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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第三十ノ巻
363/460

第三百六十三話 岩をも切り割く水の滴。是即ち霧雨の極意なり―――、霧雨を揮えば、岩も、悪鬼も断ち切る、水燕の水薙ぎ

(いったいこいつは、どんだけの修羅場を、死線を越えてきたんだろう・・・)

 そう言えば、―――前にあの廃砦で日下修孝を一目見た、アイナが言っていたっけ、クロノス、、、今となって判っているそいつの名は、この男の本名は日下修孝。俺の目の前の、その濃霧の中に潜んでいるその男。


 アイナとアターシャは、日下修孝は日之国三強の一人、剣士『先見のクロノス』である、と―――。

 俺はあのときのアイナとのやり取りを思いだし―――、


第三百六十三話 岩をも切り割く水の滴。是即ち霧雨の極意なり―――、霧雨を揮えば、岩も、悪鬼も断ち切る、水燕の水薙ぎ


///


『は、はい、ケンタ。あのクロノスという者はこの五世界では知る人ぞ知る日之国の中でも最も強いと云われている一人です』

『ケンタ様、あの者は日之国三強の一人―――剣士『先見のクロノス』と呼ばれている者です』


『最も強い一人ッ!?』

 ―――う、うそだろ・・・!?


『ケンタ様これを―――』


 え?アターシャってば、なんだろう・・・?


 アターシャはその給仕服の中からどこからともなく取り出したタブレットのような通信端末を、はいっという具合で、その液晶画面を俺が見えるように向けた。

『えっとそれは?』

 ひょい、っと俺はそのアターシャから給仕服から取り出したタブレットの液晶画面を見た。


『ケンタ様、この端末は日之国の警備局の幹部隊員が用いる通信機と同型のものでございます』


『え?』

 日之国の警備局・・・?幹部隊員?が用いる通信機って・・・俺から見れば日本では普通の、普通にあるタブレットとよく似てる・・・。

『・・・!!』

 すると―――、そこに写真付きでクロノスという男の簡易プロフィールと犯罪歴なるものが記されていた。あ、れ?クロノスの写真が若い?あれって学校の制服を着ていないか?うん、そうだ、そうだよ。このクロノスのいくつかの写真はどれも若くて、しかも、学生証に使う写真と、在学中に撮られた写真ばっかり・・・たぶん。

『・・・』

 しかも、クロノスの名は偽名ということまで。本名のほうはいたって普通で―――日本人つまりこの世界では日之民と同じものだ。


 そして、特記事項に『先見のクロノス』『北西戦争の生き残り』『重犯罪者』『日之国三強の一人』の文言―――


 廃砦で初めて会ったときのクロノス。―――あのときクロノスの剣氣のようなものを感じて・・・俺はすでに解っていたことだけど。


 俺は顔上げて、アターシャが右手に持つタブレットから視線を外して今度は交互にアイナとアターシャの顔に視線を送る。

『日之国三強・・・って、言うぐらいだから・・・めちゃくちゃ強いんだよな、あいつ!?』


『はいケンタ。私の知っている限り、日之国政府は過去幾度かクロノスの元に日之国軍特殊暗殺部隊や刺客を送り込み、また手練れの賞金稼ぎなども差し向けましたが、誰一人として生きて帰ってきた者はいません。いずれの部隊もクロノス一人の前に全滅しています』


///


 と、アイナが前に・・・。

 納得だ、この霧の中に、いやこの『霧雨』の『虚霧』を展開させて、己の領域化し、日下修孝は押し寄せる物量を諸共せず。


 こ、こういうことか、、、。日下修孝の奴は―――。

「、、、」

 日下修孝が“降りかかる火の粉を払う”とき、きっと、さっき俺に放ってきた『日下流霧雨抜刀術』で、日之国軍の暗殺部隊を、餌食にしてきたんだろう。


 きっとそれは『一方的な』狩りだ。


「・・・流石は、『日之国三強の一角』ってか、なぁ日下修孝、、、いや『先見のクロノス』だったか―――?」


「   」


 またしても、俺の言葉に返答はしてくれず、俺は無しの礫。霧雨が造り出した虚霧の中にいる日下修孝からの返答はなかった。



 それにしても、この日下修孝の水氣の斬撃の、、、威力―――。こんなのまともに喰らったら、生身に喰らったら、首と胴は生き別れの確実に致命傷―――ッツ


 しかも、こいつの『水刃』と『水燕』の見た目の違いはほとんどないのに、、、なんなんだこいつの『霧雨水燕』のこの威力の大きさ、、、・・・―――っつ

 俺の『魔岩牆』を、、、ほぼ真っ二つにする、なんて・・・!!


