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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十六ノ巻
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第二百九十一話 躍る理想の行使者。『タブレット端末』→『屍術師』→

 しかし、その一人の魔女に意識が及ぶ前に、この会合の場に集う『十二伝道師』のうち、一人の男が、その眠そうな眼を擦るのだった。


「くぁ、、、眠ぃぜ・・・ったく。こっちは遠征視察で忙しいってのによぉ、人様を呼びつけやがってよぉ、導師さまは。そんな『雷基』を狙ってる連中なんかよっ、みんな一人ずつ、ぶっ殺していけばいいんだよ・・・っ!!」

 若干一名、『不死身のラルグス』という男が、ふてぶてしく退屈そうに欠伸をかみ殺す。


第二百九十一話 躍る理想の行使者。『タブレット端末』→『屍術師』→


「事は、そのように簡単なことではありません、ラルグス」

 導師のすぐ左隣の席に座る特務官がその口を開いたのだ。


 もちろん特務官の話しかける対象は、ラルグスという名のふてぶてしい言動を行なった者である。

 ラルグスは、特務官に応え、

「ふぁぁ、くぁ、、、眠ぃぜ。知っていたか?特務官。この惑星(ほし)は丸いんだぜ? つまり、ここに来た俺は、時差ボケってやつだ、、、くぁ・・・」

「、、、(惑星は丸い?それは当然です)。あくびは生理現象ですので、一向にかまいません。ですが、不平不満を一方的に述べる者は、この場には貴方一人しかいません。感心しませんよ、ルメリア帝国最高軍司令官ラルグス=オヴァティオス、いえ『不死身のラルグス』」


 導師の左側に座す『特務官』はラルグスを諌め、此度のこの会合を記録せんとし、その電脳にこの会合を『記憶』する。


「あぁん?てめ。この俺サマに説教でもしようってのか?No.702『特務官』さまよぉ。お前だって、稲村敦司(アツシウス)に『No.702(ナッツ)』とか呼ばれてちやほや、浮かれてんじゃ―――」

 ラルグスが『特務官』に毒づくその瞬間だった―――


「フ―――、」

 ひゅっ―――、っと。彼女『特務官』の、右腕の上腕から先が消える。否―――、『特務官』の右腕、拳の動きが、その速力が速すぎて、常人の目には『消えた』ように映っただけである。


 ドスっ―――!!


 身体の胸の胸骨辺りを殴りつける鈍い音―――。


 彼女『特務官』の右拳は、正確に人間の急所の一つである鳩尾を捉える。つまり、ラルグスは特務官に、正拳でしこたま殴られた、というわけだ。

「―――ごふ・・・っ」

 ラルグスご自慢の一張羅である筋肉型の鎧が、『特務官』の拳の『拳型』にめり込む。


 会合の場での、『特務官』と『不死身のラルグス』は、十数メートルは離れた位置にいる。そのような位置関係に合ったにも係わらず―――、特務官のその攻撃は、ラルグスの急所である鳩尾に命中したのだ。


 特務官の正拳突きが命中したその瞬間、ラルグスの上半身が『く』の字に折れ曲がる。

「げほっごほごほっ―――、痛ぅ・・・。て、てめぇ、、、なに、しやがる・・・―――、、、この、『鉄―――』」

 鉄拳制裁を受け、苦しそうなラルグスは、それでも『特務官』のことを鉄人形と口走る。だが、『特務官』は再び、その離れた位置より、


「ふっ―――」


 今度は、『ふっ』っという『特務官』の凛とした声がラルグスの耳に聞こえた。

「ッツ―――!!」

 今度は、『特務官』の左手による左拳の正拳突き。ラルグスにも、その特務官の動きが視えたようで。すぐに彼ラルグスは平身低頭。

「―――、ひぃッすまんっ『特務官』っ!! 許し―――ぎゃッ」

「―――っ」

 しかし、特務官の鉄拳制裁は止まらず―――。


 ラルグスの『ぎゃッ』っという悲鳴―――ぼぐっ、っという鈍い音―――。ちーんっがくっきゅーっ、っとラルグスは、会合の場の机の上に突っ伏す。


 今度こそ、その無人の、タブレット端末が置かれてあるすぐ左隣の席に就く、一人の魔女に意識を送ろう。


 タブレット端末の、その左の席の座主である魔女は、このラルグスと特務官の経緯と、そこに至った結果の一部始終を、ニヤニヤしながら眺めていた。

 ラルグスの顛末を一部始終観ていたその魔女は、自身の口を開く。


 魔女は、まるでラルグスをからかうような仕草と、表情と、その尖らせた唇の動きで口を開くのだ。


「バカなんでちゅねぇ、ラルグスくん(きゅん)。ねぇねぇ、なんでそんなバカなんでちゅかぁ、ラルグスくん(きゅん)?頭緩いの? ねぇねぇなんで毎回学習できないの?ラルグスちゃんは。ねぇねぇ、いひっきししししっ♪ きゃはははははっ♪バカねぇ♪バカねぇっ♪バカでちゅねぇラルグスくん(きゅん)っ♪」


