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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十六ノ巻
174/460

第百七十四話 使えない駄兄ですね・・・、っ

「・・・あれ?」

 祖父ちゃんの庵がある日之国からこっちにやってきて自動で切り替わったイニーフィネの表示時間。それが一分進む。

「―――う~ん」

 時間が一分経過、ちょっとサイトに、とぶのが遅くないか?

 検索画面は真っ白になり、三分経った。相変わらず待機を表す表示がくるくる、と回っている。


第百七十四話 使えない駄兄ですね・・・、っ


 もういいや、

「・・・」

 ちょんっ、っと俺は検索画面を切った。閲覧履歴のほうから飛ぼう。俺は、検索画面を切り、指で操作をして履歴へ到達。

 確かに『灰の子アッシュの都市伝説集』のサイトを見たというのは、俺の電話の履歴の中には残っていた。

 俺が元居た世界とは違うけれど、こっちのイニーフィネという五世界にも『http』のような文字から始まるアドレスみたいなものがある。

「よしここから飛べば―――」

 ちょんっ、っと俺は指でタップ。くるくるくる―――、しばらく経ち、、、しばらく―――そして。

「っつ」

 ない? そのアドレスに該当するサイトが存在しない、だって。そんな表示が電話の画面に出たんだ。

 ひょっとしてあのとき閲覧したときから今の僅かな間で『灰の子アッシュの都市伝説集』のサイトが消された? 消した? 誰に? サイトの管理人か?それとも、、、。

「―――」

 サイトがないんじゃあ仕方ない。あんな陰謀論を箇条書きにして並べたような、画像もないただの文字だけのサイトなのに・・・。

「・・・」

 俺は困惑しつつ、検索画面から待ち受け画面に戻した。

 仕方ない、明日の朝は早いしもう寝よう。俺は枕元に電話を置いて掛布団の中に潜り込んだんだ。そうして、目まぐるしく事が進んだ一日は終わった。


///


 明るい。

「・・・」

 朝だ。部屋の二枚のカーテンの隙間から漏れる一筋の光。

「・・・、・・・」

 まだ眠い。今は何時だ・・・? 俺はゆるゆると枕元に右手を伸ばす。

「―――」

 確か電話があるはずだ。おっ。手に触れる電話の外装、、、あったあった。手元に引き寄せて、、、画面に表示された時間を確認―――。

「っつ」

 七時二十八分―――。八時には食堂だったよな? がばっ、っと俺は布団から跳ね起き―――あせあせっ、わちゃわちゃっ、っと俺は。


 アイナに貰った渋い茶色の道着に袖を通す。身支度を整えて、俺はかちゃりっ、っと真鍮の自室のドアノブを閉めた。

「―――」

 前は、、、と俺は前にここにいたときのことを思い出しつつ、赤い絨毯が敷かれた廊下を歩く。すっ、すっ、っと廊下を直角に二回曲がって―――。おっ見えてきたあの白亜の扉。白亜の扉には彫られた女神フィーネがいる。

「あら婿殿」

 っ!! この声はアイナのお母さんのアスミナさんだ。

「おはようございます、アスミナさん」

 呼ばれて振り向けば、アスミナさんだ。俺はぺこりっと。そんな俺が朝の挨拶をしたアスミナさんはというと、俺が辿って来た赤い絨毯が敷き詰められた廊下の反対側から何人かの従者を引き連れている。

 そのアスミナさんが引き連れている従者は給仕服に身を包み、みんな身なりのよさそうな女の人ばかりだ。

「えぇ、おはようございます婿殿」

 アスミナさんが俺に挨拶を返してくれて、それに続いて彼女の侍女達も俺へと挨拶をしてくれた。俺も侍女達全員に挨拶を返すものなのかなぁ、と思って全員にちゃんと挨拶をしたよ?

「昨晩はよく眠れましたか?ケンタ」

 続いてアイナも食堂にやってきた。

「おっアイナ」

「おはようございます、ケンタ。お母様」

 もちろんアターシャもだ。アターシャはお腹の上で両手を重ね合わせて、恭しく腰を折る。

「おはようございます、奥方様、ケンタさま」

「えぇ、アターシャちゃん」

 すっ、っとアターシャは一歩数歩進み出て、その食堂の白亜の扉に手を掛けたんだ。

「どうぞ、食堂の中へお入りくださいませ」


///


 ふぅ・・・。食後の優雅なひと時だ。今日の朝食のごはんは、前にここで食べたのと同じような食事だった。やや堅いような食感のパンか、ナン、もしくはベーグルのような小麦の食べ物かな?それで作られた主食と透明なスープとトマトスープのような色の着いたスープ。アスミナさんは色の着いたスープを、アイナは俺と同じ透明なスープを頼んだんだ。その透明なスープは透明といってもやや黄味がかったような、、、うーんそうだな、俺が知る食べ物の味で一番近いのは、ふかひれスープかもしれない。

 それと、果物だ。わけのわからないトゲモモとかいう果物の果実の黄金色の切り身もあったし、ベリー系の果物もあった。

 ま、それはともかく、朝ごはんは美味しかった。そして、食後の今だ。時間はだいたい九時ごろかな? 失礼になると思って、道着の衣嚢(ポケット)に入っている電話は取り出していない。

「―――」

 俺はアイナやアスミナさんがするようなことと同じこと、つまり白磁のティーカップに口を付けた。中身は紅茶に似たチャイという飲み物だ。すぅっ、っとできるだけ吸う音を立てずに俺は静かにチャイを一口飲んだ。

 うん、俺はやっぱりミルクと砂糖だな。そういえば、アイナは何を甘味にしているんだろう?

