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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十三ノ巻
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第二百五十六話 なぜ貴女までここにいるのですか・・・っ?! 貴女は今頃天雷山にいるはずですよね・・・!!

 キリッ、っと俺は、気持ちを一度切り替え、この眼に、意志の力を籠め―――、

「悪ぃアイナ。俺を捜させてごめん。次からは気を付ける」

 毅然とした態度で、じぃ―――、っと。俺はその凛とした真剣な眼差しで、アイナの綺麗な藍玉のようなその彼女の眼を見詰める―――。


第二百五十六話 なぜ貴女までここにいるのですか・・・っ?! 貴女は今頃天雷山にいるはずですよね・・・!!


「悪ぃアイナ。俺を捜させてごめん。次からは気を付ける」

 毅然とした態度で、じぃ―――、っと。俺は、その凛とした真剣な眼差しで、アイナの綺麗な藍玉のような、その彼女の眼を見詰める。

「っ、あ、い、いえケンタっ。貴方がご無事なら、それで私はいいのですっ」

「ありがとな、アイナ、俺を捜しに来てくれて。嬉しいよ、アイナ。やっぱりアイナがいないと俺はダメだわ、きみがいると俺は落ち着く」

 俺は、アイナの心を揺さぶるような言葉を選んで、それを敢えて彼女アイナに言う。

「あっはい、、、っ///」

「でもよく―――、あ、いや勝手に持ち場を離れた俺が言える立場じゃないけど、よく俺の居場所が分かったな?」

 俺はさりげなく、、、すっ、っと一歩、二歩、数歩歩いて、一之瀬祖父孫の側から離れて、アイナの傍へ歩み寄る。

「その、ケンタ貴方の居場所は、やって来たホノカから聞きまして、ここまで貴方を追って。えと、ホノカが、貴方が長い黒髪の美しい女性と楽しく話をしていると、そう言っていましたので」

「―――」

 っ。あいつか、ホノカのやつめ。

 きっとホノカのやつは愉しそうに、にやにやしながらアイナにあることないこと吹き込んだんだろう。

 あとでおしおきだな、ホノカのやつは。―――って、できないけどな、ホノカにはおしおき。ほら、レンカお兄さんは、末妹のホノカを溺愛している。もし、そんなホノカにおしおきをしたら、俺がレンカお兄さんにおしおきをそれそう。


「貴女はイニーフィネ皇国の皇女殿下・・・!? なぜ貴女までここにいるのですか・・・っ?! 貴女方は今頃、天雷山にいるはずですよね・・・!!」


 春歌さんの驚いたような声。一方のアイナはというと、心身ともに全く動じていない様子だ。どこ吹く風とばかりにアイナは。

「えぇ、ハルカ。いかにも、私はイニーフィネ皇国皇位継承権第三位皇女アイナ=イニーフィナです。お久しぶりですね、ハルカ。元気にしていましたか?」

 しかもアイナは、自身の自己紹介も行ない、さらに一之瀬さんも気遣うという冷静ぶりだ。

「、っ。・・・はい、、、お久しぶりです、皇女殿下」

「ふふっ、ハルカ。貴女は私の臣下ではなく、そのために私とハルカは対等な関係と言いましたのにまた『それ』ですか?ふふっ。以前私は、貴女に『アイナ』と呼んでほしいと言いましたよ?」

「皇女殿下。貴女が仰るとおり、確かに私は貴女の臣下ではありません。しかし、ただ、その理由だけで、一介の日之民の私が、イニーフィネ皇国の元首、もしくは、それに準ずる方を、呼び捨てにしていいはずはありません。それに『北西戦争』を起こしたイニーフィネ皇国の方と慣れ合うというのは―――、っ!! いえ、、、し、失礼致しました」


 ぽろり。一之瀬さんの本音がぽろりと漏れたな。


「ふぅ・・・、ま、それが貴女の矜持ならば、私は、ハルカ貴女を縛ることはできませんね」

 アイナは、やや表情を曇らせた。


「、、、っ」

 アイナはこうした、イニーフィネ皇国と日之国との間に横たわる『しこり』『わだかまり』を少しでも無くすために行動する俺の、俺だけのお姫様なのだから―――。


 春歌さんのほうも、やや表情を曇らせている。

「その、本心といいましょうか。本音が咄嗟に出てしまい申し訳ございません、皇女殿下」

「ですが、私が、ハルカ貴女を『そう』呼ぶのに、縛りはありません。『それ』は、私が貴女を『ハルカ』とそう呼びたいのですから」

「っ、はい・・・アイナ皇女殿下」


「・・・」

 めんどうくさいことになる、と想像して必死こいて、この場から泰然さんと春歌さんを遠ざけようとしていた俺。

 アイナは逃げずに。やっぱ流石だなアイナは。

 日之民の春歌さんに真っ向からそれを言われても、真っ直ぐに。アイナは、肝が据わっているというか、堂々としているというか。やっぱりアイナは素晴らしい人だ。


 っ、っとそして、春歌さんに隣に立っている泰然さんも、さすがにこの場にやって来た女性アイナの正体を、春歌さんより聞いて驚いたようだった。その泰然さんの両目が見開いているから。


