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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十五ノ巻
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第百六十五話 灰の子アッシュの都市伝説集 二

『そんな中、それは起きた。日下国の首府、及びその半径十数里を包み込むほどの超巨大な火球が突如襲い掛かり、日下国首府は灰燼に帰した。そして、そのとき戦っていた多くのイニーフィネの軍人達と日下の民、日夲の義勇兵も業火に巻き込まれ、一瞬で消滅した、といわれている。なぜ、そのような大惨事が起こったのか、真相は定かでない。その大惨事以降、イニーフィネ皇国は撤退し、日下国は日之国日夲政権に統合された。しかし、旧・日下国の首府に行くのはお勧めできない。なぜなら今でも同地は政府によって立入禁止地域に指定されているからだ。理由は廃墟になった街並みと瓦礫がそのまま放置され、大変危険だからということだ。さらに同地はイニーフィネ人とそれに追随する日之国の民達が住みついていて日之国政府の支配を受け入れないという噂だ』


第百六十五話 灰の子アッシュの都市伝説集 二


 これは、、、。まるで日下に興味本位で近づかないようにそこはかとなく人払いをしているみたいに書かれている? しかも読者を絶妙に脅かすような書き方で記されているのは、俺の気のせいか?

「―――っ」

 しかも、アイナのイニーフィネ皇国が、イニーフィネ人がまるで悪いように書かれている。確かに俺が知っている、知る限りアイナの叔父のチェスター皇子って奴が先頭を切って、エシャールって奴も革命と言う名の殺戮を、、、っく・・・!! イニーフィネ皇国の一部の悪い奴の所為で、俺に良くしてくれたアイナ達にまで―――っ。

 俺は再び電話の画面に表示された『北西戦争『灰と死刑確!?』の記事に目を落とす。


『誰がこのような惨劇を引き起こしたのか、考えられるのはイニーフィネ皇国、日之国日夲、日之国日下、そして正体不明の第三勢力だ。イニーフィネ皇国は考えられない、なぜならイニーフィネ皇国は帝室からも何人もの死亡者が出ているからだ。そして、日下国はそのような兵器があれば、攻めてくる段階のイニーフィネ皇国軍に使っているはずだからだ。第三勢力はそもそも不明な勢力であり、考えるときりがないのでこの項では割愛する。

もし、日下が陥落し、魔法王国イルシオン同様にイニーフィネ皇国に併合されれば、誰が一番被害を受けるのか。日下国がイニーフィネ皇国に併合されれば、おのずと日之国日夲はイニーフィネ皇国と隣接することになる。日之国政府は北西戦争末期に日下国の情勢を見て『廃都市計画』を実行したのではなかろうか?』


 違う。『イデアル』だ。俺が知る限り、祖父ちゃんに聞いた限り、『イデアル』は古代のイニーフィネ皇国『古き大イニーフィネ』の技術が造った七基の超兵器の一つ『煉獄』で・・・っ、その『煉獄』をチェスター皇子から受け取った『イデアル』は―――。

「―――っ」


『だが、しかし日之国政府はそのような兵器を本当に持っているのだろうか? 持っていれば、侵攻するイニーフィネ皇国軍に対してなぜ、使わなかったのだろうか? 街ごと灰燼に帰すような兵器とは失われた『七基』のうちのどれかではないだろうか? 『廃都市計画』をたて、生きている人々もろとも実行したのは誰か―――』


「えっ?」

 終わり? その記事『北西戦争『灰と死刑確!?』の記述はそこで終わっていた。

「あ」

 でも、小さく。本当に小さく記事の最後に『六巻を知ると一巻の終わり!?』のリンクの青文字が貼り付けられている。

「―――」

 こ、これは―――見てみたい。読んでみたいよな。、、、っと俺は指を伸ばし、そのリンクをちょんちょんっ、っと。

 くるくるくるっ、っと。

「!!」

 うおっ、しばらくして画面がホワイトアウトに『!!』のマーク―――、、、が出て。やべ電話がフリーズ、、、は、しなかった。『あぶね、ヤバいっサイト』って読み手に思わせる演出だったみたいだ。

