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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第三十ノ巻
355/460

第三百五十五話 理想主義者皇国近衛騎士団団長、現る

「―――っ」

 ドウっ、バシャアッツっと、俺は地面に背中から特に肩胛骨辺りから一気に地面に落ち、、、クレーターを造る隕石のように、俺とサーニャは高速で地面に激突。

 だが、俺が直前に行使した『魔砂の抱擁』によって、俺達は事無きを得た。

「ふぅ、、、―――・・・、」

 俺が着地した地点は、その行使後、マナを失いただの厚い砂地と化した魔砂。ぎゅっ、っと、俺は左手に力を籠めてその場に立ち上がる。


第三百五十五話 理想主義者皇国近衛騎士団団長、現る


 パンパンっ、っと、俺は砂を落とすために皇衣のズボンを手で払い、、、

「、、、」

 この大地の魔法『魔砂の抱擁』を行使すると、じゃりじゃりの全身砂だらけになるのが玉に瑕だよな。

 靴の中も、じゃりじゃりの砂だらけ。靴の中は、まるで砂丘の上を走ったり、登ったりしたときと同じような砂だらけの状態になってしまう。

 つまり靴の中は、落ちた衝撃と、砂丘と化した場所を歩くことで、靴の中に入りこんできた砂で砂だらけになっていた。


 俺は視線をすぐ脇に向ける。

「―――」

 俺の脇には、ほぼ同じ時に、俺と共に墜落したサーニャの姿があった。

 ま、彼女の場合は、自ら試す者の背中から飛び降りたんだがな。


 俺は、視線を向けるサーニャに向かって口を開く。

「―――・・・、無事か?サーニャ?」

 サーニャの行動はあまりに無謀だ。もし、俺が『魔砂の抱擁』を行使していなかったら―――、あ、いや、サーニャには、あの『皇剣の輝鞭』を使えるほどのアニムスがあるのか。それだったら、地面に氣の塊をぶつけて、無事無傷で生還できるのかもしれないな。

「ハっ、ケンタ殿のおかげで。 っ、、っ、」

 、、っ、っ―――、じゃりじゃり、ちくちく。かな?今の、ちょっとその感覚を我慢しているようなサーニャの顔は。



 サーニャは、その白銀の鎧を手で叩い砂を落としたりするような行動をせず、その鞘に納めた聖剣パラサングの鋩を地面に向けて剣を立て、その棒柄に軽く右手を置いた。

「―――、っ、、・・・、―――」

 サーニャのその碧眼の双眸が見上げる。その綺麗な湖のような眼が、その仰望の視線が見詰める先には、神雷の嶽に建つ女神フィーネの聖なる神殿。



「サーニャ」

 俺の呼び声に、サーニャは、俺に振り向いた。

「はッ、ケンタ殿・・・、っつ」

「俺に気を遣うことはないぞ?遠慮なく鎧を脱いで服の中に入った砂を払ってくれ。じゃりじゃりちくちくするだろ?」

「し、しかしケンタ殿、、、」

 こういう時のサーニャは、絶対に、例えば俺やアイナがそう命じても遠慮をしてしまうような性格の人。

 だが、もう付き合って長い。俺はもうサーニャの“誘い方”“扱い方”を覚えた。

「いや、砂を取り万全な状態でアイナの為に闘え、サンドレッタ」

「、っ。ハッ、ケンタ殿・・・!!」

 サーニャは、俺の言葉にハッとして。シュラ、と、その手に持った聖剣パラサングを腰に差した。



 いそいそ、っ、がちゃがちゃぱちんっ、サーニャは。その自身が身に付ける白銀の鎧を脱ぎ、その胸当ても外す。

 そこに立て掛けるように鞘に納めた『聖剣』を置く。

「~~~♪」

 サーニャは、気分よさそうに。その鎖帷子も脱ぎ、鎖帷子を両手で持ち、干した毛布をはたくのと同じように、ぱんぱんっ、、っと。


 よっぽど、服に入り込んだ砂が不快だったんだな。

「、、、」


 へぇ、あの白銀の鎧の下に着ている服ってあんな感じの服になっているのか、、、。服というよりは、下着に近いかもしれない。暗色の、意外とサーニャの身体にフィットするような感じのインナーだ。

 凹凸のはっきりした、出る所から出て引っ込むところが引っ込んだ体型のサーニャ。いや、あのフィットする下着の所為で、ますますそのように魅力的に見えるのか。

 じぃ、、、。

 そういえば、、、以前サーニャに『縛り眼』を掛けたことがあったな。あのときもスタイルが良かったよな、サーニャのやつ。

 アイナやアターシャとはまた違うスタイルの良さだ。


「・・・♪」

 銀色の布のような鎖帷子を着て、サーニャは。今度は、脚甲を外して、その金属の鎧靴も脱ぎ、中に紛れた砂を払い落とす。



 そうこう俺が観ているうちにサーニャは。もうサーニャの脱衣と、砂のお掃除時間は終わり―――、

「、、、」

 まったくもって俺は、待たされたなんて思ってはいない、さ。


「お待たせしました、ケンタ殿」

「おう・・・っサーニャ」

 そこには、俺の目の前には、元の完全武装の白銀の鎧姿に戻った聖騎士サンドレッタの騎士姿があった。

「目指すは、―――」

 アイナ達のことも、アネモネのことも心配だが、―――。

 俺は目的の場所に顔を向けた。


 俺達の目の前には―――、尾根伝いに登った場所は、やや開けており、そこには、女神フィーネの、天雷山の頂に鎮座する神雷の嶽に建つ聖なるの雷基理の神殿。

「―――」

 女神の聖なる結界に護られた神殿の中に、雷基理が収められている。魔餓尽基が、女神の聖なるアニムスの結界を吸い尽くす前に、俺は『雷基理』を取る・・・!!


