第三百四十四話 『魔礫砂漣の五―――。魔巖転装―――、小剱殲式『魔礫牆廻輪尖射』
褐色の金属とセラミックは、人や動物でいうところの“筋肉”と融合していて、その内部。魔餓尽基のちょうど人で言うところの“胸から腹”にかけてに相当する部位。そこには、“空間”がある。捕り込むものを納めておく空間だろう。
ポッドのように“空いている”のではなく、アニムスを貯め込む性質の、フラクタルのように視得る素材で満たされている。
第三百四十四話 『魔礫砂漣の五―――。魔巖転装―――、小剱殲式『魔礫牆廻輪尖射』
そのアニムスを貯め込む性質のフラクタルのように視得る素材の外側である周りの、魔餓尽基の筋肉部分より、網の目状もしくは神経糸、筋繊維のようなものが、まるでカツオノエボシの触手のように生えている。
金属部からは、複数の鎖のようなものも伸びてきていて、アネモネの手足を捕らえている。その太い鎖が四本。
そして、その他の鎖が、魔餓尽基の、その褐色の表面に出てきているアネモネの首から下を雁字搦めに捕らえている。
転じて、俺はこの透視の視線を、魔餓尽基のアネモネが囚われて、捕り込まれている深部から、その表面へと持っていく―――。
魔餓尽基の血色の良いホルモン色の内腑より視線を退かせるように、俺の透視の視線は引き下がり・・・。
筋肉、そして、筋からセラミック―――、褐色の金属の外装。人間で言えば、体表近く―――。俺は、この選眼の透視の視線を、魔餓尽基になぞっていく。
「―――・・・」
外装だ、俺が透視眼で視詰めている部分は。
俺のこの透視眼の視線は、魔餓尽基の部位で言えば、褐色の金属部にところどころ埋まっている、色とりどりの宝石のように視得るセラミックのところにある。
いったいその綺麗な三原色のような色合いの宝石は、いったいなんなのか、何のためのものか。どのような効果が、この三原色の宝石にあるのか・・・?
「あった」
俺の透視眼の視線は、魔餓尽基の表面近く、褐色の金属部にところどころ埋まっている、色とりどりの宝石のように視得る丸い形をしたセラミックを見透かし、、、。
人間に相当する部位で言えば、そこは両肩、頸。そこには、そのセラミックのような外観の青、黄、赤のまるで宝石のような宝玉のように視得る球体が埋め込まれていて、その数は十二個。
俺の透視は、魔餓尽基の表面、褐色の外装に埋まるように存在してある色とりどりの宝石だな、と思った部分に到達―――。
「――、・・・、、、―――」
そうか―――、この青、黄、赤の色をしている三原色の宝石。
判った・・・ッツ
「ッツ!!」
こ、これは―――ッ!! 青、黄、赤の色とりどりの宝石のようなセラミックから、縦横無尽に―――縦に横に、内に、魔餓尽基の深部へ向かうように繋がっている“線”。
“線”は互いに交差し、重なり合い、その内部、魔餓尽基の躯の中へと伸びていくような“線”だ。魔餓尽基の内に視える、、、“線”は、一見、神経や血管のように縦横無尽に走っているように見えて、実は、大都市の地下鉄や水路のように、“何かが通る”通り道のように整然としている。
視たことがある・・・。以前に俺は。この構造を、何かが流れるようなこの構造を、俺は見たことあるぞ・・・!!
そう、これは、この“形”は、この“構造”は―――。
「・・・!!」
そうだ、これは“回路”だ。かつて、俺が、魁斗が盗んだ氣導銃を、今と同じ『選眼』の一つ『透視眼』で、見透かしたのと同じように。この魔餓尽基の内に存在する構造は、“魔/氣導回路”だ。
俺の透視の視線は、
「っつ・・・」
アニムスが通る整然たる道のような回路が、あの褐色の金属表面の下に―――。
魔餓尽基の表面、その褐色の金属に埋まっている“宝石”から延びた氣の回路は、表面よりその魔餓尽基の深部へと至り、その内部の内腑の“胸から腹”にかけてに相当する部位へと伸びていっている。
そこの、アニムスを貯め込む性質のフラクタルのように視得る素材で満たされている“空間”へと、回路は伸びて至っていた。
一つ一つの“宝石”からやってくる氣導回路が、魔餓尽基の内腑の“空間”へ集束していく機構・構造になっているんだ。
だが、、、この氣導回路に、今もって氣が通っている気配はない。
「・・・っ」
え、と・・・。今の、魔餓尽基に吸収されたアネモネは、あのアニムスを貯め込む性質のフラクタルのように視得る素材で満たされている部分から、直に自身のアニムス/マナを吸収され続けているんだよな?
じゃあ、あの魔餓尽基の表面にある“宝石”から、その内腑へと今、アネモネが囚われているところへと延びている宝石回路のほうは一体なんのためだ?
