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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十九ノ巻
208/460

第二百八話 魔法の靴下

 手に取ってみて俺は。うん普通だ。手触りも普通だよこの靴下?

「、、、これが『魔道具』・・・?」

「ケンタさまこの靴下には魔法が掛けられていまして―――」

「っつ」

 なんだって!?この靴下には魔法が掛けられているだって?!


第二百八話 魔法の靴下


「厳密には靴下の繊維と一緒に魔導回路も編み込まれているのですが―――」

 魔導回路か・・・よし。

「へぇ・・・、―――」

 じぃ―――っと俺は眼を(すが)めて、手に持つ靴下を凝視する。魁斗から取り返したあの氣導銃と同じような回路がこの靴下にもあるのかもしれない。

「―――実はですねケンタさま♪この靴下」

 しげしげ―――、っと俺はミントの話に耳を傾けながら、

「・・・、―――!!」

 ほんとだっ、布の繊維だけじゃない!! 一本一本の繊維に混じって、その布の繊維に沿うように、アニムスを通氣させる細かい管のような回路が通じている!!

 でも、『氣導』と『魔導』ってどこが違うんだ?氣導銃の回路と、この魔導具靴下の回路は、同じつくりの回路にしか見えない。

 俺は『透視』を解いてミントに、彼女の話に意識を戻す。

「この靴下、一週間は脱げない魔法が掛けられています♪くすくす♪」

 一週間は脱げないだって?

「はい?」

 その間の洗濯はどうすんだよ?一週間も履きっぱなしの靴下の臭いなんて想像もしたくないぞ?俺は。

 にやにや、ミントちゃんにやにや♪

「履いてみますか?ケンタさま♪」

 解って言っているんだろ、ミントちゃん。俺は履きたくない。いったい誰得だ?そんな靴下。

「いや、ミントちゃん俺はそんな靴下履かないよ?」

 しゅん・・・。あからさまに落ち込んだような表情になるミントちゃん。

「残念です・・・ケンタさま、、、」

「・・・」

 そんな心底残念そうな顔をして、、、そんな顔をされたら履かないと!!って気持ちになる。

「ところでミント、その靴下はなんのために、というか用途はなんなの?」

 俺はそんなミントに訊いてみた。

「それはケンタさま、もちろん履くためですよぉ」

 ミントちゃんは、いやですね~ケンタさま♪のノリだ。

「うんそれは解ってるよ、ミント。でも、わざわざ一週間も脱げない靴下なんて、なんのために存在るんだ?」

「このイニーフィネの奥地、大陸の真ん中は荒涼とした大地が広がっていまして―――」

「ん?」

 そう言えば、前に、、、アターシャもそんなことを言っていたような。トゲモモの話のときだったっけ?

「ケンタさま?」

 きょとん、っとさせてミントは。俺は首は左右横に振る。

「ううん、なんでもないよ。続けてミント」

「はい。その今では荒涼とした高原はかつての『古き大イニーフィネ帝国』の中心地だったと云われています」

「、・・・、」

 俺はミントの話に相槌を打ちながら、だ。彼女の話を聞いている。

「通常であれば、その人を寄せ付けない大地なのですが、実は当時の遺物が多く遺されているという噂があって、ふふっ命知らずの探究者達が訪れる場所になっているんですね」

 古き大イニーフィネ帝国の遺物?

「っ」

「えぇ、トゲモモが生えていたり、超常生物が棲息していたりと、とても危険な場所でして♪それはもう一週間は靴下も脱げないほどの状況にっ、ふふっくすくすっ♪」

「っつ!!」

 一週間も靴下が脱げない状況・・・!! そんなにヤバいのかっ―――、

「―――、、、」

 それでか、なるほど―――って最初はびっくりした。

 でも。ほんとか?ほんとの話かそれ一週間も靴下が脱げない状況って。いったいどんな状況だよ、それ。ミントのやつわざと話を盛ってないだろうな?

「あー、ケンタさまその流し目。ミントがウソを吐いていると思っているんですね!! ぷんぷんっ」

「あー、ミントが嘘を吐いているなんてオモってないよ俺は」

 きっとミントやつ話を盛っているんだとは思っているけどね!!俺は。

「そうですよね、ケンタさま。ほらあっちを見てくださいよケンタさま。あれ」

 ふいっ、っとミントが人差し指を伸ばし、その方向を釣られるように俺も。

「ヘルメット?」

「はい正解です♪ケンタさま。鉄帽子になりますっ♪」

 大きな金網状になっているこの店の陳列棚に、多くのヘルメットがそこにぶら下がっている。ちょうど今いる靴下の陳列台から見て、左手斜め奥の店の中にほうだ。

 ふらっ、っとそこへ寄って行くミントについて俺もそこへと向かう。

「この鉄帽子もさっきの靴下と同じように一週間は脱げません♪そういう魔法ですっくすくすっ♪」

 っつ。ひょっとしてミントの話はほんとのことで・・・。

「ま、まじか・・・!!」

 このヘルメットも、被ると一週間は脱げないだって!?呪いのアイテムだな、まるで。

 ―――でも、このヘルメットいろんな種類があるよなぁ。俺はしげしげと陳列棚を見つめながら―――。

 バイク用のフルフェースのヘルメットと違って、ここに陳列されているヘルメットは作業用の頭頂部が丸いシンプルなヘルメットと同じ種類のものだ。

「なんだあれ?角?」

 おっ、あっちのヘルメットは牛のような角が生えているぞ!!

