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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第五ノ巻
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第四十九話 『天王黒呪』。発動―――漆黒の射撃『翔黒黒氣鏃』

第四十九話 『天王黒呪』。発動―――漆黒の射撃『翔黒黒氣鏃(くろきやじり)


「待っ―――なんてね、健太っ♪」

 魁斗は自分が焦っているふりをして、俺が木刀を構えて魁斗に近づいた瞬間にペロッと舌を出してまたおどけて見せた。

「っつ」

 真剣勝負をふざけて、なめきっている奴に俺は―――。

「魁斗」

 すぅ―――、魁斗は肉薄する俺に『聖剣』を構える。その『聖剣』の構え方は今までの『斬る』という剣の構えじゃなくて、『刺す』もしくは『衝く』構えだ。

「健太。『剣を持つならもっと練習しておけ』? ううん、僕に剣技も格闘技も、そんなものは僕には必要ないよ、だって僕の『天王黒呪』は最強なんだもんっ♪この五世界で僕の異能『天王黒呪』に敵うやつなんて誰もいないもんっ。てへっ♪」

「・・・」

 このやろう―――っすっかり自分の強大な異能の力に溺れてやがる。

 黒い剣の(きっさき)は―――まるで本物の黒曜石の『(やじり)』のようで―――。まぁ、でも俺だってその本物の黒曜石の鏃は見たことない。ただ世界史の授業で使う資料集に載せられていた黒曜石の写真だけど。木刀を構えて迫る俺に対して魁斗はその黒く染まった笑みで、同じく真っ黒に染めた『聖剣』の柄を右手で握り、その尖端、鋩を俺に向けたんだよ。

「―――そうかよ」

「うん、そうだよっ健太っ僕の異能『天王黒呪』は最強無二の存在さっ!!」

 もういい。魁斗の相手をするだけで、言葉を返すだけで俺の気分が悪くなる。

「ねぇ、健太聞いてよ。そんな僕だけど、なんでかな?僕は『日之国三強』に入ってないんだよ・・・」

「そんなの知らねぇよ・・・」

 ぶぅぶぅ、そんな擬声語かな。魁斗の奴はそのように不満そうな顔だった。

「さぁ、おしゃべりはここで終わりだよ、健太っ」

 自分から喋ってきておいてなんだよ、それ。勝手に自己完結か、魁斗。すぅっ―――、そんな魁斗は、柄を握る右手の手首に左手をすぅっと持っていき、右手に添えるようにして左手で右手首を握り締める。

「―――見せてあげるよっ・・・僕の『天王黒呪』の七つの必殺技の一つっ!!避けられるものならっ避けてみなよっ健太っ、ははっ―――♪」

 ジジジジ、ジリ・・・ッ。魁斗が俺へと向ける漆黒の『聖剣』の黒い鋩に、小さな黒い稲妻のようなものが、まるでざわめくように漆黒の剣身から鋩へとそれが集束していく。黒い『聖剣』の漆黒の鋩は、・・・―――ジジジジ、ジリ・・・ッっと真黒(しんこく)(めい)なる(きら)めきを放ち―――

「『天王黒呪(てんおうこくじゅ)』―――『翔黒黒氣鏃(くろきやじり)』ッ!!」

 魁斗のアニムスで黒く染まった『聖剣』の鋩から冥なる煌めきと共に放たれる複数の真っ黒い鏃のような黒い氣の刃の群れ―――

「―――」

 でも、魁斗ごめんな―――、お前を喜ばしてやるのはできそうにないわ。だって、俺には全て、その黒い氣で形成された鏃の刃が視えるんだよ。なにからなにまで・・・。例えばその軌道、例えばその速度、威力、例えば着刃する場所。

 ある氣刃(きじん)は俺の行く手に関係ないもの、ある氣刃は俺の胸の辺りに、ある氣刃は俺の腹と右脚脛の辺りに―――。今の俺の眼にはその黒氣鏃はとても緩慢な動きに視え、軌道も予め視て、全て判っている。

 ふっ―――、先ずは初撃の黒い氣の鏃。そして二つ、三つ、俺は黒い氣の鏃を(かわ)し―――・・・

「―――」

「な、なんでっ!? なんで僕の『黒氣鏃』が一つも健太に当たらないのっ!? そんなっそんなことあるわけないよっ!?」

 お前は自分の異能をべらべら自慢するのが好きみたいだけど、俺はお前とは違うんだよ。つまり自分の異能って奥の手なんじゃないのか?

