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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十九ノ巻
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第三百四十七話 理想主義者十二傳道師『屍術師』、現る

 キュゥゥゥゥン―――、、、・・・。

 魔餓尽基は、なにか機械が、機能が起動するかのような音を発して。


第三百四十七話 理想主義者十二傳道師『屍術師』、現る


 すると、サーニャの斬撃は、あの黄金色に輝く『皇剣の(クリーヴ)輝鞭(ケンフォン)』が、先細り、痩せ衰え、、、―――、


 それに反するように、魔餓尽基のドーム状の白く輝く光の薄い膜のその内側。白いドーム状の光膜の内側が、黄金色に輝く靄に包まれていく。


「あいつ、、、吸い取ってやがるのか・・・? サーニャの氣を、、、」

 俺の『魔礫牆廻輪尖射』のときは、喰わなかった、いや吸収しなかったというのに、、、なぜだ。なぜ、サーニャの斬撃は、吸収する?


 黄金の氣は、『皇剣の輝鞭』は糸のようになりやがて、消えゆくように、・・・。

 反して魔餓尽基の防御機構白い光膜は、ほとんど全てのサーニャの黄金色に輝く『皇剣の輝鞭』を、触れた箇所から緩慢にかつ確実に、まるで、コウガイビルが、陸生の貝を、その体表から出した粘性の高い消化液で絡め捕り、食していくかのように、魔餓尽基は、サーニャの密度の濃い氣の斬撃『皇剣の輝鞭』を、白い光膜の内に獲り込み、その中で黄金の氣を解かしながら、喰っていく。



「き、吸収していると、いうのか!? 私の『皇剣の輝鞭』を、その魔餓尽基は、、、―――」

 サーニャはその碧眼を大いに見開き、その表情には、畏怖すら浮かんでいるように、俺には視得た。



「ねぇ、美味しかった?ねぇ、魔餓尽基ぃ。聖騎士さまのアニムスはごちそう?ねぇ魔餓尽基ぃ? いひっきしししし―――」

 いやらしいまるで人をナメているかのような、挑発的な嘲りの笑みを浮かべている女が一人。

 その者は、暗色系の魔法衣に身を包み、その頭には三角帽を被った人物。そして、右手には、大きな何かを刈り取るような形状をした西洋風の大鎌を持ち、それを肩に担ぐように。

「いひっきししししっ♪ ―――っ♪」

 その鎌女は、一歩二歩三歩、、、すたすた、と歩いて魔餓尽基のほんの傍まで歩む。

 その鎌女の背中には相変わらず、その朱に染まる西洋風の大鎌。


 鎌女は、右肩に大鎌の柄を置き、その背に朱色に明滅する大鎌を背負っているんだ。まるで、その大鎌は赤銅色に、鉄が赤熱しているときの色合いに見える。



 そのいやらしい笑みを顔に浮かべている鎌女の正体は、その名は―――、

「『屍術師ロベリア』、、、」

 試す者の背に立つ俺は、上空から見下ろしてそう呟いた。


 奴ロベリアの容姿は若い。たぶん、おそらく見た目では、俺やアイナ達とそんなに齢は変わらないように見えるんじゃないだろうか?。


 ロベリアは、紺色の暗色系の魔法衣を着ていて、その頭には魔女(ウィッチ)が被る尖がり帽子。あの生ける屍が徘徊する街の尖塔で見かけたときと同じ姿格好だ。

 しかも、あのときと同じように、赤く灼けた鉄の色合いの大きな三日月型の西洋鎌をその右手に持ち、刃のほうを背中側に。

「~~~♪」

 すたすた、ざりっ、っと、ロベリアは半歩前で、その歩みを止めた。



 余裕だな、ロベリア―――、

「っつ」

 ―――、俺達にその紺の魔法衣の背中を見せるなんてな。だが、反対に灼け色の大鎌の刃は俺達に向いている。



 くるり、っと、ロベリアは、魔餓尽基の正面で、俺達に背を向けた、というわけだ。

「あらあらぁアネモネぇ―――、お友達が来てくれたわよぉ♪ 愉しいねぇ♪、、、いひっきししししっ♪」


 ロベリアが、ニヤニヤと観ているのは、魔餓尽基に獲り込まれ、そのお腹の辺りの肉色の部分からだけ、覗かせているそのアネモネの姿だ。その顔だ。

 アネモネはぴくりとも動いていないように、この俺の眼には視得る。どうやら、アネモネは目を閉じ、意識がないようだ。



 一方のラルグスは―――、

「あぁ?ロベリア。てめぇ、なにのこのこ出てきてんだ?てめぇの仕事は―――。 まさか、お前その鎌で、あいつらを斬り・・・。あっ、そうだっ!!ははっいいこと思いついたぜ、俺様はようっ。お前のその大事な鎌で、空の竜ごとあのコツルギとかいう若造を切り刻んでやれよ。ははっ♪」

 ―――、ロベリアの背中越しに、ロベリアに話しかけた。


 それにしても、ラルグスの奴。ロベリアに対して試す者ごと俺達を切り刻めだ、と?