判らない。この透視眼で視たところ、あの宝石回路には、氣が通っているようには視得なかった。
魁斗のときの、そのあいつが持っていた氣導銃のときは―――
///
銃把の中心部では全ての回路が一本の太い回路になり、それは銃把から銃身へ・・・ん?複雑な変換器?のような部分を、行使者の『氣』が通過することで―――
ねぇってば!!その怖い『眼』をやめてよっ健太っ・・・お願いっ!!」
なッ!!この回路を流れる黯は―――!?
「ッ!!」
キュイイイィ―――、なにかが集束するような電子音のような音―――
///
あのとき視ただろう?俺は。氣導銃に流れた魁斗の黯い氣を、その流れを。
だが、この魔餓尽基の宝石回路には、今、氣は流れていないんだ。
「・・・、っ」
ぶんぶんっ、っと、俺は、首を横に振った。まぁ、いい。どっちにしても、そんなことは俺には関係ないっ。
俺はただ、魔餓尽基をぶっ壊し、アネモネを助け出せればいい―――。
なぜならば、俺は、正に今。俺は標的をラルグスから魔餓尽基に変えたのだからッ!!
俺は『試す者』の背中に乗り、、、この手に持つ『大地の剱』を揮う。
喰らいやがれっ魔餓尽基―――ッ
ぶっ壊れろ・・・ッ
『魔礫砂漣の五―――』
一つ一つが六角形の板の形状を持つ『魔岩牆』。それらの『魔岩牆』を重ね合わせた『魔礫牆』―――。それら一つ一つの六角形の魔岩板を俺は、火花を散らせ廻転させ、新たに氣を添加し、次なる大地の魔法に転化させ、行使する。
『大地の魔法』に限って言えば、たとえばその一種である『魔岩牆』。それを行使しつつ、さらに組み合わせた大地の魔法が『魔礫牆』。
例えば『魔礫牆』を保ったまま、次なる大地の魔法を添加し、転嫁しようと魔法を行使したとしよう。
するための魔法が、『魔礫砂漣』、、、と、アネモネは、俺に“修行”を付けてくれたときに言っていた。
『魔岩牆』を以って為したさらなる上の段階の大地の魔法が『魔礫牆』―――、さらにその上の大地の魔法を俺は行使する。
(征くぞ―――『魔餓尽基』、、、ッツ)
先ほど魔法剣『大地の剱』より『魔礫牆』を行使するときの、鋩を前へと突くような、崩した正眼の構えを解く。
「喰らい、っ、やがれ―――ッツ」
正眼の構えを戻してさらに、この『大地の剱』を立てて、肩に担ぐように振り被る。袈裟斬りを繰り出すときの構えだ。大地の剱は俺の頭上―――、
今こそここで、俺は、俺の『魔礫牆』に新たなる魔法の事象を転嫁する!!すなわち大地の魔法の重ね掛けを行なう。
そして、その魔法を行使する・・・!!
アネモネは助ける。だから、お前はぶっ壊れろっ魔餓尽基・・・ッツ!!
「『魔礫砂漣の五―――。魔巖転装―――、小剱殲式『魔礫牆廻輪尖射』・・・ッツ!!」
袈裟斬りに構えた魔法剣大地の剱を、その真の力が解放され、砂氣取り纏いてまるで、大剣のようになった魔法剣大地の剱を、俺は勢いよく斬り降ろす・・・ッツ!!
魔礫尖の被弾目標は、俺の眼下。
雷都の神雷の神殿の前に、無様に佇む七基の超兵器の一基『魔餓尽基』だ。そこを目標に、氣を帯びた魔礫尖を、ミサイルのように、もしくは空の上から石剣を鋩から真っ直ぐ投げたように、『魔餓尽基』に向かって、数多に撃ち込む。
勿論、俺は完璧に『魔礫牆廻輪尖射』を扱えている。アネモネのその身体には、ひとつたりとも、魔礫尖の氣刃を当てることはない。
『魔餓尽基』を切り刻み削り取っていくための『魔礫牆廻輪尖射』の魔礫尖の氣刃。それはこの褐色の異形なる『魔餓尽基』を、切り刻み、ぶっ壊すためのものだ。
俺は『魔礫牆廻輪』の、“尖射”以外にも、氣を帯びた土石の魔弾や砲弾の雨霰、石礫を連射し、弾幕を張れることだってできる。
そのときの大地の魔法の名は『魔礫牆廻輪掃射』。
魔礫牆を構成する一つ一つの廻転する六角形の板状の魔岩牆。
火花と、光り輝く氣を放ちながら、それがまるで車輪のように回転し、数多の“氣が通った魔礫尖刃”を敵に撃ち込む『魔礫牆廻輪尖射』―――。
ギュギュギュギュギュギュッ、
ギュルギュルギュルッ――――ッ
準備は万全。
大地の魔法の産物である六角形の魔岩板の角を互いにぶつけあいながら、六角形の魔礫の廻輪は廻転し、その砂氣の火花を散らす!!