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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第六ノ巻
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第六十五話 語られし、この五世界創世神話 二

第六十五話 語られし、この五世界創世神話 二


「『女神叙事文』の続き、よろしいですよね?ケンタ?」

 っ!!あせあせっ。気づかれて・・・ないよな? か、顔には出すなよ。俺はなるべく平静を装う。

「あぁ―――」

 頷いた俺を見とめ、アイナはにこりと、再び口を開ける。その笑顔が少しつらい。

「―――『おぉ我らは極める、この神の如き五つの叡智を。我らはこの大地の、海の、空の―――星の隅から隅まで征き尽し、この神器『七基の超兵器』をもってこの惑星を制するのだ』、と。そんなイニーフィネ帝国の絶頂期のことが次の節六節から記されています・・・。しかし、そんな折突如、全世界を白い災害が襲うのですが―――」

「白い災害?」

 なにそれ。想像もつかない。

「・・・えぇ、―――」

 こくん、とアイナ。『白』に嫌なイメージは俺にはないけど・・・、俺が魁斗の『黯』を見過ぎて身にしみた所為かも。

「『おぉ、なんたることか!! なんたることがそこに起きたのだ!!』~~~♪」


「―――」

 !! ノってるなぁ・・・アイナ。喋り方や、その身振り手振りは普段からこの叙事文を詠唱してるんじゃないか?って、ひょっとして。


「『おぉ・・・それは白い悪夢―――、白い(わざわい)―――、我らの五つの叡智が白に塗り潰された日々―――、白い靄の中から突如現れた四種の異人達―――『災厄の日々』』」

「っ!!」

 白い靄の中から四種の異人達だって・・・!? 目の前に白い霧みたいなものがあったとして、いきなりその中からぞろぞろ見知らぬ人が出てくるのか? にゅっと目の前の白い霧や靄の中から足が出てきて・・・、大勢の人がぞろぞろとどこからともなく湧いてくる―――そうだとしたら、なんか想像するだけでこわい。


「―――それらは『災厄の日々』として現在に生きる私達イニーフィネ人の心に、本能に、歴史に刻まれている認識なのです・・・ケンタ」

 ―――『災厄の日々』って。やっぱきっと当時のイニーフィネの人々もこわかったんだろうな・・・。想像したらなんとなく俺分かる気がするわ。今まで普通にできていたことが突然できなくなって。おまけに、白い靄に覆われるという天変地異付きで。

「えっと?アイナ―――・・・『災厄の日々』・・・って」

 本当に、アイナが言った『災厄の日々』って言葉は不穏当な言葉だけど・・・。

「はい・・・ケンタ―――。『災厄の日々』に向かう予兆としまして―――、、、」

 予兆? アイナは一度、口を一文字に鎖し―――

「・・・」

 ややあって、アイナはふたたび口を開く。

「それは『災厄の日々』の発生は私達の先祖による、この惑星イニーフィネをも滅ぼすことが可能な『七基の超兵器』の創造が原因であるとされています。後になって『皇国創建記』の記述を基に、神学、歴史学、科学を用いた研究により、それはほぼ史実であると証明されました―――」

「・・・」

 怒ったんだな、きっと、あの女神様は。せっかく自分が叡智の力をあげたのに、驕り高ぶってそんな超兵器を造ってーって。

「・・・」

「『七基の超兵器』の創造―――やはりそのことに・・・心を痛め悲しみ、お怒りになられたと伝わる『女神フィーネ様』はついに行動を起こしたのです。『女神フィーネ様』は四人の仲間の惑星(ほし)達に助けを求め、それに応えた『四柱の女神様』はそれぞれ自分の『子達』を養子に出したのです。その『四柱の女神様』から送られた子達はそれぞれ、超能力に特化した『日之民(エアリス)』、氣の行使に特化した『月之民(オルビス)』、魔法を行使する『魔法王国イルシオンの民』、そして機械に長けた機人『人形族(ネオポリス/ドールズ)』の『子達』です・・・、というのが『女神叙事文』とは別の『女神五世界頌詩(しょうし)』という節で語られています」

「・・・そういえば―――」

「ケンタ?」

 確か、魁斗のやつ・・・

「―――」

 日之民、月之民、魔法の民、それからあと機械の人達・・・それは魁斗があの廃砦で俺に語ったことだ。その中でも俺は、俺や魁斗は―――

「『日之民・・・』」

 ―――らしい。じゃアイナの言ったエアリスって?

