第三百四十話 理想主義者十二傳道師ルメリア帝国最高軍司令官、現る
鎌女の正体はその名は、屍術師ロベリア―――、
と、もう一人きっとあの錦色の外套を羽織っている人物が不死身のラルグス―――、
あの街でお前達はいったいどれだけの罪のない人々を殺めたんだ!! そして、あの街の住人を皆、その屍術で生ける屍に変えた・・・ッツ
俺は絶対に赦さんっお前らをッロベリア、ラルグス―――ッツ!!
第三百四十話 理想主義者十二傳道師ルメリア帝国最高軍司令官、現る
お前達には―――、
「ッツ」
―――、ここであの街で起きたことの借りをきっちり、熨斗を付けて返してやる!! 此処であったが百年目ッ。
“鎌女”こと屍術師ロベリアっお前もここで終わりだ!! 俺が終わりにしてやるっ!!
彼奴らも、青黒い竜に乗って飛翔する俺達の存在に気づいていて、空にいる、試す者やその背に乗った俺達を、その地より見上げているのが分かる。
「っつ」
あいつら、、、。赦さん、ここで『魔餓尽基』をぶった切り、お前らも、その『イデアル』も、俺がぶっ潰してやる・・・!!
試す者の背に乗り、空を征く俺の目に、
「・・・っ、!!」
その眼下に、嶽の頂上に至るその参道において一歩、踏み出す者が一人視えた。『魔餓尽基』その魔法陣、それを背にして佇み、目を眇めて空を、俺達を見上げている奴らの一人が、一歩、二歩、数歩と、その男は、堅いルメリアの軍靴の音を響かせ、屍術師ロベリアよりも前へと進み出た。
「けっ・・・!!」
男は、空の試す者にいる俺達を見上げて舌打ち。その顔を不快に歪めた。
そう、進み出てきたその男の正体はラルグスだ。かつかつ、っと、堅い軍靴の足音を立てながら歩みを進める。ラルグスは錦色の外套を羽織っており、ふてぶてしい態度と不遜な物言いの人物だ。
ラルグス―――、お前はそんなにもえらい存在か?
「―――っつ・・・!!」
『何様のつもりだお前』―――って、俺は面と向かってこいつラルグスに言ってやりたいものだ。
こうして先陣を切るように出てきたラルグスは、天雷山のその嶽の頂に向かおうとする俺達にとって最初にぶつかる相手になるんだろう。『イデアル』の『十二傳道師』の中で、俺達が初めて戦う奴らの一人、というわけだ。
空に浮かぶ、滞空する試す者の背に乗る俺達を見上げるように、数歩近づいて来たラルグス。
ラルグスは堅い軍靴を履き、無地の布製の衣服の上に銀色の鎖帷子のような軽鎧を着込んでおり、さらにその上に筋骨隆々を模した筋肉型の鎧を着ている。さらにその上に、はためく外套をばさっ、っと羽織っている。
そして、ラルグスは自身の頭を、その頭を護るために兜の着いた銀色の鎖頭巾を被り、その目鼻口眉だけを外へ覗かせている。
ルメリアの戦衣に身を包んでいるラルグス。
「完全な戦闘モードだな、、、ラルグスは」
俺は呟いた。
奴ラルグスの被った兜は銀色に輝き、幻獣をあしらった金属装飾が美しくその兜の一部を成し、兜を美しく着飾っている。
ラルグスの腰には剣が見える。腰に革紐を巻き、そこから繋がった剣帯に長い直剣を差している、という具合だ。
その直剣の長さは、このラルグスの足先から腰の高さより長いだろう。日之刀などの刀と比べて、そのルメリア製の直剣の長さは短いが、その剣身の幅は広い、と俺は思う。
筋肉形の鎧を身に付け、腰には、革帯で直剣を止め帯びた者ルメリア帝国最高軍司令官のラルグス=オヴァティオス。彼奴が叫ぶっ。
ラルグスは試す者の背に空へと浮かぶ俺達を、魔餓尽が根を張るその大地より仰望し―――、
「けっFue!! 邪魔なんだよっお前らはよぉッ」
意気揚々と、そのキラキラと白銀に輝く兜を脱いだ。
神雷の台地の聖なる頂の地面に描かれた負の魔法陣。『魔餓尽基』を起動し、稼働させるために設えられた魔法陣の前に進み出て、その場に臨戦態勢のラルグス。
「俺様が撃ち落としてやるぜ・・・ッ!!Et mitterent illud!!」
目を眇めるような動きを伴いラルグスは、その右腕を―――、すっ、っと、揚げた。
俺達を撃ち落とす、だと!?こんなにも距離があるのにか!?
