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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十二ノ巻
236/460

第二百三十六話 皇国の要人であるからして、我々はあなた方に護衛官を派遣します

「聞けば従姉さん。最近、いえここ数年日府のツキヤマの本家に顔を出されていないとか。これはちょうどいい機会です。ツキヤマのおじさまに顔を見せてあげてください。きっとおじさまもお喜びになると私はそう思います」

 おふぅ~~~・・・。

「~~~、、、」

 とても嫌そうな顔。それはアターシャにしては珍しい感情を露わにした表情だった。


第二百三十六話 皇国の要人であるからして、我々はあなた方に護衛官を派遣します


 アイナが言った『津嘉山のおじさま』というのは、レンカお兄さん、アターシャ、ホノカの津嘉山三兄妹の実の祖父のこと、だと思う。おそらく津嘉山 季訓(すえくに)その人のことだろう。

「まぁまぁ従姉さん。そのような、いやそうな顔をせず」

「しかしアイナ様、、、父方の祖父母は私を『着せ替え人形』にしてしまうでしょう。(しか)らばアイナ様への御奉公ができなくなってしまいます。やはりここは兄を起用したほうがよろしいかと、そう存じ上げます」

「いつもレンカばかりではなく、たまにいいではないですか、従姉さんだって。それに、その給仕服姿ではない珍しい姿の従姉さんを私に見せてください。従姉さんはどの服を着ても似合う人なのですから」

「・・・ァ、アイナ様っ///」

「はい、これで決まりです従姉さん異論は認めません。ケンタも見てあげてくださいね、従姉さんの着物姿を」

 アターシャの、なるほど―――

「着物姿、、、」

 ―――映える赤い髪のアターシャが、和服姿の着物で、、、。たとえばもし、津嘉山邸は純和風の邸宅だったとして、そこの和風庭園でアターシャはきれいな着物姿で、、、。

 アターシャなら絶対に着物は似合うと思う。アターシャの日之国のほうの名前は『火蓮』だから、蓮の花やその緑の葉を色柄に、赤地の着物を着て、そんなアターシャは純和風の邸宅を背にして、枯山水の庭にて日傘を差し一人佇んでいるのを、俺は想像してしまった。

 たとえば、その日傘は仕込み刀になっていて―――、ずばずばずば―――っ。並み居る侵入者、暗殺者を一瞬で、、、。たとえばだ、俺の勝手な想像。例えばの話だ。

 ふと、俺は我に帰り、意識を戻せば、

「では、お願いしますね従姉さんっ♪」

「、、、御意」

 アターシャは渋々?いや不承不承?なのか。彼女アターシャはアイナのそのやや強引な命に肯いたんだ―――。


 三日後。

 そろそろ夕飯時だ、と思う。アイナが午前中の公務を終えたのち、昼食後から天雷山へと至る作戦会議が始まったんだ。

 昼過ぎの休息を挟み、アイナはまだまだ余力をたっぷりと残しているという雰囲気だ。アターシャもまだまだ珈琲豆を炒るところから初めて、コーヒーを四つの杯に一通り淹れ替えるぐらいだからまだまだ気力はあるんだろう。

 標高の高い山における知識や、天雷山は通常の高い山には当てはまらないような雷氣漲る過酷な環境だから―――、などの座学のような話ばかりで、俺はダレてきてちょっと疲れてきた。まさか俺から天雷山に行こうって言った言いだしっぺだから、『明日にしない?』『疲れてきた』なんて、これぐらいのことで音を上げるのような発言はできないよな。

「っ」

 あーあ、サーニャなんてあのひどい顔、目にくまができているような、、、。でも、さすがサーニャ、気力で踏ん張っている感じ。まだ、うつらうつら、ぐーぐー、とはなっていないが。サーニャは睡眠時間を惜しんで一人で剣の特訓に励んでいるそうだから、その所為で座学や会合は眠気が襲ってくるのかな。

「―――、―――、っ」

 サーニャはコーヒーカップを手に取り、一口啜る。それを二回、三回、と。

 登壇したアターシャはタブレット端末を片手に持ち、

「アイナ様、皆さまがたその日程と行程ですが。アイナ様には我々を連れて、日府の津嘉山邸へと飛んでいただき、後日日府側の要人と会談の予定となっております―――」

 アターシャの話だと、へぇ、、、日之国の要人と会談かぁ・・・。要人、、、か。皇女のアイナやアターシャ、近衛騎士のサーニャ。俺だけ一般人、なんか俺だけ会談の席において場違いな人になりそう。

