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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十四ノ巻
273/460

第二百七十三話 僕から提示する最後の条件があるんだ

「―――既知の間柄だったという、日下修孝は必ずその中にいます―――」

 俺は、今の俺なら、彼奴日下修孝こと『先見のクロノス』に敗ける気はしない!!

 廃砦で、痛いほど感じた彼奴日下修孝に対する、俺との力量の差即ち『怖れ』も、今の俺は全く感じない。


第二百七十三話 僕から提示する最後の条件があるんだ


 俺は、いろんな人達に導かれ、鍛えられ―――、あの廃砦のときとは段違いの『強さ』を得た、と思う。

「―――」

 俺は天雷山の、その頂で、必ず日下修孝と、決着をつける―――。

「俺は、塚本さんに、日之国国家警備局の指名手配犯を―――、俺が日下修孝を討ち取り、塚本さんあなた方に引き渡すと約束します。だから―――、羽坂さんの同行を認めてあげてくださいっ。お願いしますっ・・・塚本さんっ・・・!!」

 ぐッ、っと俺はこの双眸に、決意の炎を点し、その目力を籠めた視線で塚本さんを見詰める。


「解った、認めよう健太くん、奈留の同行を、、、」

 まるで搾り出すかのように、塚本さんは。


 よしっ!! 塚本さんの言質を取った!!

 だが、俺は、その自身の嬉しい気持ちを面には出さず。

「ありがとうございます。塚本さん」

 ばっ、っと俺は、直角に腰を折り、真正面に立つ塚本さんに頭を下げた。


「え、いいの?塚本」

 羽坂さんも、塚本さんの決定に驚いているようで、思わず羽坂さんは身を乗り出した格好だ。


 はぁ~~~、っと。塚本さんの大きな、諦めにも似たため息。

「~~~―――」

 その直後、くいっ、っと塚本さんは眼鏡を、右手で押し上げる。

「日下修孝云々より、、、おそらく、僕が奈留きみを止めたとしても、奈留は勝手にアイナ皇女殿下一行についていく、と僕は判断しただけだよ。ただ、それだけさ、奈留」


 こくり、っと羽坂さんは肯く。

「うん、たぶん。私はそうすると、思う」


「やれやれだよ、まったく。―――、」

 その言葉を、最後に塚本さんは、俺を向く。再び、意識を俺に向けた、というわけだ。

「健太くん、僕はきみを見誤っていた、きみが若いと、、、奈留や春歌くんと同い年だからと、僕はきみを侮っていたようだっ・・・。、、、健太くんきみは、愿造さんよりも、―――ずっと、深慮遠謀な策士だ」


「・・・」

 塚本さんのその言葉は、俺への嫌味なのだろうか?それとも俺のことを、本心から塚本さんは純粋に褒めたのか・・・?

 まぁ、どちらにせよ、

「・・・ありがとうございます、、、それも褒め言葉として受け取っておきます、塚本さん」

 俺の中では、俺の、塚本さんへの返答は決まっていた。


「はぁ、、、。まぁ、奈留のきみ達への同行は認める。その代わりだ、健太くん。僕の提示する条件を呑んでほしい」

 そんな話を俺に、塚本さんは。

 どんな条件だ?塚本さんの条件は。

「はい、塚本さん。聞かせてください」

 とりあえず聞いてみるか・・・。


「うん。もし奈留の身に何かあれば、僕は侑那にころされる。だから、奈留をきみ達の仲間にしろ、とまでは僕は言わない。だが、健太くん。きみの大切なアイナ皇女殿下を想うように、またアイナ皇女殿下も、貴女の従者同様に、羽坂 奈留という少女を大切に、扱ってほしい。その場しのぎの『捨て駒』にするのは、やめてほしい。その約束を、ちゃんと守ってくれるのであれば、奈留のきみ達への同行を、僕は認めよう」

「はい、塚本さん。約束します」

 俺は即答。

 そもそも俺は、羽坂さんをそんな、その場しのぎの捨て駒にしようだなんて考えていない。祖父ちゃんの、友人のような人、近角信吾さんの娘さんだ。

 アイナも。

「えぇ、私も約束しましょう、ツカモト」


「ありがとう。そして、もう一つ。健太くん、もちろんアイナ皇女殿下や、その従者の方々も。この津嘉山の迎賓館にいる間は、絶対に外には出ないでください。人に見られたら、大ごとになる。それこそ、貴女方が日府に逗留中であることや、その目的、天雷山登頂が、日之国において、衆人達に、その白日の下に晒されるほどの。だから、僕からのその約束を護ってほしい―――」


 つまり、塚本さんが、今語った内容のことが、交換条件なのだろう。しっかりと、脅迫めいた、『もしものこと』を提示することも、この人塚本さんは忘れていないし。

「はい、塚本さん」

「えぇ、ツカモト」

 俺以外にも、アターシャもサーニャも、了解の意を示して肯く。


「最後に。僕から提示する最後の条件があるんだ、健太くん」


 ・・・。まだ、あるのか塚本さん、、、俺達に。けっこう多いな、塚本さんの、羽坂さんを俺達に同行させるのにあたっての条件。

 いったいなんだそれは?塚本さんからの最後の条件とは?

