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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十八ノ巻
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第三百二十話 炎騎士は報告を終え―――

第三百二十話 炎騎士は報告を終え―――


―――ANOTHER VIEW IDEALS


///


 場面は、再び『イデアル』の会合の場へと移る。


「・・・なるほど。して、同志グランディフェルよ。理想への叛者『バルディアの獅子アルスラン』を求めてバルディア大侯国の都ウィンニルガルドへ向かったそなたらの『理想の行使』はどうなったのかね? その理想の行使の進捗状況を導師たる私に聞かせてほしい」


「はっ。導師よ―――」

 炎騎士グランディフェルは、はきはきした受け答えで―――、



 ―――、導師に先述したことを話すのである。


「はっ。導師よ。任務遂行の進捗状況ですが、チェスター殿下と、そこにいる『執行官』、そして俺の三人は、うまくバルディア大侯国の都ウィンニルガルドに潜入することに成功。さっそく俺達は、『理想の行使』である『バルディアの獅子の暗殺』と『バルディアの聖女の誘拐』―――、いや勧誘に向けて行動を開始し―――、しかし、なぜか俺達の『理想の行使』は、バルディア側向こうに筒抜けだったのだ」

「ほう?それはまた・・・」

「すまない導師よ、その理由は判らぬ。俺と執行官同志は、決定権者チェスター殿下の手筈通り、俺と執行官は侯都ウィンニルガルドの城下町で騒ぎを起こし、その隙にチェスター殿下が城内に潜入。殿下がアルスランを討ち取った後、『バルディアの聖女』の奪取。という流れであったのだが、、、。導師よ、俺達が潜伏した貧民街の、つまり俺達はその、うち捨てられた小さな廃屋に潜伏したのだが、どうしてかその俺達の行動が、バルディア側に漏れたようで・・・、俺達はバルディア軍、、、それも精鋭部隊と思しき者達に、反対に急襲されたのだ」


 導師は、グランディフェルのその驚愕の内容に、はぁ・・・、と息を呑む。

「―――っ」

 普段は能面のように表情が動かない導師の表情が僅かに崩れたのだ。

 そして、導師は僅かに動揺を見せるその表情で、静かに口を開く。

「―――っ、同志チェスターは、導師たる私の帰投召喚に応答せず―――、『バルディアの聖女』をその手中に収めた、という報せもない。同志グランディフェルよ、同志チェスター皇子の動向を私に教えてほしい」


 その導師の言葉を聞き、またその行動を見て、グランディフェルの言葉も止まる。

 グランディフェルは、明らかに動揺し、

「、っ―――、導師よっ、で、殿下からの・・・、報せもない、と。・・・ま、まさか―――、」

 まさか、自身の主のチェスター殿下は、既にアルスランに討ち取られており、、、―――、という想像が、彼グランディフェルの頭をよぎったのだ。


「志半ばで、理想への叛者『バルディアの獅子』に同士チェスターが討ち取られた、ということは、、、あの同志チェスター皇子に限っては、それはあるまい、同志グランディフェルよ。それとも、同志グランディフェルは、同志チェスターが『理想の叛者アルスラン』に討ち取られたほうが良かったのかね?」

 だが、すぐに導師は、グランディフェルや、それ以外の『十二傳道師』達にも、動揺が拡がるのを阻止したかった。


「、っ!! い、いえっ、導師よ・・・、殿下は俺の主です、そのようなことなど、一度も思ったこともない・・・っ」

「、、、では、動揺することなく、報告を続けたまえ。同志グランディフェルよ」


「はっ、導師―――」

 そうして、グランディフェルは己の言葉を発すために、その口を開く。

「―――、俺達が潜伏していた廃屋に対し、彼奴等バルディア勢は容赦なく巨大な火炎魔法を行使。即ち俺達のいる廃屋に、大火球を投げ入れてきたのです」


 グランディフェルからの報告で、導師の顔が、その表情が、ぐぐぐぐっ―――、赦しがたしバルディアの叛者どもめ、と揺れる。

「な、なんと悪辣言語道断なっ・・・!! バルディアの者達は、無抵抗の我らが同志そなたら神の如くの使徒たる我らが『十二傳道師』に対し、暴力という手段に出たというのかね、、、っ。神の如くの思考を持つ我ら理想の行使者『十二傳道師』に対し、暴力に訴えるなど、彼奴等の行ないは、悪辣にして言語道断なものである!! 神の如くの思考を持つ我々理想の行使者『十二傳道師』に対して(もっ)ての外たる行為を犯した、というのかね・・・っ!!」

