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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十九ノ巻
207/460

第二百七話 靴下を売る店で

 いや、あのとき俺が視得てしまったのはアターシャのことじゃなくて、扉の三つの鍵のかけ方でもない。アターシャの腰ってめちゃくちゃきれいに括れているよなぁっとは思ったんだけど、そのことじゃない。

 本当にそのことじゃなくて―――っ。

『っ(あせあせっ)、―――』

 ―――本当は『鍵』と『錠』以外のものも、全て透けるように視得ていたんだよ、実は俺。俺の持つこの『眼』は。


///


第二百七話 靴下を売る店で


「あぁ、、、~~~・・・まぁ、、、それは、はい・・・っ///」

 レンカお兄さんの妹の、、、それはノーコメントで。アターシャの実のお兄さんに言えるわけがない。『アターシャさんのが視得てしまったことがあります』、なんて。

「すばらしいッ!!いやね下着の歴史は古くてね。防寒、衣ずれそれらを防ぐために人類が発明した至高の存在。なんたって人類が得た最高にして至高の衣類だからね。この五世界、イニーフィネ皇国、日之国、月之国、魔法王国、ネオポリス全ての人々がそれを用い履く。機械化が著しく進展しているとされるネオポリスの機人でさえ、下着を用いると聞く。ぼくは機人の用いる下着はどのような機能性があるのか、知りたくてね。その下着に対アニムス装甲が備わっているかもしれないし、他にももしかしたら氣導回路が組み込まれていて、通信途絶・消息不明になっても固有のアニムス信号を放ち、救援を待てるとか。嗚呼(ああ)『全て』を視通す健太くんの世界―――、なんて素晴らしいんだっ『健太くんのその世界』・・・っ!!」

「、、、っ///」

 レンカお兄さん―――俺の名前を声高に『全てを視通す健太くんのその世界』って言わないでっ///。俺がいつも『下着』を視ているみたいに言うんだもん。俺は下着ばかり視てないよ?そもそも『透視眼』はあまり使わないし俺。

「ぼくも♪『健太くんの世界』を見てみたいっ♪」

 くるくるくる~♪タンタンタっタっ、っと軽やかなかっこいいキレのあるステップでレンカお兄さんは舞う。この魔導具街の通りで、だ。

 や、やべぇな・・・、、、。

「、、、」

 『津嘉山 煉火』。アターシャと、それとホノカの兄貴。実の妹のアターシャが言っていたとおり講釈垂れるのが相当やべぇな、このお兄さん。言っていることは、まとも?だけど。

 そっか実家に帰ったアターシャと、ホノカはレンカお兄さんにいつもこういうのを聞かされて見せられているのか、、、。

 くるくるっ、ぴたっ、っとレンカお兄さんは舞踏を止め、

「ふっ、、、。眼の異能のことを全般に『魔眼』って呼ぶ人もいるけれど、ぼくは誤解していたよっ・・・!!」

 『魔眼』、、、か。ミントもさっき『死を視通す魔眼』って言っていたな。

「、、、っ」

 がしっ、っと俺は右手をレンカお兄さんに握られた。もちろん両手で、だ。

「ぼくは健太くんきみのその異能『選眼』を聖なる異能を持つ眼『ネ申眼』って呼ぶことにするよ―――。近々、できれば、その・・・、ぼくと一緒に富籤(とみくじ)を買いに行かないかい、健太くん」

「え?」

 富籤って、、、いわゆる宝くじのことだよな? まさか俺に透視を?

「健太くん、、、実は皇国には『視覚共有』ができる眼鏡型の『魔導具』があるんだ、主に探索や偵察のときに使うものなんだけど」

「『視覚共有』ができる魔導具っすか?」

 なんかすげーおもしろそう。迷宮とかがこの『五世界』にもしあったなら。さくさくと進めそうだな。

「あぁ、『魔導具』を手にして。ぼくはきみとなら『世界』を取れる気がするよ健太くん!! ぼくに健太くんきみの世界を、きみが視ている『世界の全て』をぼくに視せてくれないかい―――?」

 がしっ、っと

「うお・・・ッ」

 レンカお兄さんが今度は俺の肩に腕を回す。つまり俺は肩を組まれたってことだ。

 じぃ―――っ、っと俺はレンカお兄さんに見詰められ、その面持ちは本当に真剣なものだ。

「健太くんっつ。きみの視ている『世界』は・・・つまりおパンツさまが視得ていて。ということは、他にも―――」

 レ、レンカお兄さんやべぇな、イケメンすぎるぜ。

「・・・っ」

 おパンツさまって、、、言ってることは馬鹿真面目?だけど。

「あのぉレンカさまぁ―――」

 にこにこ。ミントちゃんにこにこ。でも、その極上の笑みの裏に怖そうな凄味を帯びている、、、気がするんだ俺は、そのミントの笑顔を見て。

「なにかなミントさん。ぼくは今は取り込み中で―――」

「あのレンカさまぁ、レンカさまの痴態は全て録画してありますのでっ♪」

 にこり。ミントの手元には、一台の端末。どう見てもそれは電話だ。その色は黄土色。黄土色をした電話を見るのは、俺は初めてだ。

 レンカお兄さんはきょとん、っとした顔になる。

「え?ぼくの痴態? ぼくは痴態を(さら)したことなど一度もなく。ミントさんぼくの痴態とはどういうことですか?」

 そう言えば、レンカお兄さんってミントには常に丁寧な言葉遣いだよな。なんでだろ?

