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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第五ノ巻
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第四十二話 『天王黒呪』。発動―――漆黒の印呪『黒印』

第四十二話 『天王黒呪』。発動―――漆黒の印呪『黒印』


「ははっ、いいことを教えてあげるね、健太♪ ははっほんといい気味だよ、ざまぁみろってね、ははっ♪」

 魁斗―――!! 『ほんとにいい気味』、だと・・・?俺は魁斗の本当に愉しそうな声を聴き、ゆっくりと魁斗に振り返った。

「ッ・・・!!」

 こいつッこんなときにへらへらしやがって!! なにか、なぜだか判らないけど、でもなにかの原因でアイナがこんなにも苦しんでるっていうのに。こんなときにへらへらと愉しそうに笑いやがって・・・ッなにがそんなに楽しいんだよ、魁斗の奴ッ!!

「彼女達が寒がっているのはね、そのなんて言ったらいいのかな・・・う~ん・・・浸透する僕のアニムスの効果なんだよね♪ 僕の黒いアニムスが対象の心身に浸透するとさ、あれなんだっ」

「ッ」

 なっ魁斗の奴なにを言って―――、あの黒い漆黒のアニムスを心身に浸透させるって!?

「僕が浸透させる相手が僕の、―――健太も見たでしょ?あの僕の黒いアニムス―――、僕の黒いアニムスの侵食に抵抗する場合みんなそうなるんだよっ♪ ぶるぶるとね、っははっ!!」

 つまり、あれか?あの魁斗の、黒い水みたいなアニムスがアイナとアターシャを今まさに侵食しているってことなのか!?

「でも、大抵の人はすぐに侵食されて寒さも終わるから、ははっ健太も安心してよねっ」

「!!」

 な、なんてことしやがるッこのやろうッ!! アイナは俺の『彼女』で、アターシャだってそのアイナの大切な人だ。

「―――ッ」

 魁斗の言う安心なんてできるわけないだろッ。つまりそれは、寒さがなくなるということは、全身をあの魁斗の黒いアニムスに侵食されたってことだろッつまりはッ!!


 う、うそだ・・・っ。そ、そんな―――

「え―――」

 嘘だと言ってくれアイナっ!! 抱き締めるアイナの身体からぶるぶると震える感覚がなくなったんだよッ!!

「う、嘘だ・・・っ」

 さっきまであんなにも寒いと言って震えていたのに・・・!! あんなにも寒がり俺の腕の中で、ふるふると震えていたのに―――今のアイナからは震えを感じないんだ―――、ううん、震えを感じなくなったといったほうがいいのかもしれないっ。

「お、おい・・・アイナ・・・?」

「んくっ」

 アイナは一度、片目をつぶって苦しそうにしたあと、だらりと身体の力が抜いた。ううん、きっと力が抜けたんだ。

「健太見てみてよ、アイナ=イニーフィナの右手の甲をさ♪」

 魁斗ッ

「―――ッ」

 アイナの右手の甲だと? 癪だ。ほんとに癪に障るけど、魁斗の問いかけに答えるようで嫌だけど、俺は魁斗の言うとおりアイナのその意思の力を感じさせない右腕を取ったんだ。え―――、アイナの右腕を取り、すぐに俺の眼に飛び込んできたのは―――

 ズ―――っ。アイナの右手の甲に黒い何かが浮かび上がって!?

「!!」

 な、なんだこれは? なんだ、この変な形をした黒い紋章は? いったいどうやってアイナの手の甲に浮かび出た!? そのアイナの手の甲にある黒い紋章の意匠は、あの魁斗の黒い水のようなアニムスが地面にぽたっと落ちたときに一瞬地面に浮かび上がったあの、変な魔法陣のような意匠にとてもよく似ていた・・・。

「ケンタ様―――私の右手はどうでありましょうか?」

 眼は、視線だけは動かせても、そっかアターシャきみもバカ魁斗のせいで身体が動かせないんだな・・・。

「―――・・・頸、首元・・・に」

 一目見て、アターシャに浮かび上がった魁斗の紋章がどこにあるかが、俺には見て取れたんだ。アターシャの黒い紋章は首元から頤にかけてのアターシャから見て左側に、その魁斗の黒い紋章が浮かび上がっていたんだ。

「・・・そうですか、ありがとうございますケンタ様。私は身体が動かせませんので、ケンタ様にアイナ様をお任せしてもよろしいですか?」

 そんな淡々とアターシャってば。自分のことよりアイナのことのほうが大切なんだな・・・。もっとアターシャには自分自身を大事にしてほしい。―――すこし、ほんとに少しだけ俺はそれが悲しい・・・。

