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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第三十ノ巻
361/460

第三百六十一話 征くぞ。美夜妃なるかな『霧雨』よ

ビリビリビリ―――ッ


 大地の剱と霧雨が、その鋼色の刃が。

 俺の剱氣と、日下修孝の剱氣が。

 俺の『大地の剱』の大地の氣。日下修孝の『霧雨』の水の氣。


「「―――ッツ・・・!!」」

 それら反目する俺達の意志が、剣を通じてぶつかり合う・・・!!


第三百六十一話 征くぞ。美夜妃なるかな『霧雨』よ


「―――日下ッ!!」

 日下修孝―――!!

 俺は『大地の剱』を、擦れ違い様に斬り上げ、


 かたや、俺と相対する、

 日下修孝は、袈裟懸け斬りにその『霧雨』を振り下ろし、

「、、、・・・小剱ッ」

 日下修孝は俺の名を呼ぶ。



ギャリンッ―――ッツ!!



 俺達は互いの得物を揮い、斬り合い、鎬を削り、刀剣で語り合うんだ。


 俺と日下修孝。再び、どちらが言うことはなく、


「ッ!!」

「ッ!!」

 俺達は互いの得物をその手に帯びて、再び斬りかかり、斬り結ぶ・・・!!



チュイーンッ―――ッツ


 往なし、鋼の刃の一閃を潜り―――。


 がら空き!!

「ッ」

 しめた・・・!! その右脇腹を貰うぞっ日下修孝!!

「疾・・・ッ」


「なにっ!?―――そうは喰わんぞ小剱ッツ」

 だが、日下修孝の奴も、俺の身体の動きと、考えを読み、



「「ッツ!!」」

 俺達は再び、斜交いに斬り結ぶ。



ギャリンッツ



「―――、、、ッツ」

 厳しいその眼差しで、俺の名を呼んだ背が高い日下修孝は、俺を睨むように、やや見下ろしている。


 俺の目の前―――・・・

「―――・・・」

 斜交いに交差する刃の向こうで、日下修孝は・・・、俺の目を鋭いその視線で、じぃっと見詰め、彼奴日下修孝は、なにを思っているんだろう?

 ただ一つ解ることは、

「ッツ」

「っ」

 刃を交えるこいつ日下修孝は、俺を本気で斬り殺すつもりなんだろうって、ことぐらいだ。


 俺だってここに来るまでにその覚悟は、自分ではない他の誰かをこの『大地の剱』で斬り、傷つけるという覚悟はできている。


 斬り結び、互いの、俺の『大地の剱』と日下修孝の『霧雨』―――。


ググ、、、ギギギギ―――

ジジジ、、、っ

ビリビリビリ―――ッ


 俺と日下修孝は、互いの剱氣と、互いの鋼色の刃を交えて互いに圧し合う・・・!!


 瞬殺される、だろう。長大な太刀である霧雨と長々と勝負を続けていても、打ち刀より短い剱身である『大地の剱』だ、俺のほうがジリ貧になっていき不利になるだけ。


 いや、本当は、俺にだって奥の手はあるが、つまり俺の奥の手とは砂氣を纏い真の力を解放した『大地の剱』は大剣のようにはなる。だが、、、そうなった場合俺は日下修孝を、その胴体を軽く真っ二つに、生き別れにしてしまうかもしれない、、、。


 だが、それは、もしそうなっても詮無いことだ、塚本さんとの約束は守れない。それに、日下修孝も、未だにまだ自身の奥の手を、その力を温存しているはずだ。

 それはいい。

 今は勝負に集中しよう。


 彼奴が『霧雨』の力を解放した戦いに、戦法を変える前に―――、

「―――っ」

 ―――、日下修孝の隙を突いて、一瞬で勝負を決めてやる・・・!!


 先ずは、好機を作る。そして、長大な日之太刀を掻い潜って、こいつの得物『霧雨』の間合いの中。日下修孝の懐に飛び込んだところで―――。

 さて、どうやって好機を作るか、日下修孝に作らせるか。

 こいつのことだ、自分にとって不利となるような隙は中々作らないんだろうけれど・・・。

「・・・」

 その先、どうやって、この長大な日之太刀『霧雨』を振り抜かせ、こいつの懐に飛び込むか、だ。

 うん、っと俺は心の中で肯いた。



「逸るのはいいが、まずは俺の話を聞け、小剱―――、」


 よく言う、そっちから俺に斬りつけてきたというのに。

「、、、なんだと?」

 俺は俺の名を呼んだ日下修孝の眼を見た。


「―――、今からでも遅くはない、導師はお前を欲している」


 導師が俺を欲している、か。そう言っていたか、、、女神フィーネから見せられた念話の映像の中でも、導師は俺のことを。

 誰が、『イデアル』に成るだって?

「はぁ?」

「俺としても『転移者』たるお前が、『イデアル』となれば、俺の中の、先ほど俺が言った“憂い”は消える。悪辣な皇女たるアイナ=イニーフィナとはすっぱりと手を切り、『イデアル』に成れ、小剱」


 誰がアイナを手放すだって?あんないい女を。それにアイナは悪辣な性格じゃねぇし。

 ふざけんな―――、

「断固断る!!『イデアル』になれ、だと?ふざけんな日下修孝・・・―――ッ」

 斬り結ぶ霧雨のその鋼色の刃を、力を籠めてその刀身を、俺の『大地の剱』で圧し上げ跳ね上げる―――ッ


 ギャリンッ


「、、、っつ」

 おっと!!