 手に持つ電話を、ちょんっ、っと、ミントは親指で。

「はい♪ぽちっとな。送信っ♪」

 レンカお兄さんが驚愕に目をカッ、っと見開く

「ッツ!!」


「・・・」

 録画って言っていたなミントは。いったい誰にレンカお兄さんの痴態?の動画を送ったんだろう、ミントは。

「あるお方にレンカさまが調子に乗ったら報せてほしいと言われていますので♪ ふふ、くすくすっ♪」

「ミ、ミントさんそれは、、、その、誰に、、、ぼくの、動画を、送っ、・・・た、、、の、ですか―――?」

「はい、それはもちろんっレンカさまの御家族の方ですよ♪ ふふっ」

 お、おふぅ。

「・・・、、、」

 ちーん。言葉がない、見て判るほどに真っ青になるレンカお兄さん。

 すると―――、

『~~~♪ ~~~♪』

 意外と単調な着信音が鳴った。そのときちょうど、だ。

「あれ?電話?」

 着信音だ。もちろん俺の電話でもないし、ミントの黄土色の電話でもないと思う。

「レンカさまぁお電話が鳴っていますよ~、ふふっくすくす♪」

「、、、」

 ギギギギギギ―――っとまるで錆びついたような動きでレンカお兄さんは、自身の電話を取り出し、、、出たんだよ―――。


///


 そこは先ほどの明るい街区ではなく、どちらかと言えば裏道と言ったほうがいいかもしれない。相変わらずの石畳舗装の道だけど、狭い道幅だ。

「はて、ぼくはなんの話をしていたんだっけ?」

「ふふ♪ レンカさまの大好きなおパンツさまのお話ですよぉ―――、レンカさまぁ♪」

「ぃ、いや、そ、それはもういいんですよミントさん。あぁ怖かった、かれん(アー)ちゃん・・・」

 ふぅ~、っと安堵の息を吐いたレンカお兄さん。


「っつ」

 アターシャからの説教の電話だったんだ、さっきの着信は。アターシャに怒られていたときのレンカお兄さん、、、。今思い起こすだけで、、、こわい。アターシャさんこわいよ。俺もアターシャを怒らせないようにしないとっ、あせあせっ。


 それから、はて、きょとん、っといった感じでレンカお兄さんは首を傾げ―――、ややっとまた口を開く。

「そうそう『魔導具』。『魔導具』の話だったね―――。あ、でも、もう着いたよ、健太くん導具街に」

 レンカお兄さんに、

「ここが、、、導具街」

 続いてミントがその口を開く。

「はい、ケンタさま。ここは魔導具や氣導具を取り扱う店が並ぶ導具街になります」

 導具街―――。その街並みは先ほどまでの華やかな感じではない。

 鬱陶し暗そうな、、、いや煉瓦造りや石造りの建物が両側から迫ってくるような細い道に折れたその先な。

 ここ導具街は、、、この界隈は言葉は悪いかもしれないけれど先ほどまでの明るい飲食店街ではなくて薄暗く、小さな商店のような雑貨屋が密集し、居並ぶ街区だった。

 あ。あの店の前の置物―――。俺から見て左斜め前の店の前に置かれているものだ。

「・・・・・・」

 いかにもあやしい。その置物は蛸の形をしている。蛸の見た目そのままではなく、デフォルメされていて、その蛸の像は八本ある足の先はきゅるりんと巻かれている。材質はなんだろ?石材かな。つるつるの磨かれた花崗岩のような見た目ではなくて、粗削りのぼこぼことした表面だ。

「っ」

 その反対側の店の前には、鮮やかな黄色と赤色そして黒の絵の具かインクを使って描かれた看板が掲げてある。そ

 毒々しい黄色と赤の黒の縞々色の地虫の絵が描かれている看板。まるで矢毒ガエルかアカハライモリのような警戒色だ。

「健太くんこっちこっち」

「あ、はい―――」

 俺はレンカお兄さんに呼びかけられてその彼についていったんだ。


///


 俺は一足の靴下を手に取った。普通の布の手触りの、春秋用の仕様の黒い靴下だ。

「・・・」

「ケンタさま、靴下が欲しいんですか?」

「ん、まぁな」

 実は足袋(たび)しか持ってない、、、いやどうも俺は『剱士』だということで、アイナやアターシャには足袋しか履かないと思われているみたいで、新品の足袋は用意してくれるんだけど。普通の、稽古をしていないときや寝るときには靴下を履いておきたいんだよな。

 でも、これが『魔導具』?どう見てもこれ、、、普通の靴下だよな。レンカお兄さんについていった先。レンカお兄さんとミントは適当に雑貨屋のような品物を陳列している導具屋の軒先を流しながら、、、俺にいろいろな『魔導具』を紹介してくれていた。

「御目が高いですねケンタさま♪ さすがですっ♪」

「え?この靴下が」

 導具屋を流しながら『お~っ』とか『すげーっ』と思うものは、、、どうだろ?今のところ正直あまりなかった。そして、今は靴下だ、俺が手に取る普通の黒い靴下。それ以外にも、赤や青、またジグザグ模様の靴下などいろいろな靴下が、その陳列台の一角には並んでいる。

「はいっケンタさま♪」

 手に取ってみて俺は。うん普通だ。手触りも普通だよこの靴下?

「、、、これが『魔道具』・・・?」

「ケンタさまこの靴下には魔法が掛けられていまして―――」

「っつ」

 なんだって!?この靴下には魔法が掛けられているだって?!

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