「・・・」

 黒い氣の鏃を―――避ける、躱す、(ひね)る。だから、俺はお前の『黒氣鏃』は全て難もなく避けられる・・・!!

「諦めろ、魁斗―――」

 ひゅんッ―――このままでは、俺の眉間に当たる魁斗の黒い鏃を俺は頭を右に逸らすことでその『黒氣鏃』を紙一重で避け―――、

 ひゅんッ―――次の『黒氣鏃』を今度は、上半身を捻るように右肩を前に、左肩を後ろにやることで、その『黒氣鏃』を避けた。

「ッ」

 次の『黒氣鏃』は胸骨の辺り―――次は少し厳しいな・・・。よし、俺は右手に構えたままの木刀を左から右へと、瞬時にパァンっとその『黒氣鏃』を薙ぎ払った。


「ッ!!」

 そこで、何かの驚愕(きょうがく)の事実に気が付いたかのように魁斗は、普段から丸い目を、その目をさらに驚いたように目を見開いた。

「ク、クロノス義兄さんと同じだっ!?同じだよっ今の健太の動きはっ!!」

「!!」

 俺がクロノスと同じ? そういえばクロノスのことをアイナやアターシャは『先見のクロノス』と言っていたような・・・。

「・・・僕の攻撃が先読みの先見の『先眼(せんがん)』で全て健太にお見通しだったなんて・・・っ、そんなの、そんなのってひどいよっ!!」

 『先眼』―――、

「・・・」

 俺の能力が『先眼』・・・? ほんとにそうか? 魁斗は俺の異能を『先眼』と言ったけれど、本当にそうか?なにか違う気がする。しっくりこない。じゃあ、『黒輪』のときは? 俺が魁斗の白装束の内ポケットに隠された拳銃を見つけた『透視眼』は? あのときの二つと今のこの『先眼』は感覚が違う気がする。・・・ってまぁそれはあとだ―――っつ。

「なんで幼馴染の僕に『異能』を教えてくれなかったのさっ健太っ。ほんとは僕のことをバカにして心の中で(わら)ってたんだねっほんとひどいよっ」

「・・・・・・」

 そうだ、魁斗は俺のこの異能を『クロノスと同じ』って思っている。魁斗こいつには『そう』思わせておけ―――

「そんなこと思ってねぇよ、魁斗。・・・俺だって今気づいたんだからさ、『クロノスと同じ』ってことに―――」

 間合いに入ったぞ、魁斗。お前のふところだ!!

「ちょっやめてよ、健太っ!! 幼馴染で親友の僕だよ・・・っ」

「それは知るかよ。お前も俺に『黒輪』とかさっきのとかやっただろ」

 魁斗お前は俺に思いっきり異能『天王黒呪』使ったじゃねぇか・・・。ほんと身勝手なやつだな、お前。

「木刀で殴るなら、あのアイナ=イニーフィナにしてよっあの生意気な女をぼこぼこに―――っ」

 ―――カチン。あぁもうやる、ぜってぇやってやる、魁斗の奴が『聖剣』を持てないようにしてやる・・・っ!!。

「小剱流抜刀式―――刃一閃ッ!!」

 こんな奴、『聖剣』を持つ資格ねぇよ。狙うは、あそこだ。あの『聖剣』を握り締める魁斗の右手だ。そこを潰すッ―――ばしッ!!

