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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十三ノ巻
255/460

第二百五十五話 早くも計算が狂ったーっ

 このまま、俺。さり気なく歩き出して、アイナ達が来ないような場所まで、一之瀬家の人々を誘導しよう―――。

 アイナ達と、特にアイナと一之瀬さん(春歌)と会わせてしまうと、話がややこしくなりそうだから―――。

 俺は、そう思い歩き出す。歩みを一之瀬さん祖父孫に促したんだ。


第二百五十五話 早くも計算が狂ったーっ


 アイナと一之瀬さん、この二人は、、、二人とも自身の意志が強い、そんな性格をしている。この二人を会わせてしまうと、『なぜここにいるのですか?』から、口火を切るであろう一之瀬さん(春歌)とアイナの論争が始まってしまう―――あせあせっ。

「っつ」

 そんな予感をびしばしと、俺は感じてやまないぜっ。

 すぅっ、っとだから俺は、さり気なく身振りで、一之瀬 泰然さんに歩くことを促したんだ。


「うむ。季訓と私は若い頃から、この津嘉山の道場で、互いに高め合ったよ」

 季訓さん?そう言えば季訓さんが、泰然がどうのこうの、と俺に話してくれたっけ。まぁ、そんなことよりも、今!! よしっ泰然さんの話の壺を突けたぞっ!! このまま道場に連れていってしまおうっ泰然さんを。

 春歌さんも祖父である泰然さんに勝手に付いてくるだろうし。

「へぇっそうなんですね。泰然さんは、季訓さんの御学友だったんですね」

 俺は季訓さんから、泰然さんの話をされたことを思い出して、もうこの二人が学友だったことは知っているんだけど。そこはそれ、適当に泰然さんの話を聞きながら相槌を打っておこう!!

「うむ。、、、腐れ縁?かな」

「またまたぁ、そんなことを言うなんて、季訓さんが怒りますよ?ははっ」

 ははは・・・っと俺は軽い調子で笑う。普段とは違う、自分の雰囲気を作るって難しいな。

「いやいやいや、(すえ)のやつは―――」


 アイナを待つ、アイナとの約束の場所を離れて、、、俺は。よしっ春歌さんも黙って泰然さんのあとに付いてくるぞ。

「っ」

 よしっ、っと俺は心の中で。

 あとでアイナには、俺がいない事情を、通信魔法で送っておこう。


 ん?

 たったったったーっ、っとそのとき。誰かが元気よく小走りで駆けてくる。

 あいつかーーー、っつ

「っつ」

 おふっ、こんなときに、あいつかーっ!!

 その、こちらへと小走りで駆けてくる人物は赤い髪で、学生服姿。しかも、かわいい鞄を手に持ち。学生服のスカートの裾がふりふりと揺れる。学校から帰ってきたんだろう。


「っ」

 たったったーっ、すたすた、っと、その赤い髪の彼女は、この場に来客がいるのに気づいたようで、その赤い髪の女子高生は、小走りをやめて歩く。

 そして、すれ違いざまに、ぺこりっ、っとその彼女津嘉山 火乃香は。

 火乃香は、俺達の脇を、すれ違うときに軽く頭を下げる。きっと俺に頭を下げたんじゃなくて、一之瀬さん達二人に頭を下げたんだろう。


「ほっ・・・」

 俺は胸を撫で下ろす。ホノカが空気を読んでくれるいい人でよかった。あれでホノカが、俺に親しげに話しかけてきたら、気まずい空気になるところだった。ホノカが、俺に話しかけてくるその話の内容にもよるけどな。

 あとでアイスクリームおごっちゃうぞ、俺。同学年のホノカたんに。


「ねぇ?健太」

 っ・・・!! この子俺に話しかけてきたよ!? 早くも計算が狂ったーっ。

「っつ」

 ダメだホノカたん、俺は見えない空気のようなものだと思ってくれ。もう遅いけど、、、おふぅ・・・。


 それは、ホノカと俺達がすれ違うときのことだった。ホノカは足を止めて、くるっと振り返ると、俺の名前を呼んで、俺を呼び止めたんだ。

「お、おう・・・ホノカたん」

「なにそれ?『たん』って」

「あ、いや気にさわったらごめん、ホノカ」

「あーうん、それはないかな。それより健太。お姉ちゃん、どこにいるのか知らない?電話しても出ないんだけど」

 アターシャって言うよりは、この場では火蓮さんでいいだろう。

「あ、うん火蓮さんはお風呂」

 あ、やべ火蓮さんって、俺一之瀬さん達の前で言ってしまった。後から気づいたよ、俺。

「そっか。いっつも帰ってきたら入っているもんね、大浴場」

 、、、。ホノカのやつ、あまりこの場で、『いっつも帰ってきたら』とか言うなよ、ホノカ。話を聞いた一之瀬さん達が、不信に思うだろう?

