第三百四十二話 大地の剱魔法『魔礫牆』
俺が大地の剱魔法で行使した“それ”は、完璧に、どんな攻撃も透さぬ魔礫の牆壁。
六角形の一枚岩の『魔岩牆』を土石魔法で、砂氣の剱魔法の行使空間内に幾百と顕現させ、それを、カカカカカッ、っと、上下左右縦横ハニカム構造にて、重ね合わせた城壁のような大地の剱魔法の、魔礫の牆壁。
第三百四十二話 大地の剱魔法『魔礫牆』
すなわち、大地の剱魔法の防御魔法、『魔礫牆』
円盤でも三角でも四角でもない、コンパスでもきれいに描ける六角形の魔岩牆は、ミント(アネモネ)の石人形の魔砲の『石弾』にも耐えた。
それら六角形の『魔岩牆』を重ね合わせ、積み上げ、組み合わせたものが、今の俺が行使できる最硬の大地の防御魔法『魔牆壁』だ。
俺は多角形では、六角形が一番綺麗な形で好きだ。
どうだ、ラルグス!!
「俺の防御魔法を崩せるものなら崩してみやがれっ!!ラルグスッツ」
俺の熟考も、抜刀も、大地の剱魔法行使も、それらは一瞬の出来事だ。ラルグスの『氣刃投射』の氣刃の打撃群が俺達に命中する寸前、光り輝く『大地の剱』から、俺は大地の剱魔法を行使したんだ。
ラルグスの地対空ミサイルのような対空砲火にも似た『氣刃投射』―――。それを完璧に防ぎ、弾き、跳ね返す大地の剱魔法の魔礫の牆壁。
より完璧に、耐荷重性を、防弾防刃性能を得るために、一つ一つ魔礫の六角形の板状の楯『魔岩牆』を、前後左右に組み合わせた俺の持ち得る最硬の防御土石魔法『魔礫牆』。
魔礫牆は、堅固な魔礫の牆壁。
空にいる俺と、地上のラルグスとの間に、光り輝く六角形の土石魔法の礫板が複雑に組み合わさった『魔礫牆』が行使される。
それは即ち、大地の剱魔法による防御魔法の堅固な魔礫の隔壁だ。
「なッ、六角形の石板が組み合わさって―――、、、ッツ なんだと・・・っ城壁!? それが、なんだってたんだっ!! 俺様の氣刃がてめぇのッ―――、―――、―――・・・ッツ」
ふっ、喚いてやがる、ラルグスは。
「、、、」
この選眼で、『魔礫牆』越しに、地上でラルグスが、必死に喚いているのが視得る。少し滑稽だ。
その直後―――、ラルグスの無数の氣刃投射が、俺の行使した大地の魔法の『魔礫牆』に着斬。
ドォウッ、―――着斬。轟音。
ガガガガガガガガガガ―――ッツ
ラルグスが俺達に向けて地対空ミサイルのように地上より撃った氣刃投射が、着斬するほんの僅か、ずいぶん長い時間に感じたが、本当は時間にしてコンマ数秒だ。
土石魔法の楯六角岩板の『魔岩牆』が組み合わさった大地の防御魔法『魔礫牆』を行使した。
俺の思い描いた通りだ。
ラルグスの『氣刃投射』を受けても、俺の大地の剱魔法『魔礫牆』は、完璧に、罅も亀裂もできず―――。
俺は女神フィーネからの念話・念写で、いや精神感応のその神力で視てんだよ―――、
「くく・・・っ」
思わず口角に笑みが浮かぶ。
―――、氣刃投射?そんななまくらな氣刃が俺の、『魔礫牆』を破れるかよ、ラルグス・・・っ!!
この『魔礫牆』は、俺とアネモネの融合魔法でもあるんだからな・・・ッツ!!
ラルグスの氣刃投射の輝く氣刃の群れが、俺の大地の剱より行使した大地の魔法『魔礫牆』の硬い表面に触れれば、その堅固な防御力と対氣反応装甲で、ラルグスの『氣刃』は砕けて弾かれる―――。
ギンギンギンギンギンギンギンギン―――ッツ
―――ガ、シャンッ
魔法王国五賢者の一柱アネモネ=レギーナ・ディ・イルシオンが、己の持つ最高の業、剱の魔法で創造せし、この『大地の剱』。
それを以って、俺を特訓して鍛えてくれたアネモネとレンカお兄さん。二人も想いも掛け合わせているんだ。
「全て弾けて砕けっ、『魔礫牆』・・・ッ」
だがしかし―――ラルグスは、彼奴の『氣刃投射』の氣刃の群れは、俺の『魔礫牆』の牆壁を前にして、俺の大地の防御魔法を崩すことができず、全ての氣刃を弾いてやった。
「お前では俺の大地の防御魔法は崩せない、ラルグス・・・っ」
そうさ、お前の氣刃では、俺の行使した大地の剱魔法『魔礫牆』の楯に、傷一つつけることはできない。
アネモネとレンカお兄さん、女神フィーネに認められた祝福の転移者たるこの俺が、この手に握り、氣を注ぎ込んだ『大地の剱』より行使した防御魔法『魔礫牆』が、お前みたいな奴の攻撃でそんな簡単に破れるかよ、ラルグス・・・!!
