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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十六ノ巻
166/460

第百六十六話 灰の子アッシュの都市伝説集 三

「アイナが前に―――」

 あのとき、アイナが俺に語ってくれた『皇国創建記』。そのアイナの話に出てきた七基の超兵器。そのとき哀しそうな顔で彼女は『煉獄』とぽつりと呟いたんだよ。しっかりと俺の耳には聴こえていた。

 そして、祖父ちゃんの夜話の中にも出てきた『煉獄』という名の一基―――。日下を滅ぼしたという紅蓮の大火球。

「―――っつ」

 その内容までこの『灰の子アッシュ』のサイトは語っているのか―――。やばい。これはやばいな。


第百六十六話 灰の子アッシュの都市伝説集 三


「―――、、、」

 次の記事に視を向けよう。と、俺は。

 復習だ。

『かつての大イニーフィネ帝国が創造した古代兵器―――、』

 その記事の内容はアイナと祖父ちゃん二人が俺に語ってくれた話の復習だった。俺はそのときのことを考えるのを中断させて、その文章の続きを目で追いながら読んでいく―――。

『―――、それは栄華を誇った古き大イニーフィネ帝国の失われし七基の古代兵器。その七基の超兵器は今でもこの五世界の大地に存在()る、とされている』

 北西戦争で使われたんだよな?その一基の『煉獄』という兵器が。さっきも前のページの北西戦争の廃都市計画の項目でも記されていたし。

「・・・」

『その七基をイニーフィネ皇国の帝室が未だに保有している』

 って。な、なんだってっ!?

「っ!?」

 アイナのとこのイニーフィネ皇国の帝室が持っている!? いやいや、そんな感じじゃなかったし、アイナがあのとき俺に『皇国創建記』を語ってくれたとき。

 次だ、次っ。

『七基は五世界のどこかに放置されたまま半ば遺跡と化している。機人の国ネオポリスが七基の超兵器の在処を解析し、その手中に収めている。日之国政府が秘密裏に回収し、日府の地下に密かに隠しており、それを管理しているのは第六感社だ。月之国では超兵器が信仰の対象とされている。イニーフィネ皇国が二基、日之国は二基、月之国に一基、魔法王国イルシオンが一基、機人の国ネオポリスが一基、それぞれが古代のイニーフィネ帝国が創造した超兵器を保有しており、各勢力各組織による散逸した七基の超兵器の争奪戦が日夜秘密裏に行われている』

 争奪戦だって!?

「―――!?」

 まじかっ、そんな戦いがっ。俺は自分の電話の画面を目で追い、、、。

『その争奪戦の結果、イニーフィネ皇国により魔法王国イルシオンの保護国化、ならびに北西戦争が起きたのだ』

 !???!

「え!?」

 話が違くないか!? 俺が聞かされた話はそんな内容じゃなかったぞ?? そんな、争奪戦で北西戦争が起きたなんて聞いてないけど俺っ!? 祖父ちゃんやアイナは俺にそんなことを一言も言わなかったけどっ。

 えっと、次―――。

『そもそもが世界統一化現象の動乱期に、転移集団であるそれぞれ四世界の人々の手に渡ることを恐れた時のイニーフィネ帝国のイニーフィネ人により、既に七基は破壊され、解体されている。同じく世界統一化現象のときに発生した未曾有(みぞう)の大災害白き禍の地殻変動でこの惑星の地下深く人の手の届かない灼熱のマントル層に呑み込まれた。―――などという、上にも記した根拠のない珍説や妄説、噂がまことしやかに流布され、その数は枚挙(まいきょ)(いとま)がない。つまり七基の超兵器の仔細は分からないのだ』

 あ―――、そういう書き方・・・か。つまりいろんな噂を列挙していただけか、『灰の子アッシュ』は。

「・・・」

 なんだろうな、この記事を読んでいて感じるこの気持ち。ちょっとイラッとするんだけど・・・。なまじ俺が()っている所為かもしれないな・・・。

 枕の上に電話を置いて寝ながら反る体勢の俺は―――。背筋が痛くなってきた俺は、ごろんっ、っと寝返りを打った。そして、右手に電話を持ち替えて、今度は仰向けになる。

「―――・・・」

 ついついっ、っと俺は指を動かし、画面を下げる。すると、、、途中で、スクロールしていた画面が引っかかり、

「っつ」

 あれ?おっかしいなぁ。どうなってんだこれ? これ以上先に進まないよ?

「―――、―――、・・・」

 ついついっ、えいえいっ!! 開けっ!!

「お?」

 いったか!?

