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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十八ノ巻
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第百九十一話 「つまんないです」 え?なにが? 俺はめちゃくちゃ楽しいんだけど

 マジか!! マジなのか!? そのゴーレムの腕が剣から―――

「大砲っ!?」

 ゴーレムの右の剛腕が筒状になって、その真ん中には黒い穴が開いている。そうまるで大砲か大筒のような形状で、その丸い黒い穴。砲口だ、それは。俺を殺す気か。俺を追い詰めて真の実力を引き出そうとするのは解るけど、それはありがたいけど、明らかやり過ぎだよな?これ―――。


第百九十一話 「つまんないです」 え?なにが? 俺はめちゃくちゃ楽しいんだけど


 まるで砲台の。砲台に備わった砲口みたいだ。そんな形状をしている。

 ぐぐ―――、っとゴーレムの右腕が俺に合わされる。黒い穴が真正面に見えるんだ。つまりミントが自身のゴーレムを操って、大砲で俺を撃つということだ。その右の砲口が俺を向く。

「ケンタさまっ受け止めるには『楯』、迎撃するのは『砂刃』。どちらでもなんでもいいのでお願いしまっすっ♪」

 ったくミントのやつ愉しいそうだな。

 なるほどミントの言ったとおり、弾を落とすか、受けるか―――、か。

「―――ッ」

 一瞬。刹那。選択。判断。

 キュオォォォォ―――っ、ゴーレムの右の剛腕の真っ黒い穴。砲口の奥が黄金色に輝き、その光が砲口より溢れる!!

「『石弾』発射―――ていっ♪」

 それを、『その言葉』を俺は呟く。頭で描いた俺の土石魔法の『絶対防御』のその名を!!

「『魔岩牆(まがんしょう)』―――」

 それは一瞬の判断と出来事だった。石弾が俺に命中する寸前、光り輝く『大地の剱(エグエアーデ)』。牆壁(しょうへき)のような、俺とゴーレム両者の間に光り輝く六角の形をした隔たりが出来上がる。丸でも三角でも四角でもない、コンパスでもきれいに描ける六角形の牆壁が。俺は六角形が一番綺麗な形かと思うから。

 ドォウッ、―――着弾。轟音。土煙、、、。

 石弾が着弾するほんの僅か、時間にしてコンマ数秒だ。六角形に光り輝く隔たりが具現化された。俺の思い描いた通り。土石で、いや、、、もっともっと緻密(ちみつ)で堅固なセラミックの、それが眼前に、六角形だ。その形で成る。三条 悠―――彼の『絶対防御』のような牆壁を俺は咄嗟に思い起こし、思い描き『大地の剱』を媒体に土石魔法で『魔岩牆』と俺が名付けた六角形の堅固な牆壁を顕現させたんだ。

『・・・』

 俺が石弾を受け止めたというのに、相変わらず物言わぬミントのゴーレム。その変わらない表情からは、俺はゴーレムの感情は読み取ることができなかった。

 今だ。ゴーレムの動きが一瞬止まった今しかない!! きっとゴーレムを土石魔法で操るミントの思考が僅かに動揺したんだろう。

「っ」

 タッ、俺は地面を蹴り、ひゅっ、っとゴーレムの前に躍り出る―――。

 今こそ。祖父ちゃんとの修練で会得した業を―――、俺の全力を見せるとき―――っ!!

 はぁーっ、っと全身の氣を(たか)め。左脚を半歩前。左手と右手を互いに交差させ、俺の目のすぐ横には、俺自身が構える煌めく『大地の剱』の剱身が見える。

「小剱流霞ノ構―――」

 ぽうっ、っと身体が熱い。そこだ。一瞬動きを止めたゴーレムなど完全なる俺の的だ。

『―――』

 疾―――。土石魔法の砂刃を伴った斬撃は正確無比に俺が狙う部位ゴーレムの右腕を捉える。『大地の剱』のいわゆる日本刀でいうところのものうちを使い、鋩を(ひね)るように、、、。俺の揮う『大地の剱』は狙いを捉えてぶれることはない。

 ぼとり。

「―――月閃」

 俺が『月閃』と言う前に、ぼとりっ、っとゴーレムの砲口の右の剛腕が地面に落ちた―――。

 俺が『月閃』と言う前に、、、いや言ったのとほぼ同時にミントのゴーレムの右の剛腕についた砲口は森の地面に落ちた。

 ゴーレムが動き出す前に次の手を打つ!! いくぜ祖父ちゃん―――もし祖父ちゃんが見ていたら見てもらいたいっ!! 俺は祖父ちゃんから教わったものを、かの剱聖より会得したものを今ここで見せるとき―――。

 サっ、っと。俺に反撃するタイミングをゴーレムに、、、いやミントには許さず、俺はすぐに『大地の剱』を切り返すようにして手元に戻す。

 『大地の剱』の柄を順手で握り、そして鋩を、目の前にいるゴーレムに向けて構えるのではなく、自分自身の背後に向け、、、ちょうど俺の顎先に自分の直角に曲げた右肘がもってくる。そんな構えで、俺は『大地の剱』を構え―――、ダッ、っとその刹那、ゴーレムの懐に踏み込む・・・!!

