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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十四ノ巻
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第二百七十話 私の勘が告げている

「さっき初めて見たの、春歌」

「え?初めて見た、とは奈留さん?」

「うん。塚本があんなにも狼狽えているところ」

「塚本特別監察官が、狼狽えているところ―――、、、ですか?」

 一之瀬さん(春歌)は、塚本さんを一瞥。一之瀬さん(春歌)は、塚本さんが狼狽えたなど、本当に信じられないような、分からないというような、そんな態度だ。

 だって、彼女は、一之瀬さん祖父孫は、塚本さんがそうなったときは休憩中で、この応接の間にはいなかったのだから―――。


第二百七十話 私の勘が告げている


「―――、、、」

 一之瀬さん(春歌)は、塚本さんを一瞥。その一之瀬さん(春歌)の目は、信じられないない、といったものを含んでいるように、傍から見ている俺にはそう見えたんだ。

「ふむ、、、」

 すると、塚本さんは、ちゃっ、っとその右手を目元の眼鏡に持っていき、眼鏡を押し上げた。

「っ」

 っ、っと、一之瀬さんは、すぐに羽坂さんに、その視線を戻す。


「うん。私の勘が告げている」

 ふんすっ、っと、羽坂さんは、自信ありげに一之瀬さんへ、その自身の態度を示すかのように、言った。

「え、っと?奈留さん?」

 分からない。『私は、奈留さんの言動が分からない』といった様子の、一之瀬さん(春歌)だ。

「アイナ皇女殿下を護衛すれば、天雷山に付いて行けば、今私がやっているゲームよりもおもしろいことが起きる予感がする、そんな気がして春歌」

「奈留さん・・・まさか―――っつ」

 一之瀬さん(春歌)さんは―――、羽坂さんの言葉の意味を悟り、


「!!」

 そして、俺も、アイナも、アターシャも、サーニャも、彼女羽坂さんの真意を悟る。


 一方の一之瀬さん(春歌)は、『本気でそんなことを思っているのですか?奈留さん』のような、そのような心情を顔に現し―――、

「うん、春歌。―――」

 羽坂さんの興味深そうにしたその眼の視線が、一之瀬さん(春歌)を離れる。

 すぅっ―――、っとその羽坂さんの視線が流れて、アイナに移ろう。彼女羽坂さんのそれを視ていて、俺もそれが分かった。


「アイナ皇女殿下・・・」

「はい、ナル」

 にこり、っとアイナは、羽坂さんに微笑む。しかも、羽坂さんの下の名前で『奈留』と呼んだんだアイナは。


 あぁ。そうか。解ってしまった。

「―――」

 俺は、そのアイナの表情。態度。雰囲気。そのアイナの様子から、俺はアイナの心情を、察する。きっとアイナは―――。


 羽坂さんは、(おもむろ)に口を開き、、、

「・・・天雷山に一緒に行っていい、私も?、、、じゃなくて、えっと―――、私は、銃を使えます、、、。遠くの敵なら、私が銃で狙える・・・じゃなくて、、、ます。だから、私に任せる・・・っ(ふんすっ)」


 羽坂さんは吶々(とつとつ)と、自身のセールスポイントも忘れない。それでいて羽坂さんは、言葉を選びつつ。きっとたぶん。この羽坂さんの様子。この子は、敬語とか丁寧語などは、普段は使わないだろうな、と俺は羽坂さんのその様子を見て思う。

 そして、一之瀬さん(春歌)と違って、一之瀬さんを悪く言うつもりはないが、羽坂さんは、忖度や、上官にこびへつらうようなこともしない性格なんだろうな、って。


「―――ただの、、、さっき、アイナ皇女殿下が、言ってた、警備局としての監視の護衛官じゃなくて、えと、、、普通の、ちゃんとした護衛なら、いい、ですか? 私も、アイナ皇女殿下一行に、お供したい、です。いい?、、、ですか・・・?」


 先ほどアイナは、『監視役の護衛はいらない』、と、はっきりとは塚本さんに、そう言わなかったが、でも。

 この羽坂さんの、『ちゃんとした護衛』というその言葉。羽坂さんの、それに対してのアイナの答え。

 俺の中では、アイナの出す『答え』は想像がついている。『答え』とは、アイナの行なうであろう『答え』のことだ。

「っ」

 きっと、アイナは―――。


「えぇ、『それ』であれば、私をしっかりと護ってくれる護衛ならば、かまいませんよ、ナル。貴女の、我々への同行を認めましょう、ナル・・・っ」


 ほらやっぱりな、アイナのやつ。

「・・・」

 俺の予想通りのアイナの『答え』だ。


「え・・・っ」

 そんな簡単に!?―――

 ―――のような、羽坂さんの驚きだ。


 かたや羽坂さんは。自身の要望がそんな簡単に通るとは思っていなかったのか、やや目を見開き、アイナの決定に、驚いている、そんな様子だ。


「その代わり、私の意に従うのであれば、という私からの条件が、ナル貴女には付きますが、それでも貴女が構わないのであれば、天雷山を征く我々への同行を認めましょう、ナル」

「う、うん・・・じゃなかった、、、はい」

 羽坂さんは、何度も、肯き。

「では、よろしくお願いしますね、ナル―――」

「う、うん、、、っ・・・はい、アイナ皇女殿下―――」

 こくり、っと、最後にもう一度、羽坂さんは大きく肯いた。

 そして、羽坂さんのその言動を見て、アイナが―――

「・・・っ♪」

 にこり、と微笑んだ、まさにそのとき―――、


「それは僕が困ります、アイナ皇女殿下」

 ―――、塚本さんの横やり。

 アイナは羽坂さんより、視線を塚本さんへ。

 その羽坂さんを見る朗らかで和む微笑んだ眦から―――、

「ツカモト」

 ―――、すっ、っと、アイナの、その彼女の藍玉のような輝きを持つ目が細められる。


「僕は、その子奈留の、羽坂奈留の後見人だ。勝手な真似をされては困りますよ、アイナ皇女殿下」

 思案するように、

「ふむ、、、」

 アイナは、その胸の下で両腕を組む。

「アイナ皇女殿下、貴女も知っているはずだ。奈留はまだ未成年です。それに警備官としての学業も疎かにする、ということも上官として、また後見人として僕は認められない」


 一方の羽坂さんは、キッ、っとした強く激しい感情のこもる眼差しになって―――、

「塚本じゃましないで・・・っ」

 ―――、はっきりきっぱりと拒絶。羽坂さんは、塚本さんを拒絶する。


 俺としては、違うと思う。違うと思うのは、羽坂さんも塚本さんも、だ。その二人の意見。

「だが、俺としては、さ。アイナ」

 俺はアイナに話を振った。密談ではなく、もちろん俺は、塚本さんにも聞いてほしいから、声の量は普通にして、だ

「ケンタ?」

「俺は塚本さんにも納得の上で、了承してもらいたい。そう思ってさ。そっちのほうが、いいだろ?後々のことを考えると」

 なぁ、アイナ。アイナもそう思わないか?・・・って。

「つまり、ケンタも、ナルの私達への同行を認めるというわけですね」

「あぁ。でも、ま。それが、塚本さんが納得の上って言うのが、俺の条件だな、アイナ。―――」

 未成年者自身が納得していても、連れ去りは、日本では犯罪だ。きっとここ日之国でも、それと同じだろう。


 なぁ、塚本さん―――、っと俺は塚本さんにも、そして、羽坂さんにも目を配る。

「塚本さん、また俺の話を聞いてくれませんか?」


 めんどくさそうな顔、、、俺の言葉に、そのような表情になる塚本さん。

「、、、またきみか、健太くん・・・、きみは愿造さんよりもずっと口が達者だね、、、やれやれ、だよ。ほんとに、、、」

 やれやれ、っと。塚本さんは、僅かに肩を竦め、、、。自身の中で、ほんとに俺のことをめんどくさい人認定してそうだ、、、塚本さんは。


 そして、塚本さん貴方は決定的なミスを犯した。涼しい顔をしているが、おそらく塚本さんは思った以上に、おそらく『いっぱいいっぱい』だ。

 そこを責めてもいいんだが、、、あまり塚本さんを責めたら、あとが怖そうだし、最悪『入境許可証』の発効の取り消しもされかねない。

「っ」

 それと、塚本さん。貴方は、ほんとにそんなに俺のことを、『めんどくさい人』と思っていたり、するんっすか?

 まぁいいけど、俺は別に。塚本さんとは、接点少ないし、俺。塚本さんは、アイナやアターシャ、サーニャみたいに、俺と一緒に行動するわけじゃないからな。

 ここは、それで乗り切ろう。


「それ」

 羽坂さんの、突然の、俺と塚本さんの会話に割って入った『それ』発言―――、

「「それ?」」

 あっ、俺の『それ』と塚本さんの『それ』が見事に重なる。

「うん、そう『それ』。塚本は、健太殿下のことを親しげに『健太くん』って呼んでいるから。どうして?塚本」

 羽坂さんの指摘。

 それに対して、

「っつ」

 ぴくっ、っと塚本さんは、顔の表情筋を、僅かに動かす。


 その僅かな、塚本さんの表情筋のその動き―――、

「・・・」

 ―――、俺のこの『眼』は、誤魔化しきれないぜ、塚本さん―――。

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