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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十三ノ巻
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第二百五十二話 天雷樹海は不思議がいっぱい

 ボンッ、っとまたっ!! それは強く激しい噴き上がる大きな音。白い蒸気が噴き上がる!?

 噴出物は放物線で降って―――、ぱらぱらぱら、、、と雨のように降り注ぐ。いや、違うっ雨じゃない!!

「っ!?」

 温かい!?お湯だ。木々の向こうから、お湯が湧き出している? 眼前―――、木々が生えていない開けた場所から濛々と湯気も上がっている。


第二百五十二話 天雷樹海は不思議がいっぱい


「間欠泉でございますね、アイナ様」

「えぇ、従姉さん」

「姫様。拝見なさいますか?」

 アイナとアターシャとサーニャの三人は話し合っている。


「間欠泉、、、」

 ―――その一方で俺は。間欠泉。噴き出す温泉か。温泉と聞いて、俺はレンカお兄さんが言っていたことを思い出していた。

 温泉。『温泉は女神フィーネの力に満ちている』と、レンカお兄さんが言っていたな。惑星の女神フィーネの大地の力の湧出場。天雷山もそうした温泉と共に、大地の氣脈聖地の一つで。温泉が湧くという事は、、、まさか天雷山って火山なのか? むしろそちらのほうが俺的にはやばいと思うんだ。熔岩まで噴き出したらどうしよう。それはないと思いたい。


「いえ、サーニャ。間欠泉を見に行くのは、今はやめておきましょう。今は先を急ぐことにします」

「はッ姫様。畏まりました」

 三人の意見は纏まったようで、、、―――

 だが、そのとき突然―――。


 しゅるしゅるしゅる―――

「うおっ!?」

 と、突然側面の、森の中から緑の蔓がっ、伸びてきた!?

 それはつる植物の葛やアサガオのような緑色の蔓だった。それが、隊列を組んで歩みを進める俺達の左側の側面から、しゅるしゅるしゅる―――っと伸びてきたんだ。

 その緑の蔓は、葛のように、ごわごわとした細かい毛が生えているわけではなく、アサガオの蔓のような蔓植物の蔓だ。

 だが、その蔓の太さは大人の指の太さほどはあると思う。


 シュラッ―――っと、そのとき、剣を鞘から抜く音。

「姫様っ!!」

 サーニャは、その腰に帯びた聖剣『パラサング』を抜く。

 しゅばしゅばッ―――!!

 サーニャは、まるで聖剣『パラサング』を鉈のように使い、伸びてきた緑色の蔓を切り落としていく。切り落とされた部位からは、白濁汁の、、、樹液が漏れ出ている。

 ちょっと気持ち悪いかも、、、。ならば、俺も切る!!

「よしっ!!」

 よしっ俺も―――っ。俺も腰に差した『大地の剱』を抜いて、サーニャに加勢。

 アイナは静かに―――。

「ふぅ―――」

 見れば、アイナもその腰の刀を抜く。そして、斬、斬―――っと緑色の伸びてきた蔓を切り払っていた。

 緑の蔓を切り落とせば、切り落とすぶんだけ、その切り落とした切断面から、白濁色の、、、まるで葛のそれを切り落としたときと同じような、半透明の白い樹液が、ますます漏れて出てくる。澱粉を熱したときのような葛湯のような、そのような感じでもある。

「アイナ様。本体が迫ってくるかもしれんっ、早くこの場を抜けましょう」

「えぇっ従姉さん・・・!!」


「っ!?」

 本体ってなんだよっ!?本体ってっ!! アターシャは『本体が迫ってくれかもしれない』っとはっきりと口に出したんだよ・・・っ!! この蔓の大元、、、本体がいるってことだよな!?


 タタタタ―――ッ、っと俺達は、蔓の迫る速度を超える速さで駆け、全速力でこの場から離れた。


 ふぅ―――、少し開けた場所に出た。そこで俺達は休息。

「ごくごくごくごく――――ぷはぁっ」

 水筒に入れてきたお茶を、俺は直接口に付けてがぶ飲み。

「―――こく、こく・・・」

 アイナは上品に水筒のコップから、一口一口飲む。

「ふぅ、こくこく」

 アターシャも上品な飲み方だ。だが、アイナのその飲み方とは違い、連続で喉を鳴らす。

「んくんくんく―――ふはぁ」

 サーニャの水筒のお茶の飲み方はどちらかと言えば、俺の飲み方の部類に入るだろう。


 ふぅ、、、。みんなもそろそろ落ち着いた頃だろう。もういいかな。そう思った俺は口を開く。

「、、、で、さっきのあいつ、あの緑の蔓はなんだったんだ?」

 あの蔓植物。あの蔓は、普通の植物とは違い、明らかに自身の意思で、動物のように動いていたと思うんだが。


「ケンタさま。あの植物は雷氣漲る天雷樹海にのみ生息している魔法植物になります」

 って、アターシャさんは。

 魔法植物っ!? ミントが言っていたマナ=氣をため込むマナ=アフィーナのような魔法植物か!!

