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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二十一ノ巻
229/460

第二百二十九話 ―――それが俺の『縛眼』だ

 サーニャの挙がった右手が、ひゅっ、っと動き―――、その直後だ。

「、、、」

 ぎゅっ、っとサーニャは俺の木刀を掴まえる、その金色に輝く氣に満ち足りた右手で。

 がくん、と俺は。

「うお・・・っ」

 当然そうなるよな。


第二百二十九話 ―――それが俺の『縛眼』だ


 サーニャは至った俺の木刀を右手でぎゅっ、っと握り込み、左手は何も持たず拳を作る。まるで丹田に力を籠めるように彼女は力む。

「はぁッ・・・!!」

 ドウ―――ッツ!! 金色に輝く(アニムス)の壁が俺に迫ってくる!! それはまるで黄金に輝く爆炎の如く。

 なッ、なんだと・・・!!

「―――っ!!」

 サーニャの金色に輝く氣が増大し、膨れ上がる!! まるでなにか、そう見えない障壁が迫ってくるかのようだ。否、違う、俺のこの眼には視得るんだ。そうそれは極限にまで高められたサーニャの金色の氣の圧だ。

 サーニャが放出した、彼女自身の金色に輝く彼女の氣。それをもろにぶつけられた俺は木刀を手放してしまいそうだ。ぱっ、っとそのときサーニャは掴んだ俺の木刀を放してくれて、俺は。

 うっく、、、ぐぐ―――、うわぁああっと。

 ドウ―――っ、俺に向かってくる氣の圧に抗うことができなくなり、俺は台風の際の暴風に抗い切れない人のように吹き飛ばされた。

「―――」

 二度、三度と繰り返しても、また元の木阿弥。でもサーニャは追撃することなく、すっ、と佇んだまま遠目で俺を見つめている。

「・・・っ、くっそ―――っ」

 くっそっ、っと俺は吐き捨てた・・・!! 情けないぞ俺。

 でも、仕方ないんだ。そして気がつけばまた俺は元の位置に吹き飛ばされている。くそ、、、どうすりゃいいんだこれ。どうやったらサーニャに一太刀浴びせることができるんだ―――?

 いや熱くなるな、冷静になれ俺。とにかくあのサーニャが爆発的に放出する金色の氣をどうにかしないと!!

「―――」

 氣は氣だからな、きっと『大地の剱(エグエアーデ)』なら。くっそー!!俺の得物が今の木刀ではなく『大地の剱』だったら、レンカお兄さんにつけてもらった『壺特訓』で体得した魔法剣の剱技が使えるのに!!

「はぁ・・・っ」

 残念。俺は溜息を吐いた。今のこの木刀じゃなぁ・・・、俺は自身の木刀に視線を移し、肩を落とした。

「ケンタ殿っ」

「っ」

 そんなときだ、サーニャから俺に声がかかった。思いの丈が乗り、力の籠った強い口調だった。

「私はケンタ殿に本気で闘ってほしい、と申し込みましたのにっ。それなのにどうしてケンタ殿は!! どうして私と全力で闘ってくれないのですかっ!?」

 俺はいつだって、サーニャと戦い始めてからは全力で打ち込みにいっている。

「はい?」

「本気で私に斬りかかってくるという誠意を今のケンタ殿からは微塵も感じませんっ!!本気で私にかかってきてくださいっ!! それともケンタ殿貴殿は、私を憐れんでお情けをおかけになっておられるのかっ!?」

「え?情けをかけている? いやいやっむしろ俺の方が―――」

 むしろ俺の方がサーニャにお情けを掛けられていると思うんだが? あの金色の氣の、途轍もない圧であのまま俺を圧殺しようと思えばできたのに。それかもしくは、あのときの定連さんと同じように、サーニャだって右手で掴んだ木刀と反対側の左手で、俺を殴ろうと思えばできたはずだ。

 でも、サーニャはそれをせず、自身の金色の氣圧に毎度吹き飛ばされる俺を遠目に見るだけで本人は動かないから。

 それに、、、女の人を木刀で思い切りぶちのめすなんて、本気で斬りかかるなんてそんなこと―――、と俺が考えていたときだ。

「あの黯黒の破戒者『黯き天王カイト』を打ち破ったという貴方は真っ赤な嘘なのですかっ『あまねく視通す剱王』っ!!」

 なに!!魁斗を倒したことを、嘘だと言うのかサーニャのやつは!!

「ッツ!!」


「サンドレッタ、配たるケンタさまに言葉が過ぎますよ」

 凛とした声が道場に。

 その声の主にサーニャは視線を送る。

「アターシャどの・・・、しかしケンタ殿はどう見ても、私にお手を抜かれているとしか思えないのです―――」

 俺もそちらを見れば、アターシャはアイナの傍に侍りつつ、そんなサーニャを見つめ返すんだ。

「サンドレッタ、、、。いえ・・・はい、その、ケンタさま、、、」

 今度は。アターシャのその視線は、まるで本人である俺に助け船を求めるように俺の目には映った。

「ケンタ」

 すっ、っと一歩板張りの床を進み出て、彼女アイナは俺の名を呼ぶ。

「アイナ、、、」

「私は、ケンタ貴方の真の実力が見たいと思います。その気持ちは無論サーニャも従姉さんも同じはず。さきほどより私は貴方の戦いぶりを拝見し、もどかしい思いで胸がいっぱいでした。ぜひ私にも、貴方の旧友で『幼馴染だった者』を打ち負かしたその圧倒的な『力』を私達にお見せください」

