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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十七ノ巻
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第三百十五話 『叡智の力』の停止、封印、封緘、封殺

 直剣の『封殺剣』の刃渡りは、長尺ではないが、無骨な様であり、その剣身の鎬の肉厚は太く厚い。その重厚さでいえば、まるで鉈か斧に近く頑丈な剣である。

 チェスターの野太い、剣によるたこが生じた五本の指が握り締めるその『封殺剣』の柄の頭にも、青緑色の輝きを発する丸く球体の宝玉が、球体の半ばまで埋め込まれている。


第三百十五話 『叡智の力』の停止、封印、封緘、封殺


 ス―――っ、っと、チェスターは、まるで鞘からその刃を滑らせるように、『封殺剣』のその銀色に輝く剣身を、ゆるり、と優雅に―――、


 チェスターは、『封殺剣』を抜きながら同時に言う。

「俺は、五世界中を渡り歩き、アルスランお前のような“偽強者”を、この『封殺剣』で討ち取ってきた。アルスランよ、『異能の力』に頼り切った“偽強者”のお前も、俺に殺される“おめでたい奴”の一人となる」


 ―――、アルスランに対してまるで見せつけるかのように、『封殺剣』を抜き放つのだ。


 キン―――


 ―――っ、静かなる静寂。

 すると辺りに、周囲に、施療院の敷地内全ての範囲に“静寂”が齎されるのだ―――。


 “それ”は、全ての『叡智の力』、即ち『異能』『魔法』『氣』、さらにそれらを組み合わせた『魔法科学力』『超科学力』の停止、封印、封緘、封殺―――。



 シュー、、、。っと、アルスランの『劫炎の剱』に点る火が消え、煙となり、、、。


「ッツ・・・!!」

 アルスランは、己の身や、己が持つ魔法剣『劫炎の剱』に起こったその異変を悟り、驚愕に、その双眸は揺れ、眼を見開くのだ。


「そうだ、アルスラン。お前が身を以って感じているその感覚こそが、俺の聖なる『封殺剣』の真の力の効果、威力だ」

 チェスターはやや得意気に言った。


「―――・・・」

 チェスターの持つその『封殺剣』の剣身と鞘が、互いに離れたとき、その『封殺の力』の真価が、発揮され、周囲に影響を及ぼす形で行使される。


 カッカと()えていた『劫炎の剱』の劫炎は、その火焔は、消え失せ―――。アルスランは、自らの氣も扱えなくなる。

「っ」

 アルスランは、っ、っと、その感覚を不快に覚えて、表情を歪めた。


「ここで俺に討ち取られるのはお前のほうだったな、アルスラン」

 チェスターがその『封殺剣』を抜いた直後。


 『封殺剣』の『封殺』という特殊効果を封じていた、(こじり)に嵌め籠められていた橙赤色の宝玉と、柄の頭に嵌め籠められていた青緑色の宝玉とを結ぶ“縛め”は解かれ、封殺剣はその真の威力を解き放たれ、行使されるのだ。


 シューっ、っと、アルスランの持つ劫炎の魔女カリーナが鍛えし魔法剣『劫炎の剱』に、迸っていた火焔は、みるみるうちに小さくなり萎み、、、そして、終に魔法の火焔は、ふっ―――、っと、消え失せたのである。

「オレの『劫炎の剱』が―――元に、、、」

 そして、アルスランの『劫炎の剱』は、普通の、通常時のただの銀色の輝きをした、鋼の(クルチ)に戻る。


「理解したか?アルスランッ。お前の言った『異能封殺』は、お前のような異能や魔法に頼り切り、それに拠ってしか戦うことのできない“偽強者”にとっては―――」

 チェスターは、ダンッ、っと、固い石の床を、勢いをつけて蹴り―――、

「―――、諸刃の剣だということが、なッ―――ッ!!」

 今やイニーフィネ皇国のチェスター=イニーフィネ皇子は、その『封殺剣』を右手で握り、それを以ってバルディアの剣獅子ことオテュラン家のアルスランに斬り掛かる・・・!!