「―――(こくっ)」

 俺は肯いた。

「彼女達にその印を刻んだのは僕さ、健太。僕の異能『天王黒呪』の技の一つだよ、それ」

「―――」

 お前の異能『天王黒呪』の技の一つ? そもそもお前、自分のことを無能力者って言ってたよな?俺に。

「―――あれは嘘だったのかよ・・・」

 ぽつり。俺は視線を下げた。俺は魁斗にそれさえも騙されていたんだ。生ける屍の件もそうだったけど。

「え?なに健太。よく聞こえないよ? それとも僕の仲間になってくれるってぇ?」

「っ」

 いちいち言い方が俺の(かん)に障ってくれる・・・っ。

「っつ。だから、お前あのとき俺が超能力を見せてくれって言ったとき、自分は無能力者だから無理なんだって言ったよな?俺に・・・!!」

「あ~ぁ・・・あれかい?楽しかったね、久しぶりの火(おこ)しっ♪」

「っ、・・・俺は、あのときお前が言ったことは嘘だったのかって訊いてんだよ・・・!!」

「嘘も方便ってやつかな」

 このやろう・・・。

「なぁ元に戻してくれよ、なぁ魁斗―――」

 ぽつり。

「二人を、アイナとアターシャを元に戻してくれよ、頼むよ、魁斗」

「やだよ♪そんなのっ。それより、彼女達に行使した僕の異能の力を知りたいでしょ?健太っははっ」

 へらへらっしやがってこいつ―――!! 俺にはまるで自分の能力は強大だと、そう魁斗は自慢しているように聞こえる。

「ん~、僕の異能はね―――えっと、いいのかな?言ってもいい?健太。きみにだけ特別に僕の異能を教えてあげてもいいんだよ?」

「―――」

 あのとき、互いに焚火で暖を取っているときに、俺はお前の異能を知りたいと言ったのに、あの場で魁斗ははっきりと答えることなく自身の言葉を濁した。なのになんで今はそんなにぺらぺらと言いたがるんだ? そんなに自分の異能の力を誇示し、俺に自慢したのか、魁斗お前は。


「うん、もう話してあげるね。それは、彼女達に刻まれたものは、僕の異能『天王黒呪』が持つ七つの技の一つでねっ。その名を『黒印(こくいん)』というんだっ」

「っつ」

 『天王黒呪』とか『黒印』とか俺は、魁斗お前の異能の力なんて知ったこっちゃないっ。お前が自慢げに話す『天王黒呪』とかどうでもいいからさ。

「他人を意のままに縛る異能。意思を奪う、なんてまるで天の王『天王』みたいでしょ、僕?ねぇ健太きみが『イデアル』になればさ。健太が気に入った好きな人を僕が捕らえてあげるよ。健太はその人達を自分の意のままにあんなことやこんなこともできるんだよ♪? だから僕と一緒に『イデアル』に入ろうよ?」

「―――」

 ぐちゃぐちゃうるせぇ・・・―――

「ね、健太。健太がどうしてもこのアイナ=イニーフィナとツキヤマ=アターシャ?アターシャ=ツキヤマ?まぁどっちでもいいか―――」

「二人の意思を返してくれよ、なぁ魁斗」

 ぽつり。

「僕は今の導師と違って狭量じゃないよ。健太がさ、その二人とどうしても一緒がいいって言うんならさ、僕も次期導師として三人一緒に『イデアル』加わることを認めてあげてもいいよ♪」

 ッ

「ぐちゃぐちゃうるせぇぞッ魁斗ッ!! さっさとアイナとアターシャを元に戻せって言ってんだよッ!!」

「やだよってへっ♪」

 ―――ッ。お前・・・!!

「―――!!」

「そうだねぇ、健太。きみが僕達の仲間になるって言うんなら考えてあげてもいいかなっ?♪」

「魁斗」

 ・・・信じられるのか、今の魁斗を。

「うん♪いいよ」

 にこっ。あんな屈託のない笑顔―――、いや、待て。

「っつ」

 嘘だ、絶対に嘘の笑みだ。あの街での起きた出来事。自分は無能力者と言ったくせに、ほんとはこんな『天王黒呪』とかいうやばいまるで呪いのような異能を持っていた魁斗―――だから、俺は魁斗の言葉を信用できない―――。

「い、いけません・・・ケンタ・・・」

「アイナっ、しゃ、喋って大丈夫なのか!?」

 そんなに苦しそうな顔してっ!! 本当に搾り出すかのような小さな、でも苦しそうな小声でアイナは口を動かした。

「彼の・・・カイトという者の言うことは・・・し、信じられませんし、私の所為で・・・貴方が『イデアル』に・・・なるというのも・・・」

 アイナっそんなにも身体をふるふると苦しそうにさせて・・・!!

「アイナっ」

「は、い。私は・・・彼の、カイトなる者の言うことは・・・信用できません・・・」

「そっか。そうだよな・・・俺も魁斗は信用できないよ」

「っ」

 アイナすぐに俺がなんとかしてやるからなっ。アイナは俺の、魁斗は信用できない、という言葉に納得したように、ふっとうすく笑みをこぼしたんだ、でも脂汗をかいてほんとに苦しそうに。ふつふつ、と怒りが、怒りが込み上げるぜ・・・―――!!

「ッツ」

 魁斗お前の所為で、お前がアイナを苦しめてんだッ―――俺は魁斗にまっすぐ視線を戻した。

「だが、断る。俺が仲間になるって言ってもお前がアイナ達を見逃すとは思えないし―――」

 ―――なによりも俺がお前達『イデアル』に入りたくないからだ。アイナも俺が『イデアル』に入ることは望んではいないからな。

「―――・・・・・・」

 でも、ここまで魁斗に言うわけにはいかない・・・。交渉の余地なしってされたら、真っ先に、身の危険が及ぶのはアイナとアターシャの二人だ。ここはぐっと、断腸の思いで溢れだしそうな怒りを堪えてぇ゛・・・!!

「疑り深いなぁ、健太は。僕は信用されていないんだね、健太きみに」

 どの口が言ってんだッそれ、全部お前自身の所為だよ。

「・・・」

「あいにくと今回は僕に選択権はない。健太、僕は『イデアル』の次期導師として君に新たなる選択権を与えよう」

「っ」

 ほんとに、『選択権を与えよう』なんて魁斗お前はどれだけ上から目線なんだよっ。魁斗の奴、絶対に無理難題を言ってくるに違いない。例えば、アイナ達を解放する代わりに俺に『イデアル』入れ・・・はさっき言ってたか。えっと、じゃあなんだ・・・―――?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 好書!好劇情! [気になる点] 優秀 [一言] 來自中文的愛!也希望你來看看我的日文作品!
2023/08/24 13:37 退会済み
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