 このように『特務官』より鉄拳制裁を受けて、机の上に沈んだラルグスを小ばかに嘲笑する者がいる。その者は少女の(なり)をした女性である。その者は、タブレット端末の左の席に就くその魔女である。


「て、てめぇ、、、俺のことをバカにしやがって、ロベリア・・・っ」

 ゆるゆる、とラルグスはその上体を起こし、自身の斜向(はすむ)かい、誰も座っておらずタブレット端末の左の席に座る魔女―――、対面のラルグスから見れば、その魔女は、タブレット端末が置かれている席の、右の席。

 その席に腰を下ろしている魔女の正体は、『屍術師ロベリア』。


 ラルグスはロベリアを、精一杯睨み付ける。


 そんな彼女こと『屍術師ロベリア』は、青色の暗色系よりさらに黒味の強い青黒い衣装を身に纏っている。上衣と下衣が一体になったような青黒い衣装を、まず一番上に羽織るように身に着けている。


 彼女ロベリアは、彼女自身の括れた腰でとめるその下衣はスカート。スカートより出た脚には青黒い色合いのニーソックスを履き、その上に、これまた同系色の、ややだぼっとしたスカートのような下衣を履いているのだ。


 その下衣の裾の、衣服の下端の長さは、ロベリアの膝ほどまでの長さだろうか。スカートには、フリフリのような飾りはついていない。

 先述の上衣は、その下衣と統一感のある色合いの、青黒い衣装。頸元には、何がしかの紺色の宝石のような飾り物で装身されており、また、ロベリアの頭には、まるでウィッチの標準装備であるかのような三角帽が乗っている。


 だが、ラルグスの威嚇ともとれる行為に、ロベリアは我関せず。

「ねぇねぇっ、ねぇねぇっ、あっそう言えば貴方、学習能力皆無の無能さんのアホだったわね、ラルくずくん♪ いひっいひひひっきししししっ♪」

「アホくずだとぉ、俺のことを、、、てめぇロベリア―――。陰険陰湿ジメジメやみ憑き病んでる鬱陶しい魔法王国の魔女風情の下卑た分際で、よくも、この至高なるこのルメリア帝国最高軍司令官の俺さまを、バカにしてくれたな、てめぇ。この落とし前は、てめぇの身体で―――」


「は・・・?陰険陰湿ジメジメ病んでる鬱陶しい魔女? どこが?ねぇそれ?私のどこが?私のどこを見てそれ?なに?貴方なに?なんなの?ラルグス。一回死ねば?」

 今までの、ロベリアの『赤ちゃん言葉』は鳴りを潜め。ロベリアの顔から、すっ、っと、明るい表情が抜け落ちたのだ。

「え? いやその、お前それ、、、お前の得意魔法『禁忌指定の屍術』じゃねぇかっロベリアっつ。だ、誰がどう見ても、ロベリアお前の禁忌魔法は、陰険陰湿ジメジメ鬱陶しい―――」


「あ゛? ここの空気にあんたの息を混ぜないでくれる?空気が腐るから」

「腐らねぇよっ空気っ!!」

「それと私のこと『ロベリア』『ロベリア』って気安く呼ばないでくれる?あんたと私は友達?それとも恋人? えぇ、そのどちらとも違うわよね?他人以下。 バカなのあんた、あぁアホだったわね、『ラルクズ』―――いいえ、『笑止のバカクズ』さん、だったかしら?・・・いひっきしししっきゃはははははっ♪」

「このやろう・・・言わせておけば、、、ロベリアてめぇ、よくも俺をコケにして、恥をかかせてくれたな。表に出ろ―――」

「はぁ?ラルグス。なに顔を真っ赤にさせて本気になっているのかしら?ばかなの?それとも、あんたあほ?」

「んだと、てめぇロベリア―――」


「まぁまぁ、ラルグスさん。きっとロベリアさんも悪気があって、ラルグスさんに言ったんじゃないですよぉ♪。いわゆる魔法の民の『挨拶』♪ そのようなものですわっ♪ ね?ロベリアさんっ♪ くすくすっ」

 我らがミント、、、いやその名は『土石魔法師アネモネ』。アネモネのその楽しい調子の言葉に、


 そのような調子のアネモネの、自身に対する言葉にラルグスは顔を歪め、、、

「つぃっ」

 っ、と舌打ち。

 

 一方。アネモネに話を振られ、同意を求められたロベリアは―――、

「えぇ、アネモネ」

 ふふんっざまぁみろ、っと言った態度のロベリアは、ラルグスから視線を外し、それ以上は、ラルグスのことを自身より低次元の者と思っているのか、再びラルグスを見ようとはしなかった。

 ロベリアは、ラルグスを恐れていて見なかったのではなく、ラルグスのことなど、自身の眼中にはなく、彼を自身の相手にしていないだけだ。

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