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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十四ノ巻
263/460

第二百六十三話 ・・・、なるほど、貴方は我々に天雷山には行くな、と、そういうことですね?

「ふふっ、ふふふふ―――♪」

 アイナの笑う声。遠くまで聴こえるような、アイナの愉悦が混じっていると、そう、感じ取ることすらできる、透明感を伴った高い、高らかと笑うアイナの声だ。


 っつ・・・!アイナが怒っている・・・っ!!

「っ」

 そのアイナの高笑いの声を、少しばかり怖く感じてしまうのは、俺だけだろうか。

「ァ、アイナ様―――、」

「ひ、姫様・・・、、、」


第二百六十三話 ・・・、なるほど、貴方は我々に天雷山には行くな、と、そういうことですね?


「ふふふ―――、ふふっ、えぇっ、面白いことを語りますね、ツカモト。日之国国家警備局がその主張―――、『イニーフィネ皇国の要人が警備局の護衛官も就けずに、自由に日之国内を出歩いて、もしイニーフィネ皇国皇女の身に、この私の身に何かあれば日之国国家警備局は面目丸つぶれ、組織は解体。イニーフィネ皇国をも巻き込み外交問題に発展する恐れがある』であるから、我々の行動の詳細を、一から十まで全て国家警備局に教えてほしい、報せてほしい、開示しろ。つまり貴方が言うことはこういうことですね、ツカモト」

 はっきり。


「っつ」

 はっきり、と、『警備局の面目は丸つぶれ、組織は解体』って。はっきりと言うよなぁ、アイナってば。言葉を濁すようなことはしない。


「はい、アイナ皇女殿下。僕の見解はその通りです。どうか良しなにお取り計らいください」


「・・・」

 塚本さんも、物おじせず、はっきりとアイナにものを言う。


「それはできません。私は、我々は天雷山へ、その頂に向かうという強い意志を折ることはありません。もし、どうしても我々の動きを把握、、、いえ、我々を監視したいというならば、そちらから誰か―――」


「、、、」

 アイナってば、わざと当てつけで『我々の動きを監視』って言ったんだろうなぁ、塚本さんや一之瀬さんの前で。


「―――『我々を監視するための護衛官』を警備局より、出せばよいではありませんか。そうすれば、あなた方はいつでもどこでも『我々を監視』、おっと、護衛でしたね、『我々を護衛』することができるはず、違いますか?ツカモト」

 アイナの口は止まることがなく―――、、、


「・・・っつ」

 塚本さんの、『ああ言えばこう言う』の売り言葉に買い言葉で、アイナのやつ、、、ちょっと頭に血が昇ってるなぁ・・・。アイナが、自身の真の異能を使うときに出るという真の異能の気配と雰囲気が、、、漏れ出ているような・・・。

 ちょっとこの場で、それは、まずいかもしれない。


「ふむ、それは―――」

 塚本さんの言葉。


 アイナは、だが、塚本さんの言葉を切り、塚本さんが喋ろうとはしていたが、、、。

「まぁ、いいでしょう。我々の動きを監視することが目的の『護衛官』であっても、二、三人であれば、私は、その護衛官の天雷山への同行を許可しましょう。その代わり、その『護衛官』は、完全に私の管理下に入ってもらいますが」

 アイナはその藍玉のようなその眼で、強い意志の籠った視線を塚本さんに向けたまま、語り終える。


「・・・」

 ふぅ、、、なんとか。アイナは発言を終え、ここでやっと塚本さんに発言が回ってきた。


「貴女の管理下ですか、、、なるほど皇国の・・・。ですが、僕としましても、貴女がた皇国におんぶに抱っこしてもらうのは、申し訳が立たない。だから、『それ』には及びませんよ、アイナ皇女殿下。僕達日之国国家警備局は、貴女を護衛するのに必要な護衛費用を全て出しましょう。ですが、それには日之民の血税を使用しなければなりません、政府の許可が必要であり、しばらく・・・、そうですね、数か月待ってもらえませんか?アイナ皇女殿下」


「っ・・・!!」

 いやいやっ塚本さん。数か月待て、、、って!!