 ―――っ、言葉にならない。でも解った、理解した。その気持ちも全て。

「―――後悔するなよ」

「はい、ケンタっ」

 アイナのやつほんとにうれしそうな気持ちのいい返事をしやがって。

 俺のその『後悔するなよ』の言葉は、アイナに言ったものか、それともこの場にいるアイナとアターシャとサーニャの三人に言ったものか、それとも己自身に言ったものか―――。

 簡潔に言うと、アイナは俺に、魁斗を負かした力を見せろ、とそう言った。ゆらぁっ、っと俺はその場に立ち上がる。

 対するサーニャは顔を、その表情を厳しくし、腰より抜いたその木刀を構える。やっと俺の真の力のお出ましか、と思っているのかもしれない、サーニャのやつは。

「っつ」

「―――、、、」

 いいだろう―――なら見せてやる。俺のこの概念さえ覆すこの選眼の力を、なっ!! すっ、っと俺は乾いた動きで左腕を上げる。俺は木刀を持っている手とは反対の左手を、自身の眼前に開いた左手を(かざ)し、その指と指の半影からこの金色の聖騎士の姿を視止める。

 じくりっ、、、っと俺の眼が疼く。

「『縛眼(しばりめ)』―――」

「え・・・っ!?」

 びくっ、っとサーニャが震える。その瞬間―――、俺の意志の通りに、思い描いたそれと同じものが成る。

 サーニャの金色に輝く密の濃い氣とはまた違う、光輝く俺の氣の帯だ。俺の氣の帯である。しゅるしゅるしゅるっ、っとそれを俺はサーニャの身体に纏わり憑かせる。

 ぎし―――っ、びんッ、っと俺の『縛眼』で成った氣の帯がサーニャを縛り上げる・・・!!

「うっ、動けません・・・っ!!」

 うぐぐぐ―――っとサーニャは力むが、俺の氣の帯はそんな力程度では千切れることはない。概念づけた『もの』だ、そう易々と千切れることはないぞっサーニャ。

「くくっ」

 思わず漏れる悪い笑み。俺自身が口角の端に漏らした笑みだ。俺の縛眼に敵うと思うなよ、サンドレッタ=カルナス・・・!!

「こ、この―――っ」

「くくくっ―――」

 俺は口角に漏れ出た笑みを浮かべる。レンカお兄さんの『それ』を想像しているのは言うまでもない。

「―――それが俺の『縛眼』だ、サーニャ」

「し、縛眼―――です、か・・・っ!?」

「そうだ」

 俺ははっきりと断言する。

 前にこれと同じ『縛眼』を魁斗にしてやった。さらに俺なりに魁斗のときよりもさらに洗練させてきた、この縛眼の異能。俺の氣帯を切れるものなら、千切れるものなら千切ってみやがれっサンドレッタ=カルナス・・・ッ!!

 それは縛眼の効果―――。縛眼を為す。俺は氣の帯を、サーニャの足元である足首から絡みつかせ―――、

 ―――彼女の脹脛から太腿へと、まるで螺旋階段のような形で螺旋状に、サーニャの身体に纏わり憑かせ食い込ませる。二本の帯状の氣だけではない。済まさない。さらに氣の帯を為し、サーニャのその括れた腰もぐるぐる巻きと縛り付け、右肩から胸を通り、左脇腹へと(たすき)がけに縛っていく。その逆方向にも同じように、サーニャを縛るのだ。

「解けるものなら―――、俺の『縛眼』を千切れるものなら千切ってみやがれっサンドレッタ=カルナス・・・!!」

「な、なにをっ、ケンタ殿っ!!こ、これしきの(アニムス)で私の動きを封じるなど・・・っ」

 サーニャは唯一自由なその二本の腕で、自身の身体に絡みつき纏わりつく、俺の氣の帯をぎゅっ、っと掴みかかる・・・!!

「ケンタ殿ぉっぐぎぎぎ―――っ」

 両手で両腕で俺の『縛眼』の効果で成った氣の帯を思い切り、その腕力で引っ張る。サーニャはほんとに引き千切りつもりかっ・・・!?あの馬鹿力めっ!!

「っつ」

 っ、だが俺は油断はしないぞっ!! 俺はこの『縛眼』が、その名のとおりの『万能の異能』ではないことを既に知っている。魁斗だって俺のこの『縛眼』に抗い、あの黯い氣で俺の『縛眼』の氣を侵食破ろうとした。

 サーニャの金色の氣が、俺の氣帯をぶち破る前に、ぶっちぎる前に、俺はさらに上掛けをしてやろうっ!!

「終わりだ、サーニャ」

 じくりっ、っと俺は眼に力を籠め、さらに『縛眼』の効果を高めていく。ぎちぃっ、っと今度は手薄だったサーニャの上半身を『縛眼』の効果でさらに封じてやる。きゅっ、っとサーニャの肩口を帯状の氣でぐるぐる巻きだ!!

「ぅ、くぅっ・・・!?」

「その両腕も封じさせてもらうっ!!」

 すっ、っと俺は眼前に左手を翳し、、、ぐっ、っと俺は眼に力を籠めてサーニャを視詰める。

「あうっ・・・、あっ、あ゛ぁ・・・っ!!」

 サーニャのシニヨンが振り乱れる。まるで絹のような金色の髪、そして歪むその青き澄んだ湖のような碧眼。

 俺は眼前に自身の左手を翳す。半影になった五本の指の向こうで苦悶に顔を歪めるサーニャの姿を俺は見遣る。

「かっ・・・は―――っ」

 ぎしぎし―――、ぎしぎし―――っと、帯状に、縄状に結った縛眼の氣でサーニャの両腕を後ろ手に縛り、俺はさらにサーニャの身体の自由を奪っていく―――。

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