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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十九ノ巻
349/460

第三百四十九話 我ロベリア=カイセラ・ディ・イルシオーネの真名の下に、魔法王国を総べる我がイルシオンの血脈が、その血が闇たる黯黒魔法でこの世に呪いを為そう―――、

 この世に、冥界の悪鬼が、幽鬼が、屍鬼が、屍喰鬼が、地の底より、黮闇から、這い出て、この世を毀し尽くし、跋扈する、前兆のような―――、月隠(つごも)り。


第三百四十九話 我ロベリア=カイセラ・ディ・イルシオーネの真名の下に、魔法王国を総べる我がイルシオンの血脈が、その血が闇たる黯黒魔法でこの世に呪いを為そう―――、


 サぁー。

「ひひ―――っ」

 地に立つロベリアその彼女の二本の脚、その足元より拡がる血だまりならぬ黑だまり。


 ロベリアの足元から出でて、まるで拡がる血だまりのような動きで、じわ、じゅく、じゅくり、と、黯黑王女ロベリア=カイセラ・ディ・イルシオーネの、世界を(けが)す黑いマナ。



『―――

 流れる黑、流れる黯、流れる黷れ。

 そわそわ、ざわざわ、ぞくぞく。

 焦慮。不安。怖気。

 鼓動が早くなる黑の浸食。気味が悪く心を痛める黯。(けがらわ)しく目を背けたくなる黷れ。

―――』



「・・・っ」

 俺も、アイナも、アターシャも、サーニャも、一之瀬さんも、羽坂さんも、その異変を肌で、また感覚で感じ取る。感じ取ったんだよ。


 特に俺達三人、俺とアイナとアターシャは、この感覚を、嫌悪感に吐き気を催すようなこの感覚を、かつて覚えたことがあるんだ―――。


 まさしくあいつの黯い異能と同じだ。

「魁斗―――、お前の黯い異能『天王黒呪』と・・・」

 ぽつり、っと、俺は呟いた。

 似ている、、、いや、似ているどころじゃないそっくり瓜二つだ、結城魁斗の『天王黒呪』と、今のこのロベリアの闇黒魔法は―――。

 俺の脳裡を掠める記憶は―――、


「、魁斗・・・お前、―――」



///


「『天王黒呪』―――・・・『黯黒呪界―――」

 闇黒じゅかい? 長い技名のような俺には意味の解らないなにかの言葉を? そんななにか技名か詠唱のような言葉を魁斗は呟いたんだ。

 ぎゅッ―――、じわりっ・・・ポタっ―――ポタタっ・・・。

 魁斗の握り締められた右拳から―――まるで水をたっぷりと吸った手袋を手に着けたまま、それを握り締めたかのように―――黒い漆黒の墨汁のような水滴がポタっポタタっと何滴か、数滴地面に落ちて黒く染め拡がり―――



「僕から逃げられると思うのかい?アイナ=イニーフィナ―――」

 流れる黒、流れる黯、流れる冥晦―――。

 そわそわ、ざわざわ、ぞくぞく―――。

 焦慮。不安。怖気―――。

 鼓動が早くなる。気味が悪い。鳥肌が立つ。


///



 一緒だ。まさしく魁斗の、それと―――、

「―――、っつ」



 サぁーーー、っと―――。


 ロベリアの二本の足元を、まるでその血だまりのように拡がる墨汁のような黯は、黑く明滅し、そこに三角形や六角形を含めた多角形と円で交わる魔法陣を浮かび上がる。

 それは、きっとロベリア自身が闇黒魔法を行使して仕組んだ黯黒魔法発動の魔法陣。


「いひっきししししっ♪ ねぇ、ケンタきゅんその眼痛くならない? ねぇ、気分はどう? 悪寒とかするでしょう? ねぇ、怖いでしょう?不安になるでしょう?屍にたくなるでしょう?この黯、この黩。 いひっきししししっ―――きゃははははははっ♪」



 ロベリアの奴なんだって?怖いだと?悪寒するだと? 屍にたくなるだと? あいにくと俺は―――、

「もうそんな魁斗の二番煎じみたいな闇黒魔法を見せられても、俺はもう、そんな黯は見慣れてたんだよ、ロベリア・・・っ!!」

 今の俺は、この選眼で視た、視得た魁斗の『天王黒呪』っていう黯黒の異能すら、この選眼の一つ『顕現の眼』で、準えることだってできるんだよッ!!


 ぺしっ、っと、俺は摩るように、試す者のその滑々とした頸筋を軽く叩いて合図。


 バサッ―――

 その瞬間―――


 征くぞ、という俺の意志に添って、青黒い竜試す者がその皮膜の翼を羽搏(はばた)かせる。その場に滞空していた試す者は、その両翼を羽搏かせ、魔餓尽基と、そして、ロベリアとラルグスを後目に、空中で方向転換―――。

「試す者!!征けっ目指すは、神雷の神殿だ・・・っ」

 そこに魔餓尽基を壊すことのできる雷基理がある。解る、感じる、この女神の神氣漲るこの雷の波動を、な!!

 雷基理を以ってあの憎い褐色の異形なる魔餓尽基をぶっ壊す・・・!!