「・・・っ」

 そんなことロベリアにできんのかよ?ロベリアは、魔法王国の魔法の民で、ましてや、奴は今、空の俺の眼下の地面にいるんだぞ?

 まさか、魔法で飛ぶ斬撃を?


 俺の想像の、そうではなかったようだ。


 ラルグスに話しかけられたロベリアは、ラルグスに向き直り、そのブスっとした侮蔑を籠めた視線でラルグスを見た。

「はぁ?私が斬り合い? 冗談にしては笑えないわよラルグス。この朱月鎌(ルルーノ)をそんなことに使うと思う? ねぇバカなの、あんた? あぁアホだったわね、ラルグス。いひっいひひひっきししししっ♪」

「チッ、ロベリア!! てめぇっ―――」

「あらなにか?ラルグス」

「、っつ。、、、じゃあ、ロベリアお前なんで。ロベリアっなんでお前朱月鎌を持って前に出てきてんだ? ロベリアってめぇの仕事は、朱月鎌でこの魔餓尽基を――、」

「私のこと大声で、ロベリアロベリアって気安く呼ばないでくれる?あいつらに私の名前が知れるでしょ? バカなの?あんた。一回屍ねば?ラルくず」

「くずだとぉ・・・俺様のことを・・・っ。てめぇは、いつも俺様をバカにしやがって、、、ハっもしかしてお前・・・。いつも、この俺様に突っかかってくるのは―――、ロベリアお前、実はルメリア帝国最高軍司令官の俺様に惚れているんだろ・・・?」

「はぁ?」

「俺様は寛大なルメリア帝国最高軍司令官様だ―――っ!! 俺は確かにお前のことはいい女だとは思う。その、なんだ―――」



 傍からこの二人、、、ラルグスとロベリアを観ていて俺は思う、

「、、、」

 ほんとにイデアルの奴らには“仲間意識”っていうものは希薄なんだな、、、。あのとき廃砦であいつも、魁斗だって、日下修孝に『黒輪』をぶつけていたし、操ったアイナでグランディフェルが斬られても平然としていたし―――、、、。


 仲間割れを平然と行ない、眼下のラルグスとロベリアのように互いに罵り合う。魁斗のように仲間を大事にしない奴なんて、カスだ。

 “仲間を大切に想わない”―――、俺が嫌悪する奴らだ。



「さてとっ、おめでたいバカクズは放っておいて、、、それよりもぉ―――いひっきしししっ♪」

 言いながら、その表情には嘲りの笑み。



 そんなロベリアは、振り向き―――

「、、、っ」

 ロベリアの、その琥珀色の目の視線が俺を捉えた。ようするに俺は、ロベリアのその琥珀色の視線が合ったというわけだ。


 、、、その愛らしい顔と、綺麗なその琥珀色の目に騙されるなよ、俺。ロベリアあいつは、俺がこの五世界にきたばっかりのとき、あの街で、あの生ける屍を屍術で造り出した張本人なんだから。

 そして、ラルグスがあの街の人々を皆殺しにしたって俺はあの、へらへらバカ魁斗から聞いたんたんだっ、お前も逃げられると思うなよ、ラルグス!!



「それよりもぉ―――、いひっきししししっきゃははははははッ♪ きゃははははははッ♪!! きゃはははははは―――ッツ」

 ロベリアは笑う。嘲う。嗤う。俺を指さして腹を抱えて、さもバカにするような態度で俺を笑う。



 いったいなんなんだ、こいつは、このロベリアという女は。本当に今のやり取りに、大声を、奇声を上げて嬉しそうに愉しそうに笑えるような要素なんてあったか?。

「、、、」

 屍術師ロベリアは、その顔を嘲りに歪めて、俺を見上げながら高らかと笑ったんだ。



「バァっカじゃないの?あんたっ。七基の古代兵器は、同類の兵器でしか壊せないのよ? 知識()らなかったぁ?それともきみはケンタきゅんはぁ、高貴な聖騎士さまもぉ、そこのお姫さまから“そのことを”聞いてなかったのかしらぁ? 古代の叡智学者がそのような機構で七基の古代兵器を創造したみたいよん♪ いひっきししししっきゃははははははっ―――♪」

 けたけたけたっ、


 、っと嘲い、最後に、にたぁっ、っと、ロベリアが俺を見上げて腹を抱えて心底俺を、俺達を笑っているのが視得る。


 それよりも―――、

「なっ、なんだと―――!!」

 ロベリアの言葉で引っかかったことがある。同類の兵器でしか、七基の超兵器は壊せない?だと!!

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