「魔法植物っ!?」

 アターシャはそのタブレット端末に視線を落とし、、、その画面をくるりと反転。俺に見せてくれる。

「どうぞ、ケンタさま」

「お、おう―――、っつ」

 画面を覗き込めば―――、っつ。

 うげ・・・っグロい植物だ。

 その植物はその下半身?と言っていいのか?その下部は緑色でキノコの足、シイタケで言うところの石突きのようで、胴体までにょきっと。

 その上部からは、触手のような緑色の蔓を多く生やしている。枝のようなものは樹幹にあるものの、そこに葉っぱは、あまりついていない。そして頭頂部?そこには熱帯にて咲く、ラフレシアのような花が着き、その赤い花弁の中には、ぎざぎざした突起物が。

 まじか!?まさか、食虫植物のような生態の魔法植物じゃないよなっ!?

「、、、うぇ―――こいつか。本体はグロいな・・・」

 名前はなんていうんだろう、この魔法植物。

 すると、アイナが。

「雷取草ですね、それ」

「はい、アイナ様」

「らいとり草?」

 そのネーミングからしてやばそう。ハエトリ草転じて人獲り草みたいな。

「はい、ケンタさま。その魔法植物は―――」


 アターシャの説明では、そいつ雷取草は、蔓で巻き込んだ獲物を、感電させて失神、もくしは、死んだところで、自身が出す消化液で溶かしながら、自らの栄養分とするそうな。うげ、、、まじか・・・。

 あっこれ。この天雷樹海の中で、テント張ってビバークやキャンプして泊まれねぇわ。こんな魔法植物に、襲われるかもしれないような、気が張った状態で夜を明かすのは無理無理無理。そんなのキャンプの醍醐味が味わえねぇよ。

 ビバーク中にこいつに襲われたらと思うと、、、。

「―――、、、」

 ずぞぞぞぞ―――、っと、俺は背筋が寒くなったのは言うまでもない。

 キャンプしてビバークすんのは、もっと歩いて高度を上げてから、森林限界以上のところじゃないと怖いよな。


 そんなこんながあり、俺達は天雷樹海の奥へと進んでいく。パイプ椅子ほどの大きさの苔むした石を跨ぎ、獣道ほどの幅の登山道を覆い尽くす、名前の知らない緑の葉っぱを押し退け漕ぎ、大きな身の丈を超える岩を、潜るように抜ける。

 空を見上げれば、木々が天へと伸びている。蚊や虻まで棲息しているからほんと堪らない。


「ふぅ・・・」

 天雷山脈のほうに進んでいるというのに、標高はまだまだ上がらず、ただの平坦な地形の樹海の中を彷徨っている感じだ。

 こうも進んだ感がないとは。深い森の中を歩き始めて三時間とちょっと。少し心配になってくる。

「、、、」

 天雷山がある南に本当に進んでいるのか?俺達は。

 俺は内ポケットから電話を取り出し、、、コンパスで方角を。

「―――」

 だよな、やっぱり。電話の、コンパスアプリの磁針は南を指している。磁針はやや西にずれているものの、おおよそ南を指し示していた。

 だから俺達はちゃんと天雷山脈に向かって歩みを進めている。よしっ、っと俺は電話を内ポケットに仕舞ったんだ―――。


「ふぅ・・・」

 俺は軽く息を吐く。最初の内は、俺達の間に会話があったものの、歩くにつれ、樹海の中を延々と、、苔むした石を跨いで、下草を踏みしめ、ときに俺達は藪漕ぎをしながら―――、周りに気を配って、気が張った状態で。だから徐々に疲れてきて、それで今はもう口数は少ない。


 そんな中―――、

「従姉さん」

 ぴたり、っと。歩みを止めたアイナに声を掛けられ、先頭を歩むアターシャは足を止めた。

「アイナ様。今日はここまでになさいますか?」

「えぇ、従姉さん」


 アターシャが足を止めた所。そこは、樹海の中ではやや開けた場所で、この天雷樹海に足を踏み入れたのが昼前、今はちょうど日が傾き始めたところだ。あと二時間ほどで、とっぷりと日が暮れる頃だ。

 耳を澄ませば、遠くに(せせらぎ)の音が聞える。川の流れでもあるのだろう。

「ケンタ」

 俺はアイナに話を振られ、

「ん?」

「ケンタもこの辺りでよろしいですか?」

「そう、だな」

 だいぶ、それもけっこう歩いたしな。昼前から樹海の中を歩き始めて、今はもう夕方前だ。だいたい五、六時間ほど歩いたかな―――。

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