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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第三十ノ巻
353/460

第三百五十三話 理想主義者十二傳道師先見の剣士、現る

 ―――、ラルグスのミサイルのような氣の投槍は、ぐんぐんと俺達に迫って来る。輝けるアニムスの光の尾を引き、ラルグスの地対空ミサイルのような氣槍は―――。


 かなり疾い・・・ッツ!!


 明らかに残った俺達目がけて放たれたアニムスの投槍は、試す者を射殺すような発射軌道をもって。


第三百五十三話 理想主義者十二傳道師先見の剣士、現る


 くっ、凄い闘氣(アニムス)の密度だ・・・!!

 やばい・・・ッツ!!

「ッツ―――!!」

 あんな鋭い鋩の氣槍に試す者が貫かれたらッ!! 試す者であったとしても、ただではすまない・・・ッ!!


 ラルグスは、ただのお調子者や端武者ではなく、本物の強者だ。あのラルグスの(アニムス)を、光輝く氣槍を、この“眼”で視透す限り、鋭くかなり濃密な氣のエネルギー弾だ。

 おそらく、以前に視た、廃砦を一瞬で瓦礫に変えた魁斗の『黒輪』よりも、威力は上かもしれねぇ・・・!!


 キュオ―――ッ

 ラルグスの頭上で、ラルグスより溢れた光り輝く闘氣は“投槍”の形状に集束し、

「喰らいやがれッ俺様の―――、『氣槍 Psӯcho hasta』っ!!」

 ―――、氣が投槍の形に具現化され、ラルグスは額に当てていた右手・右腕を薙ぐ。それと同時に、その腕の動きに同調するかのように、空に浮かぶ試す者ひいては俺達に向かって発射された氣槍。



「避けられるかッ?試す者!!」

“くるるっ!!”

 自信を持っているような、試す者のその鳴き声。俺はその試す者の嘶きに安堵―――。


「―――っつ」

 ロベリアに攫われたアイナとアターシャのことは心配だが―――、大丈夫。・・・のはずだ。アターシャの異能もアイナの真の異能も俺は知っている。

 きっと二人彼女らアイナとアターシャの強さは、力は、ロベリアの黯黒魔法よりも上のはず。上を行っているはずだ。


 アイナとアターシャのことも当然心配。でも、それと同時に、まだ試す者の背に乗っているサーニャや一之瀬さん、羽坂さんのことも心配なんだよ、俺は。

「ッツ」

 彼女達は必ず護る!!


 ラルグスの地対空ミサイルのようなあいつの技『氣槍』―――。着弾すれば、絶対ただでは済まされない。

「、いや、やっぱり―――、」

 試す者だけでは、不安だ。試す者ばかりに頼っていてもいけない。もし、あのラルグスの『氣槍』に、自動追尾のような機能があったとしたら?

 試す者が避けても避けても、Uターンして戻ってきて、試す者に着弾なんてしたら・・・―――。


 脳裏に過る一抹の不安―――。


 俺がいろんなことを考えていたその間に、氣槍は目と鼻の先まで迫っていた。試す者は回避行動を取るはずだ。この位置で滞空したまま、氣槍に貫かれることは絶対しないはず。

 今にも試す者は、氣槍の回避行動を取るはず!!

 きゅっ、っと、試す者はその皮膜の双翼を折り畳み。

「大きく揺れるぞッしっかり掴まれ―――っ!!」

 俺は、それとほぼ同時に彼女達みんなに聴こえるように大声で叫んだ。


 ガクン―――ッ、ふわっ、っと、身体が急降下する感覚。

「ぐ・・・ッ」

「く、、、ッ」

「わ・・・っ!!」

「ッツ―――!!」

 俺も、サーニャも、羽坂さんも、一之瀬さんも。


 くっ、身体が宙に浮く・・・!! まるでジェットコースターが急降下する感覚、、、いや、ううん、もっとひどい浮遊感だ!!まるで落ちていく様。

 いや違うか、まるで、じゃなくて落ちていくんだ!!

 振り落とされないように、本当に落ちないように―――、

「ッツ」

 ―――、つ、角のを―――!!

 俺は、大地の剱の柄を持つ手と反対の左手を、試す者の後ろ向きに生えた角に伸ばして、試す者の角を、ぎゅっ、っと左手で掴んだ。


 み、みんなは、彼女達―――、サーニャ、一之瀬さん、羽坂さんは、大丈夫か?無事か?