「はい、、、塚本さん」

 その、塚本さんの、彼が言う最後の条件とはいったい、どんなものだろう?

「アイナ皇女殿下もよろしいですね?」

 塚本さんのアイナに掛けられたその言葉。


「・・・」

 アイナは一度、了解という意で、俺を見詰め。

「うん、アイナ」

 俺は、アイナの意志の籠った眼に、肯き返す。


「えぇ、ツカモト答えてください。ツカモト貴方が提示する、その最後の条件とはなんですか?」

「はい、アイナ皇女殿下。―――」

 塚本さんは―――、

 くるり、っと身体を反転―――、自身の後方を見る。

「春歌くん」

「はい、塚本特別監察官」

「これは僕からの強制じゃない。でも、春歌くんきみも、奈留と一緒に、アイナ皇女殿下御一行に、同行してくれると、僕はとても嬉しいんだけど」

「―――、、、」

 一之瀬さんは、やや視線を落とし、その、一之瀬さんの揺れる瞳。


 一之瀬さんのそんな、迷う様子を見てか、塚本さんは、ややっ、っと口を開く。

「羽坂奈留副隊長一名だけの『護衛官』で、『アイナ皇女殿下』と『健太殿下』二人を『護衛する』のは、少々荷が重い気がするんだ、僕は。それでどうかな、春歌くんも『護衛官』として、派遣の辞令を受けてみるのは?」

「それは、、、強制ではないのですね?塚本特別監察官」

「もちろん。護衛官としてのこの任官は、強制じゃないし、でも、もし春歌くんが辞令を受けてくれたなら、きみも奈留同様出張として、警備局では、公務として扱うことを約束しよう」


「え?塚本私は公務扱い?」

 くるり、っと塚本さんは、反転。思わず声に出た、ような様子の羽坂さんを振り返って見る。

「もちろん奈留。だから、警備学校は欠席扱いじゃなくて、任務遂行のための出張扱いとするよ。だから、もちろん給与は発生する。しかも危険手当と超過勤務手当も付く」

「おおう・・・っ」

 びっくりしたのか、それとも以外に手厚い保障に感銘を受けたのかな? 羽坂さんの驚いたようなリアクション。

「びっくりしたかな?奈留」

「うん・・・っ。で、春歌は―――?私と一緒に行く?」

 ―――春歌はどうするの?という羽坂さんの意を含んだ、その羽坂さんの眼差し。その興味深そうに丸くした羽坂さんの一之瀬さんをみつめる眼。

「奈留さん」

「ん?春歌」

「奈留さんは、私に、私がついていっても、、、いえ、なんでもありません―――、これは自分の意志で決めないといけな―――」

「ううん。私はいい。友達の春歌が、一緒についてきてくれるなら、うれしい、と思うよ? 一緒に行こ?春歌。天雷山に」

「っつ」


 そんな、羽坂さんの一之瀬さんの言葉のやり取り。そのとき―――、


「・・・」

 ぎゅっ、っと一之瀬さんのその両の拳に力が籠ったのが見て取れた。一之瀬さんが、ぐっ、っとその両手を、拳を握り締めたのが、見えたんだ、俺。

 俺は一之瀬さんの、心が見得てしまった。


 先ほどまでの揺れる瞳ではなく、意志の籠った強い眼で、その瞳で一之瀬さんは、塚本さんを見詰める。


 あぁ、そうか、一之瀬春歌さんも一緒か。彼女も俺達と一緒に、天雷山へ行くのか。

 一之瀬春歌さんか、、、。俺は、この、生真面目そうな子と、うまくやれるだろうか?

「・・・」

 あぁ、、、これは一之瀬さんも俺達についてくるんだ、っと俺は確信したから。一之瀬さんも。俺達と一緒に、天雷山を踏破することになるって、ことだ。


「塚本特別監察官」 

「なにかな?春歌くん」

「私も、皇女殿下御一行の護衛のための、護衛官募集に応募します」

「ありがとう、春歌くん。きみならそう言うと思っていたよ。泰然さん貴方は?」

「私か? むろん孫娘のことは心配だが、それは春歌が自身で決めた事。私はそれを後押ししよう。それに、話を聞いた限り、ずっと天雷山にいるというわけでも、なさそうだしな」


「えぇ、タイゼン」

 アイナは満面の笑みで、泰然さんに返答。


「塚本特別監察官」

 一方の、一之瀬春歌さんは、決意の籠ったその双眸を塚本さんに示し、名を呼んで自身の言葉を切り出したんだ。

 対する塚本さんは、

「うん、春歌くん―――」

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