「、、、」

「―――日之国政府との折衝日府側との水面下での交渉の結果、私達が皇国よりの来訪者であることから、日之国の国家警備局より私達に入境許可証が発行されることとなりました」

「?」

 入境許可証?そんなものが発行されるのか。

「サーニャ」

 アイナの一声。

「はひぃっ姫様・・・っつ」

 びくぅ・・・っ

 アターシャの登壇中に、サーニャは突然アイナに名指しで声を掛けられて、あっ一気に眠気が飛んだなサーニャのやつ。アイナは咎めるようにサーニャに声を掛けたような様子ではない。

「サーニャ。日之国の警備局が私達の護衛官を派遣してくる件についてですが、貴女はどう思いますか?サーニャ」

「日之国からの護衛でありますか?姫様」

「はいサーニャ」

 お、アイナってば見事にサーニャの居眠りを、なかったことにしたぞ。もうサーニャは完全に目が覚めたって感じ。

 サーニャの居眠りことは、俺があまり気にするのも、サーニャ本人もされるのはいたたまれなくだろうから、まぁそれは置いておいて。

 それよりも、護衛? その俺達の警備に、護衛官を日之国の警備局が派遣してくることについてことだ。

「―――、護衛って?アイナ」

 俺も、サーニャと同じで、それをアイナに訊いてみた。

「えぇ、ケンタも。実は、日之国政府に黙って日之国に入境しても構わなかったのですが、後々に禍根を残すことに成りかねませんし、ツキヤマの家を通じて日之国政府に我々の来訪を伝えたところ、『皇国の要人であるからあなた方に護衛官を派遣する』と―――つまり私達には『警備』と称して幾人かの手熟練(てだ)れの護衛官が就くことになりました。えぇ、その実、我々がなにか日之国にて妙な動きをしないか、、、と同時に、勝手なことはするな、という事実上の監視役と、我々への牽制でしょうね―――」

 ―――日之国内、特に首府である日府で勝手なことはするな、という日之国政府の意志の表れで、警備官の派遣は事実上の監視役ですね、なんてアイナはやや表情を曇らせて、俺に本心を話してくれたんだ。

「―――、、、」

 事実上の監視役だって。なんか不穏当だな、日之国政府は。別に俺らは日府には用はなくて、用があるのは日月地方から登る天雷山だけなのに・・・。

 日府の津嘉山邸に、日之国内に入るだけで日之国国家警備局所属の『護衛官』の派遣―――。俺達が日府で勝手なことをしないように、と。勝手なことなんてしねぇよ。そもそも俺達が用のあるところは、日府なんていう大都会じゃなくてだな、天雷山の登り口がある日之国の日月地方、そんな辺鄙なところに用があるだけで護衛官と言う名の監視役の派遣―――。まるで俺達が腫物の扱いされているようで、、、。

 そういう理由が裏にあるから、俺達に警備と称して警備局所属の護衛官を派遣してくるのか。

「護衛官ね、なるほど、な」

「はいケンタ、日之国政府が出す護衛官。それは必要ありません、と、我々皇国の要望で、日之国の意見を圧し切ることはできたのですが、ふぅ―――すみませんケンタ」

 護衛の案を引込めさせずに、日之国政府の意見を通したということか。

 そこでアイナはやや視線を自身の手元に落とし、

 その様子はまるで、アイナは俺に申し訳なさそうにしているかのような。

「アイナ?」

 でも俺が彼女に声を掛けたことで、すぐにそんなアイナは再び視線を俺に戻す。

「えぇ、ケンタ。天雷山に入山するのが、少々遅れたことです。まぁ、後々のことを考えますと、正規の手段で日之国に入境するほうが、遥かに危険性を減らせることができますので、、、」

 あぁ、それで、だからアイナは。でも、それぐらいのことで、俺は不平不満は言わないぞ?

「いや、全然。むしろ俺の為にいろいろとありがとうな、アイナ、愛してるぜ」

「、、、っ///。い、いきなり、、、そのような、ことを、直に言われますと、、、私っ///」

 アイナのやつ、頬を紅らめてかわいいなぁもうー。

「ははっ」

「で、でもケンタっその点に関しまして日之国はきっちりとしっかりとしていますからね。こちらが向こうの条件を呑んだ以上、それ以上のことを日之国政府はとやかく言ってこないでしょう。あくまで現場として日之民の護衛官からはなにか言われるかもしれませんが」

「日之国か、、、」

 日之国か、―――。

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