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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十三ノ巻
254/460

第二百五十四話 ところで、貴殿は私の孫娘とはどういった御関係かな?

「えぇ、かまいませんよサーニャ。しかし、獲りすぎることのなきよう心がけなさい。サーニャ」

「はッ。姫様っ畏まりましたっ」

 ゴアっ、っとその黄金の氣を解放したサーニャは―――、

 その腰に帯びた聖剣『パラサング』を抜き放ち―――、

「はぁあああああっ!!」

 バスバスバスバスっ―――っと、ザザンッ!!っと見事に、見事な川魚を四尾獲った。

「姫様っ皆様方。見事獲りましたよっ!!」


第二百五十四話 ところで、貴殿は私の孫娘とはどういった御関係かな?


 まじかっ。傍から見ている限りは、サーニャはそんなに大それたことをやったように、大したことをしたようには見えないが、、、。

「―――っ」

 そんなことはなかった。サーニャはすごかった、だって魚だぜ?

 自力でちゃんと食べられる食料(俺は樹海の中を蠢く多足の生物を捕まえて調理して出来上がる料理は食べたくないよ?)を確保できることもすごいが、その獲り方だ。


 サーニャは聖剣『パラサング』を振り被り、その金色の氣塊を川底にぶつけて、その氣がぶつかったの衝撃と勢いで、水を退けさせ、なおかつ、その衝撃で失神した川魚を瞬時に、ダッシュで獲りに行くという、石を川に投げいれて、その衝撃で川魚を失神させて、漁をするのと同じ方法で、原始的と言えば原始的だけどな。


 ぱちぱちぱちっ。めらめらめらっ。ジュージュージューっ。ぽたぽたぽたっ。

「じゅるりっ」

 ごくりっ。ぱくぱくぱくっ。うまうまうまっ。

「~~~っ♪」


 まっ。そんな感じで、持ってきた弁当と、獲った川魚でお腹を満たし―――、今日は渡河し―――、その対岸より数時間歩いて進んだ地点で、終わりとなった。

 電話の地図アプリの履歴では、日月の月光という町から進んだ道順が記録されている。だいぶ進んだように思うが、、、まだまだだ、この深き天雷樹海を抜けるのは―――。


 このように俺達四人のパーティーは、津嘉山邸と天雷樹海の中を、行ったり帰ったりを繰り返す。天雷山・・・いや、まずは鬱蒼とした深き森、天雷樹海を踏破していく日々は過ぎていき―――、高度が上がるごとに、気温は下がり、湿度は徐々に減少―――、


「よしっ―――、あと少しで天雷樹海の、雲霧林地帯を抜けるっ」

「えぇ、ケンタ。地図上では、日之国の距離であと二里と半といったところでしょうか」

 つまり、十キロメートルほどだ。あと一日もあれば、だよな。もう、あのじめじめした鬱陶しい天雷樹海を、俺達は抜けるんだっ!!


 天雷山に挑んで、二週目に入ったところで標高が徐々に上がり出して、雲霧林の樹海の木々は、落葉広葉樹も混じるようになり、気温も少し、麓の入り口より低くなってきた。

 俺達が天雷山踏破に向け、そんな手応えを覚えていた頃のことだった。


 俺達四人は、アイナの『空間跳躍』の異能で、日府の津嘉山邸へと帰宅―――、本当にそんな夕暮れの時の頃だった―――。


 銭湯では、入浴した後に着替え終えて、涼みながらこういうときは牛乳を飲むんだっけ? 今、俺は津嘉山邸にいる。四人で天雷山から津嘉山邸に帰ってきて、そのようなときだ。

「ふぅ」

 天雷樹海より津嘉山邸に帰宅後、汗は掻いているし、汚れてもいるからすぐに入浴。そして、先に風呂をあがった俺は休憩も兼ねて、アイナ達が、大浴場から上がるのを待っていた。

 大抵は、いつも俺の方が先に、風呂をあがって、アイナ達三人を待っているということが多い。  


 ま、俺は一人の入浴、向こうは三人だし、時間が経かるんだろうな。俺は気にしてないけどね。

「―――」

 ま、それよりも―――、今日の歩いた感じの手応えだ、その距離。今日は樹海の中を、だいぶ進んだと思う。

 もう雲霧林の樹海の先は、見えてきたのも同然だ、という地点まで踏破した。樹海の木々は、落葉広葉樹林に変わりつつあり、それは歩み進んだ地点の標高が、高いところまで来ていることの表れだ。


 森林地帯っていうのは、まっ、日本の山の場合だけど、だいたい標高二千メートルほどで、低木に変わるんだっけ?

 その先はハイマツや、草。そこを越えると、荒涼とした岩や石、氷雪の大地に変わるっていうのが、俺の印象だよなぁ。それは、ここ五世界の天雷山脈でも、日本の山岳地帯の環境の変化と同じなんだろうか?


 もし、仮定として、そんな荒涼とした天雷山の山頂付近で、『イデアル十二人会』の奴らとの戦闘―――。足場も悪く空気は薄い。しかも雷氣漲る場所での戦い。場に慣れるまでかなり戦いにくいか?