 だが―――、


 ザッ、ザリ―――っ、っと、現れる、、、いや、俺達を待っていた存在というべきか。その者が、無言で俺達のほうへと歩んでくる。

 その正体は水の剣技で、俺を地上に流し落とした者だ。

「―――・・・」



 魁斗と一緒に逃げた廃砦で見たときと一分一厘違わないその容姿。その服装。

「―――久しいな、小剱健太」

 暗色のモノクロに近い色をした長ズボンに、上の服装も下衣に合わせるような深い色合いだ。また、裾の長い羽織るような上着は、その下に着込んでいるくすんだ紺色の服を外に見せていた。

 この日下修孝の着ている上衣も下衣も丈夫そうな布生地で作られているように俺の目には見える。


 それから、あのときのお前は、俺にその自身の得物日之太刀と言って『霧雨』を披露してきたな。

「『先見のクロノス』いや、日下修孝、、、」

 この場に現れた日下修孝は、その表情をぴくりとも変えていない。あの廃砦で会ったときと同じく、ぴりっ、とする風貌のイケメンの男だ。長身で、年の頃は二十代後半から三十代を思わせるその日下修孝の容貌だ。


「見違えたぞ、小剱。魔法剣を遣い熟し相当、腕を上げようだな。俺はお前が一瞬誰か分からなかった、、、ふっ」

 ふっ、っと、その口角に甘い笑みをこぼし、日下修孝がここで俺に初めて表情を崩す。

 

「そいつどうも、、、」

 俺は、お前にそう言われても、あまりそうは思わないがな。俺はまだまだだ。


「さて、俺はすぐにでもお前を斬り伏せていいのだが、―――」

 日下修孝は、その腰に差した太刀『霧雨』には指一本触れず、その両の腕、両の拳は、体側で軽く握って添えている。

 本当に、“今の日下修孝は”戦意はないようだ。


 だが、俺としては、すぐにでも、こいつと。さっさと片を付けて、雷基理を取ってアネモネを助け出してから、そして、アイナとアターシャのところへ向かいたい。

「いつでもこいよ、日下修孝」

「ほう。俺の名をお前に教えたのは、野添碓水か、それとも、近角信吾か、あるいは塚本勝勇か―――、まぁ、俺にはそのようなことはどうでもいいが。逸るな少し待て小剱―――、」

 ??逸るな少し待て、、、だと?

「はぁ?」

 話をしたいのか、こいつは俺と?

「―――、累年の想いを、その昔年の面影を見て、積年の想いを告げたい者が一名いる」

「・・・?」

 積年の思いを告げたい者? 俺にか? まったくもって俺にはそんな人物に心当たりはないし、日下修孝の真意が分からない。


 ひょっとして、時間稼ぎか?日下修孝の奴。そんな悠長なことを、俺には時間はないし、早くアネモネと、アイナも。

 俺は日下お前と話をするために、問答をするためにここまで来たんじゃない。お前を降して警備局に引き渡し、俺は雷基理を取る。そこから先だってやらないといけないことがたくさんある。

 だが。そうだ―――、

「―――・・・」

 一寸の光陰軽んずべからず―――、俺が子どもの頃。祖父ちゃんは俺にそう教えてくれた。



 ざり、

 一歩、

「!!」

 新手だ!!

 硬そうな靴の音。一瞬で気づく。たぶん、この主は。だが俺は、靴の音を聞いただけでその者が誰だか、すぐに予想がついた。

 なるほど、日下修孝が言ったのは、彼奴のことか。

「っつ」

 予想的中!! その者の一歩目だけの遠景で俺は気がついた。神殿のほうから、その参道を降り、歩いてくる者。さっきは彼奴の姿なんて全く認められなかったのに。



 ざりっ、ざッ―――、

 二歩っ、三歩ッ―――、数歩―――。


 その者は、俺の前で一礼。彼は右手を自身の胸に当て、俺に頭を下げた。イニーフィネ皇国の近衛騎士団長の白銀の鎧に身を包む者。

「お久しゅう御座います、ケンタ殿下」

「あんたは・・・グランディフェル、、、っつ」

 ハッとして、

 ちらり、っと。俺はすぐ、俺のすぐ脇に立っていた者を見る。その者とは、サーニャ。グランディフェルはサーニャの父親。

 数年振りか十数年ぶりかの父娘との再会。

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