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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十六ノ巻
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第二百九十八話 我らが土石魔法師の報告

「此度の、天雷山での『理想の行使』の防人。その防人のことである五世界の権衡者の人選に、同志『総司令官アリサ』を加えてやってほしい」

 きょとんっ、っと。

「ほへ?導師?」


 ぱぁっ、っと。一方で、導師に直接名指しされ、喜ぶ者がいる。

「どっ、導師さまっ・・・!? ほ、ほんとうですのっ!?導師様っ♪」

 その者であるアリサは、目を歓喜に輝かせた。


第二百九十八話 我らが土石魔法師の報告


 ほへ? っと、一瞬きょとんとなったロベリアであったが、すぐに彼女ロベリアは、この状況を呑み込む。

「えぇ・・・導師ぃまじー。だって、この機人の女ってぇー、火力ばっかりバカでかくてぇー、全然隠密行動に適していないしぃ―――、目立つから敵にすぐバレちゃうってぇ~。それでもいいのぉ?導師―――きゃはははははっ♪」

「だが、同志ロベリアよ。それを補って余るほど、同志アリサは、此度の『理想の行使』において必ず役に立つだろう」

「えぇ~マジぃっ? こいつがぁ導師ぃ」

「うむ、同志ロベリアよ」


「この惑星(ほし)をも滅ぼすとされる七基の超兵器『雷基』を狙う不届き者の賊徒は、総勢四名だったね、同志『土石魔法師アネモネ』よ」

 導師は、アネモネにその双眸を、その視線を向けた。


「はいなっ♪『導師』・・・。敵はたった四人ですぜ、導師さま♪ ふふ、くすくすっ♪」

 アネモネは、にやり、と、あやしく笑う


 そして、アネモネから見て二時の方向の、右斜め前の席に座るロベリア。


 彼女ロベリアも、敵であるアイナ=イニーフィナ率いる小剱健太の一団は、まるで自身よりも格下であるというふうに、彼彼女らを嘲るように笑う・・・、そのような、笑顔である。

「敵はたった四人だけって言うんしぃー・・・ひひっきししししっ♪ バカな奴ら・・・ひひっ♪」


 ふっ、っと、アネモネは、そのような言動のロベリアに、そのかわいい顔を向ける。

「あっ、でも導師さま、ロベリアさん―――、このアネモネちゃんはー、つい先日のことですがね♪ 彼奴らに関するとれ立ての情報を仕入れましてねっ、ふふっくすくすっ♪」

 そのアネモネの発言に、早速導師の興味が、そちらへと向く。


 導師は、アネモネをまじまじと見つめ、その薄い唇を開く。

「それはどういった情報かね?同志アネモネよ」

「彼奴らはですね♪いま、日之国国家警備局に接触していましてね、くすくすっ♪ それをつい昨日、ちょーっとした伝手を頼りにこのアネモネちゃん♪ そのことを知った所でっす♪」

「ほうっ、よくやった同志土石魔法師アネモネよ」

「はいな♪ 彼奴等は今そのような動きをしていましてっ、ひょっとしたら、そのツカモトなる人物を中心に、『灰の子』の連中も、皇国のアイナ=イニーフィナ率いる四名の賊徒に合流かもです」

「なんと・・・っ!! それは本当かね、同志アネモネよ」

「はいっ♪ ばっちりばっちりですよ、導師さま♪」


 珍しく―――、

「うーむ、、、」

 ―――導師は悩ましげに、その三頭の席に座したまま、その腕を胸の前で組む。


「なんでしたら、導師さま。日府にある津嘉山の迎賓館の来庁記録を調べてもらっても♪」

 アネモネ曰く、裏付けを取ってほしい、ということである。


「同志サナよ」

 導師は、アネモネの進言を受け、早速監視官サナに裏付けを取らせる指示を出す。。

「えぇ、導師。さっそく―――」



 アネモネのその、『灰の子』発言に、他にも目の色を変える者が、この場の中に数名いる。


 その数名の中でも、最も反応し、顔色と態度に表れた者は、

「『灰の子』ですってっ!! それ本当ですねの?アネモネっ」

 驚きに目の色を一番変えたのは、その発言をした総司令官アリサである。彼女は、机上から身を乗り出し、右の席の座主である執行官を挟んで、その右隣に座るアネモネを見たのだ。

「はい、アリサさん♪ 私の今の任務は、イニーフィネ皇国への潜入捜査ですからっ♪ その過程で、ちょちょいって調べて、そんな感じですっふふっくすくすっ♪」


 アリサは驚くように、

「―――、、、」

 その後は、徐々にその視線を手元に落とす。


 一方で、しばらくまるで微動だにせず、考え込むようにその両眼を閉じていたサナ。

「、、、確かに、導師。今、日之国(エアリス)の首府日府にある迎賓館は、貸し切となっていますわ。それと、確かにアネモネ同志の報告にあった日之国国家警備局が出張ってきているようですね」

