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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十四ノ巻
266/460

第二百六十六話 俺は『灰の子』とは、共闘すらできると勝手に思っている

「羽坂さん」

「うん」


「・・・」

 いや、先に塚本さんに、ちゃんと言っておかないと。筋は通しておかないと―――。


第二百六十六話 俺は『灰の子』とは、共闘すらできると勝手に思っている


「なんで俺が、きみの両親の名前を知っているのか、羽坂さんにはあとでちゃんと話す。でも今はちょっと待ってて」

 俺は目に意志を籠めて、羽坂さんを見詰める。

「―――。ん、わかった」

 羽坂さんは、やや首を傾げるように、、、でも分かってくれた。


 俺はそんな彼女羽坂さんを、この話の場に残し、塚本さんへと意識を向ける―――。

 塚本さんは、俺のことを『祖父ちゃんと一緒で筋を通す人間』と言っていたしな。だから、まずは塚本さんに納得してもらいたい。


 俺は羽坂さんから視線を切り、その後ろに佇む塚本さんを見据え、塚本さんのその眼鏡の奥の、その双眸を、

 俺は意志の力を籠め彼を見詰めて、この口を開く―――。

「塚本さん。俺は貴方と敵対するつもりは毛頭ありません。まずは俺の話を聞いてくれませんか?」


 だが、まるで、俺を信じていない、かのような顔の塚本さん。

「―――ふむ、、、健太殿下の話ねぇ・・・」

 乗り気ではなさそうな、塚本さんの言動とその表情。


 だが、俺は、この人を前に臆するわけにはいかないんだ・・・!! たとえあの、かつて『日之国三強』の一員だったこの人でも―――っ!!


 強制じゃなくて、あくまで塚本さんへの提案だ、俺がするのは。

 だから俺は、塚本さんに対して声を荒げる必要も、喚く必要も、捲し立てる必要もない。

「塚本さん。俺の話を聞いてもらってから、塚本さんなりの決断を出しても、遅くないはずです。まずは俺の話を聞いてください、お願いします・・・っつ」

 ぺこりっ、っと俺は―――塚本さんに頭を下げる。塚本さんに頭を下げながら、俺の脳裏を過ることは―――。

「―――」

 俺は、この人塚本さん、、、その彼が率いる『灰の子』とは、絶対に敵対したくはないし、『灰の子』の一団はたぶん、、、というか絶対に、めちゃくちゃ強い人達の集まりだ。

 あのとき、魁斗と戦ったとき、魁斗あいつも―――


///


『ははっ―――♪思い出すよねぇ・・・』

 ポーン、キャッチ。ポーン、キャッチ―――。

「―――・・・」

 ひょっとして今なら魁斗からその『氣導銃』を奪えるんじゃあ・・・―――うえ゛・・・俺が魁斗から奪って自分の物したら・・・俺も魁斗と同じじゃねぇかよ―――えっと元の持ち主に返すことができればいいなぁ、ってことか。もし、魁斗から奪ったら・・・ううん取り返せれば、そうしよう。

『この『氣導銃』はそのときの戦利品さ。前持ってた奴の名前は知らないけど、銀髪の変な男だったよ。『燃え滓』の奴らはクロノス義兄さんも苦戦するような連中ばかりでさ―――』

 しょぼん・・・。そこで魁斗はキャッチを終わらせた。そして、魁斗は自身の視線を落とし、がっかりしょぼんといった感じで肩を落とした、んだっか。


///


 ―――魁斗はあのクロノス義兄さんこと、日下修孝『先見のクロノス』も苦戦するぐらいの人達だって、言ってたじゃねぇか、『灰の子』の人々は。


 この五世界の強者の集まり、Sランク級の選抜といっていいほどの規格外を集めた『イデアル』、その戦闘部隊十二人会ですら、苦戦するほどの『灰の子』。

 現に、日下部市では、『紅のエシャール』と『執行官』は、、、祖父ちゃんか。ともかく、二人は討ち取られた。そして、その『灰の子』の頭目は、今、俺の目の前にいる。そう、塚本さんその人だ。

