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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十五ノ巻
289/460

第二百八十九話 集いしかの者達

 要するに、あのときと同じ気概で臨めばいいということか。

「女神フィーネと同調だな」

 俺はぽつり、とアイナに問うた。


第二百八十九話 集いしかの者達


「はい、ケンタ。私が『力を高めようとすると』、今現在、私が用いている『異能の力』の『形』で、私の『力』は顕現してしまうのです。本来の私の『異能』ではなく、ですね」

 そうか、

「なるほど」

 納得。俺はアイナより、彼女から直接、自身の真の力を聞いて、アイナの真の異能とその力を知識っている。


 例えば、今もし、アイナが使っている異能が、『火炎能力』だったとして、アイナが今と同じように力を出せば、その異能は劫火のように燃え上がったことだろう。


「ケンタ、愛しい貴方。私が、ケンタ貴方に『女神フィーネ様』が視識る御神託をお伝えします―――」

 アイナの、憂いを帯びたその声の様子、声色。


 アイナがその言葉を言い終えた瞬間だった、それは俺に訪れた―――。


 う、くっ、、、・・・。俺の、頭の、中に、直接・・・、映像が、流れ―――、

「―――っつ」

 女神フィーネの思考、感情と共に、『彼女』が視識った『もの』が、、、俺の頭の中に、直接流れ込んで、くる―――・・・っつ。


 女神フィーネの御神託。魁斗を倒したときには、その優しい女の人の声だった。俺に語りかけてきた女神フィーネの声。

 今度の、御神託は、直接女神フィーネの、その優しい声ではなく―――、映像のような、この惑星イニーフィネに起こったことを録画したかのような『映像』―――。


 俺の頭の中に直接流れ込んでくる、『女神フィーネが視識り、記憶したもの』の、映像だったのだ―――。


―――ANOTHER VIEW―――


 ネオポリス。かつて、イニーフィネの民が『人形族の領域(ドールズ・ドメイン)』と呼びし五世界の一つの世界。

 人形族とも言う機人の世界。

 惑星イニーフィネにある大陸。そこに広がる『五世界』のうちの一つの『世界』である。『五世界』のうち、最も静かなる世界。

 だが、虎視眈眈と、『五世界』の覇権を狙う『世界』そこが、機人の領域『ネオポリス』。


 惑星イニーフィネの巨大大陸、、、地球でいうところの、かつての『巨大大陸パンゲア』に相当する巨大大陸。その周りを、かつて地球でも存在したといわれている『巨大海洋パンサラサ』。それらと同じような巨大海洋が、この惑星イニーフィネにも存在する、いや『した』と言ったほうが良いだろう。


 かつて、この惑星イニーフィネに降りかかった天災『白き禍』そして、『世界統一化現象時代』を経て、この惑星(ほし)は、五つの異能世界の領域を持つ『五世界』として生まれ変わったのだ。


 ここはネオポリス。かつて、イニーフィネの民が『人形族の領域(ドールズ・ドメイン)』と呼びし、人形族(ドールズ)とも言う機人の世界である。


 ここは、機人の領国ネオポリスを僅かばかり切り取り、同地に設えられた秘密の『領域』。そこに集うのは、十数名の者達であり、その情景である。


「さて、皆に集まってもらったのは他でもない、導師たるこの私による『召集』だからだ」


 上座の真ん中に座る男。その男は能面のように表情を変えず、また、見る者が冷たさを覚えるその眼差しで、その固い声で、下座の者達に語り出す。


 崇高なる思想を自らは持つと考えて『五世界の権衡者』を自称・標榜するこの組織は、太古この惑星イニーフィネに訪れた動乱と混沌の時代『世界統一化現象時代』に生まれ出でた。


 その頃より連綿と、その『教え』は途切れることなく続く、神秘主義のような教義を持つ『秘密結社』のような組織である。


 その結社の頭目は三名。そして、その下には十二の席が用意されている。その『十二の席』には、明確な序列や階級は存在せず、導師以外の十四名全ては同格である。ただし、その皆が『五世界』の強者の選抜であり、十二名の中には、互いに反目し合っている者達さえいる。


 この十二の席の十二名の内、誰かが欠けると、すぐにその実力に見合った者が補充され、その席を襲うというのも、この秘密結社の特徴である。

 そして、その十二名は、己の組織や己の結社を持っており、それらの直属の組織や末端組織に所属する者達は、自身がこのような『五世界の権衡者』なる組織に連なっているということは知りえない。知ってしまったときには、その者は消えている。

 勿論、十二名の中には、単独行動を好み、自身の配下や、配下たる組織を持たない者もいる。


 さて―――、


 そこの、上座には三つの席が用意されており、その真ん中の席は能面のような表情の男が座主である。

 その男は、その男の声は、

「私は遠路はるばる、理想を体現する『十二伝道師』の皆が、ここに集うてくれたことに感謝しよう。此度の会合の議題はいくつかあり、―――」

 その男の声は、まるで感情を出さず、ない。そして、声質は低く、聞く者の心の底まで響く固い声である。

「―――先ずは、私が最重要案件とした一つの目の議題から征こう」

 声の主である彼が若い人物なのか、それとも老いている人物なのか、それすらも判然としない。この、能面のような表情の男が、当代の『導師』であった。名前も判然とせず、同志達からは『導師』としか呼ばれていない。


