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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十八ノ巻
188/460

第百八十八話 ゴーレム戦 一

「さぁ、あなたね」

 あなた、とはそいつのことか。

 ごごごごっ、っという擬音ではないけれど、今までミントの後ろに佇んでいた三体のゴーレムのうち、その中の真ん中の一体が動き出す―――。


『イニーフィネファンタジア-剱聖記-「天雷山編-第十七ノ巻」』―――完。


第百八十八話 ゴーレム戦 一


 動き出した真ん中の一体のそいつは―――、

『・・・っ』

 タタっ、しゅんっ―――すたっ、っと。

「ッ!!」

 ミントの脇を通り、、、しかもそのゴーレムの動きも俺が予想していた緩慢なものじゃなくてけっこう素早い。信じらねぇ、土石魔法で造られた陶器、、、かっこよく言えばセラミックで出来た人形だろ?それがまるで粉体のように、まるで流体のように滑らかに、まるで人間のその手足の関節と同じようにゴーレムのそれも動いたんだぜ?

『・・・』

 俺と向かい合うミントの前に躍り出るゴーレム。そいつの目鼻口はただ窪んでいるだけでなにもない。だからこのゴーレムが言葉を発することはない。

「っ」

 俺は今から目の前のこのゴーレムこいつと戦うのか。その大きさは、身長はこの『大地の剱(エグエアーデ)』と同じくらいだ。つまりゴーレムの身長は一メートルもない。

「さぁ行けっゴーレム兵・・・っ♪ ケンタさまを粉砕せよっ♪・・・くすくすっ♪」

 ほんとミントちゃん。俺を粉砕せよって不穏当な言葉を言ってくれちゃってさ。

「っつ」

 無言の、

『―――』

 ゴーレム兵。そいつがゆっくりと俺を見た、認識した気がしたんだ。ミントの後ろにいた他の二体のゴーレムも俺のほうを見た、、、というか俺を認識した気配を、俺がこの身で覚えたから。

 タンっ!!

「ッ!!」

 俺と向かい合う一体のゴーレムが軽快な動きで動く!! タンッ、タタタタッ―――、っと。そいつは真っ直ぐに俺へと一直線に走ってくる!!

 速い!!思ったよりもずっと―――!! タタタタタッ―――。

『―――っ』

 ほら、もう五メートル、三メートル―――、もうゴーレムは俺の目の前だ!!

「く・・・っ」

 なんで土石で造られた人形がこんなに素早く動けるんだ!? それでもゴーレムのその動きは一直線。猪突猛進―――それが似合う、その動き。

『―――』

 タタタタッ―――っと向かってくるゴーレム。

「・・・」

 このゴーレムまるで猪突猛進じゃねぇか。だったら避けるのは簡単だ。ゴーレムはもう目と鼻の先。サッ、っと俺は軽快な足捌きで右に避けた。

 おっと!!

『―――っ!?』

 ザザザザーーーっ、っと。『むっ!?ふんっ』、っと、もしこのゴーレムが喋ったならそう言うんじゃないかな?

 なんでかな、このミントが造ったゴーレムは口を利かないし、表情も分からないのに、なぜかその態度はとても人間っぽい。

 例えばだけど、走っていたときに急に止まろうとしたときの動作や、こけそうになって身体のバランスを取ろうとするときによくするだろう?ほら腕を出して、また動かしたりして、身体のバランスを取ろうとしたときなんかに、その動きはかなり人間っぽい。

 ゴーレムはおととととっ、っと。今の、俺が避けたときの、このゴーレムの動作はとても人の行動に似ていた。

 ゴーレムは俺を通り過ぎ―――、ザザザっと止まり、、、

『っ』

 ふんっ、っとゴーレムは顔を俺に向けた。なんなんのさ、とても人っぽい。タっ、っとゴーレムは地を蹴る。

 跳びかかってくる!!

「うおっ!!」

 サッと俺は身を翻してまたゴーレムの突撃を避け、、、その直後―――ドンッゴスッ、っとゴーレムはそのまま地面に頭から突っ込んだ。

 ―――っ!!すっげーその頭が地面に突き刺さってる・・・。

 ずぞぞぞぞ―――、、、つーっと俺の背中に嫌な汗が流れるぜ、、、。

「くっ―――」

 一方で俺はその隙にザザザーザリっ、っと俺はミントのゴーレムから距離を取る。おい見たかっ!?見たよなっ??あれを!! あんな土石の塊のゴーレム頭突き、、、。その頭から俺のお腹に突っ込まれたら、肋骨が折れてしまうわーっ!!

 ふんふん、っとゴーレムは地面に突っ込んだ頭を抜くためにお尻をふりふり。ぼごんっ、っとその頭を地面を抜き去ると、再び俺へと向き直る。

『―――♪』

 楽しそう♪ ゴーレムはなにも言わないのに、その態度で分かる。こいつこのゴーレムってミントの意志を反映しているんじゃあ・・・、なんとなく俺はそう思う。

「―――」

 こいつ、、、どうやって俺はこんなゴーレムと戦ったらいい?『大地の剱』で斬り返せばいいんだろうけど、、、本当に真剣で石を切るってことだよな、、、。刃毀(はこぼ)れしたらどうすんだよ。

 やっぱり俺は真剣で石を切るには抵抗感がある。常識的には絶対に金属の刀のほうが石に負けて刃が毀れたり、折れるから。

「ケンタさま」

 俺はその声の主に視線を持っていく。

「ミント?」

 ミントはこのゴーレムの後ろのほうに佇んでいる。そのミントの後ろにはさらに二体のゴーレムが控えている。

「なに避けちゃってるんですかぁケンタさま。ミントの熱いゴーレム抱擁ですよっくすくすっ♪」

 にやりっ、なんて楽しそうな笑みを浮かべるミントちゃん。

「ゴーレム抱擁って死んでしまうわい・・・っ!!」

 思わず俺は叫んでしまったわっ。ゴーレム抱擁ってつまりは『石抱き』だろ?昔の江戸時代の拷問じゃねぇか!!

