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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第五ノ巻
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第五十話 『天王黒呪』。発動―――氣導銃で放つ『黒弾』

第五十話 『天王黒呪』。発動―――氣導銃(きどうじゅう)で放つ『黒弾(こくだん)


 キュイイイィ―――、なにかが集束するような電子音のような音。そのすぐ後、魁斗の持つ拳銃の銃口が真っ黒に染まった瞬間に―――

「その怖い『眼』をやめてよっ健太っ・・・お願いっ当たってよっははっ、なんて♪『天王黒呪(てんおうこくじゅ)』―――『黒弾(こくだん)』っ!!」


「ッ!!」

 魁斗の持つ拳銃の銃口が真っ黒に染まった瞬間に―――俺は瞬時に『透視眼』から『先眼』に切り換えて―――くっ思った以上に弾速が(はや)い・・・!!

 ばっ、俺は右手で肩口を押さえた。

「ッ()ぅ・・・!!」

 くそッ・・・発砲音もなかったし、弾速も速すぎて(かわ)しきれなかった!!

「あれれっ?ねぇ僕、外しちゃったよっ健太っ♪ もっと撃ってほしい?」

 へらへらしやがってお前、そんなに俺に命中しなかったのが、うれしいのかよ・・・!?

「ば、ばか言えよ、魁斗―――」

 俺は全然うれしくねぇ。おかげで思い切りお前の『黒弾』が俺の左肩を掠りやがったじゃねぇか・・・。

「これで、また形勢逆転かな? ははっこの拳銃はね、ほんとは張りぼてじゃないんだ♪ この銃の名前はね『氣導銃(きどうじゅう)』って言うんだ。射手の異能のアニムスを本来あるべき形で氣弾化して撃つ銃だよっははっ」

「―――・・・」

 魁斗の笑いは人をバカにしたり、見下すような嫌なものじゃなくて、ほんとに愉しいからつい笑ってしまう、ほんとに屈託のない笑みなんだ。ひょっとしてあいつの感情はあのときの夏キャンプから成長していないのかもな・・・。それとも魁斗をこんなふうにしたのは子どもだった魁斗を拾って育てた『イデアル』なのか・・・。

「この『氣導銃』はね、イニーフィネ皇国の魔法科学力と日之国の科学技術力の合作でね、健太っ。ん、でも高級品だし、あんま出回ってないんだぁ―――」

 そんな、高級品を。

「じゃあ、なんでお前はそんなものを持ってるんだ? ま、まさか、誰かを殺して奪ったのかッ!?」

「え? な、なに?ど、どうしたの、健太。なんでそんなに怒ってるの? ぼ、僕そんなきみを怒らせるようなことした?」

「あの『聖剣』みたいに、前の所有者をお前らが殺して奪ったのかって訊いてたんだよッ俺はッ!!」

「そんな大声出さないでよ、健太。そんな大声じゃなくても僕はちゃんと聴こえてるよ?」

「―――ッ」

「なんで、健太がそんなに怒ってるのか僕には分からないけど、この『氣導銃』はね―――あぁ、思い出すだけで―――」

 魁斗の顔が苦痛といった負の感情のものへと変わり、ころころと今度は一転、楽しそうな笑顔に。

「―――僕達の邪魔ばかりする『燃え滓(もえかす)』の連中から貰ったんだぁ♪ははっいい気味だよっ♪」

 やっぱり誰かから奪ったものなんだな。なぜだか、俺は魁斗からそう奪ったではなく、貰ったものと聞いたのに、俺は魁斗が誰かから奪ったものであるということを、直感的に悟った。異能を使ったわけではない。今の魁斗を見て知って分かったことだ。


「ははっ僕の奥の手はこの『氣導銃』でしたぁなんてねっ、ははっ♪ みんな油断するんだよねぇっははっ♪そこをバンってねっははっ♪」

 こいつへらへらしやがって・・・。貰ったんじゃなくて、どうせ誰かから奪った、んだろ?魁斗。人からものを奪ったり、盗むのは犯罪なんだよ。それを解ってんのか?魁斗こいつ・・・。

「『燃え滓』ってなんだか知らないけど、僕達の『理想』の邪魔ばかりするからさぁ、今度は僕達のほうから『燃え滓』に奇襲をかけてやろうってさ、導師(とう)さんが」

 ポーン、キャッチ。ポーン、キャッチ―――。

「・・・」

 魁斗はその『氣導銃』を楽しそうに、まるで手のひらサイズのボールをポーンと上へ放り投げ、またそれを左の手の平で掴む―――その動作を繰り返す。左手で『氣導銃』を弄んでいるのは、魁斗の右手は俺がさっき木刀で思い切り叩いたからだ、きっと。だって魁斗の右手は紫に鬱血(うっけつ)していて、魁斗は右手をだらりと下げているから。

 かくいう俺も魁斗に撃たれて『黒弾』が掠った左肩がじんじんとする。血とかは出ていないみたいだけど、俺の左肩は。

「ははっ―――♪思い出すよねぇ・・・」

 ポーン、キャッチ。ポーン、キャッチ―――。

「―――・・・」

 ひょっとして今なら魁斗からその『氣導銃』を奪えるんじゃあ・・・―――うえ゛・・・俺が魁斗から奪って自分の物したら・・・俺も魁斗と同じじゃねぇかよ―――えっと元の持ち主に返すことができればいいなぁ、ってことか。もし、魁斗から奪ったら・・・ううん取り返せれば、そうしよう。