「ぎゃっ!!」

 魁斗の断末魔ほどでもないか・・・その魁斗の叫び声とほぼ同時に。カランカラン、っと魁斗の右手を離れた真っ黒い『聖剣』が地面に落ちて転がった。

「うぅっ僕の右手が・・・。痛いよ、ひどいよっ健太」

「その右手じゃしばらく剣を握れないだろ。俺の情けだ、おとなしくみんなを解呪してお前もう帰れ」

 俺は魁斗に向かって木刀の鋩を突きつけた。完全に俺の勝ちだ。きっと今度こそ誰が見てもそう言うに違いない。

「―――」

 にや、でも魁斗は不敵に笑う。

「よせよ、魁斗。今度こそ俺の勝ちだろ?お前は三度も俺に負けてるんだぞ?」

 ほんと往生際が悪い奴だ、魁斗。だが、もうさすがに年貢の納め時だ。

「っつ僕は―――!!」

 バッ―――!!

「ッ!!」

 魁斗は俺がその手から落とした『聖剣』には目もくれず飛び退き、―――っつ、俺は咄嗟に魁斗に突き付けた木刀で払おうとしたものの―――

「おっと・・・当たらないよっ健太。『先眼』を使ってなかったのかい? それとも使えなかったの? どっちにしても失敗だったねっ♪」

 こいつ、減らず口ばかり―――

「っつ、魁斗―――」

 ここまでここまでお前は往生際が悪いのかよっ。

「魁斗っ解呪していけッ。このまま、アイナに刻んだ『黒印』を解呪しなかったら、アイナやアターシャはどうなんだよッ!!」

「そんなの知ったこっちゃないし。それに僕はここで逃げないし、健太きみを諦めるつもりは毛頭ないよっ♪」

 ごそごそ、と魁斗は黒く染まった白装束の胸の辺りから左手をふところの中に入れ―――

「っつ」

 銃口を俺に向けて魁斗が取り出したのは、俺が『透視眼』で見抜いたあの拳銃―――。

「これなんだと思う、健太?」

 ほんとは『張りぼて』のわけがない。

「『拳銃』の『張りぼて』だろ?そう言ったよな、お前」

 もう幼馴染だった魁斗は信じられるところが微塵もない。だから俺も『張りぼて』とあえて魁斗に言ったんだよ。

 すぅ―――眼を細めて俺が視たい物を、視たいところを視ようと意識するだけで俺の眼は『透視眼』になったんだ。普通の拳銃なら、弾倉が収まるべき場所―――だけど、この魁斗が持つ拳銃にはその弾倉がない。

「―――・・・」

 俺の視線は銃把(じゅうひ/グリップ)を握る魁斗の左手、左の手の手指を越え―――その、俺がまるでハンマーだな、とかつて思ったその金属部分に到達―――

「その眼をやめてよ、健太。こわいよ、僕―――まるで僕の心を見透かすような怖い眼はやめてよっ、ねぇっ健太っ!!」

「っつ」

 ・・・なっ!!こ、これは―――!! 縦横無尽に―――縦に横に、これは交差し、銃身へと集束していくような線で。ううん、視える!!縦横無尽に見えて、ほんとはなにかの通り道のように整然としていて、まるで水の通り道の水路ように整備されている。

「!!」

 そっか、回路だ。これは回路だ。そんな何かが通る整然たる道のような回路が、あの金属の銃把の中にある―――。手の平に触れる表面に近いところは多くの細かい回路が角々と直角に曲がりながら、まるで手の平全体を感じやすいようにしてある。もう少し深いところにいくと、まるで山々に振った雨水が谷筋へと集まっていくように、表面では多かった回路が徐々に集まって太くなって集束されていく構造になっている。そして、銃把の中心部では全ての回路が一本の太い回路になり、それは銃把から銃身へ・・・ん?複雑な変換器?のような部分を、射手の『氣』が通過することで―――

「ねぇってば!!その怖い『眼』をやめてよっ健太っ・・・お願いっ!!」

 なッ!!この回路を流れる(くろ)は―――!?

「ッ!!」

 キュイイイィ―――、なにかが集束するような電子音のような音―――

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