「・・・」

 食卓の上にまるで居並ぶように並んでいるのは多くの甘味だ。前に見たジャムの瓶も並んでいるし、さっき俺が手に取った、喫茶店でよく見る銀のスプーンが着いた白い砂糖の小瓶、それに固まった黒砂糖が入った小瓶もある。あれは黒砂糖だよな?たぶん。

 俺はアイナに視線を向けた。

 アイナは迷わずサイコロみたいな黒砂糖が入った瓶に手を伸ばす。

「~♪」

 アイナは上機嫌で、小さな銀色のトングを使い黒砂糖を挟むとそれを一つティーカップの中へ。

 なんかいいな、アイナの上機嫌なところ。

「・・・」 

 また一つ。

「~♪」

 すっ、っともう一つぽちょん。ぽちょん、ぽちょん。

「、、、」

 五つですか。アイナさんちょっと黒砂糖の数、多くないですか?その大きさの白磁のティーカップにしてはその黒砂糖の数はちょっと多いと思う。

 そんなとき、そんなこと思っていたときだ。

「っ」

 すっ、っとアイナと視線が合う。その藍玉のようなきれいな目の視線が俺へと移ろう。

「っつ」

 俺がアイナを観ていたことが、本人には分かったみたいだな。

「―――」

「・・・っ///」

 にこり。アイナが俺に微笑みかけた。とてもきれいなアイナのその笑み。アイナは俺に視線を合わせたあと、スプーンでティーカップをかき混ぜ、、、それを口につけた。

 俺も飲むか。俺はアイナから視線を切り、自分のティーカップに口を付けた。

「―――」

 うん、おいしい。


「アイナ様、明日の予定ですが―――」


「!!」

 俺は顔を上げた。いつの間にかアイナの傍らに寄っていたアターシャがタブレットを、、、。アイナの傍にいつの間に寄っていたんだろう?まるで音もなく―――。

 俺には歩くときのアターシャの衣ずれの音や、その足音もまったく聴こえなかった。


「はい、従姉さん」

 前に、廃砦で日下 修孝=クロノスのときと同じだ、あのタブレットは、あのときアターシャが持っていたタブレットと同じものだよな?

 アターシャはそれを持って見ながら、アイナに話しかけていた。

「―――、朝食後、まずは昼前には皇都に飛んでいただき、十二時より皇帝皇后両陛下とのお食事。それが終わりましたならば、両陛下と、知識人を加えての御歓談になります」

「解りましたアターシャ」

「はい、アイナ様。その日以降、アイナ様は皇都宮殿に三泊の予定となっております」


 そっか―――、アイナはまだ公務で忙しんだ・・・。

「っつ」

 泊まりか。―――ってことは、待てよ・・・、じゃあアイナは、しばらくここに帰ってこないってこと?俺一人?


「明後日は皇后陛下様が、孫であるアイナ様とゆるりとした語らいを楽しみにしておられるとのことですので―――、、、っ。これはアイナ様」


「?」

 ん?アターシャの表情が崩れたぞ?


「~~~」

 にやにや。あれ?今度はアイナがにやにやしているぞ?どうしたんだろう?

「謀りやがりましたね、アイナ様」

 謀りやがりましたね、ってアターシャ。ちょっとその言葉が乱暴です、、、アターシャさん。言葉は乱暴だけど、でも丁寧な物言いだ。


「私が謀ったなどと、人聞きがわるいですよ、従姉さん。~~~っ」

 ~~~にやにや。

「っ、んっ―――、」

 アターシャは軽く咳払い。またその口を開く。そのアターシャの視線は再び手元にタブレットへ。

「―――皇太子妃皇太孫妃の方々、アスミナ様、私の母皇女ウルカナフラム、妹皇女ホノカ、、、そしてこの私を加えての、代々の皇族陵への参拝にご出席。そしてさらにその次の日には皇都宮殿で催される祝賀会へご出席していただきます」

「はい、けっこうです従姉さん」

「あの、アイナ様。私は辞退させてもらってもかまいませんか?代わりに当主代行である私の兄を―――」

「いえ、従姉さんそれは。レンカは日之国の津嘉山家のほうに用があるそうですよ?なんでも、レンカの気になっている女性がツキヤマの本家を訪れるそうで、その方にご挨拶に行くそうです。だからレンカにはすでに予定が入っていまして、レンカからの伝言によれば、『よろしくなアーちゃん』だ、そうです従姉さん。~~~♪っ」

 にやにや。アイナがにやにや。

 ・・・っ、っと舌打ちアターシャさん。

「っつ。使えない駄兄(だにぃ)ですね・・・、っ(いらっ)」

 それから―――、ぼそっ、っと彼女はそうつぶやいた。


「っ!!」

 ひぃっ、アターシャさん怖すっ!! その口からぼそっ、とこぼした言葉の口調が、ちょっと怖すぎる。だって、アターシャってば、その表情から感情が抜け落ちたんだもんっ。まるで鉄面皮みたいだった!!

「まぁ、いいではありませんか従姉さん。お祖母様は従姉さんと話したいとのことですし」

「、、、っ。解り、ましたアイナ様。では、私も出席を・・・」

「ありがとうございます、従姉さん。私も久しぶりに給仕服姿じゃない従姉さんを見ることができて楽しみです。ね? 従姉さん・・・っ」

 にこりっ、っとアイナはアターシャに微笑みかけたんだ―――。

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