第三百六十五話 『魔礫砂漣の五―――。魔巖転装―――。全て悉く廻転せよ・・・っ『魔礫牆六角充填。小剱殲式魔礫牆廻輪尖射』
パァッ―――
砂氣を纏った『大地の剱』が黄金色の光の輝きを放つ。
すると、その魔力の高まりに呼応して、俺の目の前に、日下修孝の『霧雨』の虚霧との隔たりのように展開させてある『魔礫牆』も励起するように、黄金色の大地属性のマナの光を放った。
黄金色の光る大地属性の氣の靄は、眼前の『魔礫牆』へ至り、纏わりつき、『魔礫牆』は黄金色のマナに包まれ光り輝く!!
第三百六十五話 『魔礫砂漣の五―――。魔巖転装―――。全て悉く廻転せよ・・・っ『魔礫牆六角充填。小剱殲式魔礫牆廻輪尖射』
魔法の重ね掛けで付与したこの黄金色の氣の靄こそ、俺が新たなる『大地の魔法』を産み出す源動力となるっ!!
(やってやらぁ―――ッ日下修孝!!)
いくぞ―――『大地の剱』!! 俺は、この手の平に馴染む『大地の剱』を掲げ、虚空に振り翳す―――っ!!
ぱぁッ―――、っと『大地の剱』は、キラキラあまねく照らす黄金のマナ光を輝かせ―――、俺は詠う。
「『魔礫砂漣の五―――。魔巖転装―――。全て悉く廻転せよ・・・っ『魔礫牆六角充填』!!」
既に俺と日下修孝との間に展開させてある『魔礫牆六角充填』。六角形の魔礫の石板その一つ一つが―――、
ギュギュギュギュギュギュッ、
ギュルギュルギュルギュルギュルギュル――――ッッツ
―――、煌めく大地のマナの火花を散らしながら、激しく廻転する・・・!!
一つ一つが六角形の『魔岩牆』を“縦横上下斜め”に重ね合わせ、空間に充填させた『魔礫牆六角充填』。
それら、一つ一つの六角形が、歯車のように、車輪戦輪の如く、時計回りに烈しく廻転していく。
俺がこの『魔礫牆』に自身のアニムスを添加し、それを廻転させていく。
いくぜ・・・―――っ、日下修孝―――喰らいやがれッツ
「小剱殲式『魔礫牆廻輪尖射』・・・ッツ!!」
ザ―――っ、っとまるで兜割りを行なうべく虚空に、上段に振り上げていた魔法剣『大地の剱』を、ずあッ、っと。
その真の力が解放され、砂氣が取り纏いてまるで、大剣のようになった魔法剣『大地の剱』を、俺は、目の前の濃い虚霧の中に居る奴日下修孝目掛けて勢いよく斬り降ろす・・・ッツ!!
魔礫尖の被弾目標は、俺の眼の前。日下修孝が、その日之太刀、、、いや妖刀『霧雨』を用いて造り出した濃霧『虚霧ノ郷』の中。その中に籠る彼奴日下修孝。
氣を帯びた魔礫鏃を、機銃掃射のように、もしくは多連装鉢巣砲のような、石剣のその鋩を、刃を虚霧の中に隠れている日下修孝目掛けて今まさに、数多撃ち込む。
『魔礫牆廻輪尖射』―――砂氣を帯びた魔礫の尖刃の斉射。それはいわば、石鏃の一斉射撃だ、それも鉢巣砲のような状態の。
常人では到底避けられず躱すことすらできない一斉射撃。
(死角などないぞ、日下修孝)
「さぁ、どうする?日下修孝っ。霧の中から出てくる以外はな!!」
「 」
しーん、っと。なしの礫の日下修孝。あいつからの反応はなにもなかった。
「・・・ッ」
お前が、その霧の中『虚霧ノ郷』より出てこないというのなら・・・ッ
魔礫牆の幾百と重なり合う六角形の魔礫の石板で構成された魔岩牆が廻転することによる魔石鏃一斉射撃。
そのシステムはガトリング砲の射撃。
「避けられるというのなら、防ぐことができるというのなら、やってみやがれっ日下修孝ッツ!!」
ギュギュギュギュギュギュッ、
ギュルギュルギュルッ――――ッ
烈しい石板の廻転―――ッ
ガガガガガガガガガガガッ
散らす火花。まるで連続のフリントストーンの如く。
眼前の空間いっぱいに充填させた六角形の魔礫の板が廻転することにより、そのセラミックにも似た魔礫の六角の板の角が擦れ、削れ、マナの火花を散らす。
だが、その六角形の魔礫の板の角が、潰れた六角ねじのようになることはない。なぜならば、俺が恒に自身の氣を糧に、『大地の剱魔法』を行使し、削れた六角の角を修復しているからだ。
ダダダダダダダダダダッ―――
ダダダダダダダダダダッ―――ッツ
連射連射連射。
蜂巣砲。機銃掃射。回転するガトリングの如く六角形の魔礫の牆板は廻転する・・・!!