 その塚本さんは、今俺の目の前にいる。

「っ・・・」

 そんな『灰の子』の一団とは、俺は敵対したくないし、戦り合いたくない。それに転移先、この五世界で彷徨っていた祖父ちゃんを助けてくれた、いい人達だしな。

 と言うか、そもそも―――、

 俺達と塚本さん達『灰の子』の利害は案外近い所にある、と俺は思っている。


「いいよ、話してごらん“健太くん”。それから僕は結論を出そう」

「っ!!」

 その言葉を待っていたんだ、俺は、塚本さん。

 さぁ、言葉を選びつつ、俺は今から塚本さんこの人と渡り合う。失言には気を付けないとな。そして、謙虚に。

「ありがとうございます、塚本さん」

 すっ、っと俺は頭を上げた。


 俺達と塚本さん率いる『灰の子』の間に横たわる関係は『負』ではない、と俺は思っている。俺達と『灰の子』の敵対勢力は同じ『イデアル』。

 むしろ利害関係で言えば、俺達と『灰の子』との関係は『正』だと思う。いわゆる利害の一致だ。俺は『灰の子』とは、共闘すらできると勝手に思っている。

 アイナはどう思っているのか。はたまた塚本さんもどう思っているのか。そこのところは判らないが。


 だが、今は『灰の子』ネタを口に出すのは、置いておいて、まずは“通常”の『日之国国家警備局第三席塚本勝勇特別監察官』に対しての、正攻法の交渉からだ。

「ただ、俺は、俺達は天雷山の、その頂に征きたいだけなんです。だから日之国国家警備局として、俺達のことを大目に見てくれませんか? 俺達に譲歩してくれませんか?塚本さん」

 塚本さんは、その真剣な表情は崩さず、、、。

「それは、できない」

 きっぱり。と、そう塚本さんは言った。

「っつ」

 っつ。迷う、というか、塚本さんにはそのような素振りはなかった。俺の要求をきっぱりと拒否した、塚本さんは。

 いい、もう解った。俺は言おう、言うぞ、塚本さんに・・・!!


 だが、塚本さんは裏の立場では『灰の子』だ。『灰の子』の目的は『イデアル』の殲滅。それを旗印に、北西戦争『廃都市計画』の生き残りが、復讐を誓って立ち上げた組織。塚本さんがその頭目のはず。

 だから、俺達と『灰の子』との利害は同じ、はず。

 ―――、『これ』を話すことで、俺はもっと塚本さん貴方の秘密を知っているんですよ、という牽制にもなり、塚本さんも譲歩、いや、、、『灰の子』として話に乗ってくれる・・・かもしれない。

 それでも、俺の話に乗ってくれないのなら、またそのときは、他に考えるか。

 俺は口を開き―――、

「アイナが、天雷山のその頂に挑むということは、塚本さんにとっても利があることだと思うんですけど、俺には」

 アイナが天雷山に挑む、と俺は塚本さんに言ったが、本当は『俺の理由』で天雷山に挑むわけだが、今は『アイナが』、と言っておいたほうがいい、と、そう俺は思っただけだ。

「うん?僕にとっても利が?」

 どういうことだい?健太くんと、塚本さんは、俺を見詰めながら、ややその首を傾げる。

「―――っつ」

 俺が、思い出す過去のことは、あの『黯き天王カイト』こと俺の幼馴染だった結城魁斗のあの言葉―――。


『―――『燃え滓』ってみんなしつこかったし、みんな目をぎらぎらさせてて怖いしあいつら『燃え滓』って。―――だから戦利品を貰うだけ手一杯だったんだ。あ、ちなみ僕がまだ十五歳の頃ね。僕はまだ今より浅かったけど経験、クルシュ養母さんの口添えでクロノス義兄さん達についていけることになってさっ♪ まぁ、楽しかったからいいんだけどね。健太もし、きみが『イデアル』になれば僕がしっかりと教えてあげるねっ僕達『イデアル』の戦い方を、ね♪』


 バカなことを魁斗の奴。なにが『イデアルの戦い方を教えてあげる』だ、今思い出してもバカバカしい。


 そう魁斗は、あのときの僕は十五歳だったと言っていた、あの廃砦で。だから今から二年前のできごとだったはず、魁斗達『イデアル』が、『灰の子』を急襲したのは。

 あのとき、俺の「『燃え滓』ってなんだ?」の問いに、あのときの魁斗は―――。

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