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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第二ノ巻
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第十九話 追及のキャンプファイア

第十九話 追及のキャンプファイア


 ややあって俺は、―――魁斗が『僕達がいるこの大地は地球とは違う惑星イニーフィネという異世界の大地だよ』って言い張ってまったく譲らないもんだから、―――だから俺は、そこは置いておいて取りあえずイニーフィネという世界のことを魁斗に訊いてみることにした。

「つまり・・・ここはどこかの外国じゃなくて惑星イニーフィネという地球じゃない惑星にある異世界だってことで合ってるのか?魁斗?」

「うん、そのとおりだよ。そうなるね、健太・・・ははっ」

 魁斗は屈託の無い笑みを浮かべた。

「いやいやいやいや。そんなことあるわけないだろう?」

「その反応、僕と同じだね。ううん、僕は転移当時まだ子どもだったから、今の健太よりもう少し早く受け入れられたかな。ははっ」

「・・・」

 それでも俺は魁斗の言うことをにわかには信じられなかった。

「この世界『イニーフィネ』では僕達のような違う世界から転移してやってきた存在のことを、『転移者』って言うんだよ」

「『転移者』?」

「うん」

 魁斗は俺をしり目に、羽織るような白い外套の下に着ているスーツか学生の制服のような白い服の懐より手のひらサイズの板状の通信端末のようなものを取り出した。それは俺が持っている圏外になっている電話によく似ていた。

「僕の電話の液晶画面を見てくれ、健太」

「ん?」

 魁斗は俺が電話をいじるのと同じ要領で、その液晶画面を指でなぞるように触れたあと、その画面を俺に見せた。

 魁斗がその手に持つ電話の液晶画面が地図表示になっており、矢印で俺達のいる場所が示されていた。俺が魁斗の電話の液晶画面を覗き込むと、魁斗は右手の親指と人差し指を挟むようにして地図を少し縮小させた。

「僕達いるこの場所の左―――つまり西側に円形の街があるだろう?」

「これか? 円形のサークル状の城壁で囲まれてるやつか?」

 俺は人差し指で魁斗の電話の液晶画面に表示されているその円形を軽く指した。

「うん、そうそう。つまり僕達はこの街の隠し地下道を通って今ここにいる廃砦まで来たということなんだ」

 魁斗は液晶画面に表示された地図を指で、画面が反応しない程度の距離を開けてすすぅっと指を左(西)から俺達がいる矢印に向かって右(東)へと動かした。

「それにしても、よくあんな隠し通路を知っていたよな、魁斗」

「うん。まぁ、僕は以前あの街の下見をしたことがあってさ、そのときになんかおかしいな、と思ったんだ」

「おかしい?」

 俺は言葉と同時に焚火の中に木切れを静かに足した。

「あの街はあれだけの規模なのに、東西南北の四本しか街道がなかったんだよ。なんかおかしいなと思った僕は、あの街の行政長官と司祭の元に行き、隠し通路を吐かせたというわけさっ」

 得意げに語る魁斗だった。

「吐かせたって、お前。なんか物騒だなぁ・・・」

「いやいや、交渉でなんとか吐いてもらうことができたってことだよ・・・!!」

「ふ~ん、ま、お前にもいろいろあるだろうし、まぁ、いいけどさ」

「でも、あのフィーネ教の司祭さんは中々教えてくれなかったら、交渉は難航したけどね」

 フィーネ教? そんな名前の宗教なんて俺は聞いたことはない。あの教会を最初に見たときにも魁斗はフィーネ教の教会って言っていたような・・・。

「フィーネ教?」

 あのときは生ける屍の所為で必死過ぎて詳細を訊けなかったな、魁斗に。

「あぁうん。この惑星イニーフィネにある異世界『イニーフィネ』に転移して来たばかりの健太はまだ知らないだろうけど、この異世界イニーフィネの先住者イニーフィネ人は『女神イニーフィネ』を信仰しているんだ。その宗教のことだよ、なんでも『フィーネ』っていうのは女神イニーフィネの愛称らしいよ」

「へぇ、女神様かぁ・・・」

 剣術の道を征く俺にとって『神様』というのはありふれたものだ。道場の上座にも神棚はあるし、でかでかと日本の三柱の神様の名が筆で示されている。かの戦国武将達も日本古来の神様を信仰していたというしな。あれ?そういえばアイナも女神様の幸運がどうとかって言っていたような・・・。

 でも、俺は次の魁斗の言葉に驚くことになるんだ。

「ほんとバカバカしいよね。じゃなんで僕ら転移者を助けてくれなかったんだよって。ま、そんなイニーフィネの女神がいたとしても、日之民の僕らには関係ないけどね」

「―――・・・」

 僕ら転移者を助けてくれなかったんだよって魁斗―――・・・やっぱおまえ―――。

「・・・」

 魁斗のその『ばかばかしい』という信仰している人を全否定するような発言・・・それからあの生ける屍の首を躊躇なく刎ね飛ばした行動―――俺は魁斗のその少し危なげなところが、少し心配になった。それと、魁斗やアイナも言っていた『日之民』―――。

「―――魁斗、日之民って?」

 と、いうアイナも言っていた言葉とさっきの魁斗が言った『日之民の僕ら』―――日之民とはいったいなんなんだろうか?