 なんとか。急降下するその浮遊感の中で、首を後ろに回せば―――、


「な、奈留さん―――っこれを、ザイルをカラビナに、、、」

「うんっ。春歌」


 一之瀬さんは、その警備隊の荷物にザイルを持ってきていたようで、それを自身の警備服のベルトにつけた金属のカラビナに結んでおり、羽坂さんにもザイルを渡そうとしていた。

 試す者から誰かが落ちないようにするためか。


 そして、ハッと

「っ」

 一之瀬さんのそんな必死な顔の眼と、俺は視線が合った。

「け、健太殿下も―――、」

 一之瀬さんは、もう一方のザイルの端を俺に渡そうと。

「―――」

 せっかくの一之瀬さんの厚意を無駄するのもなぁ、、、っと、俺は―――、でも、左手は試す者の角に、右手は大地の剱の柄を持ったままだ。


 ふわ―――、くんっ、と、そのとき。


 試す者はその体勢を立て直したのか、身体にかかる浮遊感が消失し、今度は背に負荷が急にかかった。

 急降下から、今度は上昇か。

「・・・」

 試す者は、ラルグスの氣槍をうまく躱すことができたのだろうか? 俺は状況を探るために、一之瀬さんからいったん視線を切り、顔を向け―――、


 おっ。ラルグスの光るミサイルのような動きをする氣槍は、遥か前に、真っ直ぐに飛んで―――、

 違う。断じて違う!!


「い゛ぃ・・・!?」

 な、なんだと!? あいつラルグスの奴はこんな芸当もできるのか!?

 本当に、ただの、ラルグスはただのバカでも、お調子者でもなく、真に強者だ!!


 クンっ、、、っと、氣槍はその先で、まるで自動追尾の攻撃ミサイルのように軌道を変えた。先端から、その鋩から曲がって軌道を変え、今度は真っ直ぐに試す者の頭めがけるように、真っ直ぐにその氣で光る鋭い鋩を向ける。


 ザッ、っと―――、

「私が撃ち落とす―――ッ!!」

 サーニャが試す者の、その青黒い鱗の背に立つ。


 サーニャは、その自身の氣で黄金色に輝く聖剣パラサングを、まるで兜割りを行なうような剣で構えた。

「はぁああああああああッ」

 そして、聖剣パラサングを勢いよく振り下ろし―――、


 ドウ・・・ッツ



 その直後だ。サーニャの黄金色に輝く氣の斬撃が、方向転換したラルグスの氣槍と、真っ正面からぶつかり合う!!


 ギャリン―――ッツ


 ゴゴゴゴゴゴ、、、



「やったかッ!?」

 サーニャの氣の斬撃とラルグスの氣槍。互いに迎撃し合い相殺。


 すぅ―――、っと。


 そのアニムスの弾幕のような煙霧が晴れると、ラルグスの氣槍は、その形状を失い霧散するように氣に戻っていったようだ。

 もちろんサーニャの黄金色に輝く氣も、相殺したことでその斬撃の姿形を失っている。



「やりました、ケンタ殿」

「あぁ、サーニャ」

 俺は答えながら、試す者の背から眼下を見下ろせば、遠ざかり小さくなっていくラルグス。ラルグスは、悔しそうに地団太を踏んでいる。


 そして、一方でみるみるうちに眼前の頂が大きくなって、


 既に、―――、あと少しで、天雷の嶽に厳かに鎮座する神雷の神殿に着く。

「ふっ―――、」

 確かに、攫われたアイナとアターシャのことは、必ず助ける、と思いつつも、この順調な運びに思わず笑みが漏れる。

「―――、さっさと雷基理を取って、あとはアイナ達を、アネモネを助けるだけだ・・・っ!!」

「ハっ、ケンタ殿・・・!!」


 ばさばさばさばさ―――、っと、先ほどまでの鋭い動きとは違い試す者は、柔らかいその翼の動きで、降下の動きに、着地の飛行姿勢に移っていく。



 地表に人影。そして、その人物は口を開き―――、

「だが、小剱。お前のその謀は、そのように上手く運ぶことはないだろう」


 この声は、この落ち着いた、それでいて鋭い声の持ち主は―――、

「ッ!!」

 ―――、先見のクロノス、、、いや日下修孝―――。


 ザッ、ザリ―――、っと、乾いた土を踏み締める音とともに、神雷の神殿より一人の男が、いや日下修孝がその姿を現した。

「っつ・・・」


 日下修孝は目を眇めて、空を見上げ、試す者とその背に乗る俺と目が合ったんだよ。



「そこか―――意外と地上に近いな、、、」

 さッ―――、

 日下修孝は、左手は腰元の羽黒色のその鞘。右手の動きは流れるように、その長大な太刀霧雨の柄に。


 日下修孝は、左脚を半歩前に出して腰を落とす。その動き、身体の運び方はまるで、清流の流水のように、滑らかだ。

「ッ!!」

 俺は日下修孝の“それが”“なんであるか”直ぐに解った。


 もわもわもわ、、、っと、日下修孝が抜刀術で構えた霧雨より、湯気のような白い霧が立つ。


「日下流霧雨抜刀術―――、」

 その口上に呼応して鞘走るかのように―――、


 ―――、日下修孝は自身の流派の抜刀術の構えをとる。



 斬られる・・・ッツ!! 水氣の斬撃が来る・・・ッ!!

「ッ、試す者ッ上昇だ。空へっ空高くへ逃げろ・・・ッ!!」

 思いの丈を叫ぶかのように俺は、大声を張り上げた。

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