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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十四ノ巻
274/460

第二百七十四話 きみは、―――たぶん、いろいろと知ることになるんだろうね・・・

「塚本特別監察官」

 一方の、一之瀬春歌さんは、決意の籠ったその双眸を塚本さんに示し、名を呼んで自身の言葉を切り出したんだ。

 対する塚本さんは、

「うん、春歌くん―――」


第二百七十四話 きみは、―――たぶん、いろいろと知ることになるんだろうね・・・


「私は、諸々の手当を欲したわけではなく、自身の武勇を磨くため、私が今まで積み上げた『もの』を試すにはちょうどいい機会があると思い、それに、学友の奈留さんと、同じくするために、護衛官募集に応募したのであります」

「解っているよ、春歌くん」

「はい。塚本特別監察官、その上で一つ、私の後学のためにお伺いしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

「いいよ、春歌くん。僕が答えられる範囲内なら、ね」

「以前、諏訪侑那局長に、伺ったことがあります」

「うん、春歌くん」

「塚本特別監察官と諏訪局長は、今の私や奈留さんと同じ齢の頃に、警備局国家警備学校の同期で、今の私達と同じ学生部隊にいた、と聞いたのですが―――」

 ―――本当でしょうか? 、と一之瀬春歌さんは、塚本さんに。

「うん、そうだね」

「その、塚本特別監察官は、どうだったのですか?」

「どう、とは?春歌くん」

「いえ、今の私達のように、このような大きな、重大な任務はあったのか、もしあったのなら、このような大きな判断をする際の、その状況と言いますか、あまり言葉にはしづらいのですが、、、えと、塚本特別監察官なら、もし、このような、今の私と同じことに直面したなら、塚本特別監察官であれば、どのように答えるのでありましょうか?」

「ふむ、、、―――」


 う~ん、っと塚本さんは、一之瀬さんの切実な、一之瀬さんが言葉を選んで言ったであろう、質問を受け、悩む素振りを見せ、塚本さんは両腕を自身の胸の下で組む。


「―――、たぶん学生だった僕なら天雷山には行かないかな。断ると思う」


 一之瀬さんは、意外なことを聞いたかのように、、、

「そう、ですか・・・塚本特別監察官」

 ―――その視線をやや下げる。

「でもね、春歌くん」

 塚本さんは、その右手を上げ、自身の顔の前で止める。

「はい、塚本特別監察官」

 塚本さんは、上げた右手で、くいっ、っと自身の眼鏡の位置を、押し上げ留める。

「たぶん、僕は結局、こういう未知のことは、侑那が好きそうなことだ。だから、きっと侑那が『行く』と言い出せば、僕は天雷山に行くことになるんだろうってね―――」

「塚本特別監察官、、、」


 ほっ、っと一之瀬さんは柔らかい表情になった。一之瀬さんは、安堵したのかもしれない、塚本さんの、その答えに。


 すっ、っと塚本さんは、その右手を体側まで下ろし、

「―――、それに、僕の親友。奈留の父親の彼も、たぶん行きたがると思うしね、こんな『楽しいそうなこと』を、くくっ」

 塚本さんは、苦笑い。


 すぐに一転、塚本さんは真面目な顔になる。

「春歌くん―――、」

「はい、塚本特別監察官」

「―――、ずっと奈留の友達でいてあげてほしい。僕が信吾と、ずっと『親友』であるように」

「? は、はい・・・?」

 分からない、というふうに、いまいち飲み込めないという様で、一之瀬さんはやや、戸惑いながら、首を傾げた。

「僕は、春歌くんと奈留が、その程度の些細なことで、志を違えることはないと、そう思っているんだ。奈留もそう思うだろう? 僕と信吾、侑那と愛莉さん。僕達四人はいつまでも、たとえ立場が変わろうとも、ずっと『僕の親友』であり、侑那は、僕の・・・っ/// いや、まぁ、あれだ、奈留。僕達の、かつての『四天王』の絆は不滅ということかな。それを、奈留と春歌くんに伝えたかったんだ、僕は」


 たぶん、塚本さんの言った『僕の親友』―――。

「・・・」

 近角 信吾さんのことか。たぶんそう。塚本さんは、羽坂さんにその視線を向けた。


 羽坂さんは、塚本さんに、彼をその猜疑を帯びた視線で、見つめ返し―――、

「はい?僕達四人? 塚本、寝言は寝て言って。私のお父さんもお母さんも、もう死んでいるんでしょ?なにかの危険な警備局の任務で、でも塚本や侑那は今、元気に生きている」