「はい、導師よ」

「くっ―――、業が深い『理想への謀叛人』達バルディア勢は、我々神の如くの思考を持つ理想の行使者、崇高なる私の同志達『十二傳道師』に対して、容赦なく火も掛けたのだね?同志グランディフェルよ」

 導師は念を押す、ようにグランディフェルに言った。


「はい、導師。彼奴等バルディア勢はいきなり、即ち、我らに対し宣戦の呼びかけも、殉教を促すこともなく、開戦の布告もなく、我々『理想の行使者』が逗留している旅籠(はたご)に、いきなり火炎魔法を行使してきたのであります。そして、その結果は火を見るよりも明らか。我らがいた廃屋、、、いえ旅籠は、爆発炎上。周囲は瞬く間に火の海となったのです―――」


 いつの間にか廃屋のことを旅籠と言っているが、グランディフェルは自身の言葉を続け―――、


「―――、チェスター殿下も、そこにいる執行官同志も、そして俺も、火の手が上がった家の消火を諦め、外に退避しようと―――。しかし、導師よ、既に周りはバルディア勢の精鋭部隊と思しき軍隊に取り囲まれており、『理想の決定権者チェスター殿下』の判断と、その『気貴き殿下の異能』により、俺達は火の海と化したその場から空間転移し、戦略的撤退を行なったしだいであります―――」


 導師は、グランディフェルからの此度の『理想の行使』の詳細な報告を受け、その経緯に、その顛末に、その結果に、


 ぷるぷるぷる、、、

「くっ・・・、『理想』に叛きし『バルディアの獅子アルスラン―――理想への叛者』め。『理想』とは、かくも尊きものだというに、、、彼奴等めっ」

 と、導師は身体を震わせたのだ。


 それは、感情をなるべく面に出さない導師にしては、とても珍しく、怒りやもしくは、憤りといった感情の現れであった。


「ど、導師よ・・・」

 その導師の動揺は、配下であるグランディフェルにも心配されるほどだった。


「っ、ほ、報告を続けたまえ―――『同志グランディフェル』よ」

 導師は、なんとかその自身の感情を押し殺すと、改めてグランディフェルにそう指示を出したのだ。


 グランディフェルは、導師の指示どおりに、

「はっ、導師よ」

 グランディフェルは、この一番左端の、誰もいない席に一礼。彼グランディフェルは、一つ開けて向こうの一番左端の席を一瞥して、頭を下げた。その席の座主こそ、チェスター=イニーフィネである。


 チェスターの席に向かって一礼を終えたグランディフェルは、すぐに導師に向き直ると、

「チェスター殿下は単身、導師から与えられた任務を今も遂行中であります。この俺と執行官同志は、導師貴殿の召喚令により、この会合の場に推参したしだいであります」

「ふむ、よろしい同志グランディフェルよ―――」

 導師は、おもむろに。その深慮遠謀なる眼差しの視線を、グランディフェルから外し、だが、グランディフェルを含めたこの『理想なる会合』の場に参上せし、この場にいる『理想の行使者』十名、、、すなわち、アルスランと闘っている『チェスター皇子』と、血封された『エシャール卿』以外の『十二傳道師』十名である。


 導師は、自身の左側より、その十名を見渡し、見回すのだ。


 ついでに言うならば、同志針崎統司も、いつの間にかこの場にリモート参加に復帰している。

 各々の『十二傳道師』を一周させた視線を戻し、導師は。

「―――、神の神業の代理人であり、神の如くの思考と理念と志を併せ持つ我々五世界の権衡者たる『イデアル』。その『理想の行使者』達よ『十二傳道師』達よ。哀しいかな、最後、、、最期の議題と征こう―――」

 導師のその言葉―――。


 導師は、ほぼ真正面の席に座る座主を見つめ、

「―――、、、っ」

 その『“彼女”』こそが、導師の言った『最期の議題』である―――。

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