「同志『土石魔法師アネモネ』より、導師たる私に重大な報告が(もたら)された。彼女同志アネモネの報告から鑑みると、事態は風雲急を告げ、火急の事態である、と言っていい。」


『―――』

 この議場に集まった十数名の者達は、皆一様にふざけたりせず、私語も慎む。その十数名の『十二伝道師』の皆が、固唾を呑んで導師の言葉に耳を傾けていた。



「『五世界の権衡者』を自認する我々『イデアル』にとって大変残念で悲しく嘆かわしいことが起きようとしている―――、」


「―――、かつての、古き大イニーフィネ帝国の聖地の一つ『雷都』。いま現在は天雷山脈の奥深く、この惑星のマントル層にも届きそうなその地中に永遠の眠りに就いている『雷基』。それを、わざわざ掘り起こそうとし、その『鍵』となる『雷基理』を、その聖地『雷都』より奪い去ろうとしている悪辣言語道断な者達がいる。彼奴らは、悠久の眠りに就いている七基の超兵器の一つ『雷基』を聖地『雷都』より盗み出し、この安定している『五世界』の『五つの力の均衡』を崩し、この五世界をまた再び動乱の時代に戻そうとしているのだ―――、」


「―――、おぉ、、、なんという悪辣な。不届き千万言語道断な無法集団の賊徒であることか―――、このような賊徒が、この五世界にいるということが、導師たる私は非常に悲しく嘆かわしい」


 議場は、ざわざわ、としたざわめきは起こらない。十数名の皆は、騒ぎ立てることもなく、静かに導師の言葉に耳を傾けているからだ。


「我々『イデアル』は、『五世界の権衡者』として、何としてもその賊徒より早く、『雷基』を手中にしなければならない。『雷基』を掘り出そうとし、それを以ってこの五世界を我が物顔で、武力と恐怖によって支配しようとしている、悪辣な皇女アイナ=イニーフィナ率いる悪辣言語道断な無法集団である賊徒らの、その度し難い悪行を阻止しなければならない。まずは、その賊徒の対策を、この会合の一つ目の議題としよう。―――、」

 すっ、っと、導師は、その冷たさを感じるその眼差しを閉じる。

 その仕草はまるで、神なる存在に、自らの願いを、その祈りを捧げるかのような、導師の仕草だ。


「―――、『五世界の権衡者』を自認する我々。『理想を成すために我々は在る』―――」


 その、当代の『導師』はネオポリス出身の『唯の』人間である。彼の異能としては、この五世界では『弱者』と称されるほどの微能であった。

 だから故に彼は、その異能で、先代の『導師』に認められ、次代の、この組織の『長』である『導く師』に指名されたのだ。


 故に、皆が集いし『この場』は、当代の導師の根拠地である。


「―――、私が集わす十二席。私が全五世界へ、その隅々まで遣わす理想を体現した、我が『十二伝道師』は、皆の、全ての人々の『理想を成すために我々は在る』」


 彼は、この会合の挨拶とばかりに、自身達の標語のような文句を唱え、


 その導師の言葉に続き、ここに集う『十二伝道師』の者達は、導師が言い終えた、と同時に、


 上座の三席に蓋をされたような席順の、『コ』の字に配置された席に、『十二伝道師』達は座したまま、

「―――、私が集わす十二席。私が全五世界へ、その隅々まで遣わす理想を体現した、我が『十二伝道師』は、皆の、全ての人々の『理想を成すために我々は在る』」

 と、同じように、『十二伝道師』は導師の言葉を反芻・復唱する。



「私が集わす十二席。私が全五世界へ、その隅々まで遣わす理想を体現した、我が『十二伝道師』は、五世界に暮らす全ての人々の幸せのために、平和と共存のために尽くす愛ある奉仕者にして、理想を体現した『理想の行使者』。―――争いのない五世界を創造するその『理想を成すために我々は在る』のだ―――」

 と、再び導師が斉唱すれば、また同じように、『十二伝道師』も、導師の言葉を反芻・復唱するのだ―――。




///


「―――奴らから見たら、俺達のほうが、悪辣言語道断な無法集団である、、、っ、か―――」

 つらつら―――、・・・、、、。っと俺は筆を取り、書き進めていく。

「閑話休題だな・・・」

 と、俺は小さく息を吐き―――。


 俺の傍らのアイナは、

「ケンタ。閑話休題とは?」

 その、興味深そうにした藍玉のような眼の視線を俺に向ける。

「あぁ、うん、それは―――、」

 思い浮かぶのは・・・、ふぅ、っと、俺は小さく息を吐き―――。

「―――、あのときの女神さまの御神託を、さ。ちょっと書こうかなって」

 アイナは、

「。。。なるほど、あのときの、私達に語り掛けてきた女神フィーネ様の、ですね」

「あぁ」

 俺達が『神雷の台地』を登るとき、に女神フィーネよりの御神託の内容を、だ。それを、俺の視点ではなく。

 つまり今からしばらくは、俺達の行動の裏で、同時に行なわれてきた事を、その当事者の視点でもなく、第三者の視点で物語を綴っていこうと思う―――。


『イニーフィネファンタジア-剱聖記-「天雷山編-第二十五ノ巻」』―――完。

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