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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第三十ノ巻
369/460

第三百六十九話 攻略 虚霧ノ郷

ゴゴゴゴゴゴ―――


 大地の剱氣の烈しい黄金色のマナ光。その輝きの中より、現れ出でる―――、


“―――”

 現われ出でる―――、俺がその『大地の剱魔法』にて行使し、この世に顕現させた魔礫の剱兵。

 俺とアネモネの『大地の剱』より、力の息吹を、そのマナを、その魔力を、地物に吹き込んだその地物の産物だ。

“―――”

 物は言わぬが、俺の意志を反映し、思い通りに動く、動いてくれる―――。


第三百六十九話 攻略 虚霧ノ郷


 俺の意志を反映し、そのように俺が自在に操る、操ることのできるまるで傀儡の石人形。

“―――”

 俺の目の前と背に、俺を挟んで前後に、そんな二体の巨躯の魔礫の剱兵を大地の剱魔法で顕現させる。


 俺の描いたその姿かたちは、頭部はちゃんとあるものの、その表情は窺えない。なぜなら、本当にまるで守護騎士のようなイメージを以って俺がそう頭の中で描いたからだ。


 聖なる神殿を護衛する神官騎士か守護者の石像のようなイメージを俺が持ったせいで、『剱魔兵』は、頭からすっぽりと、まるで金属のバケツのような形の兜を被っている。


 身の丈は十尺にして『剱魔兵』。二体のその上半身は、膨らんだ魔礫の胸板であり、両の石腕は野太く、その両手は、まるで騎士の手甲のような外観と質感である。


「、、、っ」

 ぎゅっ、っと、俺はこの右手に持つ『大地の剱』を握り締めた。


 すると―――、


“、、、っ”

 同じ得物が、同じ形状のもので、俺と同じ動作を行なう。つまり『剱魔兵』その右手には、俺がこの右手に持つ『大地の剱』の複製物の一振りが握られている。

 ただし、その大きさは、今のこの『剱魔兵』の大きさに釣り合うほどの、大剱のようになった『大地の剱』だ。


 『剱魔兵』の下半身は、上半身と違って肥大化しておらず、だが、足はしっかりとこの神雷の嶽の大地を踏み締めており、その総重量はいくらくらいだろう?少なくとも鉄道の車両一両分ほどの重さはあるかもしれない。


「『大地の剱魔兵』―――、」



「なんだそれはッ!?」

 目の前の『虚霧ノ郷』の内より日下修孝が叫ぶ。



(・・・あいつ、、、日下修孝・・・)

 日下修孝の驚いたような声。やはり、日下修孝(あいつ)は、あの『虚霧』の中から、こちらを俺の動きを窺い知ることができるんだな。


 驚きついでにもう一つ日下修孝を驚かしてやる。日下修孝が、その自身の口で、

“現実ではまだ言っていない剣技のその名”を。

「―――、“秘刀番い燕、背水斬疾”。俺のこの『剱魔兵』の前にその剣技敗れたりッ!!」

(動けっ『剱魔兵』!! まずは、目の前のお前のだっ。俺の前方にいるやつは『剱魔兵A』。俺の背後にいるやつは『剱魔兵B』だ。)

 俺は己の意志を伝え、前後に臨戦態勢を取らせる。『剱魔兵A』と『剱魔兵B』動け、と自分の意志を伝えたッ。

(『A』お前は、前からの日下修孝の『水燕』を斬り返せッ!!)

(『B』お前は、背後の『背水斬疾』の『水燕』だッ!!)


“―――”

“―――”

 キィィィ―――、っと、二体の『剱魔兵』の、その金属のバケツをひっくり返したような兜を被ったような形の頭部の、二つの瞳が黄金色の大地のマナ光の眼光を灯す。


 それは、その『剱魔兵』のマナの眼光は“俺の意志”を反映した証だ。


 ダッ、ダッ、っと、すぐに『剱魔兵A』も『剱魔兵B』も同時に動く・・・!!


 『剱魔兵』達は、その右手に持つオリジナルの俺の『大地の剱』を模して、複製された『剱魔兵の大地の剱』を振りかざして、眼前と背後より飛来し迫りくる日下修孝の水氣の斬撃『水燕』を、迎え撃って斬り返すべく―――、


 そして、一瞬ののち、そのときが訪れた。体感では長く感じたが、実際の時間は、僅か数秒間の出来事だ。


 ギンッツ

 水刃の水燕を。

“―――ッツ”

 『大地の剱魔兵A』は、俺の前に立って、日下修孝とのその距離。日下修孝との距離は、本当に目と鼻の先だ。日下修孝の『虚霧ノ郷』から凡そ数メートルばかり開いたその中間地点にて、鋭い『水燕』の水氣の斬撃を、俺の氣が通ったその『複製された剱魔兵の大地の剱』で受け―――、


