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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十四ノ巻
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第二百六十話 私も同じくらい魚獲れる、よ?

 それより、なんだって・・・っ。俺の、撮ったテンライムカデの写真が!!

「っつ!!」

 泰然さん―――、俺の写真が偽造したもの、、、だと、いうのかっ・・・!!


第二百六十話 私も同じくらい魚獲れる、よ?


「ね、そんなこわい顔をせず、ケンタ」


 ハッ・・・、っと。

 俺はアイナに、そう言われて、ハッと気づいた―――、

「っつ」

 俺はアイナに、そう指摘されるほど、俺は怖い顔をしていたのだろうか?


 翻ってアイナは、アターシャとサーニャに振り返る。

「従姉さん、サーニャ。我々は、確固たる意志と目的を持ち、確かに天雷山に登っていますね?」

「はい、アイナ様」

「はッ、姫様」

 当然、アターシャとサーニャはそれを肯定する。だって俺達が、天雷山に挑んでいるのは事実なんだから。


 そうだ―――。

 塚本さんにも、天雷樹海で撮った写真でも見せるか。

「―――」

 トン、トンっと俺は。円卓の上に、静かに電話を置く。先ず電話の左の角が机上に触れ、そのあとは電話の背面が、机上に置かれるといった様子だ。

 電話を操作するときは、大体が、利き手と反対側の手に電話を持ち、利き手でその画面を操作するか、もしくは、右手か左手かの、どちらか片手で持ち、電話を操作する。


 だが、俺はそれをしなかった。敢えて電話を、目立つように、皆に示して見せるように、ノートパソコンかタブレット端末のように置き、しかも、電話を置いた音を立てるために、机上に置いたんだ、俺は。


「ん?健太殿下?」


 案の定塚本さんは、そんな行動を取った俺に注目する。もちろん、一之瀬さんの視線も、俺のそんな行動を注視しているようだった。

 俺は、塚本さんと一之瀬さんに目配せしてから―――、

「―――」

 ちょんちょん、すっすっ―――、っと俺は指で、できるだけ早く画面を操作。塚本さんに早く写真を見せたいからだ。


「塚本さん、これを―――」

 見てくれ、塚本さん、俺の撮った写真を。

 俺は、見てくださいとばかりに、電話を机上で滑らせて、少し前へと出し示す。向かい側の、塚本さんや一之瀬さん(春歌)が見やすいように、だ。

 画面に出しているのは、俺の中でもけっこう衝撃的だったテンライムカデを撮った写真だ。

 今、二人に見せている写真は、太い苔むした樹木の幹に巻きついているテンライムカデを撮った写真だ。

 深緑色をした怖いムカデの色。親指と人差し指で画面を操作し、その口元を拡大させてやる。橙赤色をしたその頭部の鋭い牙のズームアップ―――。平たいそのテンライムカデの頭もばっちり撮れてある。

 だが、正直言って俺だってムカデは苦手だ。カブトムシやクワガタムシは、かっこいいと思うけど。現に俺は以前、実家でカブトムシやクワガタムシは飼っていたことがある。


 俺が密林で撮ったテンライムカデの写真を一目見た―――

「これは―――、、、っ」

 ―――塚本さんの目が、やや見開かれる。きっと内心驚いていると思う。


「天雷山の樹海に棲息する大百足、テンライムカデの写真です。その他にも―――」

 俺は自分の電話を手元に引き寄せ―――、、、次はなんの、どの写真がいいかな?

「っ」

 そうだこれにしよう。―――っと、俺は樹海の中の川で、サーニャが獲った川魚を焼いて料理し、それを頬張るみんなの動画を見せた。

 残念ながら、撮影者の俺自身は入っていないけどな。


『このかぶりつくのが醍醐味なんですよ、従姉さん』

 と、言ったアイナに、上品に食べるようにと、焼いた川魚の頭から尻尾を貫く串を抜こうとしたアターシャ。

 アイナは、アターシャの進言を制止し、串が刺さったままの焼魚を、横から食むアイナ。


 あのとき、一方のアターシャは、焼いた魚の臓物を取り出してから、おそるおそる川魚を口にしていたっけ。

 サーニャは、アイナ同様に、串に刺さった川魚を、その口元で水平にし、腹から食むという豪快な食べ方。ぱくぱくぱく、うまうまうま、っとみんなで、捕った川魚を食べている場面の写真だ。

