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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十九ノ巻
336/460

第三百三十六話 試す者の背に乗りいざ征かん

 撫ででみよう。逆鱗にはならないように、っと。

 なでなで、、、

「おっ、、、!!」

 顔から尻尾に向かって、逆らわずにその脚の上の胴体を撫でると、めちゃ滑々だ。でも、固い、と思う。


“くるる、、、っ///”

「!!」

 あっ、また鳴いた。試す者の、俺が撫でたときの音がかわいく懐いているように聴こえるのは、俺の気の所為だろうか?


第三百三十六話 試す者の背に乗りいざ征かん


 ちなみに、試す者のお腹のほう、飛ぶときに地面を向くお腹のほうの体表は、やや色が薄く、その鱗は背中の鱗より肌理が細かい、と思う。

 尻尾もとてもすらっとしていて、ルストロさんのその手記の、


『まるで鞭のような、カナヘビに似た長い尾を持っていたのだ―――』


 その記載と同じだ。


 すっすっすぅ~、っと。

「~~~♪」

 鱗の上を手で滑らしてもすべすべだ。俺は試す者のその綺麗な尻尾を、猫の尻尾をそう撫でるように―――、


 試す者は、俺の、成すがままに。


 首を垂れ、その黄金色の目を細めて、まるで猫が、その瞳をとろん、と、させるかのように―――、

“くるるるるる、、、っ///”

 ―――、気持ちよさそうに、さぞご満悦に、試す者もリラックスしていそうなその様子だ。



「ケ、ケンタ殿・・・?」

「あ、あの?ケンタ?早く乗っていただかいないと・・・」

「ケンタさまは、試す者を寝かしつけるおつもりでしょうか?」



 ハッと。

「っつ、あ、いや―――」

 サーニャとアイナとアターシャに指摘され、俺は、差し出してくれているサーニャの手甲の手を掴んだ。

 這い上がるようにして、試す者のその背へと。まさか、岩壁登攀ならぬ、雷竜登攀になるとは、な。それは、初めは思わなかったけどな。



 どこに座ろうかな? ぱっと見ても、試す者のその青黒い鱗の背中は、満員だ。先頭に、アイナが、その後ろは、羽坂さんとアターシャ、その後ろ三列目は、サーニャと一之瀬さんがそれぞれ、並行に座っている。

「―――」

 じゃあ・・・俺は尻尾に一番近いところかな? 尻尾に近く胴体が狭くて落ちそうなのが、ちょっと心配だけど。


「こっちですよ、ケンタ・・・♪」

「アイナ?」

 俺が呼ばれて、アイナを見ればアイナは俺を手招き。

「ケンタ貴方の特等席はここですっ♪」

 ぽんぽんっ、っと、アイナは、まるでここに座れ、と言う風に―――、


 マジか!?俺が先頭だそうだ!!

「一番前!?」


 ―――、アイナは試す者のその頸筋を軽く叩いて俺に示した。

「えぇ、さっ早くケンタ」

 マジか!! 確かに見映えはよさそうだけどな。


 いそいそと、俺は、試す者の鱗に、その取っ掛かりに手と足を掛け、試す者青黒い竜の身体を、その背中をおぼつかない足取りで、、、ちょい失礼とばかりに一之瀬さんやアターシャに、気を遣わせて足場を作ってもらい試す者青黒い竜の頸筋に跨ったんだ。


 目の前には、試す者の角が生えたその頭。


「っつ」

 どきどき―――っつ。は、始まるんだ。

 もちろん俺が竜なる生き物の背中に乗るということも初めてのことだし、それ以前に竜の姿すら見ることは初めてだ。


 そして―――、これより先、待っているのは『イデアル』との戦い。


 これから本当に、神雷の台地へ。試す者青黒い竜の背中に乗って、女神フィーネの神託のとおりに、俺は、いや俺達は征く。『イデアル』のその十二人会、、、いや十二傳道師のもとへと乗り込むんだ―――。

「、、、戦い、か」

 俺は塚本さんに、日下修孝『先見のクロノス』を降して引き渡すっていうことも、約束したしな。

 敗けられない。十二傳道師との戦いは敗けられない。

「(ごきゅ)―――、」

 ぐっ、っと、俺は固唾を呑んで両の拳を握り締めた。


「ケンタ―――」

 アイナが俺の名を呼ぶ。

「っつ」

「―――、きっと、大丈夫です」

 ス―――、っとアイナは、俺の結んだ右手の拳にその柔らかい手の平を、上からまるで包み込むように、俺の手に添えた。

「―――あぁ」

 俺は肯いた。

 俺は、アイナに心配されるほど、もしくは気づかれるほど、この気持ちを面に出していたんだろうか?