 ぽとぽと・・・、、、


 俺の大地の剱魔法『魔岩牆』に刻まれた、それを切り割いた一筋。その切り口から、斬撃に際に迸った水が真下に流れて、、、ぽとぽと・・・、、、っと、地に落ちて、神雷の台地の土に吸われていく。


 こいつ―――、、、日下修孝。

「―――、、、」

 日下修孝が俺へと放った水氣の斬撃『霧雨水燕』は、俺が咄嗟に目の前に展開した『魔岩牆』を、ほぼ切り裂いたんだ。

 いや、ううん、、切り裂いた、、、というよりは、高圧水流の斬撃に自身の氣を絡めコーティングし、強化した水氣の斬撃『霧雨水燕』が、俺の『魔岩牆』を、ほぼ切り割ったというのが、一番正しいのかもしれない。



 キン―――、、、刀を鞘に納めた音。鎺の音。

 もちろんその小気味のいい音は、俺の『大地の剱』の鞘に納めた音ではない。



(っ、日之太刀『霧雨』を鞘に戻しやがった!!次の手だ!! 次の斬撃が来るっ!!)

「っ」

 それは、『霧雨』の虚霧の内に籠る日下修孝が、次の斬撃をいつでも放てるぞ、という合図に他らない!!



「岩をも切り割く水の滴。是即ち霧雨の極意なり―――、霧雨を揮えば、岩も、悪鬼も断ち切る、水燕の水薙ぎ」



「―――、っつ」

 しかも辞世の句のように、また一句詠んだ。、余裕だな、こいつ・・・っつ



「日下流霧雨抜刀術―――、」



 日下修孝の抜刀術を繰り出す口上・・・!! 次の斬撃が来る!!またしても、あの威力の、刀の刃のような水氣の斬撃『霧雨水燕』!!

「っつ・・・!!」

 早い!! あいつもう次の抜刀術を放つぞ!! 少しは俺に考える時間を寄越せよ、日下修孝っ!!


 静寂なる霧の中。あいつはそれを『虚霧ノ郷』と言ったか。


 『虚霧ノ郷』の内に籠る日下修孝の姿は、常人には杳々(ようよう)として見えず、ただ霧が拡がり続けているだけだ。

 この俺の『選眼』でも、うまく視得ないほど、あいつの霧が深くなってきている。


 あいつ、、、ひょっとしてこれ、この深い霧、というか虚霧。それは、あいつの、ひょっとした心の闇に関連しているのかもしれない。


 先ほどよりもさらに霧が深くなっていて、まるで一寸先は闇。白い霧の闇。虚霧。


 少しでも日下修孝よりも先手を取るべく、、、。

 右手に持つ大地の剱を眼前に、右手をめいいっぱい伸ばし、だが、肩の位置は身体と同じくして伸ばさず、まるで正拳突きの構えを取る。

(いいだろう!!日下修孝―――、お前のそんな斬撃なんて完璧に弾いてやるよ―――、、、)

 さらさらさら、、、っと、大地の剱より砂漠の砂が風に流される如く、刀身より砂氣が舞う。

 次の大地の剱魔法の行使だ!!

「、、、『魔礫牆六角充填』」


カカカカカカカ―――ッツ


 積み上がる六角形の岩板。それは、俺の眼前に、日下修孝と俺の間に広がる空間の間を別つ魔礫の楯。


 目の前を覆うほどに、六角形の魔礫の楯を充填させていく。


 魔礫牆(まれきしょう)六角充填。

 先ほどの、ラルグスの氣刃投射に対抗して行使した『魔礫牆』が、全面の広い被弾に特化した防御魔法であるなら、魔礫牆六角充填は、狭い範囲に、凡そ対人攻撃に絞った防御魔法だろう。


 基本形である六角形をした『魔岩牆』の魔礫の板を、数枚前後左右に張り合わせて、重ね合わせ、俺の視点の前に展開したまるで結晶のような形をした“魔礫の楯”だ。


 あいつ日下修孝の霧雨の斬撃はいつ来る?

「―――、、、っつ」

 もはや、、、俺のこの『眼』でも、視得辛く、、、あの霧杳の中、『虚霧ノ郷』のその内―――、日下修孝の、心の闇というべき、妖刀霧雨の、虚霧の世界に成っていて。


 つまり、日之太刀『霧雨』の異界化しているんじゃないのか?ようするに幽世(かくりよ)だ。 あの霧雨の古刀具合、、、アレは、ほとんど妖刀と化している代物なのかもしれない。


 そうだ、俺がそうと確信するのは、日之国警備局の羽坂さんが言っていた、、、。

『健太は刀が好きなの?』

 って、警備局の『蔵』には、そんなヤバい妖刀の類の刀剣が複数眠っていると―――。

『『妖刀-零零五号』、って言うの。それは絶対零度まで下がる冷氣の刀で―――、』

 俺に対して口を滑らせた羽坂さんに慌てて一之瀬さんが、

『奈留さんっ警備局の守秘義務ですよ!?』

 、って―――。

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