 対する塚本さんは、

「・・・」

 羽坂さんの、そんないやみにも取れる質問と、その目線に、塚本さんは苦笑で誤魔化すようにしてなにも答えず―――。


 その羽坂さんの、塚本さんに対するいやみのような言葉―――、

「っ」

 やっぱり、羽坂さんは、自分の両親のことを知らない―――。近角信吾さんも愛莉さんも、『廃都市計画』を生き残り、日下部市で、今も生きている、ということを。さらに、


「、、、奈留。きみは、―――たぶん、いろいろと知ることになるんだろうね・・・」

「うん?知る? 塚本・・・?」

 羽坂さんは、やや訝しげに、塚本さんに訊き返し、、、。


 一方の―――、

 塚本さんは、ちょっと言いよどむように、、、その視線が揺れる。

「せめて、きみの卒業までは、待ってほしかった、かな―――僕は、奈留」

「?? 塚本?」

 当惑気味の羽坂さん。

 でも、塚本さんは、意を決したかのように、その口を開く。

「皇国には、『叡智の力』という概念が存在するんだ、それは『氣』『異能』『魔法』『科学』それらを複雑に組み合わせたものだ―――」

 羽坂さんに語ったあと、塚本さんは、そうですよね?っと、


 アイナや俺に確認の意の視線を送る。

「えぇ、ツカモト。我々イニーフィネの民は、それらを行使でき、さらにそれらを組み合わせて用いる技術力を保有しています」


 くるりっ、っと、塚本さんは、再び羽坂さんに居直る。

「つまり、イニーフィネ皇国には、この日之国や日之民には持ちえない『氣導術』や『魔導術』などといった日之国の次世代をも、遥かに凌ぐ高度な技術が、存在しているということだ。それらの機構を組み込んだもの『氣導具』や『魔導具』、さらには『魔法剣』なる、日之国では、ファンタジーとされているものまでもが、イニーフィネ皇国には存在する」

「?? なにいってるの塚本? 、、、分からない」

「奈留」

 塚本さんは暖かい目で、やや微笑んで羽坂さんを見詰める。

「ん?」

「きみの父親近角信吾は、そんなイニーフィネ皇国の技術の結晶である『氣導銃』を遣い(こな)すことができた」

「え・・・?お父さんが?」

「あぁ。なぜならば、信吾にはイニーフィネ人の血が流れているからだ」

「っ・・・!!」

 驚愕。驚嘆。羽坂さんの眼が驚きに見開かれる。


 そのようなとき―――、

 静々と、アターシャが、

「アイナ様気づかれましたか?」

「従姉さん?」


「??」

 なんのことだ? アターシャが、一歩、二歩、数歩・・・俺達の後ろから、すっ、っとアイナに近づいてきて、その耳元で、アイナに対して話しかけたんだ。


「アイナ様、実は解ったこと、と言いますか、、私が自身で感じた、感じ取っていたことがあるのです」

「従姉さん?どういうことですか」

「はい、―――しかし、、、」

「従姉さんが言い淀むなんて珍しいですね」

「ここで、それを言ってしまっていいものなのか、と、、、私は」


 そんな俺達を後目に、塚本さんと羽坂さんのやり取りが続く―――。



「僕は以前。信吾自身から聞いたことがあるんだ。彼が言っていたことなんだけどね、奈留」

「・・・う、うん」

「奈留きみの父親信吾の出自のことだ」

「・・・お父さんの出自?」

「うん、奈留。彼信吾が、僕に唐突に話してきたんだ、その信吾の話の内容は、そのとき隣に立っていた愛莉さんも、知っているようだったけどね」

「―――お母さんも・・・」

「信吾が言っていたんだ、あのとき―――」


「『愛莉には付き合っているときに話したと思うけど―――勝勇にこれを言うのは初めてかな・・・』って、信吾はちょっと僕に言いよどむように、ね」

「・・・うん」

「あいつは、僕に『ごめん』って。『今までずっと言えなかった。俺―――実は祖母ちゃんがイニーフィネ人なんだよ』って」

「っ!!」

「奈留、それは、僕の、親友の突然の告白だった。もちろん僕はそのとき内心驚いた」

「っ」

「奈留。今のきみと同じように、ね。でも、程度の差こそはあれ、、、。日下は日之国の中で位置的に一番イニーフィネに近い。長い間独立をしていたし―――、僕はイニーフィネ人の血が部分的に流れている人が一定数いる、ということは以前に聞いたことがあったから、僕は、日下出身の信吾の、告白にすぐ納得できた、というわけだ」

「・・・日下出身。お父さんが―――、、、」



///


「―――、、、」

 つらつら―――、・・・、、、。っと俺は走らせていた筆を一時止めた。

「ふぅ・・・」

 と、俺は小さく息を吐き―――。


 俺達。皇国。日之国。日之国国家警備局。灰の子。イデアル。九翼。―――。俺達を含めて、様々な思惑が、交差し、入り乱れてゆく。

「―――」

 さて、、、『天雷山編』も、そろそろ架橋。ここから続く俺の物語は―――、


『イニーフィネファンタジア-剱聖記-「天雷山編-第二十四ノ巻」』―――完。

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