 と、言う具合で、

 ―――タンっ、タッタっ・・・!! 日下修孝は、後ろへ、それはもう綺麗な無駄のない足捌きで、俺の間合い中から遠ざかる。


 ブン―――、っと、、、俺はというと。

 日下修孝の霧雨を跳ね上げた勢いのまま、斬り結んでいた大地の剱を力尽くで振り抜いた。だが、俺が切り裂いたのは空気。


 当然そこにはもう日下修孝はいないわけで、俺の目の前。目の前と言っても、日下修孝が、俺の大地の剱の間合いの中にはおらず、その数歩先にて佇んでいた。

 その表情は、楽しそうものではなく、また、激情に流されたような怒りの表情でもなく、だが僅かに、憂いを含んだ哀しい表情で。

 つまり、その長大な霧雨を右手に持ったままの日下修孝は、ほぼ無表情なのだ。だが、その眼は、鋭く狼のような眼差しで俺を見ていた。



「・・・、

霧雨や 

みやびなるかな 

泪悔の 

みずもしたたる 

きみとゆくみち

、・・・」


 チャ、、、―――、っと日下修孝は、一句。刀を改めて握り直した。


「・・・っ」

 日下修孝の奴、また一句詠みやがった。


「征くぞ、小剱。―――、美夜妃なるかな『霧雨』よ」

 ―――、キン。

 鎺の小気味のいい納刀の音色。

 日下修孝は、長大で、また反りのある刀身をもつ霧雨を淀ませることなく、休ませることはなく、その優雅な所作で、腰の羽黒色の鞘に納めた。


 次の手だ。日下修孝は二の手を俺に打ってくる。

 日下流霧雨抜刀術のっ!!

「!!」

 くる・・・!! ついに日下修孝は、自身の日下流の抜刀術に、霧雨の能力をも使っての・・・!!

「―――、・・・っ!!」

 これは、、、日下修孝自身の氣を纏った高圧水流の斬撃・・・!!

 俺はこの『眼』を眇めて奴の先手を読んだ。

 日下修孝は、俺の間合いの外より俺に斬撃を放ち、俺を斬るつもりだっ。それも、水氣の飛ぶ斬撃!!


 俺の『大地の剱』を揮う間合いの外に出でて佇む―――、

「―――」

 ―――、日下修孝は、無言で、じぃっと俺の目を見詰めて。


 ザ―――、

 半歩、左脚を前へ―――、

「美夜妃なるかな霧雨よ、日下流霧雨抜刀術、濛氣霧杳―――虚霧ノ郷。雨に救われるは郷の者、霧に掬われるは外の鬼」

 ―――口上を述べた。


 チャ―――っ、っと、その狼のような鋭い眼光の日下修孝は、己の流派の抜刀術の構えを取る。

 鞘を握る左手、その左腕を締めてその脇腹に添え、右手は順手をその霧雨の柄に添える。


 もわもわもわ―――

 濛々と―――、


 霧雨から、日下修孝が握ったその日之太刀より霧が、まるで湯煙のような白い濃霧が立ち昇り、立ち込める、、、。

 それはもう、日下修孝の姿が霧に煙るほど。霧雨は日下修孝の氣を糧とし、水氣を含んだ凄まじいほどの水蒸気量だ。 


「・・・!!」

 視得た。あの雲霧の中で、日下修孝は己の得物である日之太刀『霧雨』を構えて、、、。


 今こそ・・・俺は小剱を斬るッツ

 、という日下修孝の剣氣を、俺自身は日下修孝を視て、俺は自身の心では感じたんだよ。

「・・・っつ」

 つまり、こいつ日下修孝は、俺の間合いの外から、遠方から水氣を通わせたその長大な刃渡りの太刀『霧雨』で、その水氣の斬撃を飛ばし、それで俺を斬ろうとしているんだ。



 そっちがその気ならいいだろう。だったら俺だって―――、この異能での勝負に乗ってやる!!

 霧、雨・・・水か、、。そうか―――。

「水もしたたるいい男ってか?日下修孝」


「  」


 俺の言葉に、濃霧の中にいて、霧に煙る日下修孝はなにも答えず、返答は(よう)としてなかった。

 日下修孝に無視されたのが、気に障ったんじゃない。

「・・・」

 時間はねぇんだ、日下修孝―――。お前の斬撃が、その力貯めが、お前も、俺の祖父ちゃんと同じで相当の使い手。こいつは抜刀術を極め尽くしてやがる。

 俺はこの『眼』で、お前の水氣の中まで見透せるんだぜ? 氣を高め、精神を、神経を極限まで高め、集中して、この俺を、この気配を、動きを読んで、こいつは俺に向かって、その霧雨から放つ水氣の斬撃を放つ絶好の好機を視てやがる、、、。

「  」

 力みに日下修孝はその両腕を、両肩を、上半身をふるふると揮わせて。

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