「これ、、、」

 その証拠に画面の記事の一番最上部に、デフォルメの眼鏡をかけたお兄さん?の画像がくいっ、っと眼鏡を上げる。

「―――、、、」

 こいつ画面から消してやろうか。ひょっとしてこのアイコン画像が『眼鏡の御仁』?だとしたら、なんとなく祖父ちゃんの言っていた『眼鏡の御仁』の性格が解った気がする・・・。

 ま、いっか、ビビったけど電話に実害はなかったんだし、と俺は記事に目を通していく。

「―――、」

 ふむふむ、えっと―――・・・、

『六巻を知ると一巻の終わり!?』という副題で貼り付けられたリンク。それを指でちょんっとタップし、それを開く。

『『第六感社』は日之国日夲の民間企業の一つで治安維持能力も保持する。一般的には異能力を使った慈善団体だと思われているが、実態は異能を持つ能力者による一般人の管理と支配を目論む秘密結社であり民間軍事会社。能力開発において数々の人体実験や諜報活動を繰り返し、いずれは日之国政府を裏から乗っ盗ろうと日夜画策する。『転移者』を使った実験結果が欲しいため『転移者』を喉から手が出るほど欲しがっている』

 さすがにこれは・・・、

「・・・」

 どうだろう。『第六感社』は昼間にこの庵を攻めてきた定連さんと野添さんが所属する会社だ。あの二人もかなり強引なやり方だった、、、。でもこの記事も誇張して書いてあるのかもしれないし・・・。

 ま、取りあえず読み進めてみるか。俺は次に視線を合わせた。

『警備局は第六感社を疑いの目で見ており、また両者は同じくして治安維持能力を保持している。そのためもあってか、お互い反目しており、『第六感社』から視れば、業務改善命令を発する公の組織『警備局』は目の上のたんこぶであるため、『第六感社』は、御上の力を借りていずれは『警備局』を民営化させた上で潰そうとしているようだ』

 『御上の力を借りて』? 第六感社は民間企業じゃなかったっけ? なんで御上の力を借りて警備局を潰すことができるんだ?

「??」

 それに―――、警備局と第六感社は仲が悪い? でも、定連さんは俺に、『俺は警備局境界警備隊隊長だ』って言ってたよな。俺は、記事に視線を戻す。

『第六感社は学校法人として第六学園という教育機関も運営しているが、その実態は若い能力者を広く集めての研究(それには非合法な人体実験も含めて)と、異能を用いた軍事開発をしている軍産複合体である』

 『非合法な人体実験』って・・・これがもし本当ならやべぇ会社だな、第六感社ってのは。

「・・・」

『なぜ、第六感社がこのような非合法な人体実験を行なうことができるのか、それは第六感社が『とある』闇の組織の末端組織だからだ』

「『とある闇の組織』・・・」

 あいつらか。俺の知っている限りの構成員は、だった奴も含めて―――、まず俺がこの目で実際見た奴らは、、、結城 魁斗『黯き天王カイト』、日下 修孝『先見のクロノス』、『炎騎士グランディフェル』、それとあの街の尖塔にいた『屍術師ロベリア』、の四人。

「・・・」

 魁斗の話と、祖父ちゃんの夜話の中に出てきた奴らは―――、『紅のエシャール』、『不死身のラルグス』『執行官』『流転のクルシュ』それから、『特務官』だったよな。あ、あとは正体不明の『導師』。魁斗が義父さんと呼んでいた奴。

 俺は『灰の子アッシュの都市伝説集』の画面に視線を戻す。その最後には、

『第六感社の裏側を知ると一巻の終わりです。これを読んでいるあなたは今なら退き返すことができる。くくっ、では貪欲なあなたのために―――』

「・・・」

 なんなんだろうな、この書き方。次のページを見たい方は、と、そこに次に進める新たなリンクが貼り付けられている。本当に簡素に小さく、『我々は人である!?』と、青い文字で記されたハイパーリンクだった。