 いや、『イデアル』の奴らは、プリズム色のマナ結晶を使って、突然山頂に現れるはずだ。そう手筈になっている。

 奴らイデアルの連中は天雷山の環境に身体を慣らさずに、現れるってことだよな。どちらにせよ、激しい戦いになるのは間違いないだろう。

「―――っ」

 その時点で地の利は俺達にあるし、勝機も俺達に―――、、、っつ


 複数の足跡と、その人物達の気配。

「ん?」

 そんなこんなの天雷山脈踏破への想像に、俺が思いを馳せていたそのときだった。向こうからやってくる複数の人の気配を感じ俺は顔を上げた、、、というよりは、アイナ達かな?と、俺はそちらに視線を向ける。アイナ達は風呂を上がったということで―――

「アイナ―――、え・・・?」

 俺の呼びかけは途切れ―――。違う。違った、ここにいるのは、来たのはアイナ達じゃなくて。

 でも、同じ長い黒髪で、でもアイナとは別人の。


「あれ?こ、小剱さん、いえ、、、健太殿下ですよね・・・?」


 なんで彼女がこんなところに―――、この津嘉山邸にいるんだ?

「っつ、、、」

 その長い黒髪の女性の正体は、アイナではなく、一之瀬さん。

 日之国国家警備局所属の、一之瀬 春歌という女の子だった。

「あ、あぁ、うん―――」

 俺は、一之瀬さんに、、、動揺を隠しつつ、返答―――。

 こ、これはまずいことになったかもしれないような?

 いやでも俺は、アイナも、入境許可証は貰っているんだ。やましいことはないし、なんのやましいこともしていない、俺達は。


「どうしてまた健太殿下は津嘉山の迎賓館にいるのですか?」

 一之瀬さんは、俺にそう訊いてきた。


 やはりそう思うよな、一之瀬さんは。自分達警備局は、天雷山の樹海の手前まで、俺達を送り届けたのに、なんでその俺がこの場にいるんだろうって。

 一之瀬さんに、そう問いかけられ、俺は。ま、適当に話して、流せばいいか。

「えっと、、、それは、まぁ―――」

 俺がやや戸惑いながら、一之瀬さんの質問に答えようとしたときだ。


「知り合いかな、春歌」

 ひょいっと、一之瀬さんの隣にいた初老の男の人が、一之瀬さんに声を掛けた。その声を掛けた白髪交じりの初老の人物は強面だ。その眼光鋭い眼差し―――、きっとこの人も何かの武芸を嗜んでいるのだろう。そのようなぴりっとした雰囲気だ。そしてその初老の彼は、全身黒で統一された黒スーツを着ている。まるで、野添さんや定連さんのような―――あんな黒スーツ。

「はい、お祖父さま。ですが、彼は、健太殿下という方なのですが、その健太殿下と私は、一度会ったことがあるぐらいの、名前と顔を知っているというほどの知り合いです」

「なるほど―――」


 お祖父さま、だって?じゃあこの白髪交じりの男の人は、一之瀬さんの祖父に当たる人ってこと?

「っつ」


 一之瀬さんの、祖父、、、えっと名前は知らない。その人の視線が、一之瀬さんから俺へと移ろう。

「―――ところで、貴殿は私の孫娘とはどういった御関係かな?」


 はい?質問しながら眼光鋭くなってるんだけど?この一之瀬さん(祖父)。

「え?」

 まさか俺が、この一之瀬さん(春歌)と付き合っている、もしくは俺が、一之瀬春歌さんに気があるとでも思っているんじゃあ・・・、この人一之瀬さん(祖父)。

 ばかっ俺の自意識過剰めっ。


「おっと申し遅れた。私は一之瀬 泰然。ここにいる春歌の祖父だ」

 ぺこりっ、っと、一之瀬さん(祖父)改め、泰然さんは頭を下げた。てっきり俺は、この強面の泰然さんは自身よりもずっと若い俺のことなんて、『青二才』『若僧』や『孫娘に付く悪い虫』などと思っていると、俺はそう思っていた。それなのに―――、泰然さんは、ちゃんと礼節を知っている人なんだなぁ。

「あっ、俺のほうこそ―――」

 俺を、歯牙にもかけない、一顧だにしないと、俺は勝手に泰然さんのことを、そう思っていたのに、ちゃんとぺこりっっと、泰然さんは俺に頭を下げてくれた。

「―――俺は小剱 健太っていいます。訳があって、ここ津嘉山の迎賓館に逗留中です」

 ふぅ、なんとかこの場は収まりそうだ。

「ほう。なるほど」

「はい。そう言えば、この津嘉山の迎賓館ですが―――、道場もあるんですね」

 このまま、俺。さり気なく歩き出して、アイナ達が来ないような場所まで、一之瀬家の人々を誘導しよう―――。

 アイナ達と、特にアイナと一之瀬さん(春歌)と会わせてしまうと、話がややこしくなりそうだから―――。

 俺は、そう思い歩き出す。歩みを一之瀬さん祖父孫に促したんだ―――。

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