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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十八ノ巻
194/460

百九十四話 さっきからなにやってるんですか、戦い方が普通の剣士のものになっていますよ

『・・・』

 くくっ、っとその鞘を持つ奴の左手が動く。

 っつまた見せかけか?

「―――っ」

 来るか―――!? 『日下修孝石人形(クロノ=ゴーレム)』の鞘にある左手がくくっと僅かに縦に動く―――。


百九十四話 さっきからなにやってるんですか、戦い方が普通の剣士のものになっていますよ


「―――っ」

 動いたんだ、『日下修孝石人形』の鞘を添えた左手が。(つば)に隠れた鯉口が、鞘の角度が動き―――その(こじり)までの鞘の見え方の角度が変わる。日下流剣術は相手へのフェイント見せかけが多い!!変化は止まらない。変わり続けるんだ!!

 そしてついにそのときは訪れる。

『っつ』

 ついにきた動いたっ!! すっ、っと太刀準『霧雨』は抜かれ―――、

「!!」

 まるでスローモーションを見ているように緩慢な動きに視得―――、視得る。俺の選眼がそれを齎す。

 今度の『日下修孝石人形』の抜刀は薙ぐように弧を描くものではなく、上から下へと抜き、斬り落とされるような鋭い兜割りのような斬撃・・・っ!!

 だが、俺には視得るんだよっ―――『日下修孝石人形』。

 ふぅっ、っと俺は縦の斬撃を避ける。縦に一直線に振り下ろされた『日下修孝石人形』の斬撃が俺の『先眼』で正確に視得ているからだ。

「ッツ」

 勝機は一瞬。振り抜かれた準『霧雨』をあいつがその鞘に納めるときだ。そこを逃さず今度は『大地の剱』の俺の小剱流抜刀式を『日下修孝石人形』に打ちこむ。石人形は人じゃないし、動物でも植物でもない。無機物の粘土細工のようなものだ。だから遠慮なく俺は『日下修孝石人形』に斬り返すことができるというものだ!!

 今だ―――。腰を落とした抜刀式の構えから―――、

「『刃一閃』―――ッ」

 ―――、しゃんっ、っと俺は『大地の剱』をその陶器の鞘より抜き放つ!! 俺自身から見て左から右へと弧を描くような『大地の剱』の斬撃は、斬撃を『日下修孝石人形』に。相手はミントがその土石魔法で精製した練習用の石人形。石人形だからなんの感慨も、『斬る』ということに躊躇(ためら)うといった感情も湧いてこない。『日下修孝石人形』あいつの土石の胴を生き別れにする、という確固たる意志を俺は持って、この『大地の剱』を抜き放つんだ!!

「っつ」

 よし決まった。弧を描き俺の得物『大地の剱』は正確無比に俺が狙った『日下修孝石人形』のちょうど彼奴の腰を水平方向から捉え―――

 もし日下修孝本人が声に出していたとしたら、『ぬ゛んっ』、っと言ったかもしれない。目の前のミントの傀儡(くぐつ)『日下修孝石人形』は口を利かないけれど、俺にはなんとなくそれが分かった。

『―――ッ』

 ギンッ!!、っと―――、受け止めた、だと!?俺の抜刀式の斬撃を!!

「なに・・・ッ!!」

 うそだろ!! ―――俺の『大地の剱』と『日下修孝石人形』の準『霧雨』が斬り結ぶ!!

『―――、、、』

 腰の準『霧雨』を鞘に納めた状態で『日下修孝石人形』は、その太刀を三分の一ほどを鞘から抜いて、あいつの腰を生き別れにしようとしていた俺の『大地の剱』を受け止めた。

 ぐぐ―――っ、っと。強い!! 俺が、俺のほうが、圧し、、、っ負ける―――っ!!

「くっ・・・!!」

 『大地の剱』を握る俺の右手が無言の圧を感じる。『日下修孝石人形』は準『霧雨』を握る手に力を籠めて、斬り結んだ俺の『大地の剱』を押し退け、払おうとしている。

 ギギギギ―――、刃同士が擦れる不協和音。『日下修孝石人形』は腰に差している鞘より準『霧雨』を全て抜き去り、、、チュイーン―――ッ!!

 ぐっ、、、!!

「くそ・・・っ」

 弾かれるっ、俺の『大地の剱』が―――っ!! その僅か刹那の未来の光景が視得た、俺の『選眼』の『先眼』でっ!!