 俺は、試す者に指示を出して、それに応えてくれる試す者は、―――

 バサッバサッバサッバサッ―――、っと、その逞しい青黒い翼を羽搏かせて、上昇―――。


 神雷の頂の一番の最高峰。神雷の神殿を目指して、目測では、この『選眼』の目測ではその距離は二千三百七十六メートル。約2.5キロ弱、すぐだ。


 眼下のロベリアとラルグス、それと魔餓尽基を後目に視て、俺は、俺達は、試す者は踵ならぬ、翼を返して旋回―――、神雷の頂を目指して、だが―――。



「健太、下。あの黒い魔女なにかしてくる・・・っ!!」

 それは、羽坂さんの、羽坂さんにして珍しい慌てたような声色の声。

「なに・・・!!」

 思わず俺は、試す者のその青黒い鱗の生え揃った頸筋より、地上を見下ろした。



「畏妃っ忌死尸屍屎っ♪ 我ロベリア=カイセラ・ディ・イルシオーネの真名の下に、魔法王国を総べる我がイルシオンの血脈が、その血が闇たる黯黒魔法でこの世に呪いを為そう―――、」


 ロベリアのこの、少し変わった魔法詠唱ののち―――、


「―――マナよ、カイセラ家との主従に応じ、我がイル・シオーネたる国主カイセラ家の血筋に、その血に応え―――『黮闇(くらやみ)』を成せ―――、」


 ひゅぅ、、、どろどろどろぉ―――

 赤火がぽぉっ、小火がぽぉ、、、


 『うらめしやぁ―――』っと―――、っという幽鬼が現れるときの、口伝の言い回しと同じように。


 ロベリアの足元に拡がった闇黒の黑いマナより、まるで湧き上がる魂のような、ゆらゆらと、どす黒い煤煙のような色合いの人魂状の黑いマナ氣が立つ。

 それもその数は、少なく見積もっても、五つ。


「くっ、、、」

 ロベリアのその様を視て、俺の脳裡に浮かぶものは―――、

「っつ」

 まったく魁斗の、あのときのアレと同じじゃねぇか!!



///


「いくよ、健太。発動―――『天王黒呪』―――・・・」

 魁斗の構える左手からどす黒い煤煙のようなゆらゆらとしたアニムスが出現する。でもそれは、俺の眼の前で徐々に姿を変え、煤煙が纏まっていき渦巻くような球体になった。

「―――・・・」

 その様子を見ていてとても不思議な球体だ。魁斗の左手の掌の中に真っ黒い球体が収まっていて―――えっと、つまり魁斗が左手で握っているその真っ黒い球体、その表面はまるで写真で見た木星の大気をモノクロにしてさらに黒くしたようなものに似ていた。球体の中で黒い煤煙のようなものが不規則にゆらゆらとさせながら、それが自転するように回転しているんだ・・・

「ッツ」

 大きくなっていく・・・ッ!? それが、その黒い煤煙のように渦巻く漆黒の球体は、徐々にだんだんと魁斗の掌の中で大きくなっていく―――。

「いくねっ健太―――っ♪僕の必殺技―――」

 うそだろ・・・、最初は野球の球ぐらいの大きさだったのに・・・えっ!? えっもうバスケットボール並みの大きさになりやがったッ!!

「『天王黒呪』―――『黒輪』ッ!!」

 あいつっまじで『あれ』を俺に放つつもりだッ。この眼で視ているとなぜだか、そうすると解ったんだ。あれは魁斗の異能『天王黒呪』の真っ黒いアニムスを純粋に凝縮した途轍もない威力をはらんだ氣の塊だ―――!!

「―――ッ!!」

 くっ・・・!! 俺目がけて飛んできやがる。そのまるで黒い煤煙を球体にしたような物体は魁斗の左手を放れ、ううん、魁斗は左手の向きを真逆にして腕を勢いよく前に出し、掌に収まっていた『黒輪』を俺めがけて放ったんだっ・・・!


///



 嫌な記憶だ。

「・・・―――、っつ」

 俺は軽く舌打ち。


 魁斗は、あのとき“今の僕があるのは、ラルグス義兄やロベリア義姉さん達のおかげ”とは言っていたが、ひょっとしたら魁斗の異能『天王黒呪』を、その制御を訓練したのは、ロベリアもだったのかもしれない。


 ロベリアの足元、血だまりならぬ黯だまり状の黯黒の闇黒の黑いマナより、湧き上がった魂ようで瘴気のような黑いマナは、俺の、俺達の眼下で徐々にその姿を球体へと変え、黯魂が纏まっていき渦巻くような球体になっていく。

 ロベリアのそれは、魁斗の『黒輪』と全く同じであり、その表面はまるで写真で見た木星の大気をモノクロにしてさらに黒くしたようなものに似ていた。

 黑い黯輪の中で、黒い魂のようなマナが不規則にゆらゆらと揺れながら、マナが自転するように回転している。

「ッツ」

 っつ、あの黯輪!!大きくなっていくぞ・・・ッ



///


『イニーフィネファンタジア-剱聖記-「天雷山編-第二十九ノ巻」』―――完。

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