「・・・、なるほど、貴方は我々に天雷山には行くな、と、そういうことですね?ツカモト」

「いえいえ、アイナ皇女殿下。僕はそのようなことは言っていませんよ。ただ、政府の許可が下りても、人手不足が慢性化した我が警備局の人員の中から、、、ふーむ―――、さらに少ない精鋭の人員を割けることが、できるどうか、、、。ふーむ、思案のしどころではありますね。もしくはどこか、日之国ではない、、、たとえば月之国を拠点にしてもらえれば。うーむ・・・」

 のらりくらり、、、。


「・・・、、、」

 いやいや、塚本さんたぶんこの人。アイナに、誰も護衛官を出すつもりはないんじゃないか? ほら、『考えておきましょう』や『善処します』などと、えらい人がよく言う『あの』都合のいい文句と、塚本さんの発言は、ほぼ同じに聞えるのは、俺だけだろうか・・・、、、。

 そして、塚本さんの適当な、責任逃れとも取れる、のらりくらりとした態度と対応は、俺達を『体よく断りたい』、『適当にあしらいたい』、その思いが、その気持ちが、塚本さんの本心が丸分かりで、透け透けだ。

 むしろ、塚本さんは、俺達にそう取ってもらえるよう、わざとこんな風に、のらりくらりと、喋っているんだろう。


「ふ~む。確かにそうですね、アイナ皇女殿下。貴女の言う、僕達日之国国家警備局の人員から誰か護衛官を出し、貴女方一行に同行させたほうが、貴女の護衛はしやすそうでありますが・・・、―――」

 塚本さんは腕を組み、、、ものすごーくとても思案顔で。


 たぶん俺達の『護衛』じゃなくて、俺達の『監視』だろ、塚本さん。そして、情報収集。

 それと―――、

「っつ」

 おいっ。演技だろ、その顔、塚本さん。本当は、きっと塚本さんの本心は『護衛は出したくない』『拠点するなら日之国内ではない、月之国にするか、皇国にしてくれ』、だ。きっと。


 しばし、間を置き塚本さんは口を開く。

「―――でも、二人は」

 二人?塚本さんの言う二人って誰の事だろう。

「二人っすか?誰のことっすか?塚本さん」

 俺は思わず塚本さんに訊いた。

「あ、いえいえ健太殿下。『でも、二人は必要だ』、と言いかけた僕の独り言です」

 なんだ、そういうことか。

「そうっすか」


 ふむ、、、っと塚本さんは考え込むように―――、

「―――、、、」

 ―――、思案するようなそんな表情は、俺には―――。

「っ」

 この塚本さんの仕草は、俺達へ見せつけようとする演技なのか、はたまた素で行なう仕草のなのか。俺には塚本さんの考え込む仕草が、どちらのものなのか分からない。


 塚本さんは、俺達ではなく、身内すなわち警備局の人員の中に話を向ける。

///

「春歌くん、もちろん泰然さんも。二人とも今からする僕の話を聞いておいてください」

「塚本くん?私もかね?」

「はい、泰然さん。もちろん、春歌くんも」

「ふむ・・・」

「・・・はい、塚本特別監察官」

///


 あれ?内輪で話し始めたぞ。意見のすり合わせか。

「・・・」

 俺は、円卓のあちら側警備局の塚本さんの動きを見て。塚本さんは俺達と話すのではなく、警備局の内輪で話し始めた。

 一之瀬さん祖父孫は、塚本さんに頷く。その二人とも、ややはっきりとしない返事だった。俺の印象では、そんな一之瀬さん達の様子だ。

 塚本さんは小声で、、、だが、俺には視得るように聴こえている。


///

「もし、春歌くん―――、」

「はい、塚本特別監察官」

「僕や、侑、、、諏訪局長から、皇国のアイナ皇女殿下の一行に同行するように、との辞令が出れば、行く気はあるかな?」

「・・・っ」

///


 一之瀬さん(春歌)の目が驚きに見開かれる。

 えっ!? マジか塚本さん!!一之瀬さん(春歌)さんを選抜!?

「っ!?」

 この人、本当に、そのことを考えていたんだ。アイナが塚本さんに語ったある種の条件。俺達を監視、、、じゃなかった護衛するために警備局が出す隊員の事を!!

 なんて答えるんだ、一之瀬春歌さんは・・・。


///

「塚本特別監察官」

「うん、春歌くん」

「それが、『上』の出した決定ならば、日之国国家警備局に所属する上級局員として辞令に従い、アイナ皇女殿下一行に同行しなければならない、、、とは思いますが―――」

「春歌・・・」

「―――お祖父さまも憂いているとおり、私も即決即断で、『はい』、とは了承できません。申し訳ありません―――、少し、、、考えさせてください・・・塚本特別監察官」

「、、、そうか、ありがとう。無理を言ってすまない、きみならそう判断すると、僕は思っていたよ」

「ありがとうございます。塚本特別監察官」

 警備局の関係者四人の対面の席に座る俺から見て―――、左から順番に『塚本さん』『一之瀬泰然さん』『一之瀬春歌さん』『羽坂さん』の順番に席に着いている。

「奈留」

 ―――そんな中で、塚本さんは、羽坂さんに声を掛ける。

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