 タンッタっタッ、っとっと―――、っと俺はたたらを踏みつつ、伸びてくる準『霧雨』の長大な刃から、なんとかそれから逃れるように、『日下修孝石人形』の間合いから素早く、最速に、最も適した回避でその場から離脱する。

『―――!!』

 その瞬間―――、、、斬ッツ。準『霧雨』の鋭い斬撃が空気を切り裂く。

 ずぞぞぞぞぞ―――、っとヒヤリハッとして、いやな汗が背中を流れる、、、。

「―――」

 もし足が一歩遅れていたら胴が生き別れになっていたのは俺の方だ。

「ッツ!!」

 ―――風を切り、準『霧雨』の長大なものうちが、さっきまで俺がいた場所を薙ぐように切り裂く。切り裂かれたのは空気。でももしその場に俺が立っていたままだったら、身体を上下二つに斬り割かれていたの俺だ。

 どうする。準『霧雨』は太刀。俺のこの『大地の剱』の剱身の長さは約八十センチ。対する『日下修孝石人形』の準『霧雨』はその柄まで含めると、、、えっと俺の見立てではだいたい四尺ぐらいか。四尺はあろうかという太刀『霧雨』。本物のオリジナルの日下 修孝=クロノスが廃砦で俺に見せてくれたあの太刀そっくりだ。もし、、、これより先、未来で俺が日下修孝『先見のクロノス』の戦うときがあるとすれば、絶対にこいつを、ここを攻略していないと、俺に勝ち目は薄いだろう。

「―――っつ」

 自分よりも広い間合いの相手と戦うときは、どうすればいい?。教えてくれ祖父ちゃん。

 落ち着け、落ち着け―――、

「~~~、~~~っ」

 ―――落ち着け俺。すぅ~はぁ~っ、と俺は一度大きく息を吸いこみ、そしてまたゆっくりと吐く。落ち着け冷静に。この『選眼』があれば、俺が視得ない、見切れない太刀筋と斬撃は存在しない!!

『―――』

 俺は眼前の、静かに無言で佇む奴『日下修孝石人形』を(すが)め―――、

「っつ、余裕だな」

 っほんとに、『日下修孝石人形』は。いや日下 修孝本人もそんな思考なんだろうな。目の前の『日下修孝石人形』は、俺がそんなさっきまでのことを悶々と考えていた間に、抜刀術を抜き放ったその長大な準『霧雨』を余裕綽々(しゃくしゃく)といった様子でその鞘に納めていた。

『―――』

 さッ、っとまた腰を落とし、『日下修孝石人形』は抜刀術の構えを取る。

 またっ、彼奴の次の斬撃がくる!!

「!!」

『―――』

 まるでこいつ『日下修孝石人形』は『お前への迎撃体勢はできている、いつでも俺に斬りかかってこいっ』、っといった尊大な、そんな様子なんだよ。

「っつ」

 なんか、苛立ってくるぜ。いや、落ち着け、俺。そんな精神を昂らせた状態だと『日下修孝石人形』に勝てないぜ、ったく。


///


「ッツ」

『―――ッ』

 斬ッ・・・!! ギン・・・ッ、バッ!!っ、タタっ―――などと先ほどと同じような、つまり『日下修孝石人形』がその抜いた太刀、準『霧雨』を鞘に納刀したときに俺が『大地の剱』を揮う、そして、斬り返された準『霧雨』の太刀筋を、視切ってその斬撃を俺は避ける、、、といったそれを幾度か繰り返した。

 くそ、今度こそ準『霧雨』の刃をいなして、いい感じに『日下修孝石人形』の懐に飛び込むぞ!!

 ザッ―――、、、くっ、そ・・・!!

「っ、届かないか!!」

 俺が揮う『大地の剱』は『日下修孝石人形』のその土石の体表を僅かに削っただけだった。そしてそのあとは―――、急速に、まるで飛んでくるように伸びてくる彼奴の得物の長大な鋩とその刀身。

 タンッ、タタタっ、っと俺は。長大な準『霧雨』の刃が届く前に俺は離脱したり、しゅっ、っと体躯を逸らしその刃を避けて、今度は俺が『大地の剱』で『日下修孝石人形』に斬りかかるといったそんな『日下修孝石人形』への攻略法?だ。

 そんな俺に―――、

「さっきからなにやってるんですか、ケンタさま」

 ―――外野からミントの声。

 退屈そうな、ちょっと呆れたようなミントのその声色だ。

「ミント」

「戦い方が普通の剣士のものになっていますよ、ケンタさま。『日下修孝石人形』に剣技だけで戦おうとしないでくださいませ。それができるようになるのは『剱聖』になってからです」

 ミントだ。『日下修孝石人形』を操るだけで外野にいたミントからの俺への注文だ。

 でもミントちゃん、剱技だけで戦うなって俺に言われても、、、俺は剱士だよ。

「、、、」

 剱士ならば自然とそうなってしまうものだ。

「ぶーぶーっケンタさまミントの土石魔法を使ってくださいよぉ~。それともケンタさまはその魔法剣『大地の剱』の真価を忘れたんですかぁ? くすくすっ♪ 先日貴方さまが放った『魔力を帯びた砂の刃』―――」

 ミントの土石魔法―――!! 魔法剣『大地の剱』に備わった土石魔法のことだ。

「―――、、、」

「それとも魔法を使うのは不服ですか?ケンタさま?」

 不服ですか、か。さすがにミントでも俺の心は分かるか、、、。

「ちょっとね、、、」

「この世界は氣と異能と魔法が有り触れた『五世界』―――。ケンタさまの故郷ではどうか解りませんが、この『五世界』では己の剣技を異能や魔法を組み合わせて戦うことは普通のことです」

 ミントが言うそこは解っているんだ、俺は。

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