 動画の情報である、『日時』『位置情報』も、俺は塚本さんに見せてやった。


 俺の撮った写真と動画を見た塚本さんは。

「なるほど、確かに貴女方は、本当に天雷山のその樹海に行っているようだ。アイナ皇女殿下が仰られるように」

「はい、そのとおりですよツカモト。我々が、天雷山に挑んでいるのは事実です」

「そのようですね。ですが、そこで僕は疑問が生じるのです、天雷山に挑んでいる貴女方が、なぜ今ここ津嘉山の迎賓館にいるのですか? 天雷山のある日月地方と、ここ迎賓館がある日府は、車を飛ばしても一日では到底帰って来れる距離ではない。それがなぜ、どうして貴女方は、今ここに―――」


 塚本さん。やっぱりそこに疑問を覚えるんだな。まぁ、当然の疑問か。

「「「「―――」」」」

 俺達四人。俺、アイナ、アターシャ、サーニャは、なにも言わずに。塚本さんが話す間は、誰も口を開いて反論しない。アターシャとサーニャは、主であるアイナにお伺いを立てるのが、いつものことだし、俺も取り敢えず塚本さんの発言を注視しながら、塚本さんの言い分を聞き―――、


「塚本」

 そこで意外な人物から、塚本さんに声が掛かる。その人物は、ずっと退屈そうに、特に塚本さんの話は、もっと退屈そうに聞いているようだったから、そんな、この議題には興味がないんだな、って彼女羽坂さんの印象を、俺はそう受けていたから。

 そう、塚本さんに声を掛けたのは、退屈そうにしている少女。その当人にして、きれいな銀色の髪をした羽坂さんが、塚本さんに声を掛けたんだ。

「―――。なにかな?奈留」

「ちょっと黙って。言いたいことがあるの」

「、、、ん、解った。いいよ、奈留話してごらん」

 そんな羽坂さんの発言に、塚本さんは、自身の発言を中断させる。

 羽坂さんは、まっすぐ俺達を見据え、羽坂さんの目の、その視線の向きから、彼女は俺やアイナを見詰めている。

「ん。さっきの、あれ」


 あれ?羽坂さんが言う『あれ』ってなんのことだろう? この子、語彙が少なくていまいち、話が分かりにくい。羽坂さんの言うことは、伝わりにくい、少なくとも俺には。

「あれ?」

 だから俺は羽坂さんに訊き直す。

「うん、あれ。さっきの動画。魚を獲って食べてたやつ」

 動画のことか、羽坂さんがいう『あれ』って。

「あっ、あー、あの動画ね」

「ふんすっ。あの剣で魚を獲ったのは凄いけど―――」

 羽坂さんは、俺から視線を切って、サーニャに、その興味深そうにした、視線をサーニャに移す。

「―――サンドレッタ、だっけ?私も貴女と同じくらい魚獲れる、よ?」

「ほう。然らば貴女も剣士か?」

 ぶんぶん、っと銀髪の羽坂さんは首を横に振る。

「ううん。剣なんて持ってことないよ?私。でも魚は手掴みで獲れる、と思う」

「、、、えっとハサカ殿と申されましたな―――」

「うん」

「ハサカ殿貴殿は、おもしろいですな」

「そう?」

「私は、貴殿が喋る内容はてっきり、今の話題かと思っていました。即ち我が姫様への疑いを主張するものと」

「、、、私は、あんまそういうの興味ないし、ここに来たのも、塚本に言われて連れてこられたようなもの。あ、春歌も来た理由だよ?。春歌は友達だから?」

「奈留さん、、、なぜか私には疑問形に感じられるのですが・・・?」

 一之瀬さんは、羽坂さんの言葉に反応する。

「そう?春歌。ううん、春歌は友達」

 羽坂さんも同じく。

「そう、ですか奈留さん、、、っ///」

 一之瀬さんは、やや気恥ずかしそうに。

「うん」

 羽坂さんは、また発言前と同じように静かに、席に着く。もう、羽坂さんの、発言は終わったかな?


「さて、と。奈留の話も終わったことですし、僕の発言を続けますね」

「はい、ツカモト」

 再び塚本さんが、話の場に返り咲く。その視線の先に、アイナと俺がいる。俺も、アイナも真正面の席に座る塚本さんを見据え―――。

 おそらく彼が喋るその内容は、『俺達がどうして天雷山から、ここ日府に、こんな短期間で帰って来るのができるのか』、それが、その彼塚本さんの疑問だろう。

 きっと一之瀬さんも、そのような疑問を、疑いを俺達に抱いているに違いない―――。

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