「えぇ、ケンタ。貴方は、そして私達は必ず『イデアル』の者達に勝つ、とそう私は思っています。なぜならば―――、」

「―――」

 アイナはその藍玉のような両眼を、そのきれいな視線を俺に向け、試す者にも。そして、その口を閉じることはない。


 アイナはやや前のめりに、姿勢を傾かせる。そして、その血色のいい唇を開く。

「『試す者』よ。私は、この惑星(ほし)の女神フィーネ様の忠実なる巫女姫我が名はアイナ=イニーフィナ。これより、私達は女神フィーネ様の聖なる神域神雷の台地へと侵入せし、賊徒を討つ。私達を乗せて、そのまま私達を女神の神域まで連れていってください」

 アイナは試す者のその耳元で、聴こえるように言ったんだと思う。


 試す者はアイナの言葉を、その意味を解しているのか―――、


 試す者の、青黒い鱗の生えた首回り、一番先頭にて跨る俺のその目の前で。

「っ!!」


 すぅ―――、っと、猛禽類がそれをするように、試す者の二枚の翼が左右斜め上に伸ばされる。



 バサバサ―――

「うおっ・・・!!」

 身体が浮く―――、否、試す者青黒い竜は、ゆっくりとした動きで、その二枚の翼を上下に羽搏かせ―――。


 ふわ―――、、、っと、その試す者の、ヘリコプターよりも大きいその巨体が浮き上がる。


 バサバサ、バサバサ―――、っと。試す者青黒い竜彼女は、そのこうもり傘のような皮膜の翼を羽搏かせながら、ぐんぐんと空高く上昇。


「・・・っつ」

 地面が遠く、どんどん離れていく。足が浮き、俺達がさっきまでいた地面が下になっていくぜ・・・っつ。落ちたらやべぇな。

 っと、俺は、試す者の頸筋を抱く両腕、掴む両手をしぜんと力をこめた。

 アイナやサーニャは、どうなんだろう?

 ふと俺はそう思い、そろぉっと、落ちてしまわないように視線だけで振り返れば、


「・・・―――。、っ?」

 アイナと視線が合った。アイナは、俺に『どうしました?』というような雰囲気で、俺を見て視線を移して、俺に微笑んでくるものだから。

「あ、いやアイナ」

 なんでもないよ、と俺は。


「・・・っつ」

 視界に入ったものとしてその後ろの羽坂さんは、興味深そうにしていて、竜の背にこの飛翔し、上昇していく情景を、きゅぴーんっ、っと、その赤い電話にて、パシャパシャ、、、っと頻りにこの光景を撮影している。


「―――」

 アターシャは、いつものその無表情で、アイナを見ている。


「―――」

 サーニャも、その厳しくした碧眼で前方を、試す者の風圧が厳しいのか、眼を眇めてはいる。


「・・・!!」

 一之瀬さんは、このようなイニーフィネの幻想的な光景が珍しいみたい。たぶん試す者青黒い竜のような存在が実在していることにも、感動?驚嘆?しているんだと思う。

 まぁともかく、驚いてはいるみたいで、一之瀬さんはその両目を大きく見開いている。ときおり、風圧で苦しそうな目元になってはいるが。


「ケンタさま―――、」

「ん?」

「―――、前を、正面を向いておられたほうがよろしいかと」

 あれ?俺アターシャに心配を。


 じぃ―――、と、だが俺はそのアターシャの俺を見る眼差しで気づく。アターシャは俺に“心配”して言ったんじゃない。

 たぶん、アターシャのその『前を向いていて』という俺への言葉は、“注意”だ、忠告に近いものだろう。

「あぁ。悪ぃアターシャ、余所見してた」

「いえ、ケンタさま。差し出がましい真似をしました」


「―――」

 俺は前を、正面を、試す者青黒い竜のその鱗の生え揃った頸筋より前。試す者が飛翔していくその方向を視る。

「?」

 ん?それで気づいた。、と言うか、身体にかかる重力で判る。試す者は、麓から神雷の台地へと、その絶壁に添って真っ直ぐに真上に向かって直登で飛翔して進んでいるのではない、ということに。


 試す者は、頂上へと至るドライブウェイのように、螺旋状に、もしくはヘアピンカーブを描くように徐々に、高度を上げて飛んでいる。



 試す者の背に乗ることしばし、遥か空に浮かんでいた垂れ込めるような天雷の雲海も、もはや俺達の目の前に迫っていた。

 天雷の雲海は、ときおり紫電が走り、その雷光と雷鳴―――。

「ケンタ―――、皆も、まもなく天雷雲に突入します」

 アイナのその言葉。アイナはそう言った。


 確かに目の前はもう、アイナの言ったそれだ。天蓋のように空に灰色に垂れ込め、ところどころに紫電が走る雷雲塊はもう目前、目と鼻の先―――、

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