 そうだ、ホノカもそれとなく俺が誘導しよう。

「あ、あぁ、まぁ。そうだホノカ。今ならまだ、お姉さんまだ入浴してるかも?汗を流しにホノカも行ってこれば?」

「―――。うん、そうする」

 ホノカは、踵を返し、俺や泰然さん、春歌さんが、今来たやってきたほうへと、足を向けた。


「―――」

 ふぅ、、、なんとか。これで、一之瀬さん達祖父孫が、アイナと出会うようなことはなくなったかな。


「ほう?小剱くんきみはひょっとして津嘉山家の縁者なのかな?」

 そのとき、泰然さんが、俺にそんなことを話しかけてきた。


 仕方ないよな、俺があれだけホノカと仲良く喋っていたら、そう泰然さんに思われても不思議じゃないか。

「泰然さん、えぇっとまぁ、、、はい」

「―――」

 泰然さんの脇にいる春歌さんは、なにも喋らない。俺がアイナの婚約者ということを知っているのに、自身の祖父にもそれを教えないんだな。

 それだけで、この一之瀬 春歌という俺と同学年の少女が、日之国国家警備局という職務に、忠実だということが解った。

「健太殿下」

「ん?」

 春歌さんに呼ばれる俺。

 その彼女の眼差しは、意志を強く感じさせるもので、その雰囲気も凛としている。

「先の、私の質問に答えていただいてもよろしいですか?」

 げっ、春歌さんってば、ちゃんと春歌さん自身が、俺に訊いてきたさっきの質問を覚えてたの!?うやむやにして、春歌さんの質問を巻いたつもりだったのに。だが、俺はそんな気持ちを露にも出さず―――、

「質問?一之瀬さんの?」

 質問?なんのことだったかな?という様子で俺は。確信犯的に、俺はとぼけて。

「はい。あのとき私達は、あなた方を樹海の前まで送り届けたはず。なのに、なぜその貴方が、日府にあるこの津嘉山の迎賓館にいるのですか?」

 めんどくせ。きっちりしすぎだろ、春歌さんってば。適当に、忘れ物を取りに、一端津嘉山邸に帰ってきた、と、でも春歌さんに答えようかな、俺は。

「あー、それは―――」


「ケンタ―――、」

 アイナの声。

 びくぅ―――っ。背後にっ!! アイナだっアイナが、背後から俺を呼ぶ声だッ!!

 そんなときだったんだ、この場にアイナがやって来て俺を呼んだ。つまりアイナは、俺を捜し見つけて背後から俺に声を掛けたんだ。

「ッツ」

 アイナというカノジョがいる俺が、他の女の子と仲良く話していて、それをカノジョに見つかって驚いた、という修羅場的な『びくぅっ』というそう言った意味の驚きじゃなくて。

 アイナも、ここにいる春歌さんもきっと意志が強い人だ。一悶着あるに決まっている。職務に忠実で『堅物』そうな春歌さんがきっと、『なぜ皇女の貴女もここ津嘉山邸にいるのですか?』と問い、意志の強いアイナは口ごもることなく、きっと真正面から春歌さんの質問に答え―――。


 あぁ、おわた。厄介な、ややこしいことになるんだなぁ―――っていう意味合いの俺の驚きの『びくぅっ』だ。

「―――こんなところにいたのですね?捜しましたよ、ケンタ」

 ぐぎぎぎぎ―――、と、まるでさび付いた音が出そうな雰囲気で、俺は背後を振り返る。

「お、おうアイナ、、、ごめん」

 アイナは―――、

「ケンタっふふっ♪」

 ―――にこにこ、にこにこ。やけに上機嫌になったアイナは俺の名を口に出して俺を呼び、にこにこっ、とした笑みをこぼす。

 ハッ・・・ッツ!!

「ッツ・・・!!」

 こっこれは・・・っ!!このアイナの、にこにこ、とした笑みはッツ。アイナのいつもの―――、、、愛が重いやつだ!!

 ち、違うこれは、逢引などではなく、一之瀬さんと一緒に俺がいるからといって、いわゆる浮気というやつではなくてだな。

「ケンタ貴方が待ち合わせ場所に、いないものですから、ずいぶんと捜しましたわ」

 おふぅ・・・。だが、しかし、ここで俺が言いよどんだり、しどろもどろになったら、本当に俺が、愛の誓いを立てたアイナを放って、春歌さんもとい一之瀬さんと、仲良く談笑していたように思われる。アイナにそう思われてしまう・・・!!

「―――」

 だからここは冷静に、冷静に、なにも疚しいことはしていないんだから、毅然とした態度で。すぅ、、、はぁ―――、俺は内心にて呼吸法を実践し、気持ちを落ち着かせる。


 キリッ、っと俺は、気持ちを一度切り替え、この眼に、意志の力を籠め―――、

「悪ぃアイナ。俺を捜させてごめん。次からは気を付ける」

 毅然とした態度で、じぃ―――、っと。俺はその凛としら真剣な眼差しで、アイナの綺麗な藍玉のようなその彼女の眼を見詰める―――。

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