魔礫砂漣の五―――。魔巖転装―――小剱殲式『魔礫牆廻輪尖射』
これが俺の奥儀の一つ。俺の持つ『大地の剱魔法』の奥の手の一つだ。
「―――・・・ッツ」
どうだ、日下修孝・・・ッツ
ダダダダダダダダダダッ―――ッツ
連射連射連射。
魔弾と化した魔礫の鏃の一斉射撃。
みるみるうちに弾幕が拡がっていく。日下修孝が、たとえ、その『水楯』を張ったとしても、俺の『魔礫牆廻輪尖射』は、日下修孝のそれを打ち破る自信はある。
やったか?
「・・・」
そろそろ、止めるか。
キン―――、と。俺は、大地の剱を鞘に納め、、、そうすることで、『魔礫牆廻輪尖射』を解呪。『大地の剱魔法』を解いた。
ガガガ―――、、、ガガ―――、ガキンッ、ガチャ―――・・・。
魔礫の六角形の牆は、その廻転を徐々に弱め、、、―――、やがて、石でできた堅固な扉に鍵を掛けるかのように、その歯車の魔礫板は、その廻転を止め、停止―――・・・。
たとえ、日下修孝が粉みじんになっていたとしても、、、俺はこの『慈眼』で奴を回復させてやる―――。
「日下修孝?」
俺は奴の名を呼んで、彼奴に呼びかけた。
「 」
だが、日下修孝からの返答はない。
訪れる静寂。石の欠片一つ落ちない。
シーン・・・―――
日下修孝は、いったいどうなった?
「?」
キン、パキン―――っ、っと。
俺は、魔礫牆自体を解呪。
ざりっ、っと、その魔礫の跡の砂を踏んで一歩進み出た。だが、俺の眼前は、一寸先は闇というべき、相も変らぬ霧の世界『虚霧ノ郷』が、ただ広がっているだけだ。
あの、俺の『魔礫牆廻輪尖射』の石鏃の一斉射撃を受けて日下修孝は本当に粉微塵に?
「、、、」
そんな、まさかな、、、。俺は日下修孝を、殺してしまったのか・・・?それも粉みじんに。まさか、な。
嫌な汗が俺の背中を伝うのを我慢し、その気持ちに蓋をしてまた一歩、進み出た。
きっと、ひょっとしたら日下修孝は、この虚霧の中で、、、まだその手に『霧雨』を携えて構えていて―――。
でも、先ほどよりもずっと、日下修孝の造り出した霧が深くなりすぎていて、俺のこの『選眼』でも、それはもうまるで霞がかかったようにして視得辛く。
「日下、、、っ」
いや僅かに、、、影のように、深い霧の中、僅かに明るいシルエットのようにして、日下修孝の姿が。
その長大な太刀『霧雨』を右手に持ったまま、だらんと下段にその得物を下げている。力なくただただ日之太刀『霧雨』を辛うじて握っているというわけではなく―――、
ざり―――、っと。突如、脚を地面で擦らす音。
ギョッと、した、正直!!
「ッ!!」
その足音は俺のものじゃない。その足音は日下修孝のものとしか考えられず、、、。
無傷?ノーダメージ?
「、、、っつ」
(嘘だろ?そんなわけあるかよ・・・。いったいどうなってやがる?!)
俺のあの『魔礫牆廻輪尖射』が、通じていない。日下修孝は、一編の欠片も被弾していない、のか・・・? 嘘だろ・・・?
女神フィーネから見せられたあのとき、あいつ日下修孝は、アネモネの大地の魔法魔礫砂漣の三『魔砲・魔礫弾』の連射を受けて、『水楯』で防ぐのもやっとだったんだぞ?
そんな俺の『魔礫牆廻輪尖射』は、アネモネが開眼させてくれた俺の、今俺が使える『大地の剱魔法』の最高難度で、最も攻撃力の高い『大地の剱魔法』の一つだぞ?
「、、、、、、」
たとえば、日下修孝が小銃の単発の銃弾を、その生身で防ぐのは、まだ“解る”。奴自身の『先眼』を行使して、銃弾の軌道を瞬時に悟り、それを避けたり、剣の達人なら銃弾をその刀で打ち払ったり。
でも、今俺が撃ったのは、蜂巣砲だぞ?銃身六筒六発セットのリボルバーのような単発ではなく、回転するガトリング砲のように、数多の銃弾、、、ではなく石鏃の雨霰。
それも、氣が通った魔礫の石鏃の打撃群だ。それも、六角充填なのだから、合計、俺が撃った魔礫の石鏃は、展開させている魔岩牆を組み合わせた十枚の魔礫の牆。
一度の廻転で、六十発の石鏃。魔礫の板が数十枚。一度廻転で打つ石鏃の総数は、千発以上だぞ?
「っつ」
千発に達する一斉射撃は、全て『虚霧ノ郷』を弾幕で覆うような射撃だった。この目の前の『虚霧ノ郷』の中、どこへ逃げても到底避けることはできないはずの斉射なのに。
俺は、魔礫牆を百廻転以上させて、『魔礫牆廻輪尖射』を行使したはずだ。合計その石鏃の弾射数は、数千・数万発以上に成っているはずなのに!!
「―――ッ」
い、いったい、どうなってやがる!?日下修孝・・・!!なんでお前は無傷なんだ?!