 俺はリンクを指で触って次のページへと飛んだ、その『我々は人である!?』に、だ。

 『我々は人である』すなわち、

「『我々はイデアル』・・・って、、、」

 『人』を『イ』に変えただけじゃないか・・・。

「なになに―――」

 俺はその『我々は人である!?』の記事を読んでいった。


///


「ふわぁ」

 眠ぃ・・・、だんだん眠くなってきた。電話の上部に視線を持っていけば、もう午前二時三分になっていた。

 結論から言えば、その『我々は人である!?』と次の『三の理想化とは拾った二つで成功される!!』の記事の内容は、前に魁斗が、その得意気に俺に語ってきた『イデアル』の内容とあんまり変わらなかったものの―――。


導師(とう)さんが僕に語るにはね、健太っ。『我々『イデアル』は五つ異世界の共存を図る者。我々『イデアル』は五つの異世界の権衡(けんしょう)者―――五つの異世界が迎合・戦争することはあってはならない』んだって。違う異世界同士が出会えば、必ず衝突や戦争、迎合が生じる。その先にあるのは不幸しか存在しない』

『僕達『イデアル』は人員を入れ替えつつ、古来をより、うん、より正確に言えば、僕達『イデアル』は『世界統一化現象』を機にこの五世界に誕生し、そのときより連綿と受け継がれしもの』

 って魁斗は。

 魁斗が俺に得意気に語ってきたその部分はこの、『我々は人である!?』と次の『三の理想化とは拾った二つで成功される!!』には掲載されていなくて。

 ま、でも、当事者だった魁斗が語った『イデアル』と、この灰の子アッシュの載せた記事の内容じゃ、当事者に遠く及ぶわけがないか。

 つまりは、『三の理想化とは拾った二つで成功される!!』とは、『イデアル』を構成する三頭の三人とその実行部隊が十(拾)二人だ、という内容だったんだ。


「っ」

 それに俺には、アイナが以前俺に語ってくれたことが頭の中にあるしな。それはあれだ、五世界創世神話の『皇国創建記』だ。だから俺は、この記事を読んでその内容が解りやすかった。

 つまり、俺にとってこの記事『我々は人である!!』と『三の理想化とは拾った二つで成功される!!』は、特に真新しいことはなかったんだ。

 次に―――、次にハイパーリンクの青文字になっていたのは。

「―――?」

 いったいどういう意味だろう?

『羽っ子いいもの探し物!!』

 な、なんだろう、、、このそこはかとなくアレな副題は。

「・・・っ」

 ・・・別になにもなさそうだし、よし読んでみよう。

『失われし七基の超兵器。それは古き大イニーフィネ帝国の遺産―――』

「っ!?」

 失われし七基の超兵器っ!?

 その『羽っ子いいもの探し物!!』という記事は。そのリンクの貼られた青文字に飛んで、画面に出た文言は『失われし七基の超兵器。それは古き大イニーフィネ帝国の遺産―――』の文言より始まっていたんだ。

 ・・・『煉獄』。真っ先に俺の頭の中に浮かんだものはそれだ。

「アイナが前に―――」

 あのとき、アイナが俺に語ってくれた『皇国創建記』。そのアイナの話に出てきた七基の超兵器。そのとき哀しそうな顔で彼女は『煉獄』とぽつりと呟いたんだよ。しっかりと俺の耳には聴こえていた。

 そして、祖父ちゃんの夜話の中にも出てきた『煉獄』という名の一基―――。日下を滅ぼしたという紅蓮の大火球。

「―――っつ」

 その内容までこの『灰の子アッシュ』のサイトは語っているのか―――。やばい。これはやばいな。


 つらつらつら・・・。

「―――っ」

 ついに来る、天雷山へと登るときが、、、っとまだ早い。高い山に登るときは、事前にいろいろな準備が必要だろう? 食料、水、防寒着、、、などなど、それと同じだ。高い山は、なにも準備せずに登れば、すぐに遭難してしまう。

 俺が挑むは、日之国と月之国の境界雷氣漲る神域天雷山。そこに在るという霊験あらたかな霊刀『雷切』―――。いざ征かん、っとその前に津嘉山のお兄さんな。次の『第十六ノ巻』では煉火お兄さんが居るイニーフィネ皇国に舞台が移るんだ。

「くくっ」

 っと俺は思わず笑みが。

 さぁ、次巻では頼りになる仲間が増えるぜ・・・っ!!


『イニーフィネファンタジア-剱聖記-「天雷山編-第十五ノ巻」』―――完。

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