 ガンッツ

 背水斬疾の水燕を。

“―――ッツ”

 『大地の剱魔兵B』は、俺に背を向け、つまり俺は『B』に、この背中に預けるように背中合わせになっている。背後より飛来する日下修孝の『背水斬疾』の死角より、背中をざっくり斬り裂きに来る『水燕』の水氣の斬撃を、その『複製された剱魔兵の大地の剱』で打ち払う。



「なにッ!? ―――、」

 日下修孝の驚いたような声。『虚霧ノ郷』の中から聴こえた。

「―――、なんだ・・・?! その木偶人形は、小剱健太っ・・・!!」



木偶(でく)とはひでぇな、日下修孝―――、」

 こんなにも、いや、これから役に立ってくれるというのに、『大地の剱魔兵』は。さて、俺は取りあえず、、、

「―――、お前では俺の『大地の剱魔兵』は斬れない。だから、俺は日下修孝お前と十二分に戦える」



「俺と戦えるだと?大きく出たな、小剱。やってみろ、その木偶人形を使って」



「いいぜっ、日下修孝―――、」

 日下修孝には、今すぐに俺が“自信満々に大地の剱魔兵を操り戦う”、と思わせておかなければっ!!

「―――、そういうお前(くさか)のほうこそ、その『日下流霧雨抜刀術』で、俺の『大地の剱魔兵』を切れるものなら切り崩してみやがれッ・・・!!」

 俺は向こうの、目の前に煙霧のように拡がり、視線を遮る『虚霧ノ郷』に、その中に向かって声を張り上げ、声高々に、さも自信満々というような態度で、その声色で。

(引っかかれよ、、、日下修孝)

 俺は、真の目的は他にあることを隠して自信満々を装い演じ、その態度で日下修孝に叫んだんだ。



「いいだろう、小剱。あとで吠え面を搔くなよ」

 キンッ

 チャ―――、



(構えやがった霧雨を、日下修孝の奴。俺の演技力に引っ掛かったか?)

 俺の視線が通らないほどの深い『虚霧ノ郷』の向こう、濃霧の中から、その太刀『霧雨』を鞘に納めた鎺の綺麗な音色。

 腰を落とし、左手は鞘に、右手をその柄に添えるであろう動作の衣ずれの音。日下修孝がその得物日之太刀『霧雨』を改めて納刀し、抜刀術を構えた、その音がこの虚霧の中から聴こえてきた。

「・・・、、、っ」

 日下修孝は『日下流霧雨抜刀術』の抜き手の体勢に構えた、ということだ。俺のこの眼でも、もはやその濃霧の中まではもう視通せないけどな・・・。



「日下流霧雨抜刀術、秘刀―――」



(()ってあと、、、そうだな、俺の籠めた氣の練度と濃度から逆算して持って後、二時間半ってとこかな、『大地の剱魔兵』の耐久性は)

「日下修孝。ちまちま前と背後から斬り削いでくる『背水斬疾』なんかより、撃ってこいよ。お前の“秘刀―――霧雨水燕、斬次遥”だっけか、お前の最高の霧雨抜刀術で」

「っつ!!」

 驚きに息を呑んだ日下修孝の声なき声。そんな息を呑む声が俺に聴こえてきた。

「俺にはもう“斬次遥”は視得たんだよ、日下修孝」

「、、、なるほど、小剱お前はその『眼』で」

「あぁ、俺には『視得た』」


 日下修孝と会話をしながら俺は今、全く違うことを考えている。さっき、俺の『選眼』の一つ『先眼』で、お前と戦う俺の僅かな未来を未来視したとき、俺はこいつに敗れた。それもこっちの完璧な敗死。


 その結果、俺は、日下修孝のことを、一筋縄でいく相手ではないということを理解したんだ、認識したんだ。

 たとえ、苦労の末に日下修孝を倒せることができたとしても、その代償には多くの時間と、たくさんの氣を消費しなければならないはずだ。

(っ、それじゃダメだ・・・、遅い)

 『魔餓尽基』に呑まれたアネモネを救い出し、黯黒魔女ロベリアと不死身のラルグスと戦っているアイナとアターシャにも加勢したい。

 その次だ、お前は日下修孝。

(だから、俺にはお前と悠長に戦っている時間なんてねぇんだよっ日下修孝!!)

 どうやったら上手く、俺は日下修孝を出し抜けるかを考えていた!! 日下修孝が、その『霧雨』を媒介にして発生・行使させたのが、この目の前の深い霧『虚霧ノ郷』というのであれば、羽坂さんから聞いた『妖刀』の類の話から詮索するに、想像するに、

 妖刀『霧雨』の所有者である日下修孝は、この発生させた妖異現象を行使し続けたければ、その妖異現象たる『虚霧ノ郷』の場所から―――、


 “動くことができない”


 、―――はずだ。


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