「ちょぉーと痛いですけど死にはしないですよ、ケンタさま。くすくすっ♪」

 いやいや死ぬわ!! ミントは相変わらず楽しそうに笑っているし!!

「・・・・・・」

 ゴーレムに、その土石の腕で締められてちょっと痛いどころでは済まないと俺は思うんだ。

「くふふふ♪逃げてばかりだとこのミントちゃんには勝てませんよ、ケンタさまっ♪」

「くっ」

 ミントもああ言っていることだし、こっちも。反撃開始だ。―――ぐっ、っと俺は『大地の剱』の柄を握る右手に力を籠めた。

 次はこいつ『大地の剱』でゴーレムを切り返してやる!!刃毀れしたら、お前のせいだって言って修復させてやるからな、ミント!!

「おっいい顔になりましたね、ケンタ様・・・っ―――でしたら私も♪」

 私も、だと? なにかするつもりか?ミントのやつ。含みのあるそのミントの言葉とその彼女の表情。

「―――」

「くすくすっ♪」

 ミントがいやらしく笑う。

『・・・』

 ぐむぐむぐむ・・・。


 あれ?変だな。俺の目の錯覚か?

「??」

 物言わぬミントの『石人形(ゴーレム)』。俺は『そいつ』を見据え―――。

『―――』

 ぐむぐむ、ぐむぐむ―――。

「ふふっくすくすっ♪」

 ミントの意味深ないやらしいその笑みと―――。

 森の中の木漏れ日が作る地面の影。その影にゴーレムの足が及ぶ? ゴーレムのその足に今までなかった影が落ちる。変だな―――、ん?いや、大きさが・・・。

「ッ!!」

 いや変じゃない!! 俺の目の錯覚じゃないっ!!そうか分かったぞ!! あいつ―――、あいつ足元から地面の土を吸収している・・・っつ!!

 そこで俺は、ミントが土石魔法で造り出したゴーレムの変化に気が付いた、、、いや変化に確信が持てたんだ。

 俺が覚えた違和感。ゴーレムのやつ地面の土石を吸収して大きくなっている!!

『ッツ』

 ダッ、っとゴーレムは地面を蹴って俺へと跳びかかってくる。ダンダンダンッ、っと大きくなったゴーレムはさきほどまでとは比べ物にならないほどの足音を立てながら地面を踏み締め、ダンッ、っと。そこで俺へ向かって大きく跳躍―――!! そのときに軽く地面が震え―――、いったいどんな重さだよ、ゴーレムめ。その重さで俺を圧し潰すつもりか?なぁ、ミント。

 ゴーレムはその腕を引き絞り、、、そして空気を切り裂きながら唸りを上げる岩の剛腕―――。

 俺の『選眼』の『先眼』は万全。その先の動きはとっくに視得てんだ。いいぜ―――ちょっとでかくなったからっていい気になるなよ。

「―――」

 よし覚悟は決まった。お前はすでに俺の間合いの中だ。今度はこの『大地の剱』でその剛腕を斬り返してやる!!

 心の中で俺は自分の決意を唱え―――、さッ、っと俺は小剱流の抜刀術の構えを取る。ごぉ―――っ、っと唸りながらその剛腕が迫る。その動きがとても緩慢に視得―――、もうゴーレムは、その岩の剛腕は俺の間合いの中。

 ふぅっ、っとゴーレムの腕より発せられた風が顔を撫でる。もちろん、ゴーレムのその岩の剛腕の動きは何もか観得ていた。その剛腕の、まるで弾道弾のような拳の軌道だけじゃない、地面を抉ったときに飛び散る土や石、その破片、それらが飛び散る角度、その場所まで。そんな威力の打撃を平気でやってくるか? これは練習だ、普通ならそんな攻撃はやってこないもんだろ?ミントのやつ。

 ゴ―――、っと俺が避けたゴーレムの岩腕の拳が、まるで槌のように振り下ろされ地面に突き刺さる。

 その右の剛腕を貰うぞ、ゴーレム。

「・・・」

 小剱抜刀式―――、心に念じるはその言葉。

「―――」

 ―――刃一閃。

 しゃ―――ッ。『大地の剱』の鎬と陶器の鞘が擦れる軽快な音。俺は『大地の剱』より最速の抜き手で弧を描く斬撃を繰り出す。

 狙うは地面にめり込んで無防備になったゴーレムの岩腕―――そいつをいただく、斬・・・ッ!!

 ギャリンッ―――ツ!!

「な・・・ッツ!?」

 な、なんだと? 『大地の剱』が跳ね返された!? 弧を描く斬撃に沿って火花が散って・・・!!

 しかも、なんだか反発するようなそんな手応えを右手に感じた。『大地の剱』の柄を握っている右手にだ。こうなんか、堅い石か、なにかそういう物を金槌で叩いてカンッ、っと反動で跳ね返ってくるようなそんな感覚に近い―――。

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