「健太。この惑星イニーフィネには五つの世界が在るんだ」

「五つの世界? それは五大陸という意味か?」

 ううん、と魁斗はそれを、首を左右に振ることで、俺の言葉を否定した。

「五つの世界勢力・・・といったほうがいいかな? 地球上でもあるだろう?」

「確かに」

 歴史を紐解けば、大陸を四分するような帝国や王国は珍しくないもんな。ローマ帝国とかペルシア帝国とか他にも。『勢力』という概念では今の地球上の大国同士にも存在している。

「この惑星イニーフィネには五つの世界勢力があってさ。一番大きいのが先住者イニーフィネ人の国『イニーフィネ皇国』だよ」

「あぁ、さっきお前が言っていた『女神』を信仰する人々のこと?」

「うん、そう。そして、その他の四つ勢力は先住者じゃなくて、昔この惑星イニーフィネにやってきた『来訪者』なんだ。僕らの現代日本のような世界『日夲』からやって来た人々『日之民(ひのたみ)』の『日之国(ひのくに)』。とある中世の世界からやって来て、僕らが『月之民(つきのたみ)』と呼ぶ中世人が住む『月之国(つきのくに)』。彼らの惑星イルシオンが滅びる直前に魔法王国イルシオンから逃れてきた魔法の民イルシオン人。そして、少数の機人が人間を支配する機械の国ネオポリス。この異世界は五世界って言われてて、イニーフィネ皇国、日之国、月之国、魔法王国イルシオン、それとネオポリス合わせて計、五つの勢力が在ってさ」

「・・・へぇ。この異世界イニーフィネは五世界で、イニーフィネ皇国と・・・えっと、それはまぁ覚えやすいんだけど、他のなんだっけ、日之国とかイルシオンとかって急にいろいろと言われてもなぁ・・・」

「うん、わかるよ。まぁでもおいおい覚えておけばいいんじゃないかな。あと僕ら日之民は超能力のような『異能』を、月之民は『氣』を、魔法王国イルシオンの民は『魔法』を使えるから」

「超能力を使える? 魁斗お前大丈夫か?」

「いや、ほんとだって健太。健太もあの街で見ただろう?あの生ける屍兵を。きっと屍体を異能で操っていた奴『屍術師』があの街にいたんだよ」

「―――」

 また俺は、俺の目の前から空間を滲ませるようにして消え失せたアイナの姿を思い出してしまい、俺は俯いた。

「異世界イニーフィネに転移してきた健太にも、きっとなにかの『異能』が目覚めるはずだよ」

「ほんとかよ?」

 そのときの俺は魁斗の話を話半分で聞いていたんだ。

「じゃあ魁斗、そこまで言うんなら、お前の超能力を今ここで俺に見せてくれよ?」

「え゛? あ、いや僕は、その・・・」

「あれ?魁斗、なんかお前歯切れ悪いんじゃねぇの?」

 俺はいやらしい笑みを魁斗に向けた。焚火の淡い橙赤色の光に照らされて魁斗は苦笑いをしてみせた。

「その、日之民の中にも能力が目覚めない、もしくは無能力者も一定数はいるみたいで、僕もそんな感じだよ。ごめん、僕は健太に異能を見せることはできないんだ・・・」

「そ、そっか」

 そのときの魁斗の表情はとても悲しそうな顔をしていたから、俺もそれ以上の突っ込んだ話はしないほうがいい、と思ってその話は止めた。

「そういえば、魁斗。なんでお前、あんな生ける屍だらけのあんな街にいたんだ?」

 俺はふと頭に湧き出た疑問を魁斗にぶつけてみた。

「あぁ、それはね、健太。・・・ううん、よく訊いてくれたって感じかな」

 先ほどまでの悲しい顔とは打ってかわって魁斗は、嬉しそうにまた、自信を感じさせるような明るい表情になったんだ。

 だから俺も敢えてふざけるような口調で相槌を打つ。

「ほぉ?」

「僕が山で行方不明になったのは、十歳のときだったろ、健太?」

「あ、あぁ。・・・そうだな」

 そんな暗い話から入らなくてもいいのに、魁斗のやつ。

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