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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十五ノ巻
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第百六十三話 三人兄妹

「え、えっと、それは―――」

 いや、それは祖父ちゃんの夜話の中で、エシャールっていう奴のことを祖父ちゃんが俺に話してくれたときに、そのことを、、、三兄妹の父君はもうすでにこの世にはいないのだよ、健太ってさ。三兄妹とは、つまりは上から順番に『煉火』『アターシャ』『火乃香』の三人兄妹だ。

 実は祖父ちゃんから聞いて、『アターシャ』の日之国の名前のほうも俺は知っているんだけどな、今は黙っておこう。さらにややこしくなりそうだからな。


第百六十三話 三人兄妹


「なるほど、ゲンゾウ師匠から聞いたのですか」

「あ、うん。そうそう祖父ちゃんから聞いてさ」

 俺は話すと『あ、地雷踏んだ』になってしまいそうなイニーフィネ皇国異能団団長だったというエシャールの事は伏せて、祖父ちゃんから教えられたということを、アイナとアターシャの二人に白状(はなし)した、ところだ。

 それに俺は、アターシャが許可もしていないのに、彼女達三人兄妹の過去を勝手に知ってしまったんだ。もしそれを言おうものなら、アイナやアターシャだって気分を悪くしてしまうだろうしな。最悪信頼と信用を失う。

 俺がアターシャに訊くより先に、アターシャが俺に言うよりも先に。祖父ちゃんから聞いて『津嘉山 火蓮(かれん)』アターシャの日之国での名前のほうを俺が知っているのも含めてな。

「ケンタ」

 そのアイナの凛とした声で俺のそれまでの思考は途切れた。そして、アイナに集中する。

「お、おうアイナ」

 ちょっと、アイナへの反応がぎこちなかった、、、たぶん大丈夫だ。

「従兄であり、剣士でもあるレンカを貴方に紹介するのは(やぶさ)かではありませんが、ところでケンタはレンカに会って具体的に何をしたいのですか?」

「うん。俺は今日のことで自分が経験不足ってことを痛いほど、身に沁みて解ったんだ」

「―――ケンタ・・・」

「俺、どんだけ経験値不足なんだよっ、って。俺って全然場数を踏んでねぇじゃねぇかっ、ってさ。だから俺いろんな強い人と会ってみたいんだ。手合わせしてみたいんだよ、アイナ・・・!!だから俺は・・・っ」

 すっ、っとアイナは居住まいを正す。

「―――。解ります、ケンタ貴方の気持ちは」

「アイナ・・・っ」

「はい、ケンタ。私も剣の道を征く、剣士の端くれですから。それに―――」

 アイナはそのままの姿勢で、『それに―――』と、ややはにかんで視線を右に逸らす。

「それに、アイナ?」

「私が思うに、、、私は今の貴方でも充分強いと思っています」

 そうかな? 今の俺でも充分強い?定連さんにはいいようにやられた俺なんだけどな。

「・・・」

「ですが、ケンタが今よりももっと強く、もっと強くなっていくのは、私にとっても誇らしいことです」

「・・・っ」

 アイナってこう、、、真っ直ぐなんだよな自分の気持ちに対して。駆け引きするような性格の人じゃない。

「でもレンカにばかりかまけて私を放りっぱなしにしないでくださいね。その、公務が休みの日ぐらいは私にかまってくれませんと、、、私」

「・・・」

「私だってケンタ貴方と共に錬磨し、共に高め合っていきたいと思っているのですから、、、えっとレンカにばかりだと、その、・・・ケンタは私の愛する人ですし―――、、、っ///」

 アイナは自分とも手合わせをしてほしいってことか、要は。

「お、おう・・・解った、アイナ―――っ///」

 アイナは自分の思っていること、疑問に思ったことを素直に話せる人だ。照れながらのときもときどきあるけどな。

 そして、今みたいな俺が照れてしまうことを普通に言う。こんなときはアイナ自身も照れて、俺も照れてしまうんだよな。

 でも、この気持ちも、気分も、アイナへの想いも嫌じゃない―――。


///


 俺の思いも、想いも、願いも、要望も、無事にアイナとアターシャに届き、今の俺はと言うと―――。

「ふぅ・・・」

 ふぅ、、、っと俺は一息つき、上へと視線を向けた。そこは木の枠の格子窓だ。

 俺の振った話の所為でもうすでに時間はだいぶ遅くなってしまったけどな。アイナとアターシャには夜遅くの風呂になってしまって悪いとは思っている。

 俺は夕方頃に割っていた竹薪を一本取り、それを風呂の焚口から燃え盛る中に入れて、カッカと燃えている竹薪を(なら)す。激しい火勢が衰え余熱に、薪を均したそのおかげで煌めく火の粉が焚口から出て空へと昇って消えていった。

 そして、俺は再び木の格子窓を見上げた・・・っ。

「―――っ」

 背伸びして、、、ううん、台があっても俺は覗かないよ。絶対風呂の中は覗かないからな!!

「っ///」

 あの格子窓の向こうには裸のアイナとアターシャがいるんだ。

「―――、―――、―――・・・」

 魁斗と戦ったときあいつが胸の内ポケットに隠し持っていたあの『氣導銃』を透視で視抜いたとき。定連さんが胸ポケットに隠した第六感社の名刺を見透かしたとき―――。

 俺の異能『選眼』の能力の一つ『透視眼』をもし、今ここで、、、使えば―――。

 俺はハッとして―――、

「ッツ!!」

 ―――ぶんぶんぶん・・・っ!!

