あの読めない文字ってなんなんだろう? アイナなら当然知ってるよな。

「なぁ、アイナ―――」

 見ればアイナは自身の電話をなにやら操作しているようだった。でも、俺がアイナに呼びかけたことで、アイナのその自身の電話画面への視線が、手元から俺へと移る。

「はいケンタ」

 すでにアイナは卓上から電話を取り、その電話カバーの淡い青色の背中しか俺には見えないから、なにを操作しているのかは俺には分からなかった。

 ぽんっ、っとアイナは操作を中断させてその電話を円卓の上へ置く。あっさっきの翻字画面だ。アイナは日之国にした画面を、また元のイニーフィネ仕様に戻そうとしていたのか、たぶん。

「そう、この文字だよ―――」

 俺はアイナの元に戻っていた文字を軽く指差した。

「―――この文字ってなんていうんだ? 俺全然読めないんだけど?」

「あぁ―――これはですねケンタ。この文字は『皇国イニーフィネ文字』といいます」

「『皇国イニーフィネ文字』?」

 えっどう見てもこの五世界イニーフィネの独自の文字だよな、とは思ってたけどやっぱりか。

「えぇ、さきに話しました女神フィーネ様により私達イニーフィネ人に与えられた『五つの叡智』―――」

 言ってたな、アイナは主菜が持ってこられる前に。

「あ、うん」

 俺は適当に相槌を打つ。

「それまで文字を持たなかった私達に女神様は『文字』もお与えになられたと伝わっております」

「あぁ・・・」

 そうなんだ。

「あ、でも当時の文字をそのまま使っているわけではありませんよ、ケンタ。時代の経過とともに・・・と言いますか―――」

「ん?」

 アイナは少しためを置く。

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