 サナは、すっ、っと、その目を開いて導師に語り掛けた。


「・・・ほんとうですのね、、、」

 アネモネからの情報と、監視官の裏取りとを受け取った総司令官アリサの表情が揺れる。その揺れの眼の動きは、アリサの不安の現れである。機人であるからと言っても、アリサにはその感情の振れ幅はあるようだ。


 総司令官アリサは過去、なにか、やはり―――、あの結城魁斗『天王カイト』が、自慢げに小剱健太に過去話を語っていたが―――、『灰の子』と因縁でもあるのだろうか・・・。


 アネモネの『灰の子』という発言に、反応・動揺したのは、アリサだけではない。


「―――、」

 日下修孝こと『先見のクロノス』もまた、アリサほどではないが、その鋭い眼光の視線をアネモネへと向けたのだ。


 そして、彼日下修孝は、おもむろにその口を開く。日下修孝、この会合の場の議場での初めての発言である。

「―――、アネモネ同志よ。彼奴ら『灰の子』の連中が、その塚本勝勇が、アイナ=イニーフィナ率いる賊徒の一団に合流するというのは、どのくらいあり得そうか?」

「むぅ~、」

 アネモネは難しい顔を“演出”して、日下修孝に合わせていた視線を、やや逸らし落とす。


 その、アネモネの表情は、『自信満々百パーセントあり得る事態だ』という、ものではなく、まだまだ不確定だ、というニュアンスを含んだものだ。

「、確定ではありませんが、クロノスさん、、、。でも、先に日之国国家警備局に接触したのは、その賊徒を率いるアイナ=イニーフィナのほうからですし・・・。あぁ、もう―――っ」

 ダンダンじたばたっ、

 っと、アネモネは。床をかわいい動作で、冗談交じりで軽く蹴るミントちゃん、、、いやアネモネ。


「ど、どうした?アネモネよ、そのように地団太を踏んで」


 ぐぐいっ、っと、アネモネは、自身のすぐ右隣の日下修孝こと先見のクロノスに、身を乗り出して詰め寄る。

「聞いてくださいよ、クロノスさんっ」

 ぐぐいっ―――。

「お、おう、、、」

 日下修孝は、アネモネの、その胸元に吸い込まれそうになる、己の視線を意識して、自身の視線を、アネモネの顔に、そのかわいい、くりっ、としたその眼差しに持っていく。

「、、、。どうしたのだ、、、アネモネよ・・・。と、取り合えず、落ち着け、、、」

 一方で、その、ぐぐいっ、っと、自身に詰め寄り近づくアネモネの、彼女の距離感のやや欠如した様子と、その雰囲気、色香に、少し気圧され気味な日下修孝であった。


 無論、日下修孝の冷静さ、その判断を失わせるための、アネモネの意識的で、作為的な行動である。

「私、皇国への潜入捜査の任務で、ケンタさまの近くにいることが多いのですが、あの人はもうっ・・・」


 はぁ・・・っ、っと、アネモネは本当に呆れ顔で、ため息を吐く。

「・・・ケンタさまは、いつもアイナ=イニーフィナに振り回されていまして、ほんっっとにもう、ケンタさまは・・・はぁ。ケンタさまは、ほんとにアイナさまに魅了されていまして、いつもアイナさまの言いなりなんですよぉ、、、」

「あ、あの小剱が、か? 俺が、廃砦であの二人を見たときには、まだ。だが、まぁ、、、。そうか、なるほど彼奴らは、そこまで関係は進んでいたのか」

「はい、、、クロノスさんっ・・・。日之国国家警備局第三席にして、裏では『灰の子』の首領ツカモトカツトシに、初めに会おうとしたのは、アイナさま、アイナ=イニーフィナのほうからですし、ケンタさまにはもうちょっと、自分の意志と言いますか、、、もう少し、疑う心を持ってほしいですよねぇ。だから、私、ケンタさまにこっそり教えてあげたんですよ~♪くすっ♪ ―――、」 

「う、うむ。なにを小剱に教えてやったのだ? 同志アネモネよ」

「えぇ、クロノスさんっ♪ 『実は、皇国は、アイナさまは、ケンタさま貴方という『転移者』の血を利用しようとしているだけですよ』って・・・ふふっくすくすっ♪ でも、ケンタさまは、私の話をちぃっとも信じてくれませんでしたぁ、『くんかっくんかっくんかっ―――アイナ、アイナ、アイナーって』。。。まるで盛りの着いた犬みたいに、ケンタさまは・・・。はぁ、、、」

 アネモネは話を盛りに盛る。

 一方で、日下修孝は、アネモネの話を真に受け、驚きにその目を大きく見開く。

「ば、ばかな、、、小剱が・・・っ」


 一方でアネモネは、

「はい、、、。もう、ケンタさまは・・・、はぁ~」

 そして、極めつけに、最後に大きな溜息を吐いたのだ。

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