「・・・えぇ、エアリス人は『日之民』と自称していますが、私達イニーフィネ人はかれらを『エアリス人』と他称します。まぁ、ですが昨今では『日之民』と呼ぶイニーフィネ人も増えてきていますが」

「へ、へぇ・・・」

 だから魁斗は『日之民』『日之民』って言ってたのか・・・。それに魁斗は、あの焚火を囲ったときに、『女神フィーネ』は自分達『転移者』のことはほったらかしで、救ってくれないとも。いや、そんなことはないはずだ。だって『女神フィーネ様』は俺の祈りを聴いてくれたから。

「―――・・・」


「―――ケンタ?」

「!! あ、うん。その、大丈夫。続けて」

 おっと、ちょっと女神フィーネのことを考えていて、アイナの話がおざなりになりかけてたぜ・・・。あぶない、あぶない。

「はい。・・・では続けますね」

「お、おう」

「『日之民』『月之民』『魔法王国イルシオンの民』『人形族』の『四種の異人達』彼ら移住者は、この星の先住者我々イニーフィネ帝国と衝突しつつも、隣人同士になった彼ら同士でも互いに衝突と協力を始めました。そうして、惑星イニーフィネ全土で境界紛争が始まるのです―――」

 全土で紛争って、それって世界大戦っていうか・・・とんでもないほどの規模での戦乱じゃねぇか。おそろしいな。

「―――」

「私達先住者も含めて、五つの世界勢力が統一国家を建設しようとしたことを『世界統一化現象』とよんでいるのですが―――」

「!!」

 えっ『世界統一化現象』っ!?

 驚くこと、と言うか、アイナのその説明は魁斗の言っていたことと繋がってくることが多いぜ。『世界統一化現象』―――っていうのは、あのとき魁斗が言っていた―――

『僕達『イデアル』は人員を入れ替えつつ、古来より、うん、より正確に言えば、僕達『イデアル』は『世界統一化現象』を機にこの五世界に誕生し、そのときより連綿と受け継がれしもの』

 って―――つまり『イデアル』は、こんな、魁斗が太古って言うほどの昔からあったのか? 魁斗が言ったことが本当だった場合だけど・・・。

 ふぅっ、っとアイナは。

「―――悲しいことですね・・・ケンタ。大きな争い『世界統一化現象時代』が何年も続いたということは・・・」

 『悲しいこと』と一瞬憂えるような顔で視線を落としたものの、アイナはふたたび視線を戻して俺を見つめた。

「ケンタ貴方も、あの者ユーキ=カイトから聞いたとおり―――」

 魁斗から聞いたこと、なんだ? あいついっぱいいろんなことを俺に言ってきたから、いったいどのことだろう・・・。

「??」

 アイナ・・・? アイナはいったい魁斗の何を、あいつが言った何を言おうとしているんだ? アイナはそこで、また眉間に少しだけ皺を寄せて―――眉を(ひそ)める。それはまるで『眉唾ものですが』と言っているかのように俺には思える。

「長く続いた戦乱の世『世界統一化現象時代』ですが、偶然の産物かはたまた意図的なものなのか―――五つの異世界の権衡者なるものを自称する『イデアル』の出現とほぼ同時期にこの『世界統一化現象』は終息するのです」

「!!」


『僕達『イデアル』は『世界統一化現象』を機にこの五世界に誕生し、そのときより連綿と受け継がれしもの』

 って―――魁斗は珍しいその真面目で自信たっぷりな顔でそう言っていたんだ。

「・・・」

 わずかな一瞬だけ、あのとき廃砦で自信満々に俺とアイナに語りかけてきた、もうこの五世界から消え失せた、ううん俺が地球に転送させた魁斗の様子が、俺の頭の中で浮かんだ。

「あれか、魁斗のことが言っていた『イデアル』の・・・」

「はい。当時のイニーフィネ人は『災厄の日々』が訪れた『真相』を悟ったことで、己の過ちに気づき、女神フィーネ様への不敬を悔い改め、再び拝み祀りました。その証として四つの世界からの移住者達に土地を譲り割けることになります。そのときに私達イニーフィネも含めて他の四つ世界にも『イデアル』の介入が在ったのかどうか―――、今の私達皇家の人間ですらもう判りませんが、しかし、その後しばらくしてこの『世界統一化現象』と呼ばれた時代が終わったのは事実です」

「―――」

 在った、と思う。俺は『イデアル』の介入は在ったと思うよ。なんかそんな予感めいたものがあるんだ。

「そして、『世界統一化現象』より以前の『イニーフィネ』は『古き大イニーフィネ』と呼び、今の五つの異世界が共存する五世界のイニーフィネとは区別します」

「そっか―――・・・」

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