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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十八ノ巻
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第三百二十一話 最期の議題

 ついでに言うならば、同志針崎統司も、いつの間にかこの場にリモート参加に復帰している。

 各々の『十二傳道師』を一周させた視線を戻し、導師は。

「―――、神の神業の代理人であり、神の如くの思考と理念と志を併せ持つ我々五世界の権衡者たる『イデアル』。その『理想の行使者』達よ『十二傳道師』達よ。哀しいかな、最後、、、最期の議題と征こう―――」

 導師のその言葉―――。


 導師は、ほぼ真正面の席に座る座主を見つめ、

「―――、、、っ」

 その『“彼女”』こそが、導師の言った『最期の議題』である。


第三百二十一話 最期の議題


 導師に優しい眼差しで見詰められて、きょとん、っと―――、する者こそ、『その“彼女”』。

「?」

 ―――導師の、その意味深長な、じぃ、っと、自身を見詰めてくるその優しい視線を、受けて“彼女”は、わけが分からず顔をきょとん、とさせたのだ。

 『その“彼女”』―――、導師が見詰める真正面に座す“彼女”こそ“アネモネ”その人である。


 導師は、屈託のない笑みを零し、、、。

「・・・っ」

 導師は、自身のほぼ真正面に座す“落伍者”『大地の魔女アネモネ』を見つめて、にこり、とその笑みをこぼした、というわけである。

「『十二傳道師』の皆よ。哀しいかな、では、最期の議題を始めよう―――」



 ハッと、

「ッツ・・・!!」

 土石魔法師いや、魔法王国五賢者の一柱『大地の魔女』アネモネ=レギーナ・ディ・イルシオンは、導師が思っている事、その考えを悟る・・・!!

 自身の『正体』は、既に導師にバレている、のだと。自分自身は、私はこの刻まで“泳がされていた”のだ、と。


 アネモネの、内通、裏切り行為の発覚に際して―――。


 先ずは、その彼女アネモネから見て、左前方の、導師から見れば特務官No.702の側からの、座主の動きから見てみよう―――。



 チャ―――、っと氣導銃『日下零零零号』を構える者。

「儂は悲しいぞ、、、アネモネよ・・・」

 『流転のクルシュ』ことクルシュ=イニーフィナは、その席に座ったままの姿勢で、アネモネを褪めた眼で見つめる。

 懐に隠し持っていた氣導銃を右手に持ち構えて、細い人差し指を引鉄に掛けつつ、その黒い銃口をアネモネに向ける。



 じぃ。っと、その探るような目つきの者。

「―――」

 『探究者』こと針崎統司は、机上に置かれた端末画面のその向こうから、此度の事の成り行きを見つめている。“さて、どうなるのなら”というような視線である。



 ズア・・・。っと、仄暗い闇黒の負の陰氣(マナ)を膨れ上がらせる者。

「いひっきししししっ♪ひひひひひっ♪」

 『屍術師』のロベリアは、仄暗い衣装に身を包み、その頭の上には、鍔の広い暗色の三角帽を被っている。

 彼女ロベリアは、狂気の喜悦に満ち溢れ、自身の魔力において造り出した空間の、その中に右腕を突っ込む。

 そうして、その彼女自身の得物の『鎌』の柄を掴み取れば、ロベリア自身の身の丈以上の大きな一振りの大鎌が現れる。

 その大鎌は、朱く鈍いマナの光、―――その彩は月蝕時の赤銅色の禍月の様、炉の赤熱化した鋼の様、もしくは、熔岩のような赤熱―――、が点っている。『屍術師ロベリア』の、その鎌、、、それは『朱月鎌(ルルーノ)』という名なのだが、その形状は、西洋風の鎌であり、鎌の刃は三日月型をしている。



 ザッ、っと立ち上がり、射―――、っと、静かに弓矢を構える者。

「―――アルスランと内通する“地の魔女め”」

 中世中央ユーラシア風の衣装を身に着ける若い男は、まるで、草原に棲まうオオカミのような鋭い目つきで、袈裟懸けにした矢筒から矢を掴むや否や、左手にて弓の弦を握り、右手は糸に矢を番える。彼が狙う獲物は無論―――、その鋭い銀色の鏃の鋩が向くのは、左斜め前に座るアネモネである。



 ザ、っと静かに立ち上がり、すっ―――、っと、その腰に帯びた日之太刀を抜く者。

「残念だ、アネモネよ。俺は、お前のことは嫌いではなかった。だが、、、裏切り者には罰を。さぁ、『理想』への礎と成れアネモネよ」

 『先見のクロノス』こと日下修孝は、アネモネから見てすぐ右隣の座主である。彼日下修孝は淀みのない流れるような剣術の所作で、その腰に差している日之太刀『霧雨』を抜き放った。