 身長百八十センチを超える長身、そして、引き締まった筋肉質の体躯、さらに『封殺剣』という得物をその右手に持っているというにも係わらず、そのチェスターの動きは、信じられないほど俊敏だ。

 まるで発条(ばね)(弾機)のような力としなやかさを併せ持つ、そのように鍛え上げられた肉体なのだ、このチェスター=イニーフィネという男は。


 だが、しかし―――、

「フン・・・っ」

 アルスランは鼻で笑った―――。チェスターに相対するアルスランは、その口元を、口角を、ニヤリ、と(もた)げて笑う。


 飛び掛かったチェスターは、瞬く間に、自身の間合いの中に、アルスランが入ったことを確認するやいなや、斬るには絶好の機会。

 自らの覇道の前には、ちっぽけな端武者であろうアルスランを、斬殺する瞬間は今まさに訪れた、と。

 彼チェスターは、たとえ蚊のような羽虫を殺すときにも、全力を以って殺し、叩き潰しにかかるような、根っからの武人であり、権威主義者。

 自身の意にそぐわぬ者や、反乱者は全力を以ってその息の根を止め、粛清し、悉く根絶やしにする辛辣な男である。

「―――ッツ」

 せやッ、っと、チェスターは、右手にしたその『封殺剣』を、“自身にとって取るに足らない者であろう”アルスランの頭上、右肩鎖骨の辺りから、その左腰に掛けて袈裟懸けに斬り落とす・・・!!


 その『封殺剣』の刃の斬撃の斬道は、必ず彼奴アルスランを真っ二つにするという、己のそのような強い意志を前面に表して押し出したもの。

 闘争、戦いでしか生きることのできないチェスターの我欲でもある。


 チェスター皇子は、“仮初の強者”自身の口癖である“偽強者”であろう『バルディアの剣獅子アルスラン』の、その息の根を止め―――、


 チェスター=イニーフィネは、自身の至上命題と、『イデアル』の『十二傳道師』として、その『理想の行使者』としての目的が、彼チェスター皇子の頭の中で、彼の思想は混沌と混ざり合ったその状態であり、


 ―――、脅かす存在たるアルスランを、完全にこの五世界より抹殺すべく、こうして、この惑星(ほし)の五つ世界の一つオルビスにあるノルディニア王国を構成する一つの邦であるバルディア大侯国へと出張ってきたのである。


 だが、アルスランとて、百戦錬磨の強者である。魔法剣を持つ前の彼は、通常の刀剣を揮ってきたのだ。

 彼アルスランが、先ほど自身あり気に、フン・・・っ、っと、チェスターの言動に対して軽く鼻で笑ったことから、判るように、アルスランは百戦錬磨の強者である。



 彼アルスランは、国を亡くし、その原因たるルメリア帝国への復讐を誓って、無一文から身を立て成り上がり、自身の前に立ちはだかる敵対者は、討ち滅ぼし、政敵は屈服させてきた。

 敵には苛烈な一方で、だが、自身の伴侶達や仲間達には優しく、慈愛を振り撒き決して見棄てず裏切らない。こうして彼アルスランは、今のこの『地位』を手に入れたのだ。


 このオルビスでは、『剣獅子』と呼ばれるアルスランは、善人とはとても言い難い。自身の目的『ルメリア帝国への復讐』のためには手段を選ばず、自身の強固な正義と意志と信念を振り翳し、己の覇道を征くオテュラン家のアルスランである。


 彼アルスランは意志半ばにして、未だに志半ばの、このようなところでイニーフィネ皇国チェスター=イニーフィネ皇子に、討ち取られる存在では有り得ないのだ・・・!!



「そらッ―――」

 チェスター皇子は、その大剣を、封殺剣を易々と扱い切り、袈裟懸けにアルスランを二つに斬り降ろすべく―――、その封殺剣を揮う。

 ブゥンッ―――!!っと、風切音。


 タンっ、っと。だが、しかし―――、

「―――」

 ―――、軽やかな足捌きで、アルスランは、そのチェスター皇子の斬撃を易々と、軽々と避け、後方へと跳ぶ。


 その直後、チェスターの袈裟懸け斬りの斬撃が、刹那アルスランがいたその場の空気を切り裂いていく。


 チェスターは、自身の最速の斬撃がアルスランに軽々と避けられたことを一瞬で悟り、

「なに、っ・・・!?」

 僅かにその目元を厳しくさせた。想定外のことであったのだ。


 ブゥンッ―――、っと、風切音を立てただけに終わった。

 アルスランがそれまで立っていた所の空気だけを切り、チェスター皇子は、その『封殺剣』をただ振り回した、だけに終わっただけということだ。


 チェスター皇子は、アルスランの胴を斬り、真っ二つにするつもりだったのだろうが、我らが『バルディアの獅子』またのを『剣獅子』―――、

 オルビスにおいての主人公たるオテュラン家のアルスランは、数多の死線を掻い潜り勝利を収めてきた。その白兵戦や格闘においては最強。百戦錬磨の強者である。

「どうしたというのだ?チェスターよ、そのように目を見開き驚いて。オレが貴公の斬撃を易々と避けたことが、そのように驚くことか?」

 アルスランの、その言葉を受け、


 チェスターはその目元を鋭く、

「、っ―――」

 再び元の厳しい、冷たい眼差しに戻した―――。

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