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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十三ノ巻
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第百四十二話 朝凪の剣シルフィード 対 直剣スパタ

 すっ、っとラルグスは両手で持ち直剣スパタを振り上げる。

「そんなもん・・・しゃらくせぇっ―――」

 ラルグスはいきったように言い放つと―――、悠の斬撃が自分に届く瞬間だ、それは。ラルグスは自身の氣を通わせ、淡く輝く直剣スパタを思い切り上から下へと振り下ろした!!


第百四十二話 朝凪の剣シルフィード 対 直剣スパタ


 その瞬間だ、ラルグスの直剣スパタから放たれた氣の斬撃と悠が放った風氣の斬撃はガッ、ドンっ!!―――っと凄まじい音を立て、ぶつかり合う。ラルグスは悠が空中から放ってきた風を纏う氣の斬撃を地より、まるで地対空ミサイルのように迎撃したのだ。

 吹きすさぶ砂塵。

「なにっ!?」

 悠は自分が『朝凪の剣(シルフィード)』から放った風の斬撃がラルグスに迎撃されるとは思っていなかった。風属性の魔法剣『朝凪の剣』より繰り出す風を纏い飛ぶ氣の斬撃。自身の必殺ともいえる攻撃だ。それをラルグスに防がれた。悠が驚きに目を見開くのは当然のことと言える。

「ハハハハハっ今度は俺の番だぜ―――」

 悠から見て砂塵の向こう側で、ラルグスはにやりっ、っと自信たっぷりに笑みをこぼす。

ざっ、ざりっ、っと―――ラルグスは左脚を半歩前出しに、右脚を半歩後ろへと下げて腰を落とす。

 ぐいっ、っとそれから彼ラルグスはさらに柄から左手を離し、柄を握る右手を後ろに下げた。ラルグスの目先にあるのは、直剣スパタのその美しいまるで定規のような剣身とその先に繋がる鋭い鋩―――。開いた左手を、特に人差し指と中指を直剣スパタの剣の腹に沿えるように置く。

「いくぜ―――」

 ラルグスが自信満々に『いくぜ―――』と唱えるように呟いた後、、、それは訪れた。

 ジジジジ、ジリ・・・ッ。ラルグスが構える直剣スパタの真っ直ぐの剣身に氣が小さな稲妻のようになったものが電撃のように走り回る!!

 ジジジジジジ―――ジリ・・・っ。時折強く眩い光を発し、また雲を征く雷鳴の如くその直剣スパタの表面を踊り狂う!!

 ラルグスは自身が構える直剣スパタに己の氣を通わせ、籠めているのだ。ラルグスが籠めた氣は、やがて許容量の限界を迎え、まるでざわめくように直剣スパタの剣身から鋩へと氣が煌めきを放って集束していく。

「喰らいやがれ―――『氣鏃(サイコ・バリスタ)投射(=テーラ)』ッ!!」

 直剣スパタの鋩は、・・・―――ジジジジ、ジリ・・・ッ白々と皓々(こうこう)たる煌めきを放ち―――、、、そのラルグスの様子を観る悠。

 ゴアッ、っとラルグスの直剣スパタから光が溢れるように、まるで剣先が膨れ上がったように視え―――直後、光の中からバババババババババ―――っ、っと放たれる無数の光る氣鏃、氣刃の群れ。その光る鏃刃(テーラ)の弾幕―――っ!!