「な、なんだと・・・俺様の『氣刃』が全部壊れて―――、、、バカな!!」
「壊れたんじゃない。壊したんだよ、お前の氣刃を」
大地の剱魔法『魔礫牆』は、いわば三条悠の異能『絶対防御』の楯と同じもの。俺の強い想いを反映した『魔礫牆』はラルグスの『氣刃投射』で傷一つつくことはない。
そして、『魔礫牆』に着斬して砕けた氣刃は、まるでドライアイスのように昇華してそれはまた再びラルグスの身体へと還っていくようだ。
「くそってめぇっ!!」
悪態を吐き喚くラルグスを見下ろして―――、
だが、今の俺の脳裏に過るものは―――、
「―――」
―――、あのときのレンカお兄さんとミントにつけてもらった修行の日々―――。あのときの情景をまざまざと俺は思い出す。
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「ぶーっケンタさまいけずっいけずです・・・手加減してくれてもいいのにっ!! あぁミントのかわいい魔礫兵ちゃんが、細切れに、、、よよよよ・・・」
「てか、手加減できないでしょっミントちゃん。手加減してたら、俺のほうが蜂の巣になってるってばっ!!」
「ぶーぶーぶーっ私は手加減してますのにぃ・・・!!」
なにやら不服なミントの後目に俺は―――、
「ふぅ、、、」
―――、揮ったあとの大地の剱を寝かせた。
「いやぁ、すごいね!!健太くん。きみの『魔礫砂漣』の硬さは、もう、ミントさんの『魔礫弾』も軽いね!!」
パチパチパチ、、、っ、っと拍手する人がいる。その正体は―――、アターシャとホノカ二人のお兄さん―――、
―――、レンカお兄さんだ。
俺は、レンカお兄さんに振り向いた。この人も、俺の師匠のような存在だ。
「そうっすかね?俺はまだまだ―――・・・」
自分はまだまだ、だと思う。
だって、確かに石人形の上位互換版のような魔礫兵の“単発”の『魔礫弾』は防げても、『魔礫弾』の、ダダダダダダッ、の、まるで機関銃のような連射を受けると、俺の『魔礫牆』は保たない。俺の行使した『魔礫牆』に、その表面に罅が入る。
これでは。例えば俺が、ラルグスや日下修孝をはじめとしたイデアルの奴らと戦うときの不安要素だ。
「そうかな?健太くんきみの実力はもう僕の折り紙つきさ♪」
「・・・」
「不安かい?健太くん」
俺の心を見透かすようなレンカお兄さんの発言。
笑みの減退したレンカお兄さんの顔を見詰めて、俺は。
「、はい」
「魔法王国イルシオンの五賢者の一柱アネモネ殿下どのの『魔礫砂漣の三―――、魔巖纏装。魔礫弾』だよ?それを防ぎきるなんてこと―――、並みの異能者では普通できないことだけどね」
そうなのか? 本当に俺が?
「・・・そう、っすかね―――、、、」
じだんだじだんだっ
「ぶーぶー、ぶーぶーっ」
ミントちゃんすっげー不服そう。
「カリーナちゃんが居ればケンタさまもレンカさまもまとめて瞬殺蜂の巣こんがりにできますのに、あぁ、もうっカリーナちゃんってば、こんなときにかぎって、いないなんてっ♪」
「アネモネ殿下どの、、、負けおしみにしか聞こえません、が・・・」
「ぶーぶー。いいんですっ♪ えぇやってみせませよっカリーナちゃんがいなくても♪ ふふっくすくすっ♪」
そして、負け惜しみ茶目っ気のかわいいミントちゃん。
レンカお兄さんのその言葉に意識を戻せば、裏を返せば、ミントの魔礫弾をしのげる俺は既にもう並みの異能者ではないということか。
「・・・っ」
だが、慢心するなよ俺。
きっと、『イデアル十二人会』の奴らも“並みの異能者ではない”はずだ。
「ま、その点も含めて休憩にしようか、健太くん」
「あ、はい。レンカさん」
そして、俺は、ううん、俺も含めてミントやレンカお兄さんも一緒に、休憩な。俺は、さっそくミントちゃんの持って来たマナ=アフィーナの、今度は甘酸っぱい紫色のジュースだった。
それを飲んでいるいるとき、だ
「ケンタさま」
「ん、ミント?」
俺は、口からコップを放して、ついでに言うと、この陶器製のコップも、ミントの土石魔法の産物だ。