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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十二ノ巻
244/460

第二百四十四話 そうかやっぱり。この人が、、、祖父の言っていた『眼鏡の御仁』―――

 そして、キィっ―――っと静かに停車。乱暴な運転ではなく、とても、まるで慇懃無礼な運転で、俺達の前に静かに停車する。

 三台の黒塗りの車は完全に停車し、エンジンも切られる。車のドアのロックを外す音―――、その次は・・・。

 がちゃりっ、っという車の前の扉が開く音が聞こえ、黒塗りの先頭車の後部座席から一人の男が、ざりっ、っと地面に降り立つ―――。

 黒いスーツ姿の脚に、黒い皮靴の足だった―――。


第二百四十四話 そうかやっぱり。この人が、、、祖父の言っていた『眼鏡の御仁』―――


 その、地面に降り立った彼は黒いスーツ姿に黒い皮靴を履いていた。またその人物は眼鏡を掛けていて、柔らかい笑みの表情を浮かべながら、俺と視線が合う―――。

 でもその眼鏡を掛けた人物はすぐに、俺から視線を切り、

「―――」

 季訓(すえくに)氏―――、アターシャ―――、そしてまた俺へと、その柔らかい視線を向ける。

「久しぶりだな、塚本くん」

 声を先に掛けたのはアターシャの祖父さんの季訓氏だった。

「はい、こちらこそ津嘉山さん」

「お手柔らかに頼むよ」

 季訓氏とこの眼鏡を掛けた人は知り合いなんだろうか? でも、それよりも、俺を驚かせたのは、俺が驚いたのは―――っ


「っつ」

 この黒塗りの車を降りた人が塚本っ?!塚本だと・・・っ!! ひょっとして、、、いや早まるなまだ確定してはいないぞ。『塚本』、、、単に姓が同じだけかもしれない、祖父ちゃんがよく言っていた『眼鏡の御仁』、そして夜話で聞いた『哂い眼鏡』のこと塚本 勝勇(かつとし)とは別人の可能性だってある。

 訊いてみるか?季訓氏に。この塚本という人の下の名前は勝勇ですか?って。

 と、俺が思ったときだった―――スッ、っとと塚本さんが降りた反対側のドアが開き、まず見えたのはスラっとした脚だ。黒いパンツ(ズボン)姿の両脚だ。この人物は女の人だろう。

「―――」

 その黒いパンツ(ズボン)姿の両脚の人物は、ザリッ、っと黒塗りの車から降りる。見た感じの脚の印象や、その体躯から俺の予想通りその人物はやっぱり女の人だった。

 その女の人は、やや眼差しが強く、その感じから彼女は意志が強そうな性格をしているんだろうな、という印象を受けた。齢の頃は、塚本さんと同じくらいで、塚本さんもこの人物も二人は同年代言ったところだろうか。そんな彼女は妙齢の女性だった。

 黒塗りの車のドアがひとりでに閉まり、、、―――そんな女の人は、余裕のある動きと態度で一歩進み出る。

 上下とも黒のスーツ姿のこの妙齢の女性。仕事ができるキャリアの印象も、俺はこの女性を見て、そのような印象も俺は得た。

 この人は仕事ができるんだろうと、思う。

「・・・」

 あー、そう言えば、今思ったことだが、アイナはイニーフィネ皇国の皇女にして女神フィーネの巫女。アターシャは、母方から皇国の血を引き、アイナの近習長。サーニャは皇国の皇女アイナ直属の近衛騎士。少なくとも俺よりは社会的地位は上の、自分より格上の人達ばかりだ。アイナってば一生俺を養ってくれそう。俺ヒモ?

 そんなことを考えていた俺は意識を眼前の黒スーツの女性へと戻す。その女の人が見ているのは、俺ではなく―――、

「初めまして。私は日之国国家警備局局長の諏訪(すわ) 侑那(ゆきな)と申します。こちらの彼は当局第三席特別監察官の」

「諏訪局長の紹介にあったとおり僕は日之国国家警備局第三席特別監察官を務めております塚本 勝勇と申します。以後お見知り置きを」

 そんな諏訪局長が主に見ているのは、アターシャだった。そのアターシャはえんじ色の艶やかな着物姿だ。

「これはご丁寧に。私のほうこそはじめまして諏訪局長、塚本特別監察官。私はアイナ皇女殿下の近習長津嘉山 火蓮と申します」

 アターシャが自身の名前を日之国のほうで紹介するのを聞いたのは、俺は初めてだ。俺の目の前で両者諏訪局長とアターシャは互いに頭を下げ、一言二言形式的な挨拶を交わしあう。

 そして―――、

「―――」

 やっぱりか、塚本 勝勇、俺はそう思っていたよ。そして、この女の人が諏訪 侑那っていう人だということを。祖父ちゃんが言っていた、、四人揃って『日之国三強』の一角と呼ばれていた人達のリーダーだった人。

