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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十七ノ巻
181/460

第百八十一話 大地の剱エグエアーデ

 じぃっ、っと俺は『大地の剱』の刃の部分を見詰め。

「―――」

 思ったより薄くて鋭いな・・・。俺はミントが正眼で構える『大地の剱』の刃の形状を真正面から観察していた。いや、ううん真正面から左側面に行ったり、、、右に移ったり、、、俺は―――。


第百八十一話 大地の剱エグエアーデ


 俺が思っていたより『大地の剱』のその刃は鋭い。剃刀―――いいや、本物の日本刀の刃と比べても、、、。その刃の角度な。

 鋭さは少なくとも小剱家の宝刀『一颯(いぶき)』や、野添さんが俺に見せてくれた『雨水』と遜色がない言ったほうがいいのかもしれない。

 『大地の剱』の剣身には刃文も装飾もない。『大地の剱』は片刃の剣で、鎬から刃に向けては、ただ一直線に、直刃(すぐは)となっている。

「―――っ」

 叩き切るような重みと、刀のような恐ろしいほどの切れ味が同居しているような、、、見た目ではそんな印象を受けたんだ。

「っつ」

 一方で俺がこの『選眼』で視れば―――、そのミントの魔法剣『大地の剱』は剣身にミントの黄金色のマナをゆらゆらと纏い、漂わせている。

 地属性の魔法で生み出した魔法剣『大地の剱』の剣身の材質はいったいなんだろう?何でできているんだろう。見た目では普通の金属と同じだ。

 じろじろ―――、じろじろ・・・しげしげ、しげしげ、、、。ぐるぐる、、、。ミントを頭の先から胸お腹、後ろに回って背中腰尻、脚足つま先まで、じろじろとミントを凝視しているんじゃないよ。俺がじっくり視ているのは、その魔法剣『大地の剱』だ。

「―――」

 三条 悠っていう人が持つ『朝凪の剱(シルフィード)』は風の氣刃を放ったり、風の力で飛べるなんて祖父ちゃんは言っていた。

 今、ミントが持つこの魔法剣『大地の剱』にはどんな魔法が宿っているんだろう。確か土属性らしいから―――、

 しげしげ、しげしげ―――。綺麗な銀色。金属の白刃の色だ。その刃の部分はまるで鏡みたいだな。やっぱりこの『大地の剱』の材質は気になるよな・・・。

「、、、。ンタさま。―――っ///。ケっ、ケンタさま・・・っ!!」

 ミント?

「ん?」

 ミントの呼ぶ声が聴こえ、俺は顔をそちらへと向けた。

「ケンタさま、その、、、」

 おずおず、っとミントは。

「、、、ご自身でこの『大地の剱』を持ち、拝見されますか?」

 !!

「いいのっ!?俺が持っても?」

「はい、私が許可します。その、決して嫌というわけではなく、ケンタさまに、その、じろじろ、と・・・すみません。お、落ち着きませんので―――私」

 っ。わっ、なんてこと俺。知らない人が見たら、俺変態にでも見えてしまうかもっ。ミントのような女の人に剣を持たせて正眼に構えさせて、それでぐるぐる行ったり来たり行ったり来たりじろじろ、しげしげ、と。

 あせあせっ、俺は変態じゃないよ?

「わっ、なんかごめんっミント」

「い、いえ、剣を持つ手も疲れてきていまして、、、えへへその運動不足ですね、私・・・っ」


 改めて俺はミントから、彼女が剱の魔法で精製した『大地の剱』を渡されて―――。

 すげー、

「おおう・・・っ」

 持ってみると意外に軽い。柄、持ち手の部分は両つの拳を重ねて握ってみても、やや余るぐらいの長さだ。両手剣ようにも思える。

 俺は左手を離し―――柄を掴んだ右手の五本の指が見える向きにもってくる。くる、くる、くる―――びゅっ、と『大地の剱』を持つ右手を返して返して、そして腕を(しな)らせた。時代劇でよく俳優がやる血糊を拭う仕草だ。

「普通に片手でもいけるな」

 むしろこれなら、この柄の長さの剣なら相手とやり合うときに、斬撃を繰り出す瞬間に柄を握る位置を前や後ろにずらして相手にフェイントを与えられるかもしれない。そして、必殺の一撃のときには両手で柄を握って―――。あっ、この『大地の剱』には鍔がない。鍔なかったら手を切ってしまいそうだ、そこは気を付けないと。