「、、、」
ラルグスを見下ろして観る限り、ラルグスは弓や銃などと言った飛び道具を装備しているように見えない。
で、あれば―――。
滞空している俺達を、試す者の背にいる俺達を、試す者ごと撃ち落とす・・・、とは―――、
撃ち落とす、、、考えろ、ラルグスの言った言葉を。そういえば、俺が、祖父ちゃんにその夜話で、そして、魁斗の師匠はラルグスであり、魁斗が使った技―――。・・・ッツ
「ッツ」
氣刃投射か・・・ッツ
あいつ―――、試す者に乗って空を飛翔する俺達目掛けて、地対空ミサイルのように、氣の刃を飛ばして、試す者を撃ち落とすつもりだ。
ラルグスは意気揚々とその口を開き―――、
「空に逃げ場ねぇッ!!さぁ絶望の時間だ。見せてやる・・・『氣武化』っ!! ―――、」
俺の眼下で、ラルグスは仰々しく、その右腕を、自分自身のその眼前に、指を眉間に当てるような仕草で構えた。
「―――、俺様は、俺様の“力”の扉を開くッ!!Aperire ostium “animae” meae!!」
フシュっ―――、っとその直後、ラルグスの全身から光る氣が噴き出す。
「・・・っつ」
俺は、ラルグスのあの様子、その仕草、その言動にそっくりのやつを見たことがある。
魁斗―――、そういえばお前。
///
『そうだよ、健太!! この技を僕に教えてくれたのはラルグス義兄さんさっ!! 敗者は勝者の糧と成れ―――『天王黒呪』―――『黯黒氣刃投射』―――っ!!」
///
「―――」
って、俺に魁斗の奴は言っていたな、楽しそうに、でも、その顔は焦りで必死に。
「お前に恨みはねぇが、、、・・・だが俺様の手柄のために死んでもらうぜッ!!」
一、二、三・・・ぽう・・・ぽうっ、、、―――そして、五つ、十いくつかの氣の珠が。
ラルグスが放出した淡い霞状の氣と言えばいいのか。それがラルグスの周囲に溢れ、淡く輝く氣が凝縮するように集まっていく。それは、球状に光る氣の塊。ラルグスの身体の周囲に淡く光る球がいくつも浮かび上がる。
それら溢れ出したラルグスの闘氣は、まるで淡く光輝く雲のようであり、雲の中で氷の粒が成長していくかのように、ラルグスが放出した氣の雲の中で、氣は、幾つかの球状に凝縮されていく。
それらは、ふわふわとラルグスの周囲に浮かび、漂い、ラルグスの周囲を揺蕩う淡く輝く彼ラルグス自身のアニムスの珠だ。
「これが俺様の力だ・・・、『氣武化』―――!!」
ラルグスの周囲をふわふわと舞い浮く珠状の氣の群れ。ラルグスが己より放出した氣だ。淡く光る球体の氣の珠。それら、淡い光を放つ無数の氣の珠が、すぅっ、っと音もなく、まるで舞う人魂のように―――。
祖父ちゃんがその夜話の中で、俺に語ってくれたラルグスと三条悠との戦い。その中で、ラルグスは、己の氣を巧みに遣う手強い者だと―――、俺の祖父ちゃんは、俺に夜話の中で話してくれた―――、
「―――」
―――、祖父ちゃんは、そう言っていた。
祖父ちゃんが語ってくれた話。実際にここにきて、俺はラルグスの技は初めて見る。これが、奴ラルグスの『氣武化』―――か。
きっと―――、
「手ごわい」
魁斗の『天王黒呪“黯黒氣刃投射”』
ラルグスの『氣武化“氣刃投射”』
「―――」
でも、俺の“力”がどこまでラルグスに通用するのかどうか、それを確かめて見たくはないか?
俺はまるで自問自答し―――、俺の修行の成果がラルグスの技に、もし通用しなければ、俺は―――。
「ケンタ―――っきますよッツラルグスの攻撃が・・・!!」
アイナの叫び声。
「姫様っ私が迎撃しま―――ッ」
自分が皆の先鋒になる、と、サーニャは言いかけ―――。
だが―――、待ったサーニャ。
俺はやっぱり試したい、確かめたい。本当に俺のこの“力”が、『大地の剱』の剱技が、技が、魔法が、ラルグスの技に通用するのかどうか、それを確かめたいんだ。
だから、俺は、
「ッ」
さっ、っと、俺は試す者の、頸筋を掴む手を離した。
すっくと―――、っ、俺はその場に立ち上がり―――、立つ。
「サーニャ。俺がやる。やらしてくれ」
それは、宣言だ。皆に示した俺の宣言。俺以外は、みんな女の子女性だから、俺にもすこしはかっこいいところを見させてくれ、という気持ちもある。
俺は試す者の背の上に立つ、その固い青黒い鱗の背中の上に。
「ケンタ殿、・・・はい、、、」
サーニャは、やや陰ったその表情で肯いた。
「、」
すまん、サーニャには、きみの出番を奪ってしまって。
「ヶ、ケンタ・・・?」
一方、目を見開いて驚くのはアイナ。
「ケンタさまには勝算があるのでしょう、アイナ様」
アターシャと言えば、ほとんど感情の変化をその表情には浮かべていない。