 ミントは角の生えたヘルメットを。ひょいっ、っと両側に二本の角が生えたヘルメットをその手に取った。

「あれも探究者が使う鉄帽子ですよ、ケンタさま。こうやって牛のように―――」

 ぐいぐいっ、っとミントは手に持つヘルメットを、牛が角でなにかを突くような仕草をしながら、二本の角のほうを俺に向けて―――、

 ぐいぐい―――。

「こんな感じですわっケンタさま♪」

「痛だだだ―――!!」

 俺のお腹をぐいぐいっ、っと。でも、正直言うとミントの力加減が絶妙だから、ほんとに角がまともに刺さって本気で痛いってことはない。甘噛み?かも、彼女なりのそうかもしれない。

「それそれ~、ケンタさま、それそれ~―――っ」

「あだだだ、そこはそこはお尻だってばっミントちゃん!!」

 もうちょっとでヘルメットの角がほんとに入っちゃいそうに!! でも、ちょっとくすぐった気持ちいいのはなんでだろう?

「ふふっ♪」

 にやり、っとミント。

「やったなぁ、ミントちゃん♪」

 よし!!今度こそミントをくすぐってやろう♪ あのとき修練中はしなかったけど。 俺はわきわきと指を動かしつつ―――、

 よじっ。角が生えたヘルメットを盾にしながミントちゃん。

「いやんっケンタさま♪」


「、ん゛―――、、、!!」

「「ッ!!」」

 そのときだ。店の奥から店主の咳払い。どうやらふざけている俺達への注意のようだ。見れば、店主が席から身を乗り出し、俺達を見ていたんだ。


 しばし―――、俺とミントは今度は静かにしながら、品物を見ていた。

「おっ、健太くんなにかいいものはあったかい?」

 店の奥からダンボール色の小さな紙袋を持ったレンカお兄さんが出てきた。レンカお兄さんはなにを買ったのかな?

 お金は?購入するときの。

「あ、いやレンカさん俺は―――」

 それで俺は思い出した。そう言えば俺って、アイナにもアターシャにもこの皇国のお金は貰ってないんだよな。

「―――お金を持ってなくて」

「っ」

 俺のその言葉にレンカお兄さんの目が大きくなった。ちょっと驚いたってことか。

「えぇ、まぁ」

「調べよう。健太くんきみの電話をぼくに見せてくれないかい?」

 はい、っと俺は衣嚢(ポケット)より電話を取り出して認証―――、それからレンカお兄さんに俺の電話を見せる。

「えっと健太くん、ここの『設定』から―――」

「ここっすか? ―――、・・・、―――、、、」

 俺はレンカお兄さんに教えてもらいながら、電話の画面を操作し、―――。

「これは―――?」

 ―――このオンオフ機能はなんですか?、と俺はレンカお兄さんに訊いてみたんだ。

「あ、やっぱり。『現金決済』じゃなくて『アニムス決済』になってるね」

 するとレンカお兄さんはそんなことを。

 ??『現金決済』は解る。店頭で現金での支払いだ。じゃあ『アニムス決済』?は?

「アニムス決済・・・なんすかそれ?」

かれん(アーちゃん)やアイナ姫からは聞いていないのかい?健太くん」

 アターシャのことをアーちゃんと呼ぶのは知っていたけど、レンカお兄さんってアイナのことを『アイナ姫』って言うんだ、へぇ。

「はい。アイナからは何も。もちろんアターシャ、さんからも」

 レンカお兄さんは右手を顎に添え、何かを考えるように、だ。

「ふ~む。じゃ、ぼくから健太くんに話そうかな―――、ま、取り敢えず行こうか健太くん、ミントさん」

「はい。お願いします―――」

 店を出て、、、―――俺はレンカお兄さんとミントから『アニムス決済』の話と、この皇国の貨幣の仕組みの話を聞きつつ―――、角を曲がって、左に折れて、、、さらに奥まった場所へ。

「つまりこの皇国では、『フラーム銅貨』千銭の千フラームで『フシール金貨』一枚の一フシールになるんだ」

 などと。

「ま、お金についてはそんな感じかな」

「おっと・・・!!」

 そのまま、まっすぐに進むんじゃないのか。まっすぐ行きそうになった。

「こっちだよ、健太くん」

 レンカお兄さんの先導について進めば進むほど、行けば行くほど徐々に人気がなくなっていく。歩くことしばし、先を歩くレンカお兄さんの足が止まった。続いてミントの足も止まる。

「・・・」

 なんか寂しくなっていくよな・・・。

 そんなことを俺が思っていたときだ。ぴたり、っとレンカお兄さんの足が止まる。

「ここ、ここ」

 レンカお兄さんの言葉に俺は顔を上げた。

「―――」

 このお店の、その看板は木製だ。その看板には緑色地で赤文字を使い『まりもとかりんの小部屋』と書かれている。

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