 一方―――地より射られた悠は、、、

「ッ!!」

 風魔法の剣『朝凪の剣』に秘められた風の力で空中に浮かぶ悠。『氣鏃投射』―――彼三条 悠に向かって掃射された氣鏃の弾幕、ラルグスの必殺の技の一つだ。

 悠は咄嗟に『朝凪の剣』を握る手の反対側の手を開いて出す。残り少ない自身のアニムスを奮い立たせるように、

「『絶対防御』―――っ!!」

 その言葉を放つ。すると、前に出した左手のその先に『絶対防御』の楯が形成させる。ただ、アニムス不足なのかその淡く青い楯の大きさはおよそ人一人隠れることができるほどの家の扉一枚ほどの広さしかなく、また少々薄いように見える。

 ギンギンギンギンギンギンギンギンッ―――っとそんな状態の『絶対防御』の楯に着弾する無数のラルグスの氣鏃達だ。

「―――くっ・・・!!」

 悠の旗色の悪い表情、そして眼下のラルグス。地面にてその直剣スパタを構える彼ラルグスを悠は空中から俯瞰していた。旗色が悪いのは悠であると、その悠の顔の余裕が消えた表情から見て取れる。実は、ラルグスはまだこんなにもアニムスを温存していたのか、と悠が歯噛みしたのだ。思った以上にこのラルグスという男は強い!! さすがは月之国にあるルメリア帝国最高軍司令官にして、正体不明組織『イデアル』の一員だけはあった。

 ギンギンギンギンギンギンギンギンッ―――ビキ・・・ビシ―――、

「く・・・っ」

 そんなときついに、、、バカなッ俺の『絶対防御』が、、、と、悠は思う。そう悠の『絶対防御』の青き楯に罅が入ったのだ!!

 ラルグスの『氣鏃投射』の氣鏃刃は悉く悠の『絶対防御』の楯に阻まれてはいたが、だが着実にその『楯』にダメージを与えていたのだ。

 ギンギンギンギンギンギンギンギンッ―――びきっ、、、びしっ、、、ぴききききっ―――、悠の『楯』に刻まれる罅が増え、その深さも増していく。

 だが、どのような因果か、ラルグスの直剣スパタから放たれる氣の光量が急速に衰えていく―――ラルグスが己の直剣スパタに籠めた『氣鏃投射』の氣が底を尽きたのだ。

「―――」

 ふぅ・・・っと悠は内心で安堵した。

「っつ、、、堅ってなぁてめぇ―――、もうちょっとだったのによぉ!!」

 ラルグスは眉間に皺を寄せて悔しそうにその顔を歪めた。

「これが『絶対防御』の力。俺の力だっ」

 悠はその憎たらしいラルグスを見下ろしながら、『朝凪の剣』に秘められた『風の魔力』を行使し、すたっ、っと元いた地面に静かに降り立った。

 っつ―――ダンッ、っと悠はこれは好機だっ、っとばかりに地面を勢いよく蹴るっ。タタタタっ―――っと悠は地を蹴り、ラルグスに肉薄していく。もちろんその手には『朝凪の剣』を握り締めている。

「らぁあああっ!!」

 悠は叫ぶ、鬼ような形相で。そして、背後に『朝凪の剣』を振り被るように、頭の先から足元に掛けて、岩をも切り裂くような勢いでラルグス目がけて振り下ろす―――!!

「そんなもん―――っ」

 かたやラルグスはその両手で握り締める直剣スパタを迫りくる、『朝凪の剣』を迎撃するために足元から頭の上へと斬り揚げる―――っ。

「「ッ―――!!」」

 ガンッ!! 剣戟。二振りの剣がぶつかり合い斬り結ぶ。優もラルグスも顔を突き合わせ、感情を昂ぶらせたまるで鬼ような形相お互いが斬り結ぶその剣身越しに互いを睨み合う。

「はぁあああああああああッ!!」

「ぬぉおおおおおおおおおッ!!」

 ギギギギっ―――(しな)る剣身、軋む剣。互いに立ち位置と剣の位置、また体勢を変え合い、悠とラルグス互いの力と氣は拮抗し、鍔迫り合いで圧しつ押されつのぎりぎりの攻防だ。