 長大で白銀に輝くその白刃は、その鋭い鋩は、『獅子身中の虫』と日下修孝自身が、思っている者であるアネモネを向く。

 その日之太刀『霧雨』の長い刀身の先に至る鋭い鋩は、すぐ横の座主であるアネモネに、今にも届きそうである。



 我らが大地の魔女アネモネ。この最期の議題の当事者である。

「ッ。―――・・・」

 周りの『十二傳道師』に、敵意を向けられたアネモネは自身の反攻に備えて、その得意とする大地の魔法土石魔法を、その口内で呟き、詠唱するのだ―――。



 ザッ。ぬぅ―――、っと、立ち上がる黒鋼(くろがね)の巨躯を持つ者。

「―――」

 『執行官』は、アネモネから見てすぐ左隣の座主である。彼『執行官』は無言で、ゆらっ、っと、その巨体で立ち上がり、その体躯で、その黒金の鋼の鳩胸で、まるでアネモネを威圧しているかのようだ。

 その執行官の体格と比べれば、アネモネの体格は、その半分の大きさもない。黒烏と雀の大きさほどの違いがある。



 ザっ。キュィイイイ―――。っと、攻撃性を伴ったアニムスを光り輝かせる者。

「・・・アネモネ貴女がまさか、『落伍者』になるなんて、、、」

 『総司令官』のアリサは、未だに信じられない、というような様ではあるが、その右腕を前に向け、アネモネに向けて構え、その右手の手の平が、攻撃力を伴うアニムスの光に輝く。

 まるで、アリサが掲げた掌から氣功波やエネルギー弾でも撃つかのような仕草である。



 ザ。シャーーーっ、っと、金属が擦れる音を伴いながら、その腰に帯びたルメリアの直剣(スパタ)を抜く者。

「あーあ。お前、、、救えねぇよ・・・、けっ」

 月之国に在るルメリア帝国『最高軍司令官(ドゥクス)』のラルグス=オヴァティオスは、シャーーーっ、っと、その腰にぶら下げ帯剣していた『直剣』を抜く。

 ラルグスは、その『直剣』の鋭い銀色に輝くその鋩を、アネモネにちらつかせるように見せながら、悪態を吐くのだ。



 ・・・? 一人事態が上手く呑み込めず、狼狽する者。

「ど、導師よ、皆よ。 、、、こ、これは・・・いったい、彼女が一体なにをしたというのだ―――・・・?」

 発言中であり、その席から立ち、導師に『理想の行使』のその報告の顛末を話していた『炎騎士』グランディフェル。彼だけが、この事態についてくることができず、また、この状況を呑みこめていない。

 『イデアル』の敵方である、『アイナ=イニーフィナの一団』に身内がいる彼グランディフェルだけは、此度の『最期の議題』を、伝えられていなかったのだ。

 おろおろという態度には現れていないが、グランディフェルは動揺し、導師や周りの同志、その言動を探るように、見回す。

 だが、動揺しているグランディフェルに、周りの『十二傳道師』の誰も何人たりとも何も答えず―――。



 次の席は、血封されていて無期限久闊(きゅうかつ)中の『紅のエシャール』と、その次の席は、今現在アルスランと死闘を演じているチェスター=イニーフィネである。



 すっ、っと。一歩脚を前へと踏み出す者。

「導師。下がってください」

 『特務官No.702』は、アネモネの魔法の反撃に備えて、護衛者のように『導師』の前へと一歩進み出る。


 グランディフェルを覗く誰もが、アネモネに対して臨戦態勢。


 アネモネ彼女の敵は、この場に集う『イデアル』の十二名。『導師』、『監視官サナ』、『特務官No.702』の三頭たる三名と。


 その実行部隊たる十二傳道師―――、『流転のクルシュ』、『探究者針崎統司』(彼はリモート参加だが)、『屍術師ロベリア』、『中世中央ユーラシア風の衣装の男』、『先見のクロノス日下修孝』―――、


 そして、彼女アネモネの敵は自身を挟んで、左側に、


 ―――『執行官』、『総司令官アリサ』、『不死身のラルグス』、『炎騎士グランディフェル』(彼はまだうまく状況が呑み込めておらず、自身のその得物は腰に差したままだ)、


 という、彼女アネモネの敵は実質七名である。


 アネモネは、

「―――っつ」

 反抗し、自身が逃れる時間を稼ぐべく―――、


 バッっと、アネモネは、その左手に持った自身の地属性の魔導書を天井高く掲げる。すると、アネモネの、攻撃魔法を行使する、という気持ち、その意志の強まりがきっかけとなり、彼女自身の魔力が急速に高まっていく・・・!!

 それは黄金色に見え、光り輝くアネモネの魔力は強く眩しく、希望に満ちるそのような熱く激しい輝き。『イデアル』の構成員が集うこの会合の場は、アネモネの大地属性の眩しい黄金の光に包まれ―――、

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