「・・・」

 くるっ、っと俺は手の位置を変え、その『大地の剱』の鎬が見える位置へと変えた。シンプルな造りの『大地の剱』はその鎬が日本刀や中近東のサーベルと同じく平らだ。

 軽く、軽く、右手の握りを甘めに持ち替えて、だ。それから俺は空いた左手の左人差し指を出してその剣身を弾く。キィイイイン―――っ。

「っ」

 すごいきれいな反響音だ。まるで楽器のトライアングルのようなきれいな反響音。ぐっ、っと今度は柄を握る右手に力を籠め、また同じように指の爪で弾く。

 カキン、今度のは反響音は出ない。これなら斬り結んだとき、耳にくることはなさそうだ。

「ありがとう、ミント。とても楽しくていろいろな発見があったよ」

 ―――と、俺がこの『大地の剱』を、こっちに刃のほうを向けてミントに返そうと。

「ケンタさま、試しに一度振るわれてはいかがでしょうか?」

 ―――なんて精製者のミントのほうからそう言ってくれるものだから。

「いいの?」

 ほんとにいいの?そうだったら俺、めちゃくちゃ嬉しいんだけど。

「はいケンタさま。この私、魔法剣『大地の剱』の精製者の名の下にケンタさまを許可します」

 まじか。許可されたよ、俺この魔法剣の精製者のミントに。

「っつ」

 ―――、―――、・・・一歩、二歩、三歩後ろ向きにミントから離れて。今から剣を振り回そうと言うんだ、ミントに万が一のことがあってはいけない。そして、今度はミントに向き合わないように、俺は森の中でちょうどミントから直角なるような位置取りで足を止めた。

 息を大きく吸って、

「―――」

 また、肺の中からその分の森の空気を吐き出した。深呼吸だ。

 この魔法剣『大地の剱』を両手で持つ。

「・・・」

 まずは正眼の構え。相手を想像し、、、そうだな結城は、なんかダメだ。あいつ『聖剣』を単にぶん回してて、てんで剣技がダメなやつだった。

 ・・・、グランディフェルも野添さんも意外といい人だったし、その二人もダメ。

 じゃあっ、っと俺は目の前に、そこに俺が廃砦で見たクロノス=日下 修孝を想像し―――。

「ッツ・・・!!」

 ざッ、タタタッ―――面・・・ッ!!

 俺は面を繰り出した。

 タンッ、っと一歩後退。

「疾・・・ッ」

 続けざまに、やや上体を落として片手、、、右手で『大地の剱』を持ち、左から右へと横薙ぎの一閃―――。びゅっ、っと『大地の剱』の空気を切り裂く風切音が聴こえた。

「っ」

 『大地の剱』を持つ手が軽い。こいつはいける・・・!!どこまでも斬撃を繰り出すことができるぞ!!

 ミントが、大切だ、と言ってたいた草木を切ることがないよう、傷つけることがないように気を配りつつ、俺は位置を変え、体勢を変えながら『大地の剱』を振り回し続けたんだ。

 心地いい疲れと、息切れ。

「ふぅ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・っ。―――、っと」

 剣を持っていない左手で俺は額を拭った。拭えば左手に俺の汗水が付いていた。タオルを持ってこれば良かったかな。

「ケンタさまそろそろ休憩になさいませんかぁ?」

「!!」

 ミントの声に振り返れば。給仕服姿でその手に籠を持ったミントがいた。その籠は竹か蔓のような植物で編まれたものだ。

「そろそろ昼食かと思いまして、私」

「おっともうそんな時間?」

 夢中でこの魔法剣を振り回していたからな。もうそんな昼になっていたんだ?

「はい」

 そっかじゃあ、館内に戻っての食堂だな。どんな料理だろ?

「よし」

 俺は『大地の剱』を鞘に―――、あっこの魔法剣。鞘がないんだった。仕方ないか、と俺は危なくないように『大地の剱』の鋩を足元の地面に向けた。

「・・・」

 あれ?ミントはその場から足を出さないし、踵を返さない。

「―――くすくすっ」

 くすくす、とミントが笑う。

「?」

 なんかやばそう?口角を三日月にみたいに吊り上げての、そんなミントのこわい笑みだ。

「ケンタさま―――くすくすっ」

 くすくす、ふふふ―――っと。

「お、おう・・・」

「―――ケンタさまが、ミントの剱で修練している間ミントは退屈だったんですよぉ。で、ミントはちょうど昼食どきだと思いましてぇ。だからミントはこの森で食べられる果物を採ってきましたよ、ケンタさま・・・っ♪」

 ぱぁっ、っとミントが満開の花のような笑みを浮かべた。というか、笑みの種類を変えたんだミントのやつ。相変わらず思わせぶりなミントだった。

 ほら、とミントはその籠の中を俺に見せてくれる。

「おっ、うまそう」

「~っ♪」

 俺に、どやっ、としたミントの顔。ミントの両手に持つその植物で編まれたの籠の中をのぞき込めば―――、ちなみ今更だけど、ミントは俺よりも背が低い。アイナよりも背は低いんじゃないかな?

 その籠の中には。

「野イチゴ?それにこっちはベリーかな」

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