「この『氣導銃』はそのときの戦利品さ。前持ってた奴の名前は知らないけど、銀髪の変な男だったよ。『燃え滓』の奴らはクロノス義兄さんも苦戦するような連中ばかりでさ―――」

 しょぼん・・・。そこで魁斗はキャッチを終わらせた。そして、魁斗は自身の視線を落とし、がっかりしょぼんといった感じで肩を落とした。

「っ・・・」

 チェッ、魁斗から『氣導銃』を奪うタイミングを逃したか。


「―――『燃え滓』ってみんなしつこかったし、みんな目をぎらぎらさせてて怖いしあいつら『燃え滓』って。―――だから戦利品を貰うだけ手一杯だったんだ。あ、ちなみ僕がまだ十五歳の頃ね。僕はまだ今より浅かったけど経験、クルシュ養母さんの口添えでクロノス義兄さん達についていけることになってさっ♪ まぁ、楽しかったからいいんだけどね。健太もし、きみが『イデアル』になれば僕がしっかりと教えてあげるねっ僕達『イデアル』の戦い方を、ね♪」

「―――」

 魁斗こいつまだそれを言うか。あれだけ俺が『イデアル』には入らないと言っているのに・・・。そして、俺には魁斗の話で少し気になることができた。その『燃え滓』って魁斗が言ったやつらのことだ。魁斗達が『苦戦した』?つまり、その『燃え滓』っていうやつらは『イデアル』のクロノス達と互角に渡り合ったってこと?

 無理かもしれないけれど、魁斗は俺に話してくれないかもしれないけど―――

「魁斗」

 ダメ元で訊いてみるか?魁斗に。

「ん?どうしたの、健太。ひょっとして『イデアル』に入りたくなったのかなっ♪」

「・・・・・・」

 いや、魁斗のそれは無視。

「『燃え滓』ってなんだ?人か?それとも何かの組織か? 普通の物が燃えた跡の燃えカスじゃないよな?」

「知らない。クルシュ養母さんが『燃え滓』『燃え滓』って言ってたの。ううん、詳しくは僕も知らないんだぁ。だけど―――あの陽動作戦のときは、・・・う~ん・・・なんか『眼鏡』かけた気持ち悪く笑う変な男とか、この『氣導銃』を取り返そうと死に物狂いの顔の『銀髪』の変な男と、アリサ義姉さんと互角に渡り合う雷みたいにビカって光る変な女。あとはクロノス義兄さんの攻撃が全然通らない『防御』する変な奴がいたかなっ? あのとき僕もうすっごくこわくってっ♪ う~ん、あのときは・・・ははっそうそう陽動作戦を行なう僕達とは別行動のクルシュ養母さん率いるラルグス義兄さんとロベリア義姉さんの部隊が『燃え滓』の建物を壊すだけ壊したよ、という報せがあったんだったかな? それを受けてクロノス義兄さんが『撤退だ』って、一目散に。僕はナナ義姉さんに抱えられて空飛んでさぁ。ははっあのみんなで逃げたときは愉しかったなぁ・・・ほんとにっははっ♪」

 ナナ義姉さん?空飛ぶってなんだよ―――。なんかの異能で空を飛ぶとか?か・・・。

「―――」

「ははっ『燃え滓』ざまぁみろってねっはははっ♪」

 魁斗は本当に愉しそうに昔の思い出を俺に語るんだ、俺が訊いていない情報まで―――ぺらぺらと。ひょっとしていけるか?この俺が今、頭で思い描いている作戦は(つい)えていなかったぜ―――、魁斗っ。 

「・・・」

 でも『燃え滓』?日之国三強のクロノスが苦戦して撤退するような人達かぁ・・・。ちょっと会ってみたいかも、いや、うん。でも魁斗が『変な』を連発するくらいのやつらか・・・かなり(くせ)がありそうかも。そしてついに、俺にそのときが―――

「隙ありッ魁斗―――ッ!!」

 バシッ!!

「ちょっ!? ひっどッ!!ひどくない健太っ!? 今僕、健太に思い出を話してるところだよねっ!?」

「・・・」

 魁斗が楽しそうに思い出に耽って、空を見上げているほうが悪い・・・と俺は木刀の鋩で魁斗の左手から例の『氣導銃』をはたき落した。

「いや、俺は悪くないな、魁斗」

 ざざっ。俺は素早く魁斗が落とした『氣導銃』を左手で拾って―――銃だな。やっぱり銃らしくずしりと重くて厚いものがある。

 おっと、『氣導銃』のことは今は置いておいて―――ずびしっ、俺は右手で握った木刀で魁斗を指す。っもちろん、柄を握る人差し指は立ててるぜ。

「剣術の試合で相手の籠手をはたくことは反則じゃないっ!!」

 どんッっと俺は正々堂々と魁斗に言ってやった!! 魁斗が持ち主から奪ったというこの『氣導銃』は俺が持ち主に会えれば、俺から返しておこう・・・。それが友として魁斗にしてやれる最後のことだ、と思う。俺は和装のふところの中に件の『氣導銃』を仕舞い込んだ。


「そう・・・健太はそんなことを言うんだ。僕もう怒ったよ、健太―――」

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