 俺は指に少し力を籠め、画面上で指を上下左右に摩ったんだ。すると、サイトの画面が滲むような挙動でトランジション。俺の電話に表示されていた画面が切り替わった。

 演出が凝っている。

『聡明なる読者の方なら気づいていると私は信じている、初めの章『北西戦争『灰と死刑確!?』にて私自身がきみに語った内容を』

 内容って。

「、、、あれか」

 灰の子アッシュ自らの『北西戦争』の考察だったはず。その考察がまるで実際に体験したかのように事細かく詳細に記載されていた。そして最後に、日下国首府が正体不明の劫火で滅ぼされたのは、滅ぼした原因は―――、

『街ごと灰燼に帰すような兵器とは失われた『七基』のうちのどれかではないだろうか? 『廃都市計画』をたて、生きている人々もろとも実行したのは誰か―――』

 ―――なんて、何者かが七基の超兵器を使ってやった、とまるで誘導するかのように記されていたやつだ。

『七基の超兵器に関する根拠のない説と噂は、全て日之国政府及び第六感社―――そして、かの者達により流布されたものだ』

 出た、政府が秘密裏にやっているという陰謀論。

「・・・」

『是―――この私『灰の子アッシュ』は、真相を識るある者の世界の因果を曲がり曲げてかき換え改変し、その者の世界を我が物としたことで、この混沌とした真実の見えない状況が、かの者達により造り出されたものであるということを知っている。これは日之国政府と第六感社、かの者達の仕業であり、かの者達に拠る陰謀だということまで、この私『灰の子アッシュ』は識っている』

「・・・・・・」

 う~ん。たぶん俺じゃなかったら単なる、これヤベェ奴だ、で終わりそうな内容だよな、これ・・・『灰の子アッシュの都市伝説集』は。

 俺は、大体のことはアイナと祖父ちゃんから聞いているから言っていることはまぁ理解できるけど。

「―――」

 それとも何か?わざととんでもなく突拍子な書き方にしておいて、閲覧者を(ふるい)にかけているのかも。ついついっ、っと俺は画面上で指を動かし、下へと移る。

『日下国で勃発した北西戦争。その末期において七基の超兵器の一基が使われたことは、状況的に見てほぼ間違いない。突如として膨れ上がった紅蓮の大火球により、日下国首府は灰燼に帰した、という。実際に存在したという七基の超兵器。問題は、誰がこのような残虐な行為を行なったのか、ということだ。それを洗い出すために北西戦争当時の政局から見ていこう』

 羽っ子いいもの探し物!!の『は』の字も出てこねぇ・・・、長くなりそうだ。ごろんっ、っと俺はまた寝返りを打った。

「・・・」

『当時イニーフィネ皇国は次期皇帝と目されていた名君ルストロ皇太子の親政により、様々な良き改革が行なわれた』

「っつ」

 ルストロ皇太子、、、アイナの親父さんのことだ。

『ルストロ皇太子彼は父君(ふくん)である皇帝と共に、先代の大イニーフィネ主義政策を改め、外交政策を転換した。イニーフィネ皇国は魔法王国イルシオンに施行していた総督制を廃止し保護国へ―――さらにはイニーフィネ皇国の日之国への外交政策。ルストロ皇太子は協調・融和派の長であり―――』


///

 俺はその続きを、アイナの親父さんが自身の弟チェスターに殺されたという記事のところまで読み切り、

「ふぅ・・・」

 ふぅっと軽くため息を吐いた。正直言えば、気分は少し悪い。前の夜話のときもそうだったけど、アイナの親父さんが非業の死、それとエシャールって奴の残虐行為まで事細かに書かれていて、、、また俺の気分が悪くなったんだ。

 当時の北西戦争に至るまでのイニーフィネ皇国の状況について、記載されていたのは、祖父ちゃんが話してくれた夜話とほとんど同じ内容だったけどな。

 次に日之国の状況は。

『今から七年前の星暦一九八八年夏の北西戦争当時、日下国を支援する日之国政府は、チェスター皇子率いるイニーフィネ皇国軍の攻勢に直面し、日之国劣勢という戦局を打開できなかった。劣勢を跳ね返すためには大幅な兵士の増援と武器弾薬の補充が必要だったが、それを行なえるだけの兵力も兵器も財力もなかった。しかし、そんな局面で動いたのが、日之国の大企業『第六感社』だった。第六感社は、かの者達改め秘密結社イデアルと日之国政府を仲介した。日之国政府としては、攻勢を強めていずれは日之国本土に攻め込んでくるであろうチェスター皇子率いるイニーフィネ皇国軍は途轍もない脅威だった。第六感社とイデアルの支援の申し出は日之国政府にとっては渡りに船、イデアルと第六感社はまさに日之国政府にしてみれば、救世主のように見えたであろう』

 イデアルが救世主? 構成員のラルグスが街一つを殺戮し、ロベリアの屍術であの生ける屍を造り出したあんな奴らが? ラルグスとロベリアの他は、バカ魁斗に、六年前に日下部市を襲った奴ら―――、ちゃんちゃらおかしい臍が茶を沸かす。ふざけんなっ。

「―――ッ」

『聡明なる読者。貴殿は気づいているはずだ、イニーフィネ皇国内で起きた内紛と政争―――、兄ルストロ皇太子を亡き者とし、その座を簒奪(さんだつ)し、取って代わった弟チェスター皇子。宮廷内で血の殺戮を行なったエシャール卿。親日之国派を粛清したチェスター皇子と彼率いるその一派は日之国との友好関係を完全に破綻させるべく突如電撃的に日下国へ侵攻―――。これらは(あらかじ)めチェスター皇子とイデアルなる組織によって仕組まれていたものだったのだ』

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