 油断はできない。特に諏訪局長の後ろで、にこにこしながら成り行きを見守るように佇む『眼鏡の御仁』こと塚本さんのほうだ。

「っ」

 この人が塚本 勝勇か。でもほんとは、俺はこの人塚本さんにお礼を言いたいんだよな。俺の祖父ちゃんを助けてくれた人だから、この塚本さんは。

 彼塚本さんは、この『五世界』に転移してやってきて、右も左も分からず、『煉獄』で灰燼に帰した日下市をあてもなく彷徨っていた俺の祖父ちゃんを助けてくれた人。

 塚本 勝勇『哂い眼鏡』、『眼鏡の御仁』―――、俺の祖父ちゃんを助けてくれた人。俺の口からも直に塚本さんにお礼を言いたい。

 だが、ここはお礼を言うところじゃないだろう。俺だって場の空気ぐらいは読めるさ。それに、ここで俺がお礼を言ってしまえば、俺は『愿造(げんぞう)』祖父ちゃんの孫であるとバレてしまう。俺が『転移者』であるということも。そうなればこの『天雷山』の件が破談し兼ねない。

 あ・・・、塚本さんを見ていた所為か。

「・・・?」

 そんな塚本さんと視が合った。


「どうも」

 はは・・・っと俺は営業スマイルで軽く塚本さんに会釈。塚本さんも俺がしたのと同じような軽い会釈を返してくれた。

 ・・・。塚本さんは俺のことをどう思っただろう? もしくは俺を観てどう思ったんだろう? 雑用係?それとも案内人、とでも思ったのかもしれない。この場で俺は自分自身を紹介しないように決まっている。事前に決められている。

 俺の紹介は、アイナたっての希望で彼女自身が行なう。謁見の間にて、アイナは警備局の面々に俺のことを『婚約者である』と、宣言。俺が、自身の婚約者だと、直々に紹介するそのときまでお預けだ。

 アイナは俺のことを自身の婚約者と自慢げに、その光景が目に浮かぶ・・・っ/// 

 アイナのやつ、俺にべた惚れじゃねぇか・・・っ///

「っ///」

 まるでにやけそうになる。俺だってアイナのことは好きだし、愛している。


 ぱたんっ、ざっ、ざっ、ざりっ、っと。そんな俺が内心ニヤニヤとしていたときだ。新手の、黒塗りの、真ん中のハイヤー車から降りる複数人の足音が聴こえた。その真ん中の黒塗りのハイヤー車から新手が下りたようだった。

「!!」

 まさか、敵襲といったものではないよな。その人物達は塚本さんへと歩み寄る。


「―――」

 塚本さんの無言の目配せで、その三人は諏訪局長の後方に三点で立ち、彼女達は配置に就いた。諏訪局長の右には、すっ、っと綺麗な足運びで黒髪で長い髪の女の子が位置取り―――、


 その黒髪の女の子の足運びを視て、俺は理解した。この子は―――、

「っつ」

 ―――この烏の濡れ羽色をした黒髪ロングの女の子は、なにかの武道を修めているんだってことに。

 その女の子の髪型や容姿はなんとなく、俺の大切な人であるアイナと似ていた―――。

 警備局から送られてきた警備官の名簿には、確か『一之瀬(いちのせ) 春歌(はるか)』と、この女の子の名前が記載されていたっけ。


「―――」

 ―――一方、諏訪局長の左には銀髪の女の子が音もなく歩み寄る―――。

 その銀髪の女の子は、音もなく、まるで忍び寄るかのような足取りで歩んだ。主に斥候や偵察を得意としているのだろうか?この銀髪の女の子は。

 銀髪の女の子はそんな、気配を殺したような足運びと雰囲気だった。

 そのきれいな銀髪の女の子は、肩ほどまでのその銀髪の長さだ。背丈は、黒髪の女の子より少し低い。


「っ」

 銀髪、、、。まさかな、この女の子が銀髪だという近角さんの娘ではないだろう。警備官の名簿リストには、この銀髪の女の子の名前は、確か、、、『羽坂(はさか) 奈留(なる)』と記載されていた。この銀髪の女の子の姓は近角じゃないから。

「・・・っ」

 俺は確信する。この女の子達の顔と容姿からして、名簿リストと同一人物。彼女達は警備局が俺達に護衛官として()る精鋭の警備官達だろう、と―――。


///


「―――、、、」

 つらつら―――、・・・、、、。っと俺は走らせていた筆を一時止めた。

「さて―――」

 次巻『第二十三ノ巻』は、いよいよ、天雷山への登頂か、、、。それにまでに、紆余曲折いろいろなことが・・・。


『イニーフィネファンタジア-剱聖記-「天雷山編-第二十二ノ巻」』―――完。

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