 疾―――、。

「『小剱殲式一刀殲』」

 斬ッ―――。ドォウ―――ッ、っと―――。

 突っ立ったままのゴーレムを俺は一刀のもとに『砂刃』を纏った『大地の剱』の氣の斬撃で斬り割く。

「―――、、、」

 完璧な『一刀殲』だった、と思う。たぶん今までの中で最高の業だ。祖父ちゃんにつけてもらった稽古、修練、修業その中でもきっと今のがとびっきり。

 祖父ちゃんから言わせれば、祖父ちゃんには『まだまだよのう』って言われるかもしれない、ま、でも。

 きっとミントは俺の『一刀殲』の動きを捉えることはできず、きっと、ゴーレムも自身を通り過ぎた一陣の風だけを感じた、と思う。

「、、、お見事、ですわ―――ケンタさま」

「―――ありがとう、ミント」

 ずずっ、っと右肩口から左脇腹へと擦れるように―――、ぐらぁ―――っとゴーレムの岩土石の上半身が傾く。

 どぉんっ、っと大きな音を立てて、重量級のその土石でできたゴーレムの上半身が地面に斃れ伏す。

「―――っ」

 俺はすぅ、っとそして最後にキンっ、っと小気味のいい音を立たせて、『大地の剱』のその陶器の鞘に納めたんだ。


///


「つまんないです、ケンタさまぁ」

 突然そんなことを言い出すミントちゃん。俺が一刀殲でゴーレムを切り割いたのが、先日のことだ。

「え?なにが? 俺はめちゃくちゃ楽しいんだけど」

 もう明後日にはアイナ達はこのルストレア宮殿に戻ってくるという日の昼前ことだ。ここ数日俺はとても充実した毎日を送っている。

「ぶーぶー、ケンタさま上達するのが速すぎですぅ」

 かわいく不満を口にするミントちゃん。上達するのが速いって言われてもあんまり実感が湧かない、言われてうれしいけどな。

「そうかな?」

 ここ数日、俺はミントのゴーレム兵団を相手に巧く立ち回れていると思う。でもさっきは、ミントの言うゴーレムパァンチっ、を軽く貰って『大地の剱』でゴーレムの岩の拳を受け止めたものの、森の奥まですっげー吹っ飛ばされた。『大地の剱』で行使した土石魔法『砂の布団』で事無きを得た。

「もうゴーレム兵団十体でもケンタさまには中々勝てなくなりましたもんっ、ぷんぷんっ」

「まぁ、それは・・・っ///」

 ミント改めアネモネに暗に褒められているんだよな、俺? だったらちょっと嬉しい。でもミント本人は不服があるようだ。

「さて、ケンタさま―――」

 ミントが俺を呼ぶものだから、

「?」

 ん?っと俺は視線をミントにやった。

「―――ミントちゃんの卒業試験といきましょうっ♪ケンタさまっ」

「卒業試験?」

「はいケンタさまっ♪ 今まで学んだ成果で見事このミントの試験に合格してくださいませっ♪」

 ミントは嬉々としながら―――、だ。

「、、、」

 試験って、、、学年末試験じゃないんだから、、、。テストかぁ、、、あ~いやなことを思い出した。なんで敦司は頭がいいのに天音の気持ちには気づかないんだろ?

 俺はふと友人で幼馴染のあいつらのことを思い出し―――今はいいんだよ、それは、と俺は頭を切り替えたんだ。


「~♪~♪取り出したるは~~~♪」

 ミントは鼻歌まじりの上機嫌で―――ごそごそっ、っと、彼女自身が着ているその魔法の民の正装魔法衣の腰に着けた小さな鞄の中に右手を入れている。その鞄は茶色で革製のものに見える。

「・・・」

 何かの魔法アイテムでも出すのかな、ミントのやつ。それともこの前のマナ=アフィーナみたいな魔法薬かな?

 ごそごそごそ、、、ぴたり、っとミントの右手の手の動きが止まった。ミントはその鞄の中のお目当てのものを探し当てたみたいだ。

 さっ、っとミントは小さな鞄からその右手を出す。

「じゃーん!!見てみてケンタさまっ♪」

 見てみて、とミントの右手にあるもの、それは茶色の瓶だ。まるで栄養ドリンクが入っていそうな外観の瓶な。しかもその中身、例えば栄養ドリンクだったらその茶色い瓶になにがしかの液体が入っているのが見て取れるのに、ミントが出してきたこの茶色い瓶の中には何も入っていないように見えるんだけど?

「ただの空き瓶?」

「ちっちっち・・・っですぜ、ケンタさま♪」

 ミントは器用に右手の五本の指に、親指と人差し指の間を除いて、それぞれ三本の茶色の瓶を挟む。手の指と指の間に軽く瓶を挟んでいるところを見て、やっぱり瓶の中には液体は入っていないみたい。

「じゃ、それは?」

「今は言えません♪ でも答えはすぐに判りますわ、くすくすっ♪」

「―――」

 意味深に笑っちゃってさ。なんだ教えてくれないのか。

 そんな風に俺が思っていると―――、すっ、っとミントは俺の前に手を、その三本のそのガラス瓶を差し出す。

「どの瓶がいいですか?ケンタさま」

「―――」

 選べってことだよな。じゃ、俺は―――、どの瓶にしようかな。

「手に取っていいですよ、ケンタさま」

 俺はミントにそう言われ、、、・・・わっミントの指って細くてきれいな指、、、。―――ってそれはいいんだ。

 だいたいアイナの指だって刀を持っていることが信じられないくらいに綺麗な指だろ、俺。

「うん―――」

 そんなことを考えているなんて噯気(おくび)にも出さず俺は。さてどれにするか、、、真ん中の茶色の瓶。中指と薬指で挟んでいるこの瓶でいいかな。

「―――じゃ、この真ん中で」

 すっ、っと俺は右手の指を出し―――、

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