 本能にも似たその気持ちを打ち消すために、俺は慌てて首を左右に振った。そんなだと、アイナ達に嫌われるぜ、俺・・・。 まぁ、ともかく今は―――、、、ほわわわぁんっ、、、っと。でも、再び頭に浮かんだ妄想の産物・・・、ハッ、っと俺はして―――、

 ―――煩悩退散っ俺は火の番だけをしていればいいんだ!!

「ケンタさま」

「は、はいっ」

 焦ったぜ、、、風呂場から俺を呼ぶアターシャの声で。

「・・・、湯船のお湯が減りましたので、ケンタさまの分の水を足しました」

 一拍置いてアターシャさん。その一拍の意味は考えないおこう。

「はい」

「その分、湯船のお湯がぬるくなりましたので、少し火勢を上げてくださいませ」

 さっき、火を落として余熱にしたばかりなのに。

「わ、分かりました、アターシャさん!!」

「では、お願いしますケンタさま」

「よし」

 と、俺は竹薪に手を伸ばし、、、

「ケンタ」

 っ、この声はアイナ。

「っ、ん?どしたアイナ」

「、、、その、やっぱなんでもありません」

 珍しく歯切れが悪いな、アイナ

「??」

「なんとなくケンタを呼んでみたくなっただけ、です・・・っ」

 呼んでみただけ?

「そうなんだ。じゃ、俺も。アイナ」

「っ、はい、ケンタ・・・」

 ざぱっ、っとお湯を掛ける音。

「―――」

 今、身体を洗っているのはアイナとアターシャのどっちだろう。それとも、アターシャがアイナの身体を洗っているのかな?

 まぁ、今はそれは置いておいて、

「・・・なんかさ、俺。アイナに」

 無性に言いたくなったんだ、アイナに、

「はい」

「ありがとな、俺にレンカって言う人を紹介してくれて」

 お礼を。

「いいえ、どういたしましてケンタ」

 俺は脇に置いていた火ばさみを手にとって、

「レンカってどういう人なんだ?」

 じゃりじゃりっ、っと灰ごと小さく燃え残った薪片を焚口の奥へと追いやる。

「レンカですか?」

「うん」

「そうですね。レンカは先ほど私が言ったようにアターシャとホノカの兄に当たります」

 それは聞いた。

「うん」

「そんなレンカはとても妹想いでして、現にホノカは兄であるレンカにとても懐いていますね」

 へぇ。面倒見のいい兄貴なのかなレンカって。俺は一人っ子だからあまりイメージが湧かないけど・・・。

「そうなんだ」

「えぇ、ホノカはよく私の自宮に遊びに来ますので、そのときにはケンタにもホノカを紹介しますね」

 ・・・。ほのか/火乃香、アターシャの妹か。ほのかは俺よりも年下の印象を受けるかな、なんとなく。

「おう、そのときはよろしく頼む」

「はい。ホノカは人懐っこい子なので、きっとケンタにもすぐに心を開いてくれると思いますよ」

「へぇ、、、そうなんだ。ってか、そのほのかっていう子、(とし)はいくつなんだ?なんか俺達より年下の感じがするんだけど」

「えっとホノカは、、、従姉さんホノカは確か私と同い年でしたよね」

「はい、アイナ様」

「だ、そうですケンタ」

 じゃ、俺とも一緒か。じゃレンカは?ま、長兄だから確実にアターシャよりも年上なんだろうけど。

「へぇ・・・。じゃあレンカ兄さんは?」

「レンカはですね、確か・・・アターシャより二つほど齢が―――」

「アイナ様、私が」

「、っとアターシャ?いいわ、答えてあげて従姉さん」

「失礼いたします。ケンタさま、私の兄レンカは私より二年と三か月十二日早くこの世に生まれております。しかし、だらしのない兄のその精神年齢は―――、いえ、ご想像にお任せします、ケンタさま」

 言葉に緩急つけて、、、。て、手厳しい・・・っす、アターシャさん。

「おふぅ・・・」

 レンカ兄さんかわいそす・・・。その割にはアターシャってば、レンカ兄さんの誕生日も知っているみたいなニュアンスだけど。

「ケンタっ本当は違うんです・・・っ」

 声に、ふふっ、っという笑みを含ませながらアイナは言ったんだよ。

「違う、、、ってアイナ?」

「従姉さんがいつも兄レンカのことを手厳しく言うのは、きっと好きの裏返しであり、従姉さんの照れ隠しかと―――」

「あ~あ、なるほど。だからレンカの誕生日まで―――」

 ―――アターシャは知っているんだな。

「っ///、アイナ様、御手を御上げください」

「従姉さん?」

「腕を下げられた状態では、アイナ様の御身体を清潔に拭くことはできません故にです」

「分かりました、アターシャ。ではシャボンで洗うのは貴女にお任せします」

「畏まりました、アイナ様」


 この二人のやり取りって―――、

「っ」

 やっぱり今、アターシャがタオルを持って、アイナの身体を泡で洗っているのかな。


「失礼致します、アイナ様」

「うひゃぁぅ―――っ!!」


 びくっ、っと俺までその大きな声に驚いた。

「っ!!」


『うひゃぁぅ―――っ!!』っという、アイナのとても大きい素っ頓狂な声風呂場から聴こえたからだ―――。

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