 伸びるラルグスの足。その脛には銀の鎖で造られた脛当てが装着されている。

「おらぁっ!!」

 ラルグスの足、靴底は悠の腹を捉える。

「ぐっ!!」

 そのラルグスの蹴りの衝撃で悠の体勢が崩れた。それを好機と捉えたラルグスはよりその両腕に力を加え、―――悠の『朝凪の剣』をいなすように、、、その直剣スパタの鋩がまるでとんでくる―――。

 驚きで大きく見開かれる悠の瞳。

「っ!!」

 ごろごろごろ―――っ、っと悠は咄嗟の判断で地面を転がる。ガンっ、っとその直後、地面を抉り切るようなラルグスの剣の一撃が、悠がいた場所に入る。

「喰らえっラルグス―――!!」

 ラルグスの直剣が地面に入ったところでそれを悠は己の好機と見て、寝た体勢のままから、ぶぅんっ、っと『朝凪の剣』を横薙ぎ斬り―――脛切りだ。

 タンっ、ざざっ、っとラルグスは華麗な足捌きで悠の横薙ぎを―――、

「おぉっと―――、、、っつ!!」

 だが、悠の横薙ぎの『朝凪の剣』の全てを躱したわけではなく、僅かに彼ラルグスの右脛を切る。しかし、ラルグスの鎖脛当てに阻まれてラルグスの脛から先を斬り落とすことは叶わない。わずかにラルグスの鎖脛当てだけを裂いただけに終わる。

 悠の顔がわずかに悔しさに歪む。

「っつ」

 ダっ、バッ、すたっと悠は、戦いはこんなにうまくはいかないさ、と、すぐに気持ちを入れ替え、ラルグスの次なる攻撃を最大限に警戒し、寝転んでいた体勢から素早く立ち上がる!!

「「―――」」

 悠とラルグス―――両者は双方を互いに睨み合うこと刹那―――。厳しい顔つきになり、お互いがそれぞれ自身の得物をその両手で握り締める。

 悠は『朝凪の剣』、ラルグスは『直剣スパタ』。悠とラルグスはお互い、残り滓ほどになったアニムスを奮い立て―――、、、悠の『朝凪の剣』は淡く緑色の光が灯り、かたやラルグスの『直剣スパタ』には淡く氣の輝きが灯る。

「はぁああああ―――ッ!!」

「ぬぉおおおお―――ッ!!」

 ザッ、ザリっ、っと地を踏み込み―――互いにアニムスを燃やし尽くすかのように、全身全霊得物をもって振り被る―――!!

「これで決めるっ・・・ラルグスッ!!」

「てめぇっ・・・さっさとくたばりやがれッ!!」

 斬り結ぶ、、、両者の剣―――『朝凪の剣』と『直剣スパタ』。双方が自身の得物にアニムスを通わせ、間違いなく両者ともこれが全身全霊で打ち込む最後の一撃となろう。

 ぐわっ、っと『朝凪の剣』と『直剣スパタ』が接近、斬り結び―――だが、ふぅっと一陣の風が戦場に吹いた。

 突如として戦場に乱入してきたその人物によってそれは阻まれた。

「「ッ!!」」

 悠とラルグスの真ん中、『朝凪の剣』と『直剣スパタ』が斬り結ぶ間に、凛とした雰囲気を醸し出す少女が突如として現れたのだ。

「―――・・・」

 すぅっ、っと静かに、音もなく、無言で、、、両者の剣身は少女の左右の手により掴まれた。その少女の細い手が二振りの剣を受け止めたときには、ガンっ、っという音すらしなかった。

 まるでその手から何かの力場でも発生しているかのように、両者の斬撃はすぅっ―――ぴたりっ、っとその少女の手の平の前で止まったのだ。

 よって、現れた少女に獲物を掴まれた彼ら悠とラルグスの得物が互いに斬り結ぶことはなかった。

「う、うそだろ・・・」

 驚く悠。当然だ、自身の風の氣を纏う渾身の一撃をこの少女に易々と受け止められたからだ。

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