「ところで、アイナ皇女殿下。私一之瀬 春歌は、日之国国家警備局の公人として、アイナ皇女殿下貴女に尋ねたいことがあるのですが、よろしいですか?」

 っ。でも春歌さんはアイナのことを『皇女殿下』から名前を入れて『アイナ皇女殿下』と呼んだ!!

「はい、ハルカ。なんなりと」


 アイナのその声を聞いて解る。俺には分かった、アイナの声の調子からして、アイナは『アイナ皇女殿下』と春歌さんに改めて呼ばれて、少し嬉しかったのかもしれない。


「ありがとうございます、アイナ皇女殿下。・・・あの日、私達日之国国家警備局は、貴女方を天雷山へと至る樹海の前まで送り届けたはずです。なのに、なぜその貴女が今この場に、日府の津嘉山の迎賓館にいるのですか?」

 淡々と、春歌さんは。


 あっ、やっぱりそう質問が来るよな、春歌さんから。俺にも、春歌さんは同じことを訊いてきたし。


「答えましょう、ハルカ―――」

「はい、アイナ皇女殿下。私の納得できる回答をお願いします」


「姫様・・・っ」

 サーニャ参内(さんだい)

「アイナ様―――」

 アターシャ祇候(しこう)

「―――」

 ちらり、っとアイナは二人の臣下サーニャとアターシャの参上に、目を留め、二人の臣下は目交ぜで、主であるアイナに応える。


「―――」

 そして、アイナは、アターシャとサーニャから視線を切り、その視線を。強い意志を感じさせるその眼差しで、再び真正面に立つ春歌さん一之瀬春歌へと視線を向けた。

「―――」

 一之瀬さん(春歌)も、また凛とした意志の籠った眼差しだ。そのような両者は対峙する。


「私が、いえ我々が、このツキヤマの家にいることに、なにか問題でもありますか、ハルカ」


 あっ。


「っつ」

 アイナの、その言葉を聞いた春歌さんの眼差しが鋭くなった。彼女一之瀬春歌さんは、アイナの意見とは違う見解を持っているようだ。

「我々は、きちっと正規の手順を踏んで、日之国の法に則り、貴女方が言う正規の手段で、ここ日之国に入境しましたよ?ハルカ」

「それはそうなのでしょうが、、、。私達警備局は、貴女方アイナ皇女殿下が、ここ津嘉山の迎賓館に滞在するとは、滞在しているとは聞いておりません」

「ふむ、そうですかハルカ。ですが、我々は、日之国国家警備局が発行した『入境許可証』を、常に携行しています。この『入境許可証』を持っていれば、日之国を自由に歩け、どこにいたとしても法的には瑕疵(かし)はない、境界警備隊にさえ咎められない、という認識なのですが?どうですか、ハルカ貴女の考えは?」


 アイナは、懐よりちらり、っと『入境許可証』を一之瀬さんに見せると、一之瀬さんにも見えるように出すと、またそれを自身の懐に仕舞う。


「、っ。確かにそれ『入境許可証』を、携帯されていれば問題ありません、、、。ですが、我々警備局は、貴女方より日府に滞在することを聞いておりません。貴女方は日月地方まで行き、そこから天雷山に挑む、と、そう我々日之国政府に伝えていたはずです。もし、アイナ皇女殿下が意図的に、日府にある津嘉山の迎賓館に滞在するということを、隠匿していた場合は、これは、此度の貴女方の件は重大な、入境管理法違反に抵触すると私は認識しています」

 一之瀬さんは、チクり、と。

 そのとき―――、


 ぐいっ、っと、一歩進み出でる者が一人。サーニャだ。

「貴公よっ―――我が君が、犯罪者と申されるか・・・っ」

 サーニャは、春歌さんに抗議の声を上げたのだ。

 確かにサーニャとしては、自身の主であるアイナを、貶めるような発言が春歌、、、いや一之瀬さんでいいか、彼女一之瀬さんから出たのだから。


 すると、さっ、っとアイナは、サーニャの前に、自身の右腕を、水平に伸ばして出す。

「サーニャ」

 アイナの行動の意は制止だ。一之瀬さんへ異議を示したサーニャを、アイナは制止したのだ。

「ハハっ!!姫様」

 それでサーニャは、引っ込んだ―――。

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