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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十四ノ巻
267/460

第二百六十七話 僕達は弱者とは協力しない。それが僕の、今回のきみ達の天雷山踏破に提示する『僕達』の絶対条件だ

 そう魁斗は、あのときの僕は十五歳だったと言っていた、あの廃砦で。だから今から二年前のできごとだったはず、魁斗達『イデアル』が、『灰の子』を急襲したのは。

 あのとき、俺の「『燃え滓』ってなんだ?」の問いに、あのときの魁斗は―――。


第二百六十七話 僕達は弱者とは協力しない。それが僕の、今回のきみ達の天雷山踏破に提示する『僕達』の絶対条件だ


『知らない。クルシュ養母さんが『燃え滓』『燃え滓』って言ってたの。ううん、詳しくは僕も知らないんだぁ。だけど―――あの陽動作戦のときは、・・・う~ん・・・なんか『眼鏡』かけた気持ち悪く笑う変な男とか、この『氣導銃』を取り返そうと死に物狂いの顔の『銀髪』の変な男と、アリサ義姉さんと互角に渡り合う雷みたいにビカって光る変な女。あとはクロノス義兄さんの攻撃が全然通らない『防御』する変な奴がいたかなっ? あのとき僕もうすっごくこわくってっ♪ う~ん、あのときは・・・ははっそうそう陽動作戦を行なう僕達とは別行動のクルシュ養母さん率いるラルグス義兄さんとロベリア義姉さんの部隊が『燃え滓』の建物を壊すだけ壊したよ、という報せがあったんだったかな? それを受けてクロノス義兄さんが『撤退だ』って、一目散に。僕はナナ義姉さんに抱えられて空飛んでさぁ。ははっあのみんなで逃げたときは愉しかったなぁ・・・ほんとにっははっ♪』


 ヘラヘラしやがって魁斗の奴。

「っつ」

 まぁ、あのときの魁斗の言っていたことが正しかったとしたら、二年前『イデアル』と、この目の前にいる塚本さんは“戦った”ということになる。

 現に、魁斗が、おそらく近角さんから盗んだ氣導銃は、俺が魁斗から取り返したのと、同じ氣導銃だ。

 その銃は、今現在俺の部屋の机に置いてあるし。


「健太くん?それで『僕にとっても利がある』とは、どういうことかな?」

 塚本さんの俺への問い。

 よし、言うぞ。

「塚本さん」

 俺は塚本さんの、その双眸を真っ直ぐに見詰め、視線は逸らさず、そして、この口を開くんだ。さぁもっと、塚本さんへ、確信を衝いていくぞ。

「うん、健太くん」


 でも、ここは敢えて『雷基理』のことは言わずにおこう、『灰の子』には、本当に俺達の肝心要の情報は与えない。話さない。

 そのほうが、後々の事を考えて、いいと思う。

「六年前と二年前、貴方がたは戦っているはずだ、はずであろうあの組織―――」

 その瞬間―――、


 ピリッ、っと―――、

「ッツ」

 ―――、塚本さんの顔が、表情が一瞬で変わった。緊張感のあるその表情だ。その表情は怖いぐらいだ。


 だが、ここで塚本さんに呑まれるなよ、俺。俺は、やや臆しているという気持ちを、内に隠し、この口を開く。

「塚本さん。俺達も、塚本さんと同じで『あいつら』には煮え湯を飲まされています。だから俺達はあいつら―――『イデアル』とは敵対関係にあります」


「イデアル・・・?」

 ぽつり、っと羽坂さんは呟いた。

 すると、塚本さんの視線が、俺から動く。今までずっと俺を見ていたその視線が、横に動いたんだ。つまり、塚本さんは、羽坂さんを一瞥―――。

「奈留。これは僕の問題であり、奈留きみには関係のないことだ」

「っつ」


 そうか?塚本さん? この話は羽坂さんにも、充分すぎるほどに関係があることじゃないか。

 この必死?の塚本さん、その様子・・・、『奈留きみには関係のないことだ』、はちょっと冷たすぎるんじゃないか?、と俺は思うが、でも。

「・・・」

 きっと、この羽坂さんを、『イデアル』との戦いに巻き込みたくないんだな、塚本さんは。それはきっと、レンカお兄さんやアターシャが、末妹ホノカを、この天雷山に行きに同行させず、ホノカを『イデアル』との戦いに巻き込みたくない、のと同じ。同じ心情だろう、今の塚本さんの気持ちも。


 交渉の続きだ、もう喋ってもいいだろう。俺は口を開き―――、

「塚本さんの問題・・・っすか。確かにそうかもしれないですね。だからこそ、塚本さんがここで俺達に協力してくれれば。アイナの天雷山踏破に、塚本さんが協力的ならば、俺達だって、塚本さんに『イデアル(やつら)』の情報を、皇国の諜報機関が入手した、とびっきりの情報を塚本さん達に提供する用意があります」

 すまん、アイナ。口をついて俺、勝手に塚本さんに、それを約束しちまった。

「すまん、アイナ」

 小声で、俺は傍らのアイナを見つめて。

 でも、この膠着する険悪な状態を打開するには、塚本さんにこれぐらい言わないと、ふっかけないといけないだろう?アイナ―――、っと俺は。

「そう、ですね、ケンタ―――、 ふふっ♪」

 ―――独断的な貴方もかっこいいですよ。―――、ふふっ♪、と俺の耳元で、俺にだけ聴こえるような声で、アイナは囁いたんだけどな。


「健太くん、っ」

 にやり、っと塚本さんは、先ほどまでの、怖いぐらいの真面目な表情とは打って変わって、今度のは、口角を吊り上げ、まるで三日月の弧のような、怖いぐらいの哂みをこぼし―――

「はい、塚本さん」

 っ、こえぇ。その塚本さんの哂み。これが、彼が『哂い眼鏡』と云われる由縁か。


 ―――くい、っと塚本さんは、その自身の眼鏡を押し上げる。

「おもしろいね、きみは健太くん。『僕達』なんかに協力を持ちかけるなんて。さすがは愿造さんの孫なだけはある。だけど、僕がきみ達に協力できるかは、きみ達の実力次第だ。もし健太くんきみが―――。いやはっきりと言おう」

 塚本さんは、一息入れ―――

「『僕』が、きみ達に協力するのは、イニーフィネ皇国にも恩を売れるし、やぶさかではない。だが、健太くんきみが弱ければ、僕は無条件にその協力を破棄しよう。弱者は『僕達』の足手纏いになる」

 はっきり。

 にやり、っと、塚本さんはその口角を吊り上げ、哂いながらその言葉を発する。塚本さんの言う『僕』―――。これは、この『僕』という単語は、単に自身のことを呼ぶ一人称の僕ではなく。きっと、『灰の子』の一員の『僕』として、それを指しているに違いない。


「っつ」

 塚本さんは、日之国国家警備局の『仮面』を脱ぎ捨て、『灰の子』として、その『長』である『哂い眼鏡』として、はっきりと『弱者は“僕達”の足手纏いになる』、と俺に言った。


「『僕達』は、たとえ協力者と言えども、弱者の尻拭いは御免だ。僕達は弱者とは協力しない。それが僕の、今回のきみ達の天雷山踏破に提示する『僕達』の絶対条件だ」

「・・・」

 つまり俺は、俺達が弱者ではない、ということを、塚本さんに証明できれば、いいんだろうか?


「ツカモト」

 そのときだ、アイナは塚本さんの名を出す。

 アイナは、そんなアイナは意志の籠った強い眼差しで、塚本さんを見詰めている。


「・・・」

 それだけで、俺はアイナは塚本さんに言わんとする、アイナ自身の感情を察した。つまり、俺にとって『いい話』ではないな、アイナのやつ。


「はい、アイナ皇女殿下」

「それは、私の伴侶であり、配たる者ケンタへの侮りでしょうか?」

「いえいえ、アイナ皇女殿下。僕はそのようなことなど露も思っていませんよ」


「っ」

 だが、塚本さんは、ニヤニヤ、とその哂みを絶やさない。さすがは『哂い眼鏡』。これが、塚本さんが『哂い眼鏡』と渾名す由来か。


「彼ケンタは、皇国では救国の英雄『あまねく視通す剱王』と、そう呼ばれています。私の配たるケンタへの侮辱は、この私が赦し―――」

 アイナ。俺は―――。俺は、アイナへと振り向く。

 アイナのヒートアップに、すこし水を加えるか。

「―――まぁまぁ、アイナ」

「しっしかし、ケンタ―――っ」

 だめだ、このやろっ/// アイナは不服そうなその自身の顔を、その表情を崩さず。

「―――彼ツカモトは、貴方のことを―――」

 俺のために、怒ってくれるアイナ・・・っ。

 ―――こいつめ・・・っ/// このやろ・・・っ/// アイナめ、、、かわいいやつめ・・・っ/// くそ・・・っ///

「―――っ・・・///」

 だが、それとこれとは話が別。

 アイナが俺のことで怒ってくれるのは嬉しいことだけど、でも、俺と塚本さんの『話』をダメにするわけにはいかない―――。

「アイナ」

 ぐいっ、っと俺は腕を伸ばし。もちろん俺が右腕を伸ばすのは、アイナに、だ。

「―――ひゃわ・・・っ///」


 そのアイナの括れた腰を捕まえ、やや強引に、そのアイナの細い腰に、俺は右腕を絡ませ自分のところへ引き寄せる。

 とん、っとアイナをこの胸中に納め、俺は。

「―――」

 無言で、でも、真面目な顔でアイナを見つめる―――。

「ヶ、ケンタ―――、、、」

 揺れるアイナの藍玉のような瞳―――、、、


「アイナ。アイナが、俺のことで怒ってくれるのは、とても嬉しいよ。だけど―――」

 アイナのその、かわいいことばかり言う、そのかわいい、みずみずしい唇のお口をちょっと黙らせよう。

 俺は、